33話 気休めの服
ジータとラムダが奴を追い払ってくれたおかげでこのあたり一体はとても安全になった。
「あっ、大丈夫!?」
千尋さんの目が徐々に開いていった。
「うぉ……どうしたんだよそんな顔を近づけて」
「千尋さぁぁん!!!」
私は千尋さんに抱き着いた。
「もぉ……なんだよ」
千尋さんは私に押しのけ、カーテンの布一枚で立っているジータを見つめた。
「……どうしてカーテン一枚なの?」
「体を燃やしたからね……服も燃えた」
「そっか……だけどジータの服一枚しかないと思うけどどうするの?」
「……そうだった」
そう、ジータはアルターエゴで現実世界に来たばかりだ。私は服を買いに行く暇があれば買いに行きたいが時間を作れなかった。つまりジータも服を買う暇がなかったってことだ。
「なら役に立っていない私が服を買いに行くよ」
そう言って千尋さんがよろめきながら立ち上がった。
「体は大丈夫なの?」
「うん、虫を見ちゃったから気がひいちゃってるけど何とか歩ける」
千尋さんはつたない足取りで階段を降りていった。
「本当に大丈夫だよね!?」
「うん……とりあえずシャツ1枚と下着、ズボンを買ってくるよ」
千尋さんは私たちと一緒に地面に降り立った。
「そういえば2泊するはずだったんだけどなぁ……どうする?残りの日は観光する?」
「観光でもいいけど……ラムダとジータはどう?」
私はラムダとジータに聞いた。
「私は別にいいけどジータはどう言うの?」
「……もっと思い出していきたい、だってここが地元だから」
「地元か……」
(私の地元……一体何処なんだろうなぁ……)
私の地元、それは私が思う場所、大海町なのかなぁと感じていた。
「じゃ、一旦はホテルに行こうか。その服装だととても動きにくいでしょ?」
「そうだね……」
「じゃ、予約してあるホテルにレッツゴー!」
千尋さん先導でホテルに向かった、向かったのはいいのだが……
「なんじゃこれぇぇ!?!?」
私たちがそう叫ぶ存在、それは明らかに身の丈に合わないホテルだった。
「なぜかここに予約されててね……多分経費で落ちる」
「落ちるの!?」
「うん、ちなみにこれ予約したのはライさんね」
「おぅ……」
ライさんの考えていることがとても分からない私たちだったが社員の思いやりが少しだけ分かった。
「じゃ、私は服を買ってくるね」
そう言って千尋さんはシャツを買いに行った。
「……広いね」
「そうだね」
宿泊する部屋、それはまるで一軒家かと見間違えるほどに大きな部屋だった。
「ビジネスホテルじゃあないんだ」
「だね……」
ライさんの存在だけで私たちのような庶民をへこませていたのだった。
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