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93話 - 獣人の王ってどんなやつ?



 王都はとてもとてもデカかった……


 クルードの街でも大きいなと思ったのに高さ3倍になるかと思う程の城壁……

 そして入口の長い長い行列……外から見える美しくて大きい城……

 王都の中もすごい賑わい……


 なんだが……

 王都の感想はちょっとまたゆっくりできるときにしようか。

 そんな場合じゃないな。


「皆さん護衛とても助かりました。これが依頼の完了証明ですのでギルドにお持ちください。また何か重要な荷があれば是非指名依頼させてくださいね」


「おう!商人の旦那もエステルちゃんもお疲れさん!俺らは気まぐれで色んなとこにいるからまた是非声かけてくれよな」


「楽しかったわ~!少しトラブルもあったけど心地いい旅だったわよ。エステルちゃんもまた一緒に依頼受けましょうね」


「見た目によらずすんげぇパワーだったよな!今度は魔物の討伐依頼でも一緒に受けようぜ!」


「こちらこそ!皆さんのおかげで充実した依頼期間でした!また是非!」


 あ、ちょっと待ってエステル!!

 少しみんなに聞いてほしいことがあるんだ。


『は、はい!わかりました』


 俺が言うことそのまんま聞いてくれ。


「すみません、皆様とお別れの前に少し聞きたいことがあるのですが……」


「ん?」「なぁに?」「どうした?」「私に答えられることでしたら。」


「私は獣人大陸に来て間もなくまだ国の情勢などが全くわからないのですが、この国の王や貴族はどのような方々なのですか?皆あの……クルード子爵ような方なのでしょうか……。少し……気になってしまいまして……。」


「ええ、では私が。時間もないので簡単にご説明します。一応商人の端くれですので。獣人国ヨツンヘイムは4年前まで……簡単に言うと『力こそ全て』といった国でした。王位の継承方法も王族から一番強いものを王にするといった感じです。他種族の方が聞くと物騒だと驚かれる方も多いのですが、自らの強さに興味はあっても他人を虐げることに興味があるようなものは非常に少ない種族なので大きな問題にならなかったのです。貴族同士の内乱等があってもせいぜい個人同士の小さな争いでおそらく他の種族の国に比べずっと平和なのではなかったのでしょうかねぇ」


「そうだな。俺達もいろんな国を旅してるが、獣人国は本当に平和だぞ」


「ちょっと乱暴なところもあるけれど、いい人が多いわよね」


 確かに、獣人を少し見てきて……

 ざっくり表現すると大雑把な人が多い気がする。

 大らかというか……細かい事は面倒で文句があるなら腕っぷしで勝負しよう!みたいな。


 リンゲンでエステルの取り合いをしてたやつらもそうだったな。

 実はあのギルドでエステルが派手に張っ倒したやつと夜出店で飯食ってる時に会ったんだけど……


「姐ちゃん強えぇなぁ!あっはっはっは!」って包帯巻いて笑ってたもん。

 なんかいっそ清々しかったわ。遺恨を全く残さない人が多いんだろうな。


「ただ……すべての獣人や貴族がそうであるわけではなく……中には知略を巡らせ悪事を働くような貴族もちらほら居たのですよ。ですが、それにも悪い意味で関心があまりなかったのが今までの王や他の貴族ですね。問題があるなら自分で解決しろ、という感じで。それを問題視したのが現在の国王ガウル様ですね。民主の事をとても大事に思ってくださる方で……」


「あぁ、すげぇ名君らしいな」


「市民街の酒場にお忍びで来てるって噂があるわ」


「いい意味でかなり砕けた王様らしいぞ。全く偉ぶってないっていうかな。見たことはないんだが、平民からすげえ評判良い王様だな」


 ほう、政治のこととか細かいことはわからんが王はいいやつって認識なんだな。

 難しい話の中に冒険者3人が民衆視点で感想いってくれるから僕みたいな小市民にもわかりやすくて助かるわ。


「で、今は今までと同じように貴族派といって貴族や王、強いものに力を集め国の指揮を取ろうとしている派閥と民衆それぞれが政治を決めていこうとしている民衆派に分かれているのです。ガウル王が民衆派の筆頭ですね」


 民主主義に統治システムを変えようとしているのか……


「とはいえ、直ぐに貴族がなくなるわけではないと思うのですけどね。できる限り、といったところでしょうか。先日のクルード子爵などは貴族派です。貴族派のすべての貴族があのような者ではないのです。貴族が正しく民衆を導こうとしている思想の者ももちろんおります。ただ……権力の赴くまま好き勝手したい……というものも貴族派に多い印象ですね」


「そういうやつは民衆派になると困るだろうからなぁ……」


「俺みたいな平民にはお偉いさんが何考えてんのかわからんわ」


 全くだ。毎日うまい飯食えるだけで充分だろうに……


「今ガウル王は国の膿を叩きだす為に奔走しておられますが、今までに溜まったものはなかなか根強く……口を悪く言えば……クルード子爵のような下位貴族……まぁ子悪党にまで手が回っていないというのが現状になるかと思われますね。私が言ったことはここだけの秘密ですよ」


 この人も相当クルードのこと嫌いだよな。

 なかなか貴族に対してここまでズバズバいう人いないよ。

 恐らく行商しててかなり煮え湯を飲まされてきてるんだろうな……


「なかなか下々の方まで手は回らないわよね~」


「それでもこの前確か領民を苦しめていたどっかの貴族から地位を剥奪したっていう話聞いたけどな。動けるだけ動いてんじゃねぇか?」


「では、クルード子爵のようなものの悪事の証拠等を掴めば国は動いてくれるのでしょうか?」


「え、ええ。それをどう王まで伝えるかだと思いますが……明確な証拠を掴むことができれば民衆の戯言だといって捨て置くような方ではないと思いますよ。エステルさん……まさかなにか……」


「あ、いえ!やっぱり王様に任せた方がいいなと思っただけですよ!いい王様で安心です!ありがとうございます。とても勉強になりました!」


「私でお役に立てたなら。では私はあの怪しい荷馬車の報告を商人ギルドにしてまいりますね。エステルさんもくれぐれもお気をつけて」


「またな~!」「また依頼受けましょうね~!」「体に気をつけろよ!!」


 国の体制を簡単に商人や皆から教えてもらいギルド前で別れた。

 この後本来なら酒でも飲みに行きたかったんだけどなぁ……

 はぁ……


 ・

 ・

 ・


『で、どうしようか?』


『私は今すぐにあの馬車を追いたいのですが……』


『僕の意見を聞いてもらっていいか?』


『はい、どうしました?』


『あの馬車は追う。ただあの馬車に入っている者には申し訳ないが1回捕まってもらおう。考えがある』


『考え……ですか?』


『あぁ。ここに来るまでずっと考えていたんだが、あの馬車だけを助けてもクルードに捕えられた他の違法奴隷はどうするんだって話だろ?エステルも一部の者だけを助けて他は知らんぷり、ってのは嫌だよな?』


『それはもちろんです!』


『僕の力任せで奴隷の解放は可能だと思う。邪魔するものはなぎ倒していけばいいだけの話だからな。でもそれじゃあクルードがまた人身売買や違法奴隷の収集をしたときに手が回らない。だからクルード自体をどうにかしないとこの件は止まらないんだ』


『はい……それは。私も繰り返しになると思います』


『だろ?で、僕の力不足で申し訳ないが、さすがに解放した奴隷達の面倒をずっと見ていくことなんて現実的に不可能だ。だから……国に任せよう』


『それで国の情勢を聞いていたんですか』


『あぁ。国の上層部が腐っている、とかならもうどうしようもないだろ?そうなればもう何も考えずクルードの屋敷をぶっ飛ばしてポートルの街にでも連れていくことも視野にいれていたが……』


 ギルマスには申し訳ないけどな……

 あの人ならあーだこーだいいながら面倒見てくれるだろきっと。

 資金は……僕がたまに魔の森まで行って魔物狩って渡せば……とかね。


 ただ、一方的に保護するような体系はあまりよろしくないと思う。

 あくまで個人個人が自立する方向で考えないと。

 だからこの案は本当にどうしようもないときに限るって感じだった。

 ただ……


『どうやらこの国の王は良いやつらしい。だったら王にあいつの悪事の証拠をつきつければ……』


『なるほど、奴隷のその後の面倒まで見てもらえるかもしれない、ということですね』


『あぁ。領主を挿げ替えたりしてくれるかもしれないしな。孤児院や就職先の手配などもしてもらえるかもしれない。そういう方面は僕らでは絶対不可能だろ?僕達が力任せに目先のことを解決するだけじゃ根本的には何にもならないんだよ。だから僕達は証拠をつかむことに専念しよう。もちろん目の前でなにかあればさすがに助けるさ』


 叩けば埃は沢山出てくるって昨日の裏稼業の奴が言っていた。

 この違法奴隷や人身売買の件以外にもたくさん何か手がかりを見つけられれば……

 おそらく国も動かざるを得なくなるはずだ。


『わかりました。それが後の為になるんですね』


『あぁ、少なくとも一時的に馬車を破壊して中の獣人を解放する、なんて脳筋な戦法よりはいいとおもうぞ。僕とクラムじゃこの世界の文字なんか読めない。何かいい証拠をつかんでもその判断がつかないと思う。だから危険だけどエステルにも付き合ってもらうからな。危ないところは僕が引き受ける』


『もちろんです!私が言い出したことですし……むしろ付き合わせてしまいすみません』


『僕ら下手したら犯罪者だからな?それはいいんだな?』


『構いません!』


『じゃあいいさ。エステルが嫌な気持ちになることを無視することが僕が一番嫌な気持ちになる。僕はクラムとエステルがいいなら後のことはどうでもいいんでね~。だから僕の為に獣人を助ける。まぁ最悪魔の森に帰ってサバイバればいいだけの話だろ?』


『うふふ、そうですね♪それもきっと楽しいです』


『クラムにもまかせて~!まもるのはクラムがいちばんとくいだよ~!』


『そうだな、頼んだぞクラム!じゃあ、馬車を追いかけるか。急ぐぞ!』






 さて……そうは言ったけど……この先どうなるかなぁ……


 なんかとんでもなくデカい話になっている気がするんだけど気のせい?


 僕のスローライフってどこいったんだろう……

 ま、いっか。もうなるようになれぇー!!

この小説を読んでいただきありがとうございます!


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