血色のセレモニー
「ごほん。では発表する。メイルック帝国の文化祭の日程が決まった。開催日程は9月22日」
───教壇の前、太陽が大統領のように演説する。
「来たか。血色のセレモニー」
堕天は天使と悪魔をふわふわさせて遊んでいる。
「あー怠いな、またかよ」
まりもは右大雛筋という、上腕二頭筋をプッシュしている。
「ペロリタイ、ぺろぺろ、ペロって、もうペロリタイ」
きらりはぺろぺろうるせえ。
「…人がゴミのようだ、参加拒否」
段ボールが湿ってるのはなんでなんだ、汗なのかキコウ。
「ところで、文化祭って何するんだ」
「ああ、類には説明しておこう。メイルック帝国の皆が文化祭を行う。メイルック帝国のジルハル王女、ヒンド皇子が日々の公序を観察し、街中で喝采を浴びる日だ。商人は屋台を立ち上げ、豪華な料理を提供する。そして、ここからが重要任務だ。ジルハル王女、ヒンド皇子を狙うグノリスの対峙を命名する。いわば血色のセレモニー(文化祭)の開催だ」
パチパチパチ。俺は自然に拍手してしまった。失礼。
「血色のセレモニーってグノリスも市民もやべえってことだよな」
「ここでの市民は生きているけど生きていない。ただの視覚効果だ。グノリスは市民に混じり、刺客として現れる、ようはどんな刺客もぶしゃーだ」
当たり前に、物騒なもんだな。
「おっしゃーやってやんぜ」
もっこり、上腕が盛り上がってる。
「…よく分かんねえけど、まあ、こいつの式別の戦力を上げるのに丁度いいかもな」
「では、今回の血色のセレモニーは2チームに分かれて遂行する。太陽、類、きらり──。
──堕天、まりも、キコウ。どちらが早く、グノリスの主格を討伐できるかだ」
太陽は興奮すると、堂々と両手を広げる。
「さあ、まずはシミュレーションと行こう。ジルハル王女、ヒンド皇子のルート確認から開始だよ」
太陽が広げたメイルック帝国の地図は、大きな羊皮紙に染み、中央には国の心臓とも言える王都メイルックが丸く囲まれ、そこから何本もの街道が四方へ伸びている。王宮を中心に城壁が描かれ、一の環には市場や職人、二の環には貴族の邸やギルド、そして三の環は王都が密集している。
太陽は指で北へと伸びる太い線をなぞった。
「王女皇子は北の王都に向かう。王北街道だな。
市民、商人もの街道を抜けて、松林の中を抜けてウィンタス峠を越える。分岐があって、西に進めば山脈沿いに鉱山都市ハーゲンがある。さらに北へ行けば王都の王宮に到着する」
「へえー王宮まで距離あるな」
「それでだ、太陽、類、きらり。一同は王北街道から森林へ架けウィンタス峠まで。市場や職人の屋台周りを偵察し、北の峠ウィンタス峠まで同行──。
──堕天、まりも、キコウは山脈沿いの鉱山都市ハーゲンから王宮までを任せたい」
「任せろっての、ハーゲンダッツからのおうきゅうしょちだろ」
まりもの無神経さ、無関心さ、むしろ尊敬に値する。
「グノリスの主格を見つけ次第、皆で駆逐だ」
きらりはよだれを垂らしながら、羊皮紙のメイルック帝国の地図にぼたぼたこぼし、今までのルートがぐちゃぐちゃに水溜りができる。
「おいおい、きらり、お前どこだか分かんなくなるだろ」
「そんなの勘だよ、勘。それか川だな」
「お前は、俺らのチームだから王北街道からウィンタス峠まで。川なんか行かないんだよ」
「ベーっだ」
ベロが床まで伸びる。その使い方が、一番の正解だ。
「ふっ、私達の勝利だな、こっちは王宮で戦えるからな。はははははは」
「あーーもう潰すのがたまんねえよ」
堕天とまりもがボクシングのファイティンポーズをかましているが、一方のキコウは
…お茶を啜っていた。
「私はあまり関わりたくないので、山奥でスナイプーでもしています」
「なんだかんだ、協力的じゃん」
キコウの眼の奥は紫に光って何かを宿している。
スナイパーよ本領発揮かよ。
「じゃあ、今日のところはこの辺で。皆お家に帰って、休息だ」
4人と太陽はうきうき爛々で、教室を出るが、
「待て、俺の家はどこなんだ。もしかして、お前らと家一緒だったりして」
「もちろんだよ、この子達はまだ赤ちゃんだから」
心からデカすぎるハリセンを出し、太陽にツッコむ。
「どこがだよ、てゆうか家どこだよ」
「皆に着いていけば、お家につくよ」
「なんなんだよ」
前を行く、4人はお風呂に入る順番で喧嘩をしている。
「熱々の主役はこの堕天様だ」
「てめぇ2時間も入って長げえんだよ。雛が可愛そうだろうがよ」
「天使と悪魔の聖水の儀式だ」
「儀式は上がってからしろ、問答無用でわしだ」
「透明だから、浸かっても何も感じないだろうが」
「何も感じないのを感じるのがプロなんだ」
なんか人間らしくも、一律あるよな。
ふと、俺の隣を同じ速度で歩いている、きらり。
「きらりは類と入るペロ」
「はあ?一緒に入らねーよ、俺は最後でいい」
きらりは真剣な眼差しで、俺の右腕にぴたりと身体を密着させてきた。
きらりの2つの膨大な、割れ目に挟まれた。
やべえ、右腕血管どくどくする。
「きらり、どうしたんだ」
──きらりが涙目で俺を見上げてくる。
「お願いだ、類」
そうか、ここからギャルと美少女ゲーが始まってしまうのか。遂に俺にも参上しちまったか、よし、きらりの為にいざ立ち上がろう。
俺はきらりの特徴的なツインテールに触れる。
「きらり、もちろん、俺に任せろよ」
きらりは不安気な顔だが口角がにやりと、最大限上がった。




