63話 空飛ぶ棺桶
空港にたどり着き私たちは飛行機に乗る手続きを済ませ、保安検査場を通過した。なお鏡花さんの刀は今回も貨物室行きだった。
「私の相棒がぁぁ」
「そんな泣くことか?」
時間がない今、めそめそしている暇は無く、すぐに飛行機に乗り込んだ。
「そういえば大阪の観光地リサーチしてなかったな、現地着いたらリサーチしてみるか」
そして数十分後、飛行機が飛び立ち、空の旅が始まった。
(しかし3回飛行機に乗ってるけど離陸の時の衝撃は慣れないな)
そして大阪の伊丹空港に着くまで暇になった私だったがすぐ異変に気が付いた。
(あれ、少しずつ飛行機が傾いてきている……?)
それは僅かな傾き、一般人には気が付かないほどの傾きだった。
「千尋さん、飛行機傾いてないですか?」
「確かに気持ち1度ぐらい傾いているような……大丈夫なのかしら」
私と千尋さんは気のせいと思って何もしなかった、だが急に前方から悲鳴が聞こえた。
「なんだなんだ?」
周りが悲鳴の方向に向かって歩いて行ったがすぐに走って逃げていった。
(一体何事なんだ?一般人が逃げるってのは)
「千尋さん、見に行った方がいいですかね」
「いや、ここは空の上だ、無駄に暴れたら墜落するぞ」
「そりゃそうですよね、じっとしておきます」
だが前方から何かを食べている音が聞こえてくる気がした。
「千尋さん」
「言いたいのは分かってる、ただ単にクチャラーがいるのか……あるいは」
千尋さんの顔が曇り、前方を見に行った。
(千尋さんの顔が曇ってた、一体なんだろ)
すると千尋さんは急に結界を張った。
「こりゃやばいな……」
そう言って後ずさりしてきた。
「千尋さん、何が居たんですか?」
「……犬のロボットだ」
「犬のロボットなんて躾ければいいんじゃあないんですか?」
「いや、やめておいた方がいいな。あの部類はな」
シートベルトを緩め、前に向かうとそこにあったのは……人の血で口元が濡れていたロボットだった。
(なんだコイツ……明らかに無機質なのにこっちを狙ってきている……来る!)
私はとっさの判断で刀を出し犬のロボットの飛びかかりをガードした。
(とっても衝撃が凄い……凶暴すぎるぞ!!)
私は犬のロボットを弾き飛ばし、様子をうかがっていた。
(見た感じ装甲が厚いんだろうなぁ……とってもめんどくさいな)
そう思うとコックピットのドアが開いた。
(なっんだとぉぉ!?!?)
操縦士と副操縦士が血を流して死んでいる光景が目に焼き付いた私はさすがに命の危機を感じた。
(もしこいつを始末するのに時間がかかるとするならば……墜落して死、だがこいつを無視して墜落を回避してもこいつに首を食いちぎられて死……クソゲーすぎるだろ!!!)
もはや飛行機は空飛ぶ棺桶に化けていて、どうにかしてこの状況を打破するのにはどうしたらいいのかと頭をフル回転させていた。
(どうする……ドアを開ける?いや気圧差でこいつと私もろとも吹き飛ぶから無し、そもそもこいつを機能停止できるのか?)
私は目の前にいる犬のロボットをどうにかして再起不能、最悪機能停止させればいいと思った。
(ラムダのレガリアは相性がよさそうだが飛行機ごと溶かすだろう、ジータは……考えたくもない、私の覚えているレガリアでは太刀打ちが出来ない、千尋さんのは明らかにヒーラーだ、どうする……)
その時私の体の動くスピードがゆっくりになった。
(急に体が動きにくくなった……なんだ)
すると後ろから普通のスピードで鏡花さんが現れた。
「動きが遅くなったでござるか?これ私の特殊能力でござる」
すると私の刀を鏡花さんが握った。
「じゃ、こいつを突き刺したらいいんでござるな」
鏡花さんは犬のロボットに向かって渾身の突きを食らわせた。
「貫け!ハァァァッ!!」
鏡花さんの放った突きは犬のロボットの口の奥に当たり、そのまま串刺しになった。
「解除」
すると急に体が軽くなったように普通のスピードで動き出した。
「早く飛行機を操縦しないと!!」
私は飛行機のコックピットに入っていったが全く操縦方法が分からなかった。
「これは操縦桿だけど……むやみに動かしたらダメだよね」
すると無線が聞こえ始めた。
(これで管制塔の人たちと話ができるのか……?)
私は無線機を手に取り、耳にイヤホンを付け、今の状況を簡潔に話した。
「操縦士、副操縦士共に死亡、一般人の私が受け答えしてます、どうぞ」
「それなら高度を一旦保ちましょうか、操縦桿を引いてください」
私は少しだけ操縦桿を引いた。
「椅子に座れますか?」
「遺体を一旦地面に置かないといけませんね」
「そうですか、なら遺体を地面に、そして椅子に座ってください」
私は必死になって無線の指示に従って行った、もしここで失敗したらこの飛行機に乗っている命が一気に散るからだ。
(管制塔の人の声を聞き逃すな……)
私は管制塔の人の声を聞き逃さず、伊丹空港の滑走路が見え始めてきた。
「ここからは管制塔でもサポートが入るのでそちらは機首の操縦をお願いします」
「分かりました」
地上には救急車や消防車が待機していて滑走路が開いていた。
「よし、ここだ!!」
私は操縦桿で飛行機を着陸態勢にした。
「着陸……今!!!ブレーキを!!」
私は飛行機のブレーキを全開にして滑走路のど真ん中で止まるようにした。
「ありがとうございます……」
「とりあえず生きてる……それだけでよかった」
そして救急車やら消防車が飛行機に近づいてきた。
(とりあえず……生き残れた)
私は疲労で思いっきり後ろから倒れた。
「せっちゃん、お疲れ」
千尋さんがそう言うと私は満面の笑みで会釈を返したのだった。
「立てるか?」
「いや、疲れすぎてもう駄目だこりゃ」
「そうか、ならまずホテルに行こうか」
「そうですね……」
そして次々と乗客が降ろされていき、私たちも無事に飛行機から降りることが出来たのだった。
「ちょっと休憩させて……とは言えないよね」
上空には着陸待機している飛行機がいた。
「そうみたいだね……じゃ行こうか」
私たちは一旦ラウンジに向かい、休息をとることにしたのだった。
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