96話 見切りの達人
鏡花さんが再び刀を振った。
「四季の舞・冬!」
だがイオタは完璧に見切り、そして私たちの方に走ってきた。
「一体どうなってるんだよ!?」
私はビー玉を投げ、トラックに変化させるレガリアで奴を押しつぶそうとした、だが奴はそれすら完璧にかわしていった。
(なんだコイツ!?動体視力が良すぎるぞ!?)
そしてイオタは非常階段の横を飛び降り、ゴミ袋がクッションになって逃げ始めた。
「クソッ、奴を追いかけるぞ!鏡花さんは建物の上から追って!」
私と千尋さんは非常階段を降り、鏡花さんは建物から建物へと飛んで追いかけていった。
「どうして私のレガリアを避けられるんですか?」
「分からない、それしか言えない」
「そういえばイオタのレガリアって一体なんですかね」
「分からない、持っていないのかもしれないし隠しているのかもしれない」
私と千尋さんは急いでイオタが逃げた方面を探したが全くと言っていいほど見当たらない。
「鏡花さんも追ってくれているはずだけど、逃がしたか?」
千尋さんは鏡花さんに電話を掛けたがすぐに応答は無かった。
「まだ追いかけている最中かもしれないな、手当たり次第に探すぞ」
私と千尋さんはイオタを見つけるのに必死になり、結局見つけられなかった。
「いたか?」
「いいや、痕跡すらなかった」
「参ったな……」
(どうして私と千尋さんでも見切れなかった鏡花さんの太刀筋をイオタは見切れた?それに私のレガリアも見切った、かわすという点で何かレガリアが絡んでいるのか?)
私はイオタのレガリアについて考え始めた。
「千尋さん、まずはイオタの姿だけ見れただけマシですよ」
「奴は人が訪れない場所にいるという点では収穫だったのかもしれないな」
「でも奴のレガリアが分からない以上、また逃げられますよ?」
「そうなんだよな、なんだと思う?」
「避けるに関するレガリアだと思いますね」
「避けるレガリアか、聞いたことは無いな」
すると鏡花さんから電話がかかってきた。
「鏡花さんどうした?」
「千尋殿、イオタを取り逃がしました。人気のない路地に入りそこから見当たらないんですよ」
「鏡花さんよくやった、宿に戻っていいぞ」
千尋さんはイオタの行動パターンを分析しh締めた。
「多分だが奴は人が全く来ない場所を好んでるらしいな、そこから推察すると人間が大の嫌いだろう。そしてネットに生きがいを持ってるネットモンスターっていう感じかな」
「つまり働きもせずに人を叩く奴って事ですね」
「そうだな、ろくでもないな」
そして私と千尋さんは何処に行くか考え始めた。
「何処に行きます?」
「人気のある場所はさすがに盗撮の危険がある。だからそこそこ人気がありそうな場所に行くぞ」
そして私と千尋さんは人気がそれなりにあるショッピングモールに入った。
「ここでお菓子でも買おうか」
「それって千尋さんの?」
「そうだな、この大きなガムボールを買おうか」
千尋さんが買おうとしていたのは直径2㎝のガムボールだった。
(千尋さんって案外子供っぽいんだなぁ)
千尋さんは大きなガムボールを袋に詰めていった。
「こういう詰め放題のお菓子売り場ってさ、なんだか私苦手なんだよね」
「千尋さんどうしてなの?」
「いやだってさ、どうやって詰めようか悩むんだよね、うまい人は数十個も得をするじゃんか、だから苦手なんだよね」
千尋さんはそう言っているが手は動きっぱなしだった。
(千尋さんって口だけっていう時もあるのね、まぁ嘘を余裕で付いちゃうからか)
「あっ、いま私の事嘘つき呼ばわりした?」
「まぁ嘘の事を言うこともあるなぁって」
「まぁ敵を騙すためなら嘘だってつくさ、どうせ勝つのはこの私だもん」
千尋さんは堂々とそう言った。
「わー凄いですねー」
「何だその棒読みは!?」
私はヒビを急に作った。
(どうやらイオタはいないようだね)
定期的に電脳世界でイオタがいないかを確認することにした、次発見して取り逃がさないようにしないとね。
「せっちゃん、大量にガムボールを買ったし、宿に帰ろうか」
「大量に買いすぎだと思うのは私だけだろうか」
私と千尋さんは宿に帰り、部屋のドアを千尋さんが開けようとした時、止まった。
「あれ、千尋さんどうしてドアを開けないんですか?」
「待って、鏡花さんは今どこにいるんだ?」
「多分まだ外かと」
すると千尋さんは汗を滝のように流し私に悲壮感全開でこう言った。
「すまん、鍵この部屋の中だ」
「あっ、もしかしてインキー?」
「うん」
私は無意識のうちに千尋さんの頭を叩いていた。
「やらかしじゃあないですか!?」
「ごめぇぇん!!」
そして千尋さんがスペアキーを貰いに行っている間、私は千尋さんからガムボールを2個貰い、それを口に入れた。
(でも千尋さんってなんだかんだでおっちょこちょいなんだなぁ)
私はガムボールを膨らませながらそう考えていたのだった。
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