1話 知らない空間
目を覚ますとそこは白一色の世界だった。私が何者か、そして何のためにここにいるのかさえ分からない。
「……ここはどこ?」
あたりを歩いてみても白一色の世界が広がっているだけで別に代わり映えしない。
「知らない場所だ」
あたりを歩いてみて分かったことがあった。出口が見当たらないのだ。
(歩いても手掛かりなし、困った困った)
「地面を食べてみたら何があるのかな」
私は地面を食べようと奮闘した。だが地面が硬くて食べれなかった。
「……出なくちゃ」
その時、胸元に冷たい感触が感じられた。
「これは?」
私は胸元にある物を取り出した。それはロザリオだった、どうやらロザリオは開閉式で中身を見れるようになっていた。
「……これは何だろ?」
ロザリオの中から一枚の紙が隠されていた、私はその紙を広げた。
「セリア・ブラスコ?セリア・フローズン?誰だろ」
その時、紙に書かれていた名前を見ると頭が痛くなった。
「痛い……なにこれ」
記憶がフラッシュバックしていき、名前が分かった。
(そうだ、私の名前は……セリア・セツナだ)
どうしてセリア・ブラスコやセリア・フローズンのように書かれているのかとわからなかった。
「……どうしてセリア・フローズンと同じ列に私の名前が?」
その時、とてつもない轟音と共に誰かがやってきた。
「白いな」
その恰好はどこか忍者のように静かでスパイのように動きは滑らかだった。
「ねぇ、そのロザリオは何処で手に入れた?」
「分からない、だけどあなたにも同じロザリオが」
「そうみたいだな」
目の前の人は私と同じようにロザリオを開け、紙を見始めた。
「あなたの名前は?」
「セリア・セツナだけど」
「そうか……名前はここに書いてあるんだけどな……記憶が全くない。それにママからこの事を教えてもらっていないぞ……?」
目の前の人はどうやら戸惑っているようだった。
「……そんなことはどうでもいいんだ。サイバーダイブの時間が切れる前に早く離脱するぞ」
「サイバーダイブ……?」
目の前の人は私の手を引っ張り、あたりが数字で埋め尽くされた。そして次に目にした場所、そこは薄暗い部屋だった。窓の外はとても平和でどこか腑抜けているようだった。
「やっぱりいたよ、サルベージしてきた」
「あなたたち、誰?」
私は警戒心を出し、とても近寄りがたい雰囲気を醸し出した。
「まぁまぁ落ち着いてよ。私たちはあなたの敵じゃあない。味方だ」
「味方なら私の名前知ってるでしょ!?」
「この子はセリア・セツナらしいけど私の記憶にはないんだ……」
その時、私の名前を口に出した目の前の人が頭を抱えた。
「うっ……頭が」
「フローズン大丈夫!?」
「大丈夫だ……だが記憶がどんどんと思い出されていくんだ」
「まったく、謎の現象だなぁ……」
「まさかだけど……」
目の前の人はまた紙を広げた。
「やっぱり、この子はセリア家の分家の子だ。だけど親は殺されているな」
「親?」
「そうだ、自己紹介をするよ。私はこの会社の暗殺課に所属しているセリア・フローズンだ、それでこっちが超常現象対策課の栗栖千尋だ」
「以後お見知りおきを」
「そうですか……私はセリア・セツナです」
「そうか、せっちゃんって呼んでいい?」
「せっちゃんですか……いいですよ」
「……千尋、多分かるが判断しないといけないことだけど……この子を一旦この会社で保護しておくことって大丈夫?」
「いいんじゃあない?駄目だったら駄目で私が養子として引き取る」
「私がいた場所って何でしょうね」
「その説明がまだだったね。さっきあなたがいた場所、それは私たちがなずけるとサイバースペース。つまり、電脳世界。第二の世界って呼べばいいかな」
(第二の世界っていう響き、何かよさそうだなぁ。何かに活用されてるのかな)
「最近そこで犯罪が起こってね、誘拐事件が多発してるんだ。恐らくだがせっちゃんも誘拐されているはずだ。対処としては超常現象対策課っていうところで対処してるんだ」
「事件ね……それでその超常現象対策課ってのは何なの?」
「そうだなぁ……例えるのが難しいけど私のレガリア、それは物質、又は生物を数分前、はたまた数秒前の状態に戻すっていうところかな」
千尋さんは持っていたマグカップを落とした。
「あっ、それって1万円のマグカップ」
「大丈夫、これにレガリアを使うと元に戻るっていうね。そういう超常現象を扱う部門なのよ。それにサイバースペースも超常現象対策課が扱うんだ」
「そうなんですね」
「ちなみに人手不足だから力を貸してもいいんだよ?」
「……遠慮しておきます」
「どうしてよ~楽しいかもよ~?」
「どうしてもと言うなら……手伝ってもいいですよ」
「やったー!ならさっそくライさんに見せに行きますねー!」
千尋さんは私の手をつかむと、全速力で廊下を走っていった。
「うげぇぇ!?!?」
その走りはどこか無駄な力が掛かっていなくてどこかアスリートのように見えた。
「しつれー!」
千尋さんは勢い余ってドアを破壊し、代表取締役の部屋に入っていった。
「……ドアを破壊して入ってこないでよ」
「何見てたんですか~?もしかしてBLですか~?」
「違う……ただ単に経理の仕事をしていたんだ」
「それでですね~この子、この会社に就職させていいですか?」
「ん~?白髪で白い肌……そしてかわいい顔……採用」
「そんな軽く採用が決まっちゃうの?」
「今日から超常現象対策課所属ね」
意味の分からないスピードでスピード入社させられた。そしてこれから私はどこか奇妙で不気味な案件に巻き込まれていく事になるのだった。
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