86話 第三勢力
街中を歩いていると所々でアルターエゴの事で話をしている人たちがいた。
「千尋さん、アルターエゴって私たちにしか分からないはずですよね」
「非公表の情報だからな、私も会社に入社する前は存在すら知らなかった」
(シグマが刑務所に入れられたからアルターエゴやヒビの存在が知られるようになれば活動する際に目立ちそうだな……動きにくくなるかもしれない)
千尋さんはスマホを見ると汗を少し流していた。
「千尋さん、飲み物いりますか?」
「そうだな、出来れば自販機の方がいいな」
私と千尋さんは一緒の歩幅で歩いて少し遠くの自販機に向かった。
(千尋さんって飲み物の好き嫌いあるのかな、だって白色の自販機を通り過ぎてるけど)
「千尋さん、ここに自販機がありますけど」
「いや、今の気分で赤の自販機がいい」
千尋さんはそう大声で言うと私はどうして大声で言うのか聞いた。
「どうして大声で返事するんですか?」
すると今度は小さな声で言った。
「何か嫌なことに巻き込まれてそうなんだ」
そして遠くにある赤の自販機に着くと千尋さんから先に飲み物を選んだ。
「私はこの缶コーヒーにしようかな」
「ブラックコーヒーを飲むんですね」
千尋さんが購入ボタンを押し、商品を取り出すと顔をしかめた。
「千尋さん、どうしました?」
「なんだかぬるいんだよなぁ……どうしてくれるんだろうなぁ!!」
すると千尋さんは急に茂みに向かって缶コーヒーを投げた。
「千尋さん!?どうしたんですか!?」
茂みに缶コーヒーが入ると鈍い音が鳴った。
「ふん、やっぱり私を狙ってたか」
「千尋さん、一体どこで気を狂わせたんですか?」
「たまたまスマホを見て分かったんだがこの写真を見て見ろ」
千尋さんが私にスマホを見せてきた、そこに映っていたのは私と千尋さんがさっき街中を歩いているときに撮られた写真だった。
「これって盗撮?」
「盗撮されていてどうやら一部の人たちからは賞金首になっているようだな」
写真が投稿されているアカウントの名前を見るとごく一般ユーザーだとわかり、アイコンは知らない女の写真だった。
「一体この人は私たちをどういう意図で写真に収めたんだろうな」
写真と添えられているハッシュタグを調べてみるとそこに映っていたのはラムダとジータの釣りの写真だった。
「これは少しまずいかもね……もし二人に刺客が向けられてるのなら」
千尋さんは自販機の取り出し口から冷たい缶コーヒーを飲むと駅に向かって歩き出した。
「即刻助けに行かないとね」
そう千尋さんが言い、ラムダとジータをとにかく保護しに行った。
「まずラムダとジータがいる場所を特定しないと」
まずは場所の特定からだ、海沿いというのは分かっていた
「なんだろこのタワー、それに橋やら陸があるね」
「タワーか、何本立ってるんだ?」
「2本、一本は青色でも一つが白に近い銀色」
「私も調べてみる、橋の色は?」
「白色、あっちょっと待って」
私は写真を拡大すると観覧車が見えた。
「観覧車があった!」
「観覧車か、なら遊園地のある場所で海、そして橋と言う事はそこは埋め立て地だな、そこからここから行ける場所から絞り込むと……コスモスクエア駅だな」
そう言うと千尋さんは道筋を調べ、そしてホームにて電車を待った。
「しかしよく観覧車見えたな、私は見えないぞ」
「早く行きましょう、ラムダとジータが心配ですよ」
「そうだな、行こうか」
そして30分後、私たちはコスモスクエア駅に着いた。
「この近くにラムダとジータが……」
「二手に分かれて探しましょうか、私はあっちの方角に探すからせっちゃんはあの端っこが見える場所の方向を」
私と千尋さんは一旦別れて二人を捜索することになった。
(何処に居るんだ……?)
暗くなっていく中、私は歩を進めているとピシャッと水の音がした。
「誰だ?」
私は刀を出し周りを見始めた。
(敵の姿は見えない、感覚を信じないといけないのか)
すると第六感で真正面から何かが来ると感じた。
「はぁあっっ!!」
私は何かを受け止め、刀から金属同士が削れるような音がした。
「あれ~?敵じゃあなかったかぁ」
そこに居たのはジータだった。
「ジータだったのか、よかったぁ~ってまだ安堵しちゃダメなんだっけ。ラムダは?」
「ラムダは今霧の中に居るよ」
ジータが指さす方向を見ても全く暗闇で見えなかった。
「まったく見えないんだけど、どうして?」
「だって敵が街灯を潰したからね」
そう言うとジータはナイフを両手で握りぶんぶんと振り回しながら闇に消えていった。
「まったく、ジータは恐れしらずなんだから」
私は千尋さんに電話を掛けた。
「ラムダとジータ、二人無事でした。ですが敵と交戦中らしいです」
「そうか、今すぐ行く!」
千尋さんが走ってくる音が聞こえてくると私はどうにかして敵をあぶりだす作戦を考えていた。
(何か灯りがあれば敵を確認できるんだよな……スマホのライトを使う?だとしても片手が塞がるからダメ、なら千尋さんにスマホを持ってもらうか?)
私の元に千尋さんが来ると今現状を伝えた。
「敵の数は不明、真っ暗闇で敵が何処に居るのかすら分からない」
「そうか、なら私が突撃してくる」
「でも見えないですよ」
「ああ、スマホで照らしながらやっつける」
そう言うと片手に鉈、そしてもう一つの手にライトを持った。
「よしっ、これでいいでしょ」
千尋さんは真正面を照らしながら鉈を持って突撃していった。
(私は役に立たなさそうだな、少し下がるか)
私はゆっくりと後ろに下がり戦いの結末を待った。そして数分後千尋さんたちが血に濡れて帰ってきた。
「うっす」
「なんだか怖いね」
暗闇の中から血で濡れた3人を見るとなんだか小便が全部出そうだった。
「よくあるB級ホラー展開だね、それで敵の情報、わかりましたか?」
すると千尋さんは今までの情報を言った。
「まず刺客は恐らく殺しとかやったことのない一般人、その時点で不思議すぎるんだ。目立ち始めた私たちを殺しにかかるってさ」
「ちなみに奴らは気絶してるから安心して」
そうラムダが言うと白色の球を出した。
(一度瀕死に追い込んでるけどラムダが治したのかな?)
「それで私たちに刺客を仕向けてるのはSNSの誰か。そこまでしか分からないね」
「まぁ日を追うごとに話題性が無くなっていくかもだから大人しくしておこうか」
3人は一旦血の付いた服をどうしようかと悩んでいたがラムダが白色の球をうっかり落とした。
「あっと、間違えちゃった」
するとどんどんと血の汚れやら泥の汚れやらが落ちていった。
「そのレガリア洗剤効果もあるの?」
「いや分からない……これって人を治すっていう効果にとどまらずに物を直すってことも可能って事かな」
「そうかもしれないね~でもこれで安心して電車に乗れるよ」
そして私たちは最大限警戒しながら宿に戻っていった。だがSNSの恐ろしさはこれ以上ない恐怖を植え付けてくるのだった。
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