89話 大バズと引き換え
適当に歩いている私と千尋さんだったが目の前に金髪と青髪の明らかライブ配信中ですよ~という雰囲気を醸し出している陽キャがいた。
(うわーめっちゃまぶしすぎるんですけど)
すると千尋さんはおもむろに舌打ちをするとブツブツと呪詛を吐いた。
「どうしてあいつらは陽の空気を出してんだこのやろ地球温暖化あいつらのせいだろ」
「千尋さん、とりあえず落ち着いてください。ライブ配信者というだけで牙をむかないでくださいよ!?」
「分かってる、ああいうのには巻き込まれたくないんだ」
千尋さんは奴らの陽のオーラに負けじと陰のオーラを出してその場を通り過ぎていった。
(千尋さんって陽か陰って言ったら少し陰よりなんだよなぁ、まぁ私も陰だけど)
するとおもむろに奴らは私たちを撮影してきた。
「千尋さん、後ろを向かないでくださいよ」
「ああ、どうせ奴らは私たちを撮る名目でここに来てるんだろう。走って撒くか?」
「パンツを出しましょう」
「なんで?」
千尋さんに出した案は即却下された。
「社会的な死か物理的な死だと社会的な死の方が嫌だよ。まぁ私は物理的に一回死んでますけど」
「それってブラックジョークですよね、でも私たちを映してバズるよりもアホな企画をしてバズる方が楽しいんですけどね」
「さてと、繁華街に行くぞ」
「えっ、なんで繁華街ですか?」
「奴らは恐らく私たちが抵抗しないと思うだろう、そして私たちは腐っても未成年、これ以上は話さないぞ」
私たちは撮ってる奴らとの距離を付かず離れずの距離を保ちながら繁華街に入っていった。
「路地に行くぞ、出来れば私が指定する場所だ」
「分かった」
千尋さんは少しだけ広い路地に入ると奴らを待った。
(どうしてここに連れてきたんだろう?)
すると奴らが来ると急に私を押し倒してきた。
「ここならだれも来ないと思っただろう……」
(手首を掴まれてるし足は固定されてる……まずい!)
私はもがいて脱出しようとしていた。そして千尋さんも押し倒されると千尋さんは声を出した。
「いやぁぁ!!誰か助けてぇえ!!」
路地に千尋さんの助けを乞う声が響く中、追ってきていた男たちが私たちを襲い始めた。
「未成年を襲えるなんてラッキーだぜ」
その時、勢いよくドアが開き、千尋さんの上に馬乗りになっていた男がぶっ飛ばされた。
「うっせぇぞこのタコが!!」
明らかにガラの悪い男が拳銃を持って周りを見ると私ともう一人の男を見つけた。
「えらいもんを見せてくれるなぁ、俺らのシマで凄いなぁチャレンジャーボーイ?」
ガラの悪い男が私の上に馬乗りになっている男の髪の毛を掴み、そして首元に拳銃を突き立てていた。
「ほら、勇気の一発、くれてやろうか?」
「ひっ……ひぃぃぃ!!」
男たちは一目散に大通りに逃げていった。
「チッ、逃げ足は速いんだな。それでお前ら、大変な目に合ったな。一旦お茶をしていくか?」
「良いんですか!?」
ガラの悪い男は私を立たせると背中に着いた土や埃を取っていった。
「ああ、お前は散々にやられているようだな、落ちたスカートを着ろ」
「ありがとう……ございます」
「お礼なんてのはいい、任侠の元でやったことだ。それに子供が押そうなんて仁義外れは死ぬべきだ」
(この人っていい人なのかな……?)
私たちは言われるがまま建物に入っていった。
(内装はなんだか書類がいっぱいだなぁ)
「ほら、お茶だ。これで落ち着いたら話を聞かせてほしい」
男はお茶を出してくれた。
「いただきます」
私たちはお茶を一杯飲み、少しだけ落ち着いた。
「それでだが、どうしてあそこに居たんだ?」
それに対し千尋さんはこう答えた。
「ここに極道の事務所があるって聴いてたのでそれで大声を出せば助けてくれるって思って」
「そうか、確かにここは極道の集まる場所だ。だがうちは2人だけだ。潰れるまで少ししかない組織だ」
「そうなんですね」
「それでもう一つ聞きたい。お前たちはどうして暴力を振るっているんだ?」
「その事ですか、私たちの仕事内容にかかわってくるので理解できないと思いますが、良いですか?」
「ああ、俺は人一倍理解するんだ」
千尋さんはどうして噂が流れているか話をしている間、私はカバンを開けレミちゃんの無事を確かめた。
「レミちゃん、大丈夫か?」
「むー」
私が倒れた時、レミちゃんは私の下敷きになり大丈夫かと確かめたがどうやら無事らしい。
「それで私たちはこのバグという存在を退治してるんですが、多分そのバグと人間の事を見間違えたと思いますね」
「そうか、このことは情報屋に言っても分からない事だったからな、助かる。他の組にもそう伝えておく。この子らは冤罪と」
「ありがとうございます……」
私たちは建物を去ろうとすると男は電話番号を渡してきた。
「大阪で何かあればこれに電話をしろ、すぐ俺が駆けつける。守代は無しでいい」
「ありがとうございます、ではさよなら~」
私たちは建物を後にすると話をし始めた。
「いい人だったね」
「そうだな、警察は横暴な人がいるけど極道はあんな優しいんだろうな」
そして私たちは疲れたので一旦宿に戻ることにした、だが大阪はとっても優しい人がいるんだなぁと感じる数時間だった。
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