23話 廃人
綾瀬さんと話をしていく事数十分、その間に千尋さんは敵の粛清をしていた。
「千尋さんってあんな怒ることあるんだね~」
「綾瀬さんも知らなかったんですか?」
「知らなかったよ。あんな怒るなんて」
すると勢いよく千尋さんが襖をあけて部屋に入ってきた。
「綾瀬さん、これ返しておくよ」
「ありがと。これは本当に封印しておかないといけない代物だからね、勝手に触られると危険なんだよな」
「それでなんだけど綾瀬さん……あいつ、殺してとずっと言ってるんだけど」
それを聞いた綾瀬さんは深いため息をつき、頭に手を置いた。
「マジかぁ……後始末が大変だから廃人にはしてほしくなかったんだけどなぁ」
「廃人になるまで拷問をしたんですか?」
「うん、死んでいった人や凌辱された人の痛みはこんなものじゃあないけどね」
この時、千尋さんを怒らせてはいけないなと感じてしまった。
「じゃ、私たちは帰るから」
「もー千尋は自分勝手なんだから」
「いや、ただ綾瀬さんを信頼してるから言ってるんだ」
そう言って私たちは綾瀬さんの寺を後にした。
「千尋さんって怒るととても怖いんですね」
「そう?私怒ってる姿はあまり見せないようにしてるけど、カッとなったら怒りのスイッチ入ったようになっちゃうのかな」
「とても怖かったですよ、でもいつもと同じ千尋さんに戻ってきてくれてよかったですよ」
「あはは、そんなに怒ってる時怖かったかなぁ?」
そんな談話をしつつ食べ歩きをしていき会社に戻っていった。
「ただいま戻りましたー」
「もどりー」
そして超常現象対策課のオフィスに入り、私たちはいつものの日常に戻っていった。
「そういえばせっちゃんのお腹はどう?」
「うーん、空いてるっちゃ空いてるね」
「そうかぁ……」
「ならラムダやジータのお腹はどう?」
「ちょっと何かを食べたいってところですね」
「うん、おにぎりか何かを食べたいかもね」
「そうか、なら1000円机に置いてるから何か買っておいで」
「はーい!」
ラムダはジータを連れて部屋を出た。
「さて、せっちゃんと一人きりになれたね」
「そうですね、すこし静かに思えるんですけどね」
「……せっちゃん、ラムダの事なんだけどさ、少しだけ言ってもいいかい?」
「いいけど、どうしたの?」
「……もしかしてラムダはアルターエゴで私たちと敵対しているのかもしれない」
言われたことは私の考えとは違う事だった。
「ラムダが敵だって?冗談じゃあないよ千尋さん。彼女はデータ化された人間だろ?」
「そうだ、データ化された人間だ、だがデータ化された人間=アルターエゴだとすると?」
「私もアルターエゴだけど……」
千尋さんはため息を吐き、私にもわかりやすくことを言ってくれた。
「せっちゃんも恐らくデータ化された人間だ、そしてアルターエゴになりサルベージされた。つまりだ、データ化された人間=アルターエゴという認識は合っている点。そしてラムダが発言した内容にはとても矛盾点があるんだ」
「矛盾点……?」
「そうだ、出会った当初、何て言っていた?」
私はラムダに出会った当初、何を言っていたのかを思い出していった。
(たしか「この世界に居た記憶は無くなってたんだ」と言っていたな……)
「この世界に居た記憶は無くなってたんだって言っていた?」
「そうだ、だがその次の言葉、懐かしい感情と言っている。記憶はないのに懐かしいってのがおかしいんだ」
「確かに」
「そして最後の疑問点。バグが出来る仕組みや存在の事を知っていたことだ。あの情報は一人ではわからないものだ、つまりアルターエゴを従える何かがいるって考えた方がいいかもな」
「アルターエゴを従える何か?」
「そうだ、せっちゃんは知らないのか?そのアルターエゴを従える何かを」
「いや……私は何も知らないね」
「そうか……この事は他言無用でお願いね」
そう言って千尋さんは机に向かって何かをやり始めた。
「千尋さん、何やってるんですか?」
「ん?タイピングゲーム」
(切り替え速いなぁ……)
私は千尋さんのこの切り替えの速さに少しだけドン引きしていた。そして数十分後ラムダとジータが帰ってきた。
「ただいま~」
「おかえり、どうだった?」
「ジータがおにぎりを運んでくれたおかげで私は楽だったよ」
「そうか、ジータはどうだったんだ?」
「とても体力増えたような気がした」
「そうか、よかったね」
そして二人はおにぎりを分け合って美味しそうに食べていた。そんな光景を見ているととてもよだれが出てしまう。
(いかんいかん、食欲を前に出したらろくでもないことが起きちゃう)
私は新聞記事を見て食欲を前に出さないように努力した。
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