61話 意思表示
ヒビを探していくうちに美味しそうな匂いにつられそうになった。
「おっと、美味しい匂いに向かって歩きそうだった、私は美味しそうな匂いにつられないぞ~」
「いや今さっきガッツリ釣られてたけど」
「そうでござるな」
そしてヒビが見つかり、私たちはその中に入っていった。
(見たところバグはいないようだけど……何だろ)
私たちは電脳世界を歩いて行ったが全くと言っていいほどに人っ子一人いなかった。
「もしかしてだけどもうアルターエゴが出たって事?」
「そう考えた方がよさげだね、みんな引き上げるよ~」
千尋さんの号令で現実世界に戻ろうとしたとき、目の前に落ちているカードが急に人の形になった。
「お前は……タウ!!!」
目の前に居たのは多雨山ことタウだった。
「おっとそんなけったいな武器を持ってどうしたんです?」
「とぼけても無駄だ、お前はユプシロンの仲間だろ」
「さぁ、でもあいつは死んだはずだ。死人に口なしっていうだろ」
「……それでどうして私たちの目の前にやってきたんだ」
するとラムダの体がカードになってタウの手元に吸い込まれた。
「交換条件を出そう、私はこのカードを返す代わりに私がお前たちに依頼したいことがある」
「……このまま斬ると言ったら?」
私はラムダがカードになって人質をとられたことに憤慨していた。
「このカードを破く、そしたらラムダは死ぬ。簡単なことだ、私のいう事を聴くだけだ」
「せっちゃん、止せ」
千尋さんが私を静止するとタウと話し始めた。
「その依頼とはなんだ?」
「依頼の内容は話せないな、だがお前たちにとっても私にとっても損はない事だ」
一瞬の緊張の後、千尋さんは武器を納めた。
「分かった、条件を飲もう」
「交渉成立だ、ほれ」
タウがカードを投げるとラムダが解放された。
「生きた心地がしなかったぞ……」
「それで内容はなんだ?」
「同士でもあるシグマを討伐だ」
その内容はタウにとってはマイナスになりかねない内容だった。
「それってお前たちの仲間じゃあないのか?」
「ああ、仲間だった、だが何かに目がくらんだんだろうな、無実の少年を食い殺した奴だ。大体の潜伏先は大阪だ」
そういうタウの目には何か哀しみが浮かんでいた。
「人の命を奪うのはお前たちのやることだが……どうして子供を殺されたからって」
「……私は子供を殺さない主義だ、方向性の違いってやつだね」
そう言うとカードを出した。
「これ、私が上に殺せって言われた少年少女をカードにしてる、事が収まるまで封じ込めてるんだ」
「そうか、深くは問わないけどあなたたちが言う上に用があるんだ」
そう言うとタウはクスリと笑った。
「いいわ、その時は私はどうなってるか分からないし伝えておくわ、上の名前、そいつの名はミュー、それだけ伝えておく」
そう言ってタウは自身をカードにしてヒビを通って現実世界に戻っていった。
「……もしタウの言ってることが正しければ……今も被害に遭っている人が居るってことだよね」
「信憑性があまりにもないが……動いてみてもいいかもしれないな」
そう言って千尋さんはヒビを通って現実世界に帰ろうとした。
「この場所にはもう用がないからヒビを閉じて会社に帰るぞー」
「分かったけど……うん」
私はタウの立ち位置がいまいち分からなく、味方か敵か、判別に困っていたのだった。
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