2.使えるものは使う。
さて、私達に今足りないのは『路銀』
王都見物どころではない!
幸い、大神官の話は断ったけど、私には聖女としての力はある!
この力を使って、仕事をする!
ちょうど、怪我をして困っている貴族っぽい人が……。
どうやら、馬車の車輪が外れて乗ってた馬車の中で胸部を打ち付けたようだ。息も絶え絶え、苦しそう。
御者はオロオロしてる。なんか大変そう。
「どこかに医師様はいらっしゃらないか?それ相応の謝礼金は出そう」
私はすぐさま飛びついた。
「医師ではないのですが、先ほど(?)神殿で聖女認定を受けたものです。治療をしても?」
「なんでもいいから頼む!」
うーん、できるかなぁ?そう言えば聖女の力を使ってみたのは、妹の二枚爪を治したくらいなんだよなぁ。こんな生死を分けるようなのはやったことないけど、できると言ってしまったものは仕方がない。
私は出来る限りの力で打ち付けた胸がなんとかなるように、彼女が苦しみから解放されるように祈った。
「祈って治るんなら苦労しな……い……治った?」
「そうですね。祈ったら治りましたよ?それで謝礼ですが?」
「……ああ、この金貨2枚で」
「あら?この方の命は金貨2枚の価値ですの?」
そう言うと、男は金貨を取り出した袋の残りを全部私の方に寄越した。
「毎度アリ♡」
さて、このお金で思う存分王都観光しよう。
「リリスねーちゃん?何をしたの?」
「ちょっとした人命救助よ」
「じんめいきゅうじょ?」
「うーん・・・」
「リリスは倒れていたご婦人を助けて元気にしたんだ」
説明感謝。兄よ、ありがとう!
「「「「「うわー!リリスねーちゃん、すごーい!!」」」」」
弟妹達から褒められるとなんかくすぐったい。
「そのご婦人がね?お礼にっていっぱーいお金くれたから、王都観光ちゃんとできるわよ?好きなもの食べて、村の皆にお土産買って、ちょっと立派な宿にも泊まろうか?」
「こら、リリス。浪費はイカンぞ!」
「じゃ、お金の管理は頼むね」
と、私は金貨の入った袋を兄に手渡した。
今回の事件でわかったこと。
貴族というのはプライドが高く、ちょっとつつくと高額でも救いを求める。
「兄よ。私は今後、この力で身をたてようと思うんだ。富めるものからはたーっぷりとお金を取る。村とか貧しい人からは無償でやるわ」
「いいんじゃないか?」
普段、碌に笑わない兄が微笑んだ。レアな瞬間だ!
「たまにお金を渡しに家に帰るから。あと、大量の金が家にあるとか噂になるといけないから、傭兵ギルドとかから数名雇って、村の方に派遣するわ。私の護衛にもついてもらおうかな?」
「その方が兄としても安心だ」
こうして、私の今後の行動が決まった。
貴族からぼったくる聖女…。微妙です。でも命の値段とか言われたらなぁ。