88話 擁護の声
翌日、私と千尋さんは宿の近くを意味もなく歩き回っていた。
「千尋さんって案外遅起きなんですね」
「プライベートの時は遅起きなんだよね、でもそのおかげで体力を回復できるからありがたいね」
「私は逆に早起きですよ、確か高齢の人って早起きって聞いたことがあるんですけど」
「それってせっちゃんの事をおばあちゃんって言わせるための?」
「いいや、深い睡眠がとれる千尋さんが羨ましいなぁって」
その時スマホ片手に私たちを撮ってくる人がいた。
(また私たちを盗撮する人か……めんどくさいな)
千尋さんも後ろの奴に気がついていたようだ。
「これが今炎上中の人たちでーすw」
(何だこいつらライブ中か?)
私は今ある悪知恵を使い、どうにかして奴のアカウントをどう凍結させようか考えていた。
(大抵のライブ配信系ってセンシティブなものを映したらアカウント凍結だよな、だがパンツを見せると同時にデジタルタトゥーを掘ることになる、それだけは避けないといけないか。
すると千尋さんは何かを検索し始めた。
(千尋さんが素早い手つきで何かを検索し始めた、見て見ようかな)
私は千尋さんのスマホを盗み見ようとした、だが千尋さんはそれをわかってか体を入れて見せないようにしていた。
(見せてくれないのかよ、ケチだなぁ~)
そして千尋さんが奴のカメラに何かを映した。
「うわっ!?」
すると音が消え、男が嘆いていた。
「アカウントが凍結された……これはお前の」
千尋さんはスマホをポケットにしまうと男の鼻の穴に指を突っ込んで男を倒した。
「何が俺のアカウントだ?盗撮をして得る収益はさぞ蜜の味だろうよ」
千尋さんがまるで高校の不良のような剣幕で男を脅した。
「それで私たちを晒していた理由は?」
男は半泣きでずらずらと謳ってもらった。
「あなたたちが暴力事件をもみ消してると情報がありそれでバズりたくて晒してました」
「ならその暴力事件の噂を広めた人は?」
「それは分かりません……それで俺の名前は鈴木で年齢は22歳ですぅ」
言わなくてもいい情報までゲロった奴は千尋さんに鼻の奥まで指を突っ込まれた。
「ふごぉあ!?」
奴が悶絶する姿を千尋さんは眺めていた。
「いいか、私たちは暴力をしていない、人を護るために刃を研いでるんだ。分かったか」
千尋さんは奴の鼻の穴に突っ込んでた指を抜き、奴の服で鼻水を拭いた。
「せっちゃん、行こうか」
「う……うん」
私は千尋さんのやったことに少し引きながらついて行った。
「千尋さん、あの人地面に倒れてますけど大丈夫ですかね?」
「ああ、鼻の奥に指を突っ込んだからすごく痛むけど死にはしないでしょ」
「いや本当に大丈夫?」
「まったくせっちゃんは心配性だなぁ~人間はそう簡単には死なないのよ」
千尋さんは何だか一般人を心配しなさすぎだとは思っている。
(千尋さんって知らない人にはドライなのかな。あっ、そういえばライブ配信にレミちゃんの姿が堂々と映ってそうだったなぁ……今後めんどくさそうだな)
私はレミちゃんを見た、表情はなんだかニコニコだった。
「レミちゃんなんだかどや顔してないか?」
「どやぁ~」
「せっちゃんどうしたんだ?」
「いやなんでもない」
私はレミちゃん入りバッグを背負い、千尋さんに向かって走っていった。
「私はただ面倒な奴に絡まれたくないんだよな、例えば私が鼻に指を突っ込んだ奴とか」
「千尋さんって面倒なことには巻き込まれたくないのかぁ」
私と千尋さんはそのまま適当にぷらりとコンビニに訪れた。
「さてと、お茶を買おうか」
「そうですね、ブラックコーヒーじゃあないんですか?」
「ああ、ただ誘導のためにブラックコーヒーを好きって言っただけだ」
(ブラフだったって訳なのか、千尋さんってなかなかの策士なのね)
そしてお茶を買った私たちはベンチに座った。
「ちょっとキレたからGABAの飴舐める」
「GABAってなんなの?」
「キレやすいのを抑えるんだ」
千尋さんはGABAをバリボリ食っていた。
「でも平和だなぁ」
「まぁ敵が居なければね」
私と千尋さんは目の前の平和をじっと見ていた。
「ねぇ千尋さん」
「どうしたんだ?」
「平和になった後、私たちはどうなるんですかね?」
「さぁ、それは私にもわからない」
「そっかぁ……私はその平和になった先を見て見たいんだ」
「そうか、その生き方いいね」
そして私と千尋さんは再び意味もなく散歩をし始めたのだった。だがその散歩がびっくりするほどの成果を上げるのだった。
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