表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
乱れる心音

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/102

第七十七話 暮羽の決意


 ***

 

 暮羽は、ミラと灰堂に呼び出されていた。

 “あの方”の姿はない。


「何故、呼ばれたかわかっておるな?」


 ミラが暮羽の顎を指で持ち上げる。


「何でしょうか」


「とぼけおって。貴様、命令を忘れたか?」


「覚えておりますが」


 ガシャーン!


 パイプ椅子が転がった。


「では何故、いつまで経ってもNo.8が戻ってこないのじゃ?」


「……思いの外、強敵でしたので」


「貴様、赤い霊力も使っておらぬじゃろう」


 ミラは腕を組み、苛立たしげに足を鳴らした。


「良いじゃないですか、ミラさん」


 すっ、と灰堂が前に出た。


「約束を守れないから、こちらも動いたわけだし」


「……どういう意味ですか?」


 暮羽の目が、鋭く灰堂を射抜く。


「燦宮桃華を捕らえた」


「!?」


 暮羽は灰堂に掴み掛かった。


「貴様!私が協力すれば、桃華様には手を出さないと約束したはずだ!」


「それができてないからでしょ?

 それに、これは博士の命令だ」


 灰堂は、胸ぐらを掴む暮羽の手を振り払う。

 風はないのに、蝋燭の火が揺れた。


「これ、何だと思う?」


 灰堂が取り出した――小瓶。

 その中で、桃色の霊力が渦をまく。

 暮羽が見間違えるはずもなかった。


「……まさか!」


 暮羽の顔が青ざめた。


「もう大分抽出してる。

 あの子、回復のスピードが早いから良いね」


 灰堂はにこりと微笑んだ。


 桃華の泣き声が、脳裏をよぎる。

 小瓶の中の霊力が濁った。


「壊したくなるほど、美しいのう」


 ミラが手を伸ばし、うっとりと小瓶を撫でる。


「……私がNo.8を回収すれば、桃華様を解放して頂けますか?」


 暮羽の呼吸が浅くなる。


「いや、もういいよ。No.8は必要ない」


「それ以上の霊が手に入ったからのう!」


 ミラの高笑いが、暗い室内に反響した。


「……霧島家から奪ったものか……。

 一体何に、使うつもりだ?」


「それを君に説明する必要、あるかな?」


 灰堂は暮羽の横を通り過ぎ、出口へと歩き出す。

 暮羽は下唇を噛んだ。


「ミラさん。行こう」


「これから、あの封霊石を解放しなくてはならぬからのう。くくっ……」


 灰堂は扉に手をかけ、振り返らずに言う。


「暮羽さん。

 次の命令には、きっちり従うことだね。

 これ以上、燦宮桃華を傷つけたくないなら。


 ――研究は、すでに始まっている」


 蝋燭の火が、消えた。

 暗闇の中に、ミラの笑い声だけが残る。


「……狂っている」


 拳が壁を打った。


 あの桃色は、


 穢すための色ではない。


 ――『暮羽』


 私の名を呼ぶ、あの笑顔。


「従ってばかりでは、救えない……!」


 血が伝う。

 

 それでも痛みはなかった。


 ――もう、跪くのはやめだ。

 

読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:3月12日21時

第七十八話 ガラスの庭園

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ