12A話 黒装束の謎の奴
私は栗栖千尋、昨日起こったせっちゃんが自分でヒビを作ったところをメモに記しているところだ。
「千尋さん、やっぱりロス大きいですか?」
「大きいね、数日間いた人が傍に居ないだけでなぜか喪失感があるんだ」
「私の事、アルターエゴって思ってないんですか?」
「思ってないね、だってあなたは人やバグを食べないんでしょ?」
「食べないですね……食欲は普通ですね」
その時、せっちゃんロスに苦しんでいる中、アラームが鳴った。
{超常現象発生、職員はポジションについてください}
「……来ちゃったか」
私とラムダは地下のホームに着き、電車に乗り込んだ。
(そうだ、せっちゃんは駅弁にがっつくんだったな。寂しいな)
私は駅弁を選びに行ったがふとこういう事を言った。
「ラムダは駅弁3つ食べるか?」
「食べないですよ、まだ華奢な女の子で居たいの」
「そうか……すまなかった」
私はいまだどうしてせっちゃんを止めれなかったのか、そして気づいてあげられなかったのか。その感傷が癒えないままの出動命令。私はいつの間にかラムダとせっちゃんを重ねていたようだ。
(ダメだな私、もっと冷静でいないとラムダに気を遣わせちゃうな)
「それにしても千尋さんって冷静ですね」
「そうでしょ?」
だが電車はすぐ近くの駅で止まった。
「……駅弁を食べる時間ほしかった」
「その駅弁、開けてませんよね?」
「そうだね……置いて行っていいの?」
「私は食べませんし、おいて行ってもいいでしょ」
「そうか……」
私とラムダは駅に降り立ち、近くを探索した。すると簡単に見つけることが出来た。
「……ここかぁ」
私はヒビを広げ、電脳世界に入り込んだ。
「あれ、バグがいないぞ?」
異様にバグが少ない事に気が付いた。
「……誰!?」
後ろを振り向くと黒いフードを羽織った人が立っていた。
「あなた……一体何者?」
その黒いフードの人は何処かせっちゃんの面影がうっすらと映った。
「……その腕何?」
黒いフードの人の右腕がやけに長く伸びていて何かを隠していた。
「あなた、もしかしてどこかで会った?」
私の足が黒いフードの人に近づいて行った。だが後ろにバグが迫っていることに気が付かなかった。
「まずい!?」
その時、後ろから何かが飛びかかってくるとバグを捕食した。
「……そのロザリオ」
それはセリア家に伝わるロザリオ、そのロザリオが首にかかっていたのを私が見つけた。
「ねぇ!せっちゃんだよね!?あなた!?」
その問いに黒いフードの人は一瞬動きを止めた。
「あなたの行動は人間の理解を超えている。だけどあなたが許してくれるのだったら、もう一度一緒に居てよ」
それは私の本音、そして恐らくせっちゃん自身が私と一緒に居れる最後のチャンスだと思っているのだろうか。
「……どうして私を追ってくるの?」
せっちゃんは顔のフードをめくった。そこにはどこか悲しげのせっちゃんの顔があった。
「もう一度せっちゃんと居たいんだ」
「そう、だけど私はヒビを作ってしまうんだよ?それでも?」
そう、せっちゃんはヒビを作れる、だがどうしてヒビを作れるのか、その事を聞きたいのだ。
「いいんだ、どうやってヒビが出来るのか聞きたいんだ。それにあなたが超常現象対策課に居なかった時の記憶を聞きたいんだ」
「……私はバグをたくさん喰らった。もう人間ではないんだ、アルターエゴなんだよ」
「アルターエゴでもいいじゃあないか!もう一度人間としてやり直したらいいじゃあないか!」
「やり直しができないから私はここに居るんだよ!!」
せっちゃんの拳がぎゅっと握りしめられた。
「私は一度死んでいる身だ、だけど人間はやり直せれるんだ。ほら、私の手を取って」
私は手を差し伸べた。だけどせっちゃんは頑なに手を取ろうとしなかった。
「……」
私は手を差し伸べたまませっちゃんの目を見ていた。腕が攣ろうともその場で固定した。
「どうして私に手を差し伸べるのか分からないけど……もし人を食べてしまったらと思ったら怖いんだよ……」
「その恐怖、私に預けてくれないか?」
「どうして?」
「恐怖だけが私の手を取るのに戸惑っているんでしょ?その恐怖を私が受け取るよ。あなたは何も恐怖を抱えなくてもいいんだ」
そう言って私は一歩せっちゃんに近づいた。
「ほら、私の手を嚙みちぎらなかったでしょ?それがあなたのデバウアーの意思じゃあないのか?」
デバウアーは私の腕をじっくりと見ていて噛む気配はなかった。
「そうだね」
せっちゃんは私の手を握り、そして私に抱き着いた。
「ごめんね、あなたの気持ちが分かってなくて」
私はせっちゃんに最初に謝った。今までの事の詫びを言ったのだ。
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