38話 - 水龍おばあちゃんの知恵袋
湖のほとりで水龍とお話……
なんか急にすごいファンタジーだな……
(で、貴公らはなんでこんなところにおるのだ?)
少し悩んだが、転生からこれまでの経緯をそのまま話してみた。
真実を話すのがいつも良い事とは限らないとソフィア様が言っていたが、この水龍からは嫌な印象を全く感じなかった。悪いことになる未来が全く想像できない。
いや、言い訳だな。
この世界でソフィア様、デメテル様、クラム以外に初めて話すことができて少し浮かれているのかもしれない。相談できる相手が欲しかったんだろう。
(ほう…。また稀有な運命をたどっておるのだのぅ。通りで魂の色が蟹のそれではなかったはずじゃ。それにしても創造神に豊穣神の加護か……)
『魂の色?そんなものがみれるのですか?』
(我自信がエネルギーの塊のようなものじゃからな。貴公にわかるように伝えるなら精霊等の肉体を持たない生命体に近い存在じゃの。力をつけ、長い間を過ごす間に精霊と一体化し生命の理から半分ほど外れてしまったようじゃな)
『なるほど…』
(半分自然に還っているともいえるのぅ。貴公が言っておったドラゴン等はただの魔物じゃからあれとは異なった生命じゃな。ところでそこのクラムじゃったか?そなたからはとても心地よい魂を感じるのぉ)
≪えへへ~≫
おお、クラムは精霊に好かれるって話だったもんな。半精霊のような水龍でもきっとそうなんだろう。
『ちなみに水龍さんはここで何をしているのでしょう?』
(我か?特に何もしておらんな。ただ余生をここで過ごして居るだけじゃが……)
『世界を守っているとか……使命があるとか……神様に何か頼まれているとか……』
(神の声を聞いたこともないぞ。それになぜ我が世界を守らんとならんのじゃ?)
『あ、いや、なんとなくそういうもんかなーって。水龍さんからは神々しい何かを感じたような気がしたので神様のような存在なのかなと……』
(我がか?はっはっは。もし我が神のような存在であったとして、なおさら自分の思うように世界を動かしたり守ったりしてはならんのじゃないかのぉ。そこに意思が働いてしまうとそれはそやつの箱庭になるだけじゃろ?そんなものを神とは言わんじゃろ)
『なるほど……確かに……』
この世界のまともな生命は神様を基本全否定するんだな…
まぁ神様自身が神を否定していたからそれもそうか……
(我は神などではないし我は我の生活を営んでおるだけじゃな。そういう貴公は何か神から頼まれごとがあったりするのか?)
『ありませんね。好きに生きればいいと言っていただいてます。』
(だろうの。では貴公はこの世で何か成したいことはあるのか?)
『いや、それが……。最初は人になりのんびり過ごすのを目標にしてたんですけどそもそもあまり人を好きだと思えなくて……。この半年生活する間に少し先を見失ってしまっているというのが本音です』
この水龍に見つめられると何故か自分が悩んでたことが自分のことじゃないように出てくる。
僕は人になるのを悩んでいたのか……
大好きなおばあちゃんと話しているみたいだなぁ
おちつく……この水龍に会えてよかった。
前世からのこともあって僕自身全然人にいいイメージは持っていない。
今まで人にならなければ幸せな生活を歩めないと勝手に思い込んでいただけだ。
人以外で生活してみてわかったんだな。
僕の幸せの形は人間にはないのかもしれないな。
(貴公は名誉や地位のような俗物にあまり興味がないようじゃのぉ。高い知性を手に入れるとどうしてもそういう輩も多くなるからの。貴公には人は向いていないのかもしれぬな。)
『そうですね。どちらかというと前世でそれに苦しめられてきたので。あ、ただ…』
(ん?)
『クラムとのんびり生活できればそれでいいと思っています。ただ生存競争が激しいこの世界でのんびり生きるのにはそれ相応の力が必要だなとおもってまして……』
(なるほど。それで今の体が限界だというのじゃな?我が見るからに既にその器からは力が大きくはみ出してしまっておる。それに関しては横にいるクラムも同じじゃな。)
『やはりそうですか……。そんな気はしてました。』
(だが……この先の自分の歩む道に迷いが生じてしまっていて先のことが決められないと。そう言いたいのじゃろ?)
『すごいですね……。その通りだと思います。』
(はっはっは。ただの年の功じゃ。もう数万歳じゃからのぉ。そうじゃな。では我から提案があるのだが?)
『提案……?』
(貴公は寄生ができるのであろう?そこのスライムに体をうつしてはどうじゃ?)
『スライム……ですか?』
(スライムというのは魔力が不定形な体を持った生命じゃ。まだ何にも染まっていないともいえるの。貴公のように何になりたいのか迷っているのであれば逆に今は何物でもないがなんにでもなれる可能性のある生命体に体をうつすのも良い考えかとおもってな。)
『なるほど……でもスライムの意思は…?』
(こやつらには意思はないぞ。魔力や栄養を求めてさまよっているだけじゃ。むしろ貴公の体になれるなら本望じゃろ。それにクラムはそなたの体を少し吸収できるのじゃろ?スライムになって少し体をクラムにあげるとよいぞ。クラムにも猶予ができて一石二鳥じゃな。)
『ふむ……』
(強くはなりたいのじゃろ?この湖のスライムは我の魔力から生まれておってな。生命の器が普通の生命に比べてかなり大きいのじゃ。今の姿より器を高めることもできるじゃろう。どうじゃ?)
『そう……ですね。クラムはどう思う?』
≪パパと一緒ならそれでいいよ~?もっと強くなれるならそっちがいいな~≫
『わかりました。じゃあそうさせてもらいます』
(ここであったのも何かの縁じゃな。力になれたようで何よりじゃ。そのお返しとは言わんが一つ頼まれごとを引き受けてくれんかのぉ?)
『頼まれごとですか?僕にできそうなことなら?』
(さっきすごい心地よい魔力を感じたんじゃが、あれは貴公の魔法か?我も長く生きておるが全く知らない魔力だったのじゃ。よければその魔法を教えてほしいのじゃが……)
『クリーンですか?全然いいですけど……』
(クリーンとな!?掃除!?いや、さっきの魔法は掃除とかそういうものではなかったような……)
『いや、体をきれいにする魔法なんで……よかったら使いましょうか?』
(あ、あぁ……では頼めるか?)
『じゃあ思いっきり行きますよ?んんんんんn……』
”クリーン”ッ
(ほおおおおおおおおおおおおおおおお)
・
・
・
『どうでしょう…?』
(この魔力……どちらかというと神聖魔法の系譜ではないのか……?すごく心地のいい魔力だったぞ……それになんか体から悪しきものが全て消え失せて寿命が延びた気がするのだが……)
『そうですね、綺麗にするついでに回復効果とか浄化効果とかを5属性分ほどミックスしてます』
(5属性複合じゃと!?………ついでの使い方を間違っておらんかの?どう考えても逆じゃろ。)
『水、光、神聖、風、火属性の複合魔法ですね?使い方いいましょうか?』
(いや、我に火と風属性はつかえんな…。そうか、残念じゃなぁ…この魔法は我にはおぼえられそうにない。)
『イメージが伝われば火と風属性はなくても似た効果のものは作れるとおもいますよ?今からちゃちゃっとつくるので是非つかってみてください』
(簡単に言うのぉ……本来そんな簡単に魔法はつくれんのじゃが……じゃあ言葉に甘えようかのぉ……)
その後、体のお礼に水、光、神聖属性で魔法を作ってプレゼントした。
クリーンという名前は絶対に合っていないと言われた。
じゃあ好きにつけていいと言ったら「そーま」と名付けていた。
……そうまくんってだれ?友達?
ま、いっか。




