88話 - 都会行ってもやる事ないよね
農村をでてから数時間。
特にトラブルもなく順調に護衛依頼は進んでいる。
この街道に出てくる魔物はこのメンツであれば特に問題にならないようだ。
あの農村をでてからエステルが上機嫌だった……
『クロムさんはやっぱり優しいです♪』
別に優しさでやったわけじゃないんだけどね。
正義なんてものはただのエゴだ。
視点が変われば正義なんてすぐ悪にかわるから。
だから僕は僕がその領主のことが気に入らなくてやっただけ。
僕があの空気が苦手だからやっただけ。
それだけでいいんだ。
あと野菜が欲しかったんだ!
ってかあの雨の魔法……
雨ってさ?水蒸気(雲)作って空中に滞留させて温度変化を起こして雨粒にする……
みたいな行程が必要になるんだよね。
だから魔法を分割したんだよ。
雨を雨として召喚するのは無理だ。
てか水そのまま召喚したらただのシャワーだ。
それはできるよ?滞留させるってことが必要なんだよ。
あれから考えると風と水を複合ではなく同時に別々に唱えたら水蒸気を空に滞留させるくらいは出来そうなんだよね。
あと冷やす効果を少しずつ持続的に行う魔法を唱えれば……
属性をミックスしてるんじゃなくて同時に別々に唱えてるイメージね?
そのうちレイン!とかって唱えて一発で出るようにしたいなー。
ちょっとカッコつけて時雨とかいっちゃった。
でもまだまだ成長できそうだね。
白炎繚乱がそれの極みだよね。白炎嵐。
でも基本大規模になりそうだから組み合わせ魔法あんま使わなそ―。
強い魔法で思いつくのって大規模なのばっかだよねー。
取り扱いしにくいんだよ……
結局弾丸系が一番使いやすいな。
それはさておき、
サラさんにこの世界にはどんな魔法属性があるのか聞いてもらった。
「人が使うのは地水火風が一般的ね。火と水が一番使える人がおおいわ。地と風は少ないかしら?いないわけではないけどね。あと……闇、光と聖属性もあるんだけど光と聖属性の素質があるものはほとんど教会内に固まってる。エルフの血が入っている種族はごく稀に精霊を使う物もいるみたい。でも覚えたくて覚えられるようなものじゃないって。この辺が学校で習ったことね」
あ、精霊魔法の存在は明かされてるんだ。
じゃあエステルは使えることにしても大丈夫そうだ。よかった。
「実は……私が精霊魔法をつかえます……」
「え!?そうなの!?エステルちゃんすごいわね!あとで見せてよ!」
という感じで一応明かしておいた。
あまり大っぴらに強さを明かすことはしないけど完全に黙っておくことも厳しいからね。
その辺は臨機応変に行こう。
精霊魔法ねだられてお花にお水あげてた。
それからは弓に火を灯して打ったりもしていたが、矢が燃えてすぐ封印された。
魔力を付与できる専門の矢とかあるのかな?
「地はドワーフに、風は空の飛べる種族に適性者が多いらしいわよ?あと闇は魔族におおいみたいね。氷属性はあるけれど人や獣人、亜人には適性者がいるとは聞いたことないわね。種族によって素質が付きやすい属性も違うのよ。精霊はもちろん、妖精や魔物はその限りじゃないらしいけどね。」
へー。フェアリーとかいるんだなぁ。妖精さんみてみたいな。
ってか謎が解けたな。氷は今のところ人に使えるものがいなかったんだ。
そりゃ魔道具はないよね。魔道具作ってるの人だもんな。
水属性頑張れば覚えられるとおもうんだけど……
それはこの世界ではできないことなのかなぁ……
でも属性としては発見されているということか。雷はここでも話が出てこなかったな。
その日は倒した魔物のお肉を食べられてなかなか豪勢な食事になった。
魔物倒しても護衛依頼長いから荷物になるんだよね。
で、基本回収しないみたい。
荷馬車は僕が売った資材でいっぱいだし。
でも隠れて僕らだけ肉食べてるのも悪い気がして……
ノルドさんにその日の晩御飯分だけ運んでもらった。
明日から近場で調達できるなら運んでくれるそうだ。
その後は僕らが先に見張り当番をしてちょっと遅く寝た。
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農村を出た翌日。護衛4日目だ。
野盗におそわれた。
でもアランさんが脅すと一目散に逃げて行ってしまった。
身なりはボロボロで全く戦えそうにもなく……
商人さん曰くおそらく食べられない農民が身を落としてしまったんだろうとのこと。
追うほどのことでもないからほおっておいていいって商人さんが言っていた。
この領の街道はこの辺りからちょっと治安が悪いそうだ……
これも多分子爵のせいだろう。
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そして今日はクルードの街へ到着する日。
「この先に……見えてきましたね!あれがクルードの街です」
結構大きい街だなぁ……
高さ5メートルほどの囲いがしてあって中が見えない……
街を守る壁のことも城壁っていうのかな?
街に入る検問には行商人と思われる荷物を抱えている人がかなりの数並んでいた。
「ここは王都の西方面の交易の中心になっている街です。王都からの品もたくさん運ばれてきますからとても栄えていますね。私はこの街で行商の手続きがありますので今日は皆さんそれぞれ自由行動していただいていいですよ?行く宛てがなければおススメの宿も紹介しますがどうします?」
『せっかく来たし街色々みてみようか?』
『なんかたべよ~!』
「大丈夫です!せっかくなので観光してみますね」
「それがいいとおもいます。いろいろ店を見回ってみるといいですよ。あ、でも護衛に差し障りが出ない程度に」
とは言え……まだ結構並びそうだなぁ……
入る前に疲れてしまいそうだ。
「あ、皆さん、私達はこっちです。王都との重要な商品の取引になりますので専用の通行手形を持っていますよ」
そういうと行列が出来ている前の道を曲がり違う方向へ歩いていった……
そして商人に付いて5分ほど別の方向へ歩くと……
うわ、なんかこっちの方が入口豪華だ。
門になんか掘られてるじゃん。
「豪華ですねぇこっちは」
「こちらは貴族様や専用の手形を持ってる物だけの門になりますので。私も普段はこちらは使えませんよ。はい、これが王都発行の手形になります」
「はい。確かに。問題ありません。それではどうぞ」
商人さんが衛兵に通行手形を見せると確認しすぐに中に通された。
「俺たちは知り合いんとこにやっかいになるから別行動するわな」
「また明日の朝、街の前で会いましょ」
「では私もギルドの方へ行きますので。ギルドは南の方に。魔物と一緒に宿泊できる宿や冒険者用の施設は全て南門の方に固まっていますので。ではまた明日」
そう言い残して皆行ってしまった。
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「私達はどうします?」
『まぁ嫌な領主の話とか聞いたけど街に罪があるわけじゃないしな。せっかくだし宿探しながら観光しようぜ!あ、エステルの弓でもみるか?』
「もう武器はいいですよぉ……」
ってか装備はこの先王都行くんだからそっちで見た方がいいか。
てかこんなすぐ王都行くことになるなら焦って前の町でいろいろ買い揃えないでよかったじゃん……
先に言ってくれよギルマス……
『ご飯食べないの~?』
『まぁそれじゃあ今日まだ何も食べてないし適当にどこかの店はいるか。ギルドはいいだろ。わざわざ護衛中に依頼掛け持つほど頑張らなくていいや』
エステルが男に絡まれそうだし……
「それはそうですね。じゃあご飯がおいしそうな店さがしましょうか」
僕たちは町の西門からこの街に入ってきた。
東西南北に大きな中央通りがあり、町を4分割にしているようだ。
西門、北門、南門があり、東の方には門は無い様子。
中央通りには飲食店等が立ち並びにぎわっている。
外から眺めているだけでも色んなものがあった。
『あ、ここもダメか……』
適当に飲食店に入ろうとすると店の軒先には魔物やペットお断りの看板が出ていた。
ちらほら宿もあったがそこも魔物はお断りだそうだ。
まぁ街にくるとこれは仕方ないよな……地球でもそうだもん。
エステルと別れるわけにもいかないので出店の立ち食いでご飯を済ませることにした。
『うーん、ちょっとしょっぱい~。あんまりおいしくないかも』
適当に肉串やパンに野菜をはさんだサンドイッチのようなものを買ってみたが……特にまずい程までではないんだけど味が全体的に濃い目だ。
あと、冷蔵庫とかもないようなので新鮮さがあまり感じられない。食事は田舎の方がおいしいかも。
濃い味でごまかしているのかもしれないな。
この街は白を基調に綺麗な盤面のように建築物がならんでいる。
石造りの建築が多く、村やポートルではみられなかった2階以上の建物もあって綺麗な街並みだ。
適当に街を見渡しながらしばらく歩くと広場に出た。
マップのようなものがあったのでエステルに見てもらう。
「北西の方が貴族街、北東の方が商業街、南東と南西が居住区になっているみたいですね」
冒険者ギルド、冒険者用の宿屋(魔物用の宿舎等がある)や冒険者用の武器防具屋、道具屋等は商人さんが言っていた通り南門付近に集まっているようだ。
『やっぱ結局ギルドの方行くしかすることなさそうだなぁ』
「そうですねぇ」
観光しようとは言ったものの特に見たいものがない……
武器や防具、雑貨はこの後王都にいくしそっちで見る方がいいだろう。
洋服はクラム作のほうがいいしね。オーダーメイドだもん。
地球で都会にすごいワクワクして行ったものの結局何もすることがない現象がここでも……
都会ってさ?洋服とかおしゃれな建物とかあるけど……
結局遊ぶ時ってカラオケとかボーリングとかしかなくない?
しかも行列だしちょっと高いの。
人混み見に行ってるみたいだった。
温泉とかの観光地とか名産品を食べる!とかアミューズメント施設に行く!とかさ、そういう目的ないと特にやることないんだよね……
僕も1回地球で都会に行ったけど時間持て余して1人でカラオケに入ったな……
引きこもり精神が染みついてるからかなぁ。
『まぁ街並みはざっくり見たし……せいぜいこの街にある布みるくらいかなぁ……』
結局何もすることはなくマップの前で立往生していたら気のよさそうなおっちゃんが話しかけてきた。
「ねぇちゃんこの街初めてか?」
「はい、護衛で立ち寄ったので」
「冒険者さんか?この街はあんまり中央通りから離れないほうがいいぞ。貴族街のほうには門があるからそこから奥には行こうとしない方がいい。何言われるかわかったもんじゃないからな。居住区の奥行ってもなんもねぇし、南東の塀の外の方は貧民街なんかもあるからちょっと治安わるいわ。スリに合うかもしれないからな。観光するなら冒険者区画か商業街の辺りにしときな。気をつけろよ。」
そういうと立ち去ってしまった。
貧民街か……やっぱり街くると生活格差みたいなのもでてくるよな。
『ほとんどアイテムボックスに物入れてるからスリは平気だけど……。わざわざ治安わるいところにいかんでもな。やっぱりギルドの方行くかぁ』
「今日の宿はどうします?」
『それもギルドの方いくのが無難だろうな。エステル1人では泊まらないんだろ?』
「当たり前です!」
聞いてみただけだよ。どっちみち知らない街で1人にするのも不安だしな。
ちょっと過保護みたいになってる?
そうして結局ギルドの方に歩いて行こうと広場を後にしようとした時……
護衛のような人と後ろから首輪をつけた獣人男女を従えた男性とすれ違った。
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