94話 詰将棋のように
風呂から戻ってきた私と千尋さんは再びエゴサーチを続けた。
「せっちゃん、あともう少しであいつらが帰ってくるから手短に済ませるぞ」
「ああ、分かった」
私はラムダとジータにセクハラ発言をしている奴のアカウントを見た。
(見るからにロリコンだな、発言はセクハラだしもはやロリコン性犯罪者と呼べるぞ?)
どうやらそいつはJKの裏垢やらにセクハラ発言を繰り返し送っていることが判明した。
(あっ、この人はただ単に幼い女子を狙う奴だな)
私は次に誹謗中傷をしているアカウントを見た、だがすぐに違和感に気が付いた。
「千尋さん、このアカウントの作成日時って最近じゃあないですか?」
「確かに最近だ、三日前に作成されたアカウントだ」
次の誹謗中傷しているアカウントを見るとまたしても三日前に作成されたアカウントだった。
(もしかしてだけどこれ犯人は単独なのか?)
すると千尋さんのキャリーケースから音が鳴った。
「おっと、どうやら解析結果が出たらしいな」
千尋さんはホログラム投影技術の装置を出すと電源を付けた。
「どうも、解析課の上谷まいだ、よろしく頼むよ」
「上谷さんですね、それで解析の結果出ましたか?」
「ああ、どうやら最初に広めた奴はアルターエゴだと言う事が分かった。名前はイオタだ」
聞いたことのない名前に私たちは顔を傾けた。
「聞いたことのない名前だと言う事は分かっている。奴は複数のアカウントを作り情報を出していき、他の人が反応したと思えば共感する文章を送っている。だが不可解な点があるんだ」
「不可解な点?」
「発信源が不明な点なんだ、だが信号の強さから大阪に居るのは確かなんだ」
「大阪からはまだ出られないのね」
「そうだ、私たちがその情報がデマだと発信しておくから安心するように」
そう言って通話が切れた。
「だってさ、どうやら次の相手はイオタという人物らしい」
「イオタ……もしかしてギリシャ文字?」
すると今まで無言で刀をぽんぽんと手入れしていた鏡花さんが口を開いた。
「ギリシャ文字だ」
「鏡花さん、ギリシャ文字の事知ってるの?」
「もちろん知っている、予備知識として備えているんでござる」
「へぇ~鏡花さんは頼りになるなぁ~」
千尋さんが鏡花さんをべた褒めすると鏡花さんは少し下卑た顔でこう言った。
「そうかそうか、いい気味よのぉ」
だがこうして次の敵の名前が分かった以上、次に狙うのはイオタと言う事が確定したのだった。
(でもどこにイオタが何処に居るかなんだよな、大阪から信号が出ていると言っていたけどピンポイントに絞れないのかな)
「千尋さん、どうして位置情報を一か所に絞れなかったんでしょうか?」
「恐らくだが電波を通しにくい素材の中にいたかそもそもネット上にいるか」
「ネット上に居るってことは?」
「実体が無いタイプのアルターエゴだな」
実体が無いタイプのアルターエゴは何か幽霊みたいに聞こえてきた。
「それって幽霊ですか?」
「幽霊に近しいのかな、いやそもそも幽霊が電子機器を使えるのかが分からないんだよな」
その時ラムダが珍しく役に立つことを言った。
「信号が一か所に固まっていないとなるともしかしたら電脳世界に居るのでは?」
その言葉は私と千尋さんが話をして気が付かなかった着眼点だった。
「ラムダ、イオタが電脳世界に居るかもしれないっていう事、本当かもしれないぞ」
すると千尋さんは私にこう言ってきた。
「ちょっと電脳世界に潜って電話をかけてくれないか?」
「いいですけど……どうしたんですか?」
「私の考察を確かなものにしたくてね」
私は仕方なく電脳世界に潜り、千尋さんに電話を掛けた。
(これでかかるんだったいいんだけど)
すると電話がかかったがなんだか声が洞穴の中にいるように反響して聞こえてきた。
「千尋さん、なんだか声が反響して聞こえます」
「そうか、なら帰ってきてくれ」
私は通話をつないだまま現実世界に戻ってきた。
「これで点と点がつながった。イオタは電脳世界に居る、これは確実だ」
千尋さんはさっきの音声を録音していたようで再生してくれた。
「確かに声が響いて聞こえますね」
「そうだろう、電波が何度も跳ね返ってこっちに届いているからだろう、それでどうして一点に絞れないか、それは各地で書き込みを行っていて位置を特定されにくいようにしているんだろうな」
(確かに場所を移動すればある程度は居場所がバレにくい、頭がいいな)
すると千尋さんはどうにかしてイオタの居場所を調べ始めた。
「しかしこの居場所を調べる作業こそ最大の鬼門なんだよな」
パソコンのメールには解析課から一番信号が大きかった場所をリストアップした地図が添付されていた。
「なるほどね、奴は大阪から離れる気はないようだな」
赤い点は大阪の外に出ようとせず、中で物事を終えているようだった。
「さてと、ここからは詰将棋みたいなものだ、うまい具合に奴を追いつめていけたら捕まえれるだろう」
「千尋さん、これからの動きはどうしますか?」
「2日間は自由行動だ、それでこのアカウントたちを監視して奴がどこに潜んでいるか分かるはずだ」
「ならできるだけアクティブに動いた方がいいんですね」
「ああ、だが出来る限り二人一組で動いてほしい、一人が連れ去られた時にカバーが出来るようにね」
「だけど一人余るけど」
「そうだ、居残り組は援軍として動いてもらう、その役割を鏡花さんに頼みたい」
「ああ、千尋殿の頼みなら任せろ」
「そしてラムダとジータが一組、私とせっちゃんが一組だ、異論はあるか?」
千尋さんの作戦に異論はなかった。
「よし、異論は無いと言う事だな。それじゃ明日の動きは各自で任せる」
そして千尋さんはベッドに寝転んだ。
「ほら、寝るぞ」
「……私昼寝しちゃったからあまり眠気が無いんだよね」
「そうか、なら私も起きてる」
そして私は眠気が来るまでテレビを見るのであった。その間レミちゃんはなんだか大人しかった。
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