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ビヨンドザアンノーン?  作者: 猫こんた


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71話 我慢大会

宿に着いた私たちは早速風呂に入ることにした。早い時間の風呂だからか風呂場には私たち以外に人は居なかった。

「ふー雨に濡れてぐしょぐしょだよ~」

「本当にそうでござるな」

鏡花さんの裸を見るや否や、古傷が目立つような気がした。

「鏡花さん、少し聞いていいですか?」

「何でござるか?」

「その腹や肋骨のところの古傷って一体なんですか?」

「これでござるか?ライバルの剣士と戦ったときに受けた傷がまだ癒えてないでござるよ」

「もしかしてだけどさ……鏡花さんってタイムスリップしてきた武士?」

「違うでござるよ……ただ剣術に魅入られ、剣筋に集中した結果でござる」

鏡花さんと話しているとなんだか……ぽわぽわしてきた。

「どうしたんでござるか?」

「いや……私たちには無くて鏡花さんにはあるの……なんだか羨ましいです」

「そうか、育ちの良さでござるな」

その一言は私の何かを壊し、鏡花さんの肩をポコスカと叩き始めた。

「何ですかその言い草はぁ!!!」

「痛いでござるよセツナ殿~」

「何がセツナ殿だよ~!?」

私と鏡花さんが戯れているそばでラムダとジータは互いに背中を洗っていた。

「ジータ、ちょっとだけ背中を擦る力強くしてくれないか?」

「いいよ~」

「あーやっぱ長年の何かが削れていくなぁ~」

「……ねーちゃん、言いたいこと言っていい?」

「なんだ?行ってみて」

「……本当の姉妹じゃあないのに私はラムダにねーちゃんって言ってるけど、傷ついてない?」

「いいや、全然傷ついてない。なんならうれしいと思ってる」

その言葉にジータは驚いてた。

「でもどうしてそんな事わざわざ言うんだ?」

「私、ねーちゃんにウザがられていると思っちゃて」

するとラムダはジータの頬を手で挟んだ。

「まったく面白い妹だね、血縁関係がなくとも私はあなたの妹なのよ」

「ありがとねーちゃん!!」

ジータはラムダの背中にぎゅっと抱き着いた。

「わわっ、急に抱き着いてきた……」

「良いじゃあないのよ~」

そして私と鏡花さんのイチャイチャとラムダとジータの事を傍観している人が一人いた。

「まったく、他の人がいないからってはっちゃけないでよね、出禁にはなりたくないんだから」

「千尋さん、どうして出禁になりたくないんですか?」

「なぁせっちゃん、ここのホテルプライベートでも来たいと思わないのか?」

「プライベートではここに泊りたいですね……」

「なら大人しくしておいて、分かったね!」

「はーい」

騒がしい風呂だったが最後にみんなで湯船につかった。

「ふぃー極楽極楽極楽浄土」

「病は千あるが健康は一つ……」

「なんだか難しそー」

「ジータ、病気はいろんな種類あるけど健康の状態は一つしかないってことだよ」

「わかったねーちゃん!」

「しかしこうしてみんなと湯船につかれる時を待ってたんだよなぁ」

「千尋さんの言う通り、そうですね……」

鏡花さんは何やら物足りなさを感じている様子だった。

「鏡花さん、どうしてそんな不満げな顔をしてるんですか?」

「私一応成人済みなのだが……こういう極楽な湯では酒を飲みたいと思うんでござるよ」

「もしかして鏡花さん、酒カスですか?」

「いいや、プライベートでは日本酒巡りをしたいと思ってるんでござるよ」

(鏡花さんの趣味渋いなぁ……)

そして数分後、のぼせてきた私たちは何故か我慢大会が開かれていた。

(どうしてみんな上がりたがらないんだ……恐らくジータはそもそも熱を感じにくい、一番危険なのは千尋さん、あなたですよ!!!)

千尋さんの顔が真っ赤になるとカタパルトから射出される戦闘機のように湯船から飛び出た。

「あっちぃー!!」

千尋さんがそう言うと一気に脱衣所に走っていった。

「私も上がり!」

「おねーちゃーん」

最後に残ったのは私と鏡花さんだった。

「さすがの我慢強さだ……」

「鏡花さんもですよ……」

1分、2分と過ぎていく時間がやけに遅く感じたが先に上がったのは鏡花さんだった。

「さすがに限界でござる」

「なら私も上がる」

私は立ち上がり風呂場から離れた。

「おやおや?私はまだ浸かっているが……セツナは外に出たよのぉ?」

「……ってあー!!!」

鏡花さんはまだ風呂に浸かっていた。

「我慢対決は私の勝ちでござる」

そう言って鏡花さんはにやりと笑いながら風呂から上がった。

「くっそー!卑怯な手を使ったなー!」

「勝負に卑怯は無いはずじゃが……」

私は鏡花さんに向かってポコスカ殴りかかったがまるで効いていないようだった。

「程よいマッサージでござるなぁ~」

「ぐぬぬぅ」

そして私たちは着替え、私服に着替えた。

「しかしジータの服装いつ見ても慣れないんだよなぁ」

そう千尋さんが言うとジータはラムダに近寄った。

「これ似合ってる?」

「とても似合ってるさ、だけどこれを似合ってない千尋さんの服装のセンス、どうなの?」

千尋さんの私服、それはクッッソダサイシャツに短パンだった。

「いいじゃんかこれでも!言わせてもらうけどせっちゃんの服装はとってもカジュアルだし鏡花の服装はもうそれ着物だよね!?」

「着物で何が悪いんでござるか?」

「きちんと下着穿いてるよね!?」

「当然下着なぞ穿いておらぬぞ」

千尋さんは鏡花さんの頭を一発軽く叩いた。

「今すぐ下着を穿いて……お願いだから」

「……分かった」

鏡花さんは不満げに下着を穿こうと……穿こ……

「いやそれ布だろ!?」

「そうだが?」

「それって下着なのか!?」

「そうだ、体に巻きつけて下着にするんだ」

その時ラムダが気が付いた。

「まさか……あの時持ってきた布切れって……」

「下着」

鏡花さんがまっすぐとラムダの目を見て言った。

「とっても面白いのね、気に入った」

そう言ってラムダは鏡花さんに向かって親指をあげた。

「じゃ、ここからは自由時間だけどこのホテルから出ないようにね」

「分かったけどどうしてホテルから出たらだめなの?」

「ペットロボとエンカウントしたらさすがに助けれないからね、よろしく」

そして私たちはホテル内で今日の残りを過ごすことになったのだった。

最後まで見てくれてありがとうございます。

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