74話 爆発炎上
私が宿泊部屋で休憩している時、あの人はペットロボの解析をしていた。
(不思議だ……俺の知らない武装が装着されているな)
彼は私と鏡花さんが仕留めたペットロボを分解し、武装の正体を確かめた。
(これは強化モーター、量産されているペットロボにはこんなものは付いていない。それに見覚えのない型式、なんだかキナ臭いな)
続いて彼はペットロボのAIが学習した要素を見た。
(ここは問題がない……普段通りの学習内容だ、野良ペットロボになるのは恐らく何かしらの外的要因が働いての事だろうか)
彼はパソコンを閉じ、ペットロボに目を向けた。
(しかしこんな形を見るなんて、つくづく不幸だな……ペットが飼いたいのにガラクタを買ってもらったような気持ちだ)
そう言って彼はペットロボの顔をまじまじと見た。
(とってもボロボロだ、俺はこんなボロボロになるようなペットロボを作っていない。ペットを欲しいと言っている子のために作っているんだろ)
彼は彼なりの信念があり、ペットが買えない子供に本物と動きが遜色ないペットロボを開発することに生きがいを感じているようだ。
「へぇ、あなた、ペットロボの開発者なんてね」
急に彼の後ろから若い女の子の声が聞こえてきた。
「なんだ君は!?」
(ドアは閉まっている、ならどこから入ってきたんだ……窓か!?)
「そんな眼差しでこっちを睨まないで?」
窓には鳥のペットロボが居て逃げれば肉や骨が啄まれると彼は感じていた。
(逃げようにも何をされるんだ……?)
すると女の子は彼を押し倒し、舌なめずりをした。
「いいでしょ?こんな幼女に押し倒されるなんて。名前はシグマ」
そう言ってシグマは彼の頬にキスをした。
「そういえば、いろいろ知ったあなたを生かしておくのはいけないんだ。だからこれ、もらっていくね」
シグマはUSBメモリを手に持っていた。
「それは……!返せ!」
「これには全部のペットロボの操作の権限が入ってるんでしょ?すべて私の物にしてやるよ」
そう言い、シグマは窓から出ようとした。
「あっ、言い忘れてたけどペットロボは確か電源系統が2つあったのよね。一つは主電源、そしてもう一つ、それは非常電源」
その時機能停止していたペットロボが動き出した。
「じゃあね~あとそのペットロボは自爆機能付いてるからね」
そうシグマが言うと目の色が赤褐色から青色になり、ペットロボから光が漏れ始めた。
「そんな事……ありかよ」
そしてペットロボが自爆し、彼はその爆発に巻き込まれ、部屋もろとも吹き飛ばした。
その時私はタオルを頭に乗せて休んでいた。
(とっても暇だなぁ)
その時とてつもない衝撃が建物全体に響き渡った。
「なんだなんだ!?」
私はベランダに出て上や下を見た、すると下から煙が出てるのに気が付いた。
(火事か!?爆発して火が出る……テロか?)
すぐに私は千尋さんに電話を掛けた。
「千尋さん!」
「今の衝撃はなんだ?」
「今何階にいますか?」
「2階だがどうした?」
「多分下の階で爆発、爆発階層は3階から17階の間!そして火事になってる!」
「マジか!?今すぐみんなに電話を掛ける、せっちゃんは鏡花と合流してくれ!鏡花は屋上にいるからな!」
「分かりました、ではまた」
電話を切って私はみんなの貴重品を持ち、部屋の鍵を持った。
(千尋さんの鉈……なんだかほんのり暖かい)
千尋さんの鉈を持った時、何やら黒い何かが見え始めた。
(まずは屋上に行って鏡花さんと合流しないとね、あとエレベーターは使えなくなってそうだから螺旋階段か非常階段で行かないと)
私は螺旋階段で屋上に上がっていった、だが屋上に上がるためのドアに鍵がかかっていた。
(どうしてエレベーターで行けるのに螺旋階段には鍵が……)
私はタックルで開けようとしたが全くびくともしない。
(……こうなれば千尋さんの鉈を使うしかないのか)
私は千尋さんの鉈を取り出し、ドアの鍵の部分を斬った。
(重さが違う……とってもヘヴィーだ)
屋上に着くと鏡花さんがさっきの衝撃をものともせずに刀を振っていた。
「鏡花さん!ちょっと!」
「セツナ、一体どうした」
「下の階層で爆発炎上したんですけど」
「それは本当か?なら今すぐ皆と合流せねば」
「それよりもこれ、鏡花さんの貴重品」
私は鏡花さんの財布や鍵を渡した。
「ありがとう、なら参ろうか」
そう言って鏡花さんは刀を鞘に納め、千尋さんのいる2階に向かっていった。
(さすがにエレベーターは機能停止しているな……これは少し疲れるぞ)
「それで爆発炎上したと思う階層は?」
「3階から17階の間」
「……そうか、まずは自身の身を一番に動いた方がいいでござるな」
螺旋階段を降りていくとだんだんと気温が上がっていった。
(火元が近づいているのか暑くなってきたし視界がぼやけてきた……早く2階に行かないと)
黒い煙が充満する中、私たちは人混みに捕まってしまった。
(何してるんだよ……)
私は螺旋螺旋階段の下を見た、すると人がどんどんと後ずさりをしている光景が見えた。
「鏡花さん、刀を抜く準備をしていてください」
「ああ、分かった」
そこは14階、先頭は恐らく12階と13階の間……飛び降りてもいいが手すりに摑まれなければ恐らく死……
(さてと、これはどうするかな)
すると鏡花さんは居合の構えをしながら人混みに突っ込んでいった。
「うっそぉん」
悲鳴が聞こえる中、鏡花さんは上手く人と人の間をすり抜けていき、先頭で立ち往生している原因となっている物を見つけた。
「セツナ、飛び降りてこい」
「分かった!」
私は螺旋階段の間のスペースに飛び込み、間一髪鏡花さんに拾ってもらった。
「ありがと……」
「ああ、それで私たちが斬ったはずのペットロボが動き出しているのは何故だ?」
目の前にはペットロボが二体、火を纏って立っていた。
「さぁ、でもあれで機能停止してないとなると、厄介だぞ」
(でもこのペットロボ、あの製作者の……)
私は嫌な予感が頭をよぎったが今は目の前にいるペットロボを対処することにした。
「鏡花さん、戦いは短く被害を抑えて」
「分かった、下がってて」
そう言って鏡花さんは一気にペットロボ二体を仕留めるつもりだった。
「四季の舞……夏!」
鏡花さんは居合の構えから一気に刀を抜き、ペットロボを二体同時に上下真っ二つにした。
「ふぅ、これで大丈夫だ。先を急ごう」
その時、螺旋階段の中心から火柱が登っていった。
(マジかよ!?これ12階で火事か!?)
「セツナ、もう時間がないぞ」
「鏡花さん急ぎましょう!」
私はペットロボをまともに確認せずに2階に降りていった、そしてホテルマンの案内でとりあえず安全な場所まで避難してきた、そこには千尋さんたちがいた。
「セツナさん無事だったんですね……よかった」
「ああ、鏡花さんのおかげでね」
「ですがあの男はいないんですね」
周りを観てもあのペットロボ製作者の顔は無かった。
(もしかして……いや、最悪なパターンを考えるのはやめよう)
そして私たちはホテルの外に出て火が収まるまで待ったのだった。
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