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11話 人をやめる

新聞を読み漁っていると突如アラームが鳴り響いた。

{超常現象発生、職員はポジションについてください。暗殺課所属の2名は所定のポジションについてください}

(暗殺課同行と言う事は危険度が高い仕事って事かぁ……嫌だなぁ)

アルターエゴに関する資料を見た直後に危険度が高い仕事は誰でも受けたくないものであるが行くしかないだろうと私は腹をくくった。

「せっちゃん、新聞を置いて地下にレッツゴーだよ!」

「分かってる、だけどやる気が起きないんだよね」

「もー!」

千尋さんは私の持っている新聞紙を取り、机に置いた。

「ほら行くよ」

「分かったよ」

私は不貞腐れながら電車の場所に歩いて行った。そしてホームに着くとすでに暗殺課の二人がいた。

「遅くない?」

「ごめんごめん、せっちゃんが新聞を見てたからね」

私たちは電車に乗り込み、仕事場所まで向かうことにした。

「しかし新聞を読むなんて変わり者だね」

「フローズンやカサリーネは新聞は読まないのか?」

「読まないね、今はネットが発達しているからそれで事足りてるんだ」

「そうだもんね……」

「でも新聞ってなんだか味があるんだよね……なんだか古臭い情報を取り入れているというかなんというか」

「古臭い情報ね……」

そんな事を言われるとなぜか傷つくような感じがした。

「さて、もう少しで着くらしいな。準備しようか」

千尋さんの号令で私たちは準備をしていった。

「じゃ、外に出ようか」

電車が目的地に着き、私たちは周辺にできたヒビを探し始めた。

「ヒビを探知するレーダーとかないのかな?」

「無いね、そもそもヒビが探知できないんだ。特殊な物質を出してるわけじゃあないし」

「そっかぁ……」

私たちはヒビを見つけ、その中に入っていった。

「なるほど、バグが数体しかいない」

「まさか……私の予感が当たっちゃうのかな」

(もしかしてアルターエゴが来ちゃうのかな……?)

私の予想が当たっているのはほんの数秒後だった。

「……仕方ないな」

フローズンさんがそう言うと私の立っている位置が変わり、アルターエゴの攻撃が空振りした。

「あれ、どうしてここに?」

(今の感覚はまるで瞬間移動したような……フローズンさんのレガリアなのか?これは?)

そう考えている内にフローズンさんは次の一手に出ていた。

「武装展開。ザ・ワールド(世界)!!!」

そうフローズンさんが言うとあたりに粒子が漂い始めた。

「いいかセツナ、カサリーネはあんなへんちくりんな武装だけど私はこの粒子だ」

アルターエゴが間合いを見極めているがフローズンさんは気にすることは無く話を続けていた。

「このザ・ワールド(世界)は粒子状だけど本当の性能はすごいんだ」

アルターエゴはフローズンさんに矢を射ったがその矢が空中で止まった。

「この粒子は頑丈でね、こういう矢でさえ止めてしまう」

矢は無情にも地面に落ちる。だが矢はザ・ワールド(世界)の下をくぐりフローズンさんの足に刺さった。

「……自動追尾か。厄介だ」

「フローズンさん、私が奴を直々に叩き潰します」

「そうか、危険だと判断したら私はセツナを奴から引き離す」

その言葉は私にとって背中を押してくれた。私は右腕にデバウアーを宿し、奴に向かって歩き出した。

「私の仲間に手を出すな!」

私は右腕に宿っているデバウアーを奴に叩きつけた。その威力はスレッジハンマーで殴られたほどの衝撃だった。

「ぐおぉ……どうしてお前がそっちにいるんだ」

「お前?私はお前っていう名前じゃあないけど?私にはアルターエゴの友達はいないんだよ!このスカタン!」

私は再び奴の脳天目掛けてデバウアーを振り下ろした。だが奴はたくさんバグを食べてきたのだ。単調な動きでは捉えきれなかった。

「よっと、まるで時が遅くなっているように感じたぞ……?」

「なんだその言い草。私、プッツンしちゃうかもね」

私は少しだけ啖呵を切り、奴を挑発したが奴はその手には乗らなかった。

「ふん、逃げる合間にお前の四方には矢がある!死ねぇい!!!」

私の半径10メートルには矢がびっしりとあり、私を絶対殺すという意思が感じ取れた。

「なるほど、わざわざ1対1にした理由がこれなのね」

絶体絶命の時、私はデバウアーがいる事で出来る芸当は何かと考えた。

(食べる、殴る……矢は食べれるのか?)

矢が次々とこっちに向かってくる中、私はジャンプして矢をかわしたが矢は私に向かって自動追尾してきた。

「なるほど、フローズンさんはこの自動追尾にやられたのか」

追って来る矢が1直線になり、私はここが好機だと感じた。

「ここだ!デバウアー!」

私はデバウアーを前に出し、矢を丸ごと丸呑みにした。だが内臓がとても傷つく感触があったが……体に傷をつけられるよりかはいいだろう。

「これで全部食べてやったぞ……次は私のターンだな」

私は奴に近づくと同時にフローズンさんが瞬間移動で奴に近づいていた。

(なるほど、同時に決めるって事ね)

私は奴に近づき胴体にデバウアーを食らいつかせようとした。だが当然のように奴はバックステップをした。

「ふん、そんな事は予見できている」

「何が予見できてるって?」

奴の後ろにはナイフを持ったフローズンさんが居た。

「歩けないようにアキレス腱を斬っておこう」

フローズンさんは奴の足元を斬ると奴は膝から崩れ落ちた。

「馬鹿な……足音が無かったぞ……」

「暗殺の基本は足音を出さないことだ。わかるか?」

その時、私のお腹がグゥゥと鳴り響いた。

(ダメだ……このアルターエゴが美味しく見えてきた……手ごろな餌……)

私の意識が少しずつ薄れていき、奴に近づくととても美味しそうな匂いがした。そして私はデバウアーで奴を頭から喰らった。

「むごごご!!!」

骨が折れる感触、生暖かい血液、柔らかい肉の感触。それすらデバウアーは感じ取っていった。それと同時に私には多幸感として処理されていった。

「おいセツナ何をやってるんだ!?」

この事はさすがにフローズンさんや千尋さんが止めた。だがもうすでに遅かった。奴の体は消化され、もうデバウアーの中にはなかった。唯一あるとすれば私の体に残った快感だけだった。

「……ご馳走様。とても美味しくて気持ちよかった」

私は奴を吸収し終え、力がどんどんとみなぎってきていた。その代わり人間としての誇りや

「……この人でなしが!」

フローズンさんは私に向かって銃を撃ってきて私の肩に当たったが痛みは感じなかった。

「何かしたのか?」

フローズンさんは私が痛みを感じていなさそうと感じたのか罵詈雑言を並べた。

「この化け物!悪魔!」

私はただ人を守りたかっただけなのにどうしてこんなことを言われないといけないのかと感じ、涙を流した。

「私はただみんなを守りたかったんだけどな……そんなことを言われたら……もう戻れないよ」

そう言うと私の手のひらからヒビが出来た。それに千尋さんがこう言った。

「せっちゃん……どうしてヒビを生み出せるんだ?」

「知らない、だけどもう出会うことは無いのかもしれない。さよなら」

そう言って私はヒビを通った。そしてそのヒビは私が通った時、崩れた。

「……私はもう人ではないんだ。人をやめてしまったんだ」

私は人を食べたことによって出来た罪悪感に押しつぶされそうだった。だが私が食べなければフローズンさんや千尋さんが食べられていた。食うか食われるか、弱肉強食。それがあの場に存在していたのだ。そして私は暗い路地の方向に歩き出し、人とはなるべく会わないようにした、間違って食べてしまわないように。

最後まで見てくれてありがとうございます。

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