157話 運勢
そして準備を終えた私たちは総出で倉庫街に向かった。
(ここから最終決戦だ、気を引き締めないと)
主に戦うのは私とジータ。他のメンバーは後から来るミューの増援を処理する役割だ。
「多分だがここにミューがいるのか、作戦開始」
私はドアを蹴り開けた。するとそこに居たのはミューだった。
「待っていたぞ、超常現象対策課の二人」
私とジータは得物を持って中に入っていった、だがミューの手には武器なんてなかった。
「どうして武器、持ってないんだ?」
「私には武器はいらない。そもそも似合わない」
そう言ってミューはファイティングポーズをとった。
「来い、ラッキーパワーでぶちのめす」
(どういうことだ、ミューはどうしてこんな肉体派なのだ?)
私は奴の覚悟に乗じて刀を消した。
「いいだろう、その覚悟に乗じて拳で戦う」
私も拳で戦う事にするとミューは薄ら笑いをした。
「同じ土俵で戦うとは、気持ちがいい奴だな」
「ああ、来いよ」
ジータは私の命令が無い限り動くなという作戦だ。
「じゃ私から行かせてもらう!」
ミューは右のストレートを繰り出してきたが私はそれを受け止めた、だが左のストレートが私の腹を打ち抜いた。
「うっ」
(腹にストレートを喰らった……なかなかのやり手か)
「ほらほら来ないのか?」
ミューが再び右のストレートを打ち込んできたが私はそれをかわし、ミューのそばに入った。
「どらぁ!」
私はミューの伸び切った右腕を掴んで投げ飛ばした。
「ゴァ」
背骨が砕ける音が倉庫に響いたがミューは立ち上がった。
「まだまだだ……まだ行くぞ!」
ミューは背中をなんだか悪い動きをしながら私に殴りかかってきた。私は再びミューを背負い投げをして地面に叩きつけた。
「おらぁ!!」
「ガァァアア!!!」
背骨が折れる音が倉庫内に木霊するとミューは立ち上がろうとした。
(もしかしてミューは戦いの経験値が足りないのか……?)
「背骨が折れても私は立ち上がるぞ」
私はミューに対して思っていたことを言った。
「どうしてそこまでボロボロになりながら戦うんだ?」
「私の夢をかなえるためだ……来い!」
私は拳を降ろした。
「いや、私はもうお前を殴らない」
「どうしたんだ!来いよ!!」
私はどうしてミューと戦っているのか分からなくなったのだ。
「どうして私たちは戦ってるんだ?」
「何を言ってるんだ?」
「何を大義に戦ってるのか、分からなくなってね。もうやめにしないか?」
そう、大義が無い戦いになってきていた事に私は疑問を持ったのだ。
「確かに大義は無い、これ以上戦っても無駄だろう。だが私は今闘争を求めている。戦おうぞ」
ミューは私に拳を振ってきたが弱弱しくなっていた。
「もうやめようよ、なぁ」
「うるさい……」
私はミューを軽く突き放し、ミューは頭から地面にぶつかった。
「あなたの夢は知らない、なんなの?」
「……私はただ……バカを出来る仲間が欲しかっただけだ。その過程で犯罪者が知らないうちに入り、そして私がそれを知らずにレガリアを幸運の力で与えてしまった。すべての責任は私にあるんだ」
確かに戦ってきたアルターエゴには明らかに一般人と似た思考の持ち主がいた。全員ミューに心酔していたわけではなかったのだ。
「それで、これからの落とし前はどうするの?死んだ人たちや被害に遭った人たちにどうやって保証をするの?」
「……それは後で決める」
その時何処からか白い球を投げられてきた。それはラムダのレガリアの回復霧だった。
「何だかボロボロじゃないの?」
「ラムダ……どうしてミューを回復させるんだ!?」
「私個人の思い入れが強いかな。レガリアを手に入れたきっかけがミューだったんだ。だから感謝をしている」
「……背骨が治っていく」
ミューはゆっくりと立ち上がると体をひねり始めた。
「もういいね」
「そうだな、完敗だな」
ミューはそう言って笑った。
「罪は一応償ってもらうからね」
「分かってる、獄中でも楽しくやってくるよ」
そう言ってミューは自ら警察に赴いたのだった。
(なんだかあっけない終わり方だったな。でも平和に解決するのが一番いいのかな)
私たちは倉庫の外に出るとみんなが待っていた。
「じゃ、一緒に会社に帰ろうか」
「そうだな、なんだかあっけなさすぎる最後だ」
「そうだね、でも平和的に解決したんだから誉めてほしいな」
「はいはい、周りに被害を出さずにえらいな」
こうして私とミューの戦いは静かに終わり、この街に一時の平和が訪れたのだった。
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