49話 八尾狐の秘め事
現実世界に戻ってきた私と安城寺さん、安城寺さんはすぐに他の場所に向かっていった。
「じゃ、また会う日まで」
「そうだな」
そんな少ない会話をした後、私は千尋さんが入院している病院に向かった。
(そういえば千尋さん起き上がってるのかな)
私は千尋さんの病室の扉を開けた。そこに広がっていた光景、それは知らない男の人が千尋さんのそばを立っていた。
(えっ、は?)
その次の瞬間、私は男の人に殴りかかっていた。
「千尋さんに何してるんだー!!!許さん!」
私の拳は男の人に向かっていったがなぜかモフッという感触に阻まれた。
「モフモフ……?」
「一体誰なんだ……」
男の人が私の方に向くと不思議そうにこうつぶやいた。
「まったく、この女、余のしっぽをモフりやがって」
全く状況が呑み込めない私だが目の前の男の人が私の頭に手を置いた。
「小童、見えていないのか?」
「……しっぽってどういう?」
「まったくよの、遠路はるばるここに来たのに、こういう始末か」
すると私の目の前に狐のようなモフモフなしっぽが見えてきた。
「見えてきたかの?」
「……あなたは一体?」
私は男の人にこういった。
「来奴の式神みたいなものなのじゃ、まぁ力を与えているだけなのじゃが」
「……つまり幽霊!?ひぇえええ」
幽霊なんて見た事がない私は病室の隅に縮こまった。
「まぁそんな怖がることないぞ?」
千尋さんの方に目をやると頭から狐の耳が生えているのに気が付いた。
「千尋さん!?!?」
「大丈夫じゃ、こやつの頭に耳が生えてるのは余の力の証だ。とても可愛いぞ?」
「可愛い可愛くないの問題じゃ……」
「正直なところこやつは息を引き取る寸前だった、だが余の力で踏みとどまれたって所なのじゃ」
そう言うと病室から出ようとした。
「余はただこやつの様子を見に来ただけじゃ、またの」
そう言って病室の扉を閉めたと同時に鈴の音が聞こえた。
「……千尋さん、いい加減目を覚ましてくださいよ」
私は千尋さんの手を握った、ほんの幽かに感じる手の温度、まだ生きているという鼓動が私の手から感じられた。
(千尋さんはきっと戻ってくる、その時までユプシロンを倒しておくんだ……)
そう千尋さんと誓い、病室を後にした。
(きっとユプシロンを倒せるんだ、きっと)
そして私は豪邸に戻り、とにかく体を癒した。
「セツナさん、とても疲れてますけど、どうしました?」
「ちょっと戦ってきた、それでユプシロンまであと少しのところだ」
「そうなんですね」
ラムダがそう言うとお茶を出してくれた。
「ありがと……もう私たちは行くところまで行かないといけないよね」
「そうですね、どっちかが全滅するか……ですね」
そんな話をして疲れを癒していったのだった。
「まったく、余が気になる小童だったのじゃ」
千尋さんの病室にまた男の人がいた。
「千尋もいい仲間を持ったのじゃな」
男の人は千尋さんのでこを撫でた。
「……もう八尾狐が現れたのじゃ、大丈夫……大丈夫」
そう男の人が言うと千尋さんの顔がどことなく幸せそうな顔をしていたのだった。
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