12B話 心に抱え込むやさしさ
私はセリア・セツナ、あの後現実世界に逃げてきたけど、これからどうしようかと悩んでいた。
(……お腹すいたな。それにここは何処だろう)
ここは何処だろうとあたりを歩き回っていたが大通りに出てしまった。
(美味しい匂いが周りを……だめだ、人を美味しそうに見たらだめだ)
そして私はヒビを作り出した。
(これってフローズンさんが言っていたレガリアってことなのかな……)
私はそのヒビに入っていた。電脳世界に入るととても白い世界に出た。
「……バグがこっちに来てる」
私はデバウアーを出し、片っ端からバグを食べていった。傷を負ってしまったがバグを食べるたびに傷が癒えていく。そして時間が経った時、いつの間にか私は黒いフードを羽織っていた。これは心の壁なのか、それとも力を付けていった弊害なのか。
「……なるほど」
(どうやらヒビが発生してる箇所にバグは集まる、今まで自然にできていたとされているヒビは恐らくアルターエゴの餌場という事なのか?)
すると後ろから話し声が聞こえた。
「……誰!?」
その声に私は聞き覚えがある、だけど話したくはない。
「あなた……一体何者?」
私はその問いに答えなかった。関わりたくないからだ。
「……その腕何?」
右腕はデバウアーを隠すためにフードの布が伸びていた。
「あなた、もしかしてどこかで会った?」
どうやらあの人は私の正体について気が付いていないようだった。
(このままどこかに行けよ)
するとどこかからバグの匂いがした。
「まずい!?」
その声に私は無意識に反応していてバグを食べた。
(ばれたか……?)
「……そのロザリオ、ねぇ!せっちゃんだよね!?あなた!?」
その言葉に私は行動を止めてしまった。どうやら服から出ていたロザリオが千尋さんに見えていたようだった。
「あなたの行動は人間の理解を超えている。だけどあなたが許してくれるのだったら、もう一度一緒に居てよ」
その言葉はまるでもう一度千尋さんと一緒に行動をしてよと言う事だ。
(だけどもう私は戻れないんだ……もう二度と)
ここで私は疑問を投げかけた。
「……どうして私を追ってくるの?」
私はフードをめくった、しっかりと千尋さんの顔を見ようと思った。
(とっても心配そうにしてる……)
心臓がぎゅっとする中、千尋さんは私に単刀直入に言った。
「もう一度せっちゃんと居たいんだ」
「そう、だけど私はヒビを作ってしまうんだよ?それでも?」
そう、私はヒビを作ってしまうのだ。ヒビを作ってしまうから千尋さんを危険に晒すことになると考えた。
「いいんだ、どうやってヒビが出来るのか聞きたいんだ。それにあなたが超常現象対策課に居なかった時の記憶を聞きたいんだ」
「……私はバグをたくさん喰らった。もう人間ではないんだ、アルターエゴなんだよ」
「アルターエゴでもいいじゃあないか!もう一度人間としてやり直したらいいじゃあないか!」
「やり直しができないから私はここに居るんだよ!!」
その言葉は私の感情を元に戻していった。人間性という残り火がどこかでくすぶらせていたのだ。
「私は一度死んでいる身だ、だけど人間はやり直せれるんだ。ほら、私の手を取って」
千尋さんは私に向かって手を差し伸べてきた。だけど軽く手を取れる気はしなかった。
「……」
千尋さんは手を伸ばしたまま硬直していた。美味しそうな見た目だけど私はデバウアーを抑えていた。
「どうして私に手を差し伸べるのか分からないけど……もし人を食べてしまったらと思ったら怖いんだよ……」
「その恐怖、私に預けてくれないか?」
「どうして?」
「恐怖だけが私の手を取るのに戸惑っているんでしょ?その恐怖を私が受け取るよ。あなたは何も恐怖を抱えなくてもいいんだ」
千尋さんが一歩私に近づいた。どうやら私に超常現象対策課に戻ってほしいと切に願っているようだ。その時私の心の中で何かが動いたような気がした。
「ほら、私の手を嚙みちぎらなかったでしょ?それがあなたのデバウアーの意思じゃあないのか?」
「そうだね」
私は少し微笑み、千尋さんの手を握った。そして感情があふれ出したのかそのままの勢いで千尋さんに抱き着いた。
「ごめんね、あなたの気持ちが分かってなくて」
そして私は千尋さんに連れられ、ヒビの外に出た。だけど感情があふれ出してきた感覚が初めてで奇妙な出来事だった。
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