86話 - デバフ剣
その日の夜……
商人さんは荷馬車で休むそうだ。
商人さんがご飯を用意してくれていたのだが案の定あまりおいしいものではなかった……
でも簡単なスープとパンだったから干し肉よりずっとマシ。
用意してくれるだけとても親切だそうだ。
本来自分達で賄うのが普通とのこと。
あとでクラムにはこっそりご飯あげよう。
「いや~エステルちゃんがいると戦いやすかったわねぇ」
「そうだな!弓術師ってすげぇ助かるんだな!」
「全くだ、これなら儲けもいつもより出そうだな」
どうやらこのパーティーとエステルのかみ合わせはとても良かったらしい。
盾の隙間から、魔法の援護に、手が回らない魔物の遅延に。
本当に万能だった。
弓術師って本来こんな感じだよね多分。
ガンガンキル数稼ぐような職業ではないはず。
「うちのパーティーはいらねぇ?ランクも近いしよ」
「んーすみません。とてもうれしいのですがやりたいことがありますので……」
「まぁそうだよな。わざわざソロ活動してるならなんか理由あるよな。気にしないでくれ」
やっぱり勧誘来るか。でもさっと引き下がってくれた。
エステルの為にこういう機会があったらそっちいってもいいんだよって伝える方がいいのかな。
『行ってもいいよとか思いました!?行きませんからね!』
おお、エスパー。
「でも弓術師のパーティー勧誘はありだな。今でも結構バランスいいとはおもうんだけどよ」
「ちょっと遠距離対応が弱めよね。ノルドが抜かれちゃうと困るからね」
「でもなぁ俺らのんびりやってるのが性に合ってるからよ。やっぱ人として合わねぇとやってけねぇよ」
うんうん、とても同意。
最悪実力は二の次でいいんだよ。
自分が心地いいメンバ―といないとね。
「その点エステルちゃんはいい子だしやりやすいなと思ったんだけどな。まぁ気にしないでくれや」
「お声かけいただきありがとうございます!うれしかったですよ♪」
「そういや普段弓メインじゃないんだもんねぇ?双剣士だって聞いてたよ?あとスライムちゃんも今日は全然参加してなかったしね」
「そうですね、最近は双剣メインかもしれません。あとこの子たちも強いですよ?」
「へー、戦うスライムなんか見たことねぇな?じゃあ明日はそっちみせてくれよ!」
「あ、はい!わかりました!」
そんな感じで楽しい団欒を終え先に就寝についた。
初めての別パーティーとの護衛依頼だったがこのパーティーなら問題ないだろう。
見張りは今日は向こうのパーティーが先。
後半はこっちがやるということに決まった。
でもパーティー毎に半々ではなく4人割にしてくれたので僕らはちょっと早起きする程度で大丈夫だ。
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「エステルちゃーん、交代よ~」
「んん……はぁい。おはようございます。代わりますね」
さて、今日の打ち合わせをしようか。
今日は向こうさんがこっちの戦闘を見たいというご要望。
『まずクラムー!』
『は~い』
『この護衛中は縛りプレイで遊ぼうか。1属性縛りな?そうだなクラムは水で。バレットみたいにすごい貯めて打つ魔法も禁止な?できるだけ弱くて小さい魔法で倒す練習しようか。弱くて小さい魔法ほどすごい!パパと勝負しよう。パパは風使うね?』
『いいよ~?うーんじゃあどうしようかなぁ~』
『向こうのパーティーのお姉ちゃんが水で矢とかヤリ作ってただろ?僕も風で練習するからやってみようぜ』
『そうだね~!みたからできるかな~?』
僕とクラムは質量があまりない魔法で物理ダメージ与える練習でもしてみよう。
この世界では水でも矢を作れるって常識のもとやってんだきっと。
見たから前よりできるはずだ。僕はそれを風でやろう。
『で、問題のエステルさんにはプレゼントがあります。大切に使ってください。大切にね?』
結局クラムも剣作ってたら我慢できなくなってやってきたんだよね。
だからちょっと路線変更してみたんだ。ふふふ。
「大切に……です?壊れてもいいって……わーかわいい!」
そこには相変わらずクラムが丁寧に装飾した植物の装飾をモチーフにしたの鉄剣があった。
エステルには植物柄が似合うからね。
だがしかし!
『その剣は中が空洞です。なので適当に扱うと折れます』
「え!?」
『ちゃんとまっすぐ切れば大丈夫だよ?でも横から衝撃入ると折れちゃうから。かなり薄っぺらくしてるよ。でもしっかり研いでるから切れ味は大丈夫。というより切れ味は普通の鉄剣より高いんじゃないかな?』
「壊れちゃうんですか……これ……」
『クラムと僕で端正込めて作ったから大事にしてね?』
別に全然いいんだけど前の僕が作ったボアの剣折ったじゃん?
オーガの角叩き折ろうとかしなければそもそも折れなかったんだよ。
強いしかっこいいんだけど雑いんだよねエステル。
柔らかいところ切る、とかそういうことをしないの。
元々剣の横っ面でぶん殴ったりしててあまり剣を使ってるって動きですらなかったのに、さらにそこから何度も作りなおせる魔法剣に行っちゃったから雑い方向に磨きがかかってしまった。
それも持ち味だけどちょっともったいないよね。
『エステルは丁寧に戦おっか。動きは大胆でもいいんだけど、ちゃんと柔らかい部分狙ったりはしよう?弓の時できてるんだから多分剣の時もできるでしょ?切れ味はいいけど耐久度がない剣だからそっとね?』
単純に楽しくて暴れてるんだと思うんだよね。
弓の時あんなに弱点狙うの上手いんだから。
両立が大事だよ。うん。
「うう……」
『あとまぁ動きもそこそこで。精霊術のサポートはナシね?それでもだいぶ強いとは思うよ?』
「わかりましたぁ……」
名付けてデバフ剣。ちゃんと弱点狙ったりできるようになったらきっともっとつよくなるから……ね?
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『うぉーたーらんす~』(ザシュッ)
『ウィンドアロー』(ブスッ)
GYAAAAAAAAAAAA…… バタッバタッ……
『んー前よりはささるかなぁ~?でも土のほうがやりやすいね~』
『そだなぁ~前よりは倒せるようになったけどなぁ…』
『うぉーたーえっじ~』(ズバアアアッ)
『ウィンドカッター』(バシュウウウ)
『まぁやっぱ刺すよりは切るほうが……』
『そだね~らくだねぇ~』
GYOOOOOOOOOOOOO…… バタッバタッバタッバタッ……
僕とクラムは今まであまり使ってこなかった魔法を率先して使っている。
実物を見せてもらったから前よりは物理ダメージも少し多く入るようになったみたいだ。
僕はどうしても頭でっかちだから、物理法則に反した魔法苦手なんだよね……
まだしっくりこないなぁ……
いや慣れだ慣れ!常識に囚われず!
とりあえず魔法を唱えまくるのだ!!
『すぷらーssy……
『エアーバーst……
「「「……」」」
一方その頃……
エステルの顔面にオークが左腕で殴り掛かる!!
GUOOOOOO!(ブォン)
「当たりませんッ」(フッ)
エステルは右に重心をずらしオークの左腕の隙間にもぐり込みつつオークに背を向け時計回りに体を回転させながら逆手に持った剣をオークの顔面に勢よく突きさ……
「刺せませえええん!折れちゃいますぅーーー!!」(ズドンッ)
……バタッ
せなかったので剣を引っ込めてバックブローでオークを殴り倒していました。
がんばれ。
「「「……」」」
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「スライム達つよかったなぁ……スライムってあんな魔法つかえるんだな……」
「で、エステルちゃんは……剣いる?」
さぁ?楽しそうでなによりだけど。
剣がいるかどうかは僕もわかんない。
「………一応双剣士です」
「こりゃ俺たち足手まといだわ……」
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そんなこんなで2日目は僕らの戦闘を見せた後、一緒に戦って集団戦の勉強したり今までの旅の話やサラさんの魔法の話を聞いて一日が終了。
サラさんは水魔法使いの3等級まで使えるんだって。
回復魔法も水魔法らしい。
昔魔術師に魔物に襲われているところを助けられてから憧れて、
冒険者しながら頑張ってお金貯めて魔術学校通ったらしいよ。
その時に出会ったメンバ―がこの2人なんだって。
と話していたら……
「そろそろ村につきますよ~」
今日の宿泊予定地についた………のだが……
そこには……かなりさびれた農村があった。
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