6話 バグの目的
私たちは無事に会社に帰ってくると暗殺課の二人はすぐに電車に降りた。
「このバグか人かわからない人の腕や足を拘束するか、いつ暴れだしてもわからないし」
千尋さんは敵を電車から引きずり出し、手錠で手足を拘束した。
「さてと、どうやって運ぼうか」
「千尋さんが運んだらどうですか?」
「やだよ~もし暴れられたら私死んじゃうかもしれないもん……って私一度死んでたんだっけ」
私は黙って敵を担いで超常現象対策課のオフィスに運んだ。
「……悲しいなぁ」
千尋さんは渾身のボケを披露して私の受けを待っていたが無視されたことで少し自尊心に傷がついた。
(ここに置いておこうかな。にしてもこの人どこか可愛さがあるけど……敵だもんね)
千尋さんが超常現象対策課のオフィスに遅れて入ってくると熱湯を用意し始めた。
「何をしているんです?」
「何って?その捕虜に熱湯をぶっかけるんだよ。敵だもんね」
(えっ、千尋さん何言ってるの……?止めないといけないよねこれ!?)
「いやいやいや!?!?それを顔にぶっかけるんですか!?」
私は全力で千尋さんが持っている熱湯を敵にぶっかけるのを止めさせようとした。
「確実に起きるだろう?それか油にするか?めっちゃ痛いぞ?」
「待て待て待て待て!?!?せめて穏便にしよ?ね?」
私は千尋さんのやろうとしていることを全力で止めた。
「……仕方ないなぁ」
千尋さんは敵の近くによると往復ビンタをし始めた。
「ほーらー、早く起きなさーい」
敵はまだ気絶していて千尋さんは往復ビンタを止めなかった。
「ほら、起きないでしょ?」
「でもその顔見てくださいよ」
「ん~?ってきゃわ」
千尋さんの顔が少し和らぎ、少しだけ考えた末に出した答え、それは……
「うん、爆音で起こそう。せっちゃんは耳栓しておいてね」
「耳栓……?」
千尋さんは物置から子供の身長ぐらいあるスピーカーを敵の周りに配置し始めた。
「よし、これでいいだろう。じゃ……スイッチオン!」
すると耳栓を貫通する音の大きさで音楽が流れ始めた。
「ぐぎゃぁぁぁ!!!」
流石にこの音波に耐えれないのか敵は速攻で起き上がった。
「おっと、起きちゃったか。まだ序の口って言うのに……」
(いやスピーカー3台持ってきておいてまだ序の口って言っている千尋さんが怖いですよ~?)
千尋さんは敵の真正面で止まると尋問し始めた。
「ねぇ、あなたっていったい何者?」
「ほ……ほぎゃぁぁ」
敵はあまりにも私たちが悪魔と見間違えているのか失禁をし始めた。
「おっと、掃除はしないとな」
千尋さんは敵の手首を掴むな否やナフキンを渡した。
「ほら、自分で出したブツは自分で拭かないと」
「嫌……」
「なんだ?嫌とは言わせないぞ!」
千尋さんの気持ちは最高潮になっていてもはや別人と見間違えるほどに荒々しくなっていた。
「ぐぼあぁ!?」
千尋さんの膝蹴りは敵の鼻を粉砕した。鼻血が出る中、尋問を続けていった。
「あなたたちの目的は一体何なの?答えて?」
千尋さんは鉈をこっそりと手にしていた。
「わー!ストップ!」
流石にこれ以上続けていたら何も話さなくなると思った私は千尋さんを止めた。
「どうして止めるの?」
「そんな高圧的に尋問したら本当の答えが得られないよ!?」
「……それもそうだな」
その時、敵がまともに声を出した。
「あなた……優しい」
「そうか?でもたくさんバグを食べたから優しくはないかもよ」
「でも優しい」
すると敵はこう言い始めた。
「目の前の人は嫌い」
「なっ……」
「だってよ千尋さん」
「ぐぬぬ……なら情報を引き出してみろよ……どうせできないんだから」
「分かったよ」
私は敵の尋問を始めたがすんなりと答えてくれた。
「……私たちの目的はこの世界の人をデータ化すること」
「データ化……?」
「そう、データ化。私は長時間電脳世界に居たからこうなった。この世界に居た記憶は無くなってたんだ」
「そうなのね……悲しい過去があったのね」
「悲しいか。懐かしい感情だな」
「ならあのヒビはどうしてできるの?」
「世界のひずみが限界に達した時に現れる現象だけど……どうしたの?」
「ならバグの正体は?」
「人間の負の感情が集まった集合体。とても可愛いのもいればおぞましいのも居るよ」
「おぞましいかぁ……」
すると千尋さんはこの話を聞いていたらしい。
「せっちゃん、ご苦労だったな」
「……この子、重要そうな出来事言ってたんですよね」
「ああ、バグが出来る理由とヒビが出来る理由。そしてデータ化……十分すぎるな」
その時、超常現象対策課に入ってくる人がいた。
「やぁやぁ、元気にしてたかい?」
「あっ、ライさん。どうも」
ライさんがこの部屋に入ってきた。
「どうやらバグの人間型を捕らえたってね。どれどれ?顔は……グゥゥゥン!」
ライさんは奇声を上げ、悶絶していた。
「千尋さん、ライさんの調子が」
「いや……放置しておいた方がいい。どうしてかはライさんから話すだろう」
するとライさんが早口でこう言った。
「やっぱりかわいい顔だしとても私好みの顔だぁ!!!スキ……」
「ほらね」
「ライさんってそっち系の人ですかね……?」
「失礼な、私はかわいいに目が無いんだよ。だから今日からよろしくね」
「えっ」
「よろしくね~?」
ライさんは敵に顔を近づけてこう言っていた。
「怖い」
「あら、怖がらせちゃったのかな」
「ライさん、こいつセツナに懐いているようですが」
「そうなのね……」
ライさんは少ししょんぼりしていた。
「……あなたはこれからどうするの?」
「帰ろうにも帰れないし……どうしようかな」
「ならここに居たら?どうせ帰る場所なんて残ってないだろうし」
「いいの?迷惑にならない?」
「ならないと思うよ。たぶん」
「なら……ここに居ようかな」
「ならこれにサインを!」
ライさんが横から紙を差し出してきた。
「……私が話している最中ですが」
「ごめんよ」
ゆっくりと紙に名前を書いて行く元敵、それを微笑ましい目で観る私とライさん。そして千尋さんは鉈を磨いていた。
「これ」
「ありがと、これでここの社員だ。よろしくね」
「ん」
こうして私たちが攫ってきた敵が個々の社員になった。だけどこれでいいのか……?
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