27話 懐かしい涼しさ
北海道に着いた私たちはまず最初にしたこと、それは北海道という大地の空気を吸う事だ!」
「ん~これが北の大地の空気かぁ~」
「千尋さん……とっても浮かれてますね」
「だって私一度だけでもいいから北海道に行ってみたいって思ってたんだよ~」
千尋さんは北海道に来たことにとても興奮していた。
「……なんだか懐かしいなぁ」
「ジータ、どうしたの?」
「なんだか懐かしい感じがするんだ、まるで故郷のような感じの」
ジータは看板を探しているようだった。
「ほら、スマホで検索したらどう?」
「ありがと……この地図見覚えがあるなぁ……」
ジータは北海道の地図をじっくりと見ていたがラムダは雪が降っていなくてとてもがっかりしている様子だった。
「なぁラムダ、そんな落ち込むことか?」
「うん、雪があればなぁって」
「なんだ?かき氷でも作るのか?私は大賛成だぞ!!」
「こんな地にかき氷なんてないし……そんなぁ」
ラムダと千尋さんの感情が温度差で風邪を引きそうなぐらい違っていた。
「あっ!ここだ!」
ジータが声を大きく出し、私に地図アプリを見せつけてきた。
「ここ、私の家」
ジータの家らしき場所、そこはぱっと見綺麗そうな場所だが住宅がありそうなところではなかった。
「ジータ、本当にここなの?」
「うん、行ってみよ」
ジータのテンションが今まで以上に高くなっていてとてもじゃないが人を傷つける気配はなかった。
「なら行ってみようか、移動はタクシーか?」
「そうだね、私免許を持ってないからね」
千尋さんはあたりにいるタクシーを捕まえ、乗り込んだ。
「ここまでよろしく」
「わかりましたよー」
タクシーで移動中、ジータは記憶している限りの情報を出していった。
「……思い出せないけどどうしてかここが家って思ってるんだ」
「家か……」
タクシーが目的地周辺に着き、ジータの家という場所に向かった。
「ここだと思うけど……ジータ、わかる?」
「……私の場所、無くなっている」
ジータの家、それは裏路地の広い場所だった。
「ジータ、ここがあなたの家だったの?」
「確かそう、どうしてここに居たのかはわからない、だけどここが家なんだ」
ジータはデータ化でアルターエゴになる前、ここに住み着いていたのかなという素振りだった。
「……なんだか懐かしい」
ジータは裏路地に座ってあの時の感傷に浸っているようだった。
「会いたいな、かぁさん」
ふとジータがこう言った。これはジータの本心なのか、あるいは懐かしみを感じてこう言ったのか……
「ジータってこんな場所に居たんだね」
千尋さんがそう言うとジータはどこか複雑という顔を浮かべた。
「裏路地に住んでいたのかな、私は裏路地に住んだことないけどきっとあなたの場所なんだろうね」
「そう、ここが私の場所。そしてここが……」
ジータは壁を手でなぞった。
「……そうだ、あの時の私はここに彫ってたんだ」
ジータは持っているナイフで壁を削っていった、だがすぐに壁が削れ出していった。
「補修されてる……でも私の家はここなんだ」
ジータが壁を掘り終えるとそこに彫られてあったのは……二人の棒人間だった。
「……ここだ」
ジータは涙をボロッと流した。
「ジータ……」
私たちはその場に数十分、もしかしたら数時間その場に無意識に留まっていた。
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