42話 敵の正体と例のコピー
私たちはホテルに帰ってくると早速情報を交換し始めた。
「それで私が呼び出されたのって千尋の穴埋めでしょ?怪我の具合は?」
そう言ってレイさんは紙とペンを出した。どうやらメモをするようだ。
「千尋さんは全身に爆傷を負って現在入院中、意識は無し。そしてもう一人爆心地に居たんだが……ジータってやつだ」
「どしたー?」
ジータがこっちに近寄ってくるとレイさんはこういった。
「まったく怪我がないじゃあないか、どうしたんだ?」
「レガリアで超再生ってのがあるから傷が無いように見えるんだ」
「でも爆発した時には傷は負ったよ~」
「……そうか、レガリアか」
私はレイさんに気になっている事を聞いた。
「そういえばレイさんってレガリアを使うんですか?」
「当然使う、だがあなたたちが真似できないようになっているAll for oneってね」
「All for one?何ですかそれ」
「みんなは1人のためにっていう意味だ、つまり私のレガリアはこれと言って決まっていないんだ」
するとレイさんの手元にはラムダと同じような紫色の球を出していた。
「これはラムダのレガリアだよね?」
「そうだがどうした?」
すると私が食べた人のレガリアであるビー玉を出した。
「これはあなた、セツナのレガリア。そしてこの矢も」
「そうだが……どうしたんだ急にレガリアの開示を始めて」
「話すと長くなるんだけどね……私のレガリアは見たレガリアをコピーするんだ、だから何にでも慣れるし何にでも姿形を変えれる。まるで傭兵課に必要な存在だ」
「見たレガリアをコピー……か」
「あなたのレガリアもコピー系統でしょ?」
「いや、アルターエゴを食べたら使えるようになったんだ」
その一言にレイさんは一瞬フリーズした。
「……人間を食べる事をカニバリズムってのは聞いたことはあるが……カニバリストなのか?」
「いいや、電脳世界っていう場所でしか出てこないデバウアーで食べた時にレガリアを手に入れたんだ。決してカニバリズムではない」
「そうか、ならよかった」
そう言ってレイさんは財布を持って部屋を出ていった。
「ちょっと私は下の売店で何かを買ってくる」
「行ってらっしゃーい」
ドアが閉められ、ラムダは何か恐怖をしていた。
「ラムダ、どうしたんだよそんな金融CMのチワワみたいに震えて」
「私のレガリアをコピーされてたなんて思わなかったよ」
(そういえば千尋さんが言ってたな……)
千尋さんがこう言っていたのを思い出したのだった。
「レガリアは精神力の象だね、知り合いにレガリアをコピーする人がいるんだけどその人曰くレガリアを複数持ってる場合、1つのレガリアしか発動できないらしい。同時に発動は出来ないんだって」
そして数十分後レイさんが帰ってくるとホテル内にあるカセットコンロをセットした。
「さてと、一戦闘したから飯だ~」
「ほんと、自由人だなぁ」
「だって人は飯を食べないと死ぬでしょ?だから食べるんです~それにこの豊満なボディーはこんな食生活で生まれた産物なんだよ~」
レイさんの格好はまるでモデルでもやってるかのような美だったが少しぽっちゃり感が否めなかった。
「まったく、糖尿病になっても仕方ないですよ」
「今が良ければいいんです~」
レイさんが小さな鍋に水を入れ沸騰するまで待つ間、奴が死ぬ前に言っていた事について深めていった。
「そういえばユプシロンという名前、どこかで見たんだよなぁ」
「レイさん知ってるんですか!?」
「勘違いだと悪いんだが……もしかしたらの話で話す。ラムダとジータとユプシロンの名前の共通点、わかるか?」
(ラムダとジータとユプシロンの名前に共通点があるのか……?)
私は共通点について考え始めた。
「どれも可愛い?」
「ユプシロンの顔を見ずに言えたな。ハズレだ。アルファやベータっていう言葉知っているか?」
「確か映画でアルファチームとか呼ばれてるアルファですか?」
「そうだ、そのアルファだ、アルファやベータっていう文字はギリシャ文字というのにあるんだが……」
そう言うと紙に何か書き始めた。
「ジータとラムダ、そしてユプシロンの文字はこれだ」
レイさんが書いた文字、それは{ΖとΛとΥだった。
「なんですかこのゼットとワイと……Aの横棒を取ったのは」
「これがギリシャ文字だ、そしてセツナ、あなたの名前はセツナだ。ギリシャ文字にはないんだ」
「何が言いたいのか分からないんですけど……」
「あなたは人間とアルターエゴの中間の存在だと私は思ってるんだ。実際は分からないがな」
そう言ってレイさんは鍋に麺を入れた。
「あちち、ちなみにこの話は湯が沸くまでの時間稼ぎだったのわかってたか?」
「いや……わからなかった」
そしてレイさんは麺を入れ、3分待った。
「さてと、セツナの分はないからな」
「そんなぁ~」
レイさんが麺をうまそうに食べているとだんだんおなかが空いてきた。
「……ちょっと食べモノ食べてきます」
「行ってら~」
そう言って私は地面に裂け目を作った。
「じゃ」
私は電脳世界に飛び込んだ。そう、私のご飯はバグなのだ。
「あらぁ……こんなレガリアあるのか」
そして私は寄ってくるバグに向かってこう言った。
「今日の晩飯はあなたよ!」
デバウアーを出し、歯ぎしりをした。
(回復を兼ねての食事とするか)
私はバグに向かって歩き出し、私たちは簡単にバグをペロッと食べた。
(しかしバグはもう私の敵じゃあないな)
そう思って現実世界に戻った。
「あっ、戻ってきた。おかえり~」
「ただいま、たくさん食べてきた」
「私はちょうど麺を食べ終えた。さてと、ここから何処に行くかだよなぁ~」
そう、私たちはユプシロンを追っていかないといけないのだ。だが肝心の居場所がつかめていない以上、私たちが動いて行かないといけないのだ。
「じゃ、明日から私たちはユプシロンを追って北海道中を探索するだろう、一つ教えておこう。地理は唯一の武器だと」
その言葉はジータにかけられた言葉だった。
「土地を知っていればどこに逃げ、隠れれるかわかるはずだ」
「そうだね~一日で地元の地理を暗記しておくよ~」
「そしてみんなに言えること、それは早く寝て早く起きる!だから私は寝る!」
そう言ってレイさんはベッドに向かった。
「風呂入ってないけど……」
「そうだったな、入るか」
私はレイさんを連れ戻し、風呂に連れまわしたのだった。
同時刻……女子学生二人は路地裏に居た。
「このあたりで誘拐事件起きたんだって~」
「そうなの?でも真っ暗闇で誘拐されそうだね~」
その時、暗闇の奥から出てくる女の人がいた。
「……誰なの?」
女子学生の一人が持ってきていた懐中電灯を奥からやって来た女の人の顔に光を当てた。
「人にライトを当てたらだめって人間の学校で習わなかったの?」
そう言って女の人は指をクイッとした。その時女子学生二人は宙に舞った。
「なんなの!?」
「身動きが取れない……」
何か糸に巻き取られているような感触が二人を襲った。
そして懐中電灯が落ち、照らしている場所は女の人の左腕にはやけど跡があった。
「ちょっとこの糸をほどきなさいよ!」
「威勢のいい女だ、私も女だ。名は……」
そう言いつつ女の袖から寄生型のバグが出てきていた。
「ユプシロンだ」
そして寄生型バグが耳の中に入った。
「いや……入ってこないで……」
「私は二つのレガリアを持ってるんだけど、どうしてか飽和性が高くてね、二つ同時発動できちゃうらしいんだ。これはイレギュラーだよね?」
そう言いつつ女子学生からはクチュクチュという脳みそをかき回されるような音がしていた。
「まっ、聞こえないのならいいや。私の好みになってね。好きな人」
そう言ってユプシロンは路地裏に消えていき、女子学生を絡めていた糸がほどけ、地面に落ちたのち、のたうち回っていたのだった。
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