表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

324/325

320話 - 時間

『パパ~!クラムのぼうけんしゃカードつくってきていい~?』


「魔力を流してくれるだけでいいわよ?あとは全部やってきたもの」


 とりあえずキャシーがくれたカードに軽く魔力を流したら光った。

 僕とクラムもこれで冒険者カードを手に入れたって訳だ。

 僕は今はまだ出られないけどね。


 クラムは冒険者カードに興味深々でずっと見つめてる。

 きっとあれもデコってやろうと思ってるんだな。


 僕等魔物組は人の持ち物を今まで持てることがなかったからね。

 ……冒険者カードってデコっていいのかな?

 クラムはやるよ?


『僕へのプレゼントは別、だっけ?もう本当に充分なんだけどなぁ……』


「クロムさんへのプレゼントは少し違うんです。エデンの皆や家族との”時間”がプレゼントです。時間が欲しい、と言ってらっしゃいませんでした?」


『言った……。マジでごめん……。でも時間ってどうやってプレゼントするの……?』


 皆は僕のそんな無理難題に応えようとしてくれたのか……。

 本当に考えさせちゃったなぁ……。

 でもどういうことだろう?


「しばらくクロムさんは皆と会えなくなってしまいました……。そうでなくてもダンジョンに居る時間はクロムさんが人一倍長いです……」


『まぁそうだね。でもそれは仕方ないよ。アンの体を鍛える為だもん』


「それだけかのぉ?恐らくクロムはダンジョン生活が終わろうと、訓練に明け暮れて帰る事を忘れるじゃろ?」


 う……。

 それを言われるとなんとも……。


『そう、かも……。ごめん……』


「いや、そう言う意味ではないのじゃ。クロムは好きな者を集めてそこに引きこもりたかったんじゃろ?それが目的だと我が家族になる前に楽しそうに話してくれたのじゃ。エデンは好きな者だけを集め、クロムが作った拠点じゃ。じゃが、実際エデンが出来ると全くと言っていいほど引きこもらんのぉ。何故じゃ?」


『何故って……。エデンが出来たからこそ僕は皆を守る為に訓練しないと……』


 おばあちゃんからは常々言われてるよなぁ。

 もっと休めとか、ダンジョンに引きこもってたらエデンに帰れって……。

 今はエデンには帰れないけどね。


 それでも最近はおばあちゃんがむっとしたら訓練辞めるって感じになってたもん。

 皆が寝静まってるときに家から抜け出して訓練してたりするとおばあちゃんが呼びにくるんだよねぇ。


 心配してくれてありがたいよ。

 でも不安なんだもん……。


「クロムは自分が好きなものを守りたいんじゃろ?」


『……うん。僕が守れるだなんて大それたことを言うつもりはないよ。でも、だからこそ自分が出来ることは絶対に成し遂げたい。ひとかけらの後悔もしたくないんだ。だから……』


「そうですよね。クロムさんは前世で自分が大切なモノを自分のせいで失った、と言ってました……」


 確か皆には話したね。

 隠し事をするのも嫌だしね。

 僕には前世で家族が居て、その家族を自分の不甲斐なさで守ることが出来なかったって。


 だから今世は絶対そんなことにはならないようにするんだ。

 病気にもならない。

 力もある。

 それなら後は僕の心次第でどうとでも……


「それにしてもクロムくんは自分の時間を犠牲にしすぎじゃないかい?」


『エルンさん?犠牲って……。それは誤解。僕は僕がそうしたいからやってるんだ。これが僕の望みだもん』


「そうだとしても限度があるよね?ティアさんから話は聞いてるよ?全然訓練を止めないってね?」


 う……。

 エルンさんにも話してるのか……。


 ってことはみんな知ってるなぁ。

 身から出た錆だなぁ……。


「そうですよ?私とも全然お話する時間がないじゃありませんか?エステルと結婚してくださったら私はクロムさんの義母ですよ?うふふ♪」


 そっか……。

 そういえばそうだ。

 エルンさんとはまだ街の事で話す時間はあるんだ。


 でもエルノアさんと僕って殆ど話す時間はないんだよなぁ。

 エルノアさんが僕のお義母さんになるんだ……。

 なんか不思議な気持ちだな。


『そう……だね。ごめんね』


「そうだよ~?わたしだってクロムくんとお話したかったもん!でもクロムくんは全然帰ってこないんだよ?わたしはメイドさん?なのにひどいよね~!」


『そんなふうに思ってくれてたんだ……。ごめん……』


 自分の事を必要としてくれている人……か。

 全然そんなこと考えたことなかったな……。


「クロムくんの事を縛るつもりはないよ?でも僕等から見てても少し心苦しくはなるかな?そこまで僕等の為に時間を消費してくれなくてもいいんだよ?」


 ……これ、前世でも言われた気がする。

 もう遠い記憶だ。


 確か奥さんだったはずだ……。

 僕のことを見てるのが心苦しいから離婚するって……。

 世界跨いでも転生してもダメなところあんまり変わってないんだな。


 確か本質の部分はあまり変わらないってソフィア様が言ってた気がするなぁ……。

 ……はは。笑えねぇ。


 ……ん?

 あれ、僕へのプレゼントの話じゃなかったっけ?

 僕、怒られてる……?


「まぁクロムの気持ちは俺もわかるけどな。国の為を思うと逆に国でゆっくりはできねぇさ。だから俺らが直接止めに来たって訳だ!」


『だから国じゃねーっての!……でも王様は最近獣人国の代わりにエデンで結構ゆっくりしてない?』


 みんなからの話によると昼から居たりすることもあるらしいんだよね。

 王様ってそんなゆっくりしてて大丈夫かなぁと思うんだけど……。

 まぁその辺の公務とか僕にはわかんないしなぁ。

 国に問題が無いなら好きにしてもらえればいいんだけどね。


「逆だ。最近俺は地方を転々としてんだよ。クロムからもらった氷魔石の件や、地方の開拓なんかも含めな?今も俺は国の南西部の方で新しい農地の視察してるぞ」


『そうなの?王様ってそんな地方転々とする仕事なんだね……。意外だ……』


「獣人国に限り、だろ。この国では俺が一番強えぇ部類だからな。俺が動くのが一番安全なんだよ。少なくとも人間国やエルフ国では聞かねぇな?王座で踏ん反り返ってんじゃねぇか?」


『うんうん。王様ってそのイメージの方が強いね。頑張ってんだな王様』


「王座で踏ん反り返ってても国は何も変わらねぇよ。俺がうごかねぇとな」


 確かにそうか。

 獣人国は強さで王様が決まってるんだもんね。

 他国と比べても仕方ないね。


「国から出て地方行ったりする時も転移魔石がありゃエデンには帰れんだろ?うまく使わせてもらってるぞ」


『あぁ、そういう事ね。野宿する代わりにエデンに帰って来てんのね。そりゃよかったよ』


「そういうこった。……まぁ、あと……他にも理由があんだよ。後で話すわ」


 理由?

 ……多分リトさんのことだよね?

 ずっと体調悪そうにしてるもん。


 もう1年近くなるんじゃないかなぁ。

 エデンに来て早々だったよね。


 ちょこちょこ心配してるんだけど話誤魔化されるんだよね。

 だからあまり深く突っ込まないようにしてたんだ。


 僕は他人の秘密をゴリ押しで聞いたりしないタイプだもん。

 パーソナルスペースは大切だ。


 でも今日も来てないしさ……。

 ほんと心配だよ。


『ふ~ん。まぁいいや。……それにしても、止めに来たって何?具体的に何をしてくれたの?僕に皆との時間をくれたんだよね?今日ここに皆を連れてきてくれて、今日のパーティーが僕へのプレゼントってことかな?』


「ちょっとだけ違いますねぇ?ふふ♪」


『どういうことだ……?そもそもどうやってみんなここまで来たの?』


 今もちょっと現実味がないんだよ。

 ダンジョンの風景にエデンの皆が居るって事に違和感がある。

 でもそれは転送門を作って貰ったから、だよね?


 ただここ100階層だよ?

 皆の強さでいきなりここに入る事なんてできないよな……?

 まだ精々2、30階層だと思うんだけど……。


「おばあ様と私が皆が交互に100階層まで皆を運んだんです。で、皆の冒険者カードに100階層には自由に入れるよう記録してもらいました」


『……あ!そっか!パーティー登録したってこと!?』


 おばあちゃんがその裏技使ったんだよ。

 パーティー登録をすれば階層をぶっ飛ばすこともできるんだ。

 だけど自己責任になるって聞いたよね。


「いや、していないぞ。パーティ登録が必要なのは人の国の話だ。エデンは関係ないだろう。実際は誰か1人が転送門を開けて10秒程開いている門に入ればいいだけの話だからな」


『あ、そういうことなんだ。よくわかってなかったよ。他のパーティーに紛れて入らないように検問してるだけなんだね』


「そうだ。だが、ちなみに、パーティーを組んでいたとしても基本的に冒険者協会は自分の強さが比例している階層より深く潜ることを推奨していない。禁止、ではないがな。転送門の仕組みが開いたら通れてしまう物なのだからどうしようも出来ん」


 確かに言われて見りゃそうだね。

 カード持ってなくちゃ通れないなら僕もクラムも通れてないんだもん。


『そりゃそうだよ。そのせいで死人なんて出たら目も当てられないよ……』


「あぁ。だからもしそうなればパーティーメンバー全員冒険者資格剥奪だ」


『え!?そうなん!?』


「あぁ。冒険者協会としてはそこにしか手出しが出来んのだ。転送門も冒険者カードを作る古代の遺産も神が作ったと言われているからな。ダンジョンには冒険者資格がないものは入れない、と言う法になっている。それならば、冒険者資格を剥奪するしかないだろう?その権限は冒険者協会にあるからな」


『あ、そっか。そりゃそうだよね』


 多分これもソフィア様かアテナ様が作ったんだ。

 こんな仕組みこの世界の人に作れるわけないもん。


 魔力で整合出来るアイテムはちらほらあるんだけど転送門は完全に神様の文明のものだよね。

 じゃあ、転送ゲートとリンクしてる冒険者カードだってそれを作る機械だって神様の文明のものだ。


 もし人殺しなんてしたらその魔力を冒険者カードが吸い取るとか言ってたしな。

 すごいよなぁ冒険者カードって……。


「貴殿等は冒険者ギルドに行かなすぎだ。ダンジョンにも普通は依頼を受けて入るのだ。そうでなくても魔石の買い取りにギルドに行くだろう?罰則も依頼時にはしっかり話しているし、あまりにパーティー申請の理由が不適切だと判断すればこちらから拒否もしているぞ?知らないだろう?」


 まぁ……。

 僕等もうカードもらう為にしか行ってないからねぇ……。


『知らなかったよ。ちなみに不適切って俗にいう寄生プレイ、みたいな感じ?』


「面白い表現だな?そうだ。事故の原因になるのでな。どう考えても死にに行くような依頼を受ける為のパーティー申請などは拒否している。そもそもそのような依頼の受注は通さん。その為にランクがあるのだ。さすがにそこまで抜けている規律はしていないぞ」


『じゃ、これって良かったのか?寄生プレイまっしぐらじゃん。またベルが独断でやったんだろ?』


「そうだが、この階層のどこに危険があるのだ?1階層より平和だろう?と、言うより、世界中見渡してもこれ程環境が整っている土地などないぞ。ここが1階層と言っていいくらいだ。1階層に入る為に制限などない」


『まぁ、今となってはそうだね……』


 今座ってるここだってただのお花畑だもん。

 魔物も一切いないし……。


「だからこれに関しては打倒だな。今後も好きに入っていいぞ。だが……」


『だが……?』


「クロム殿はダンジョン内の環境を変えられるのであったな?91階層~100階層の環境は変えないでもらえると助かる。許可を出せたのはこの環境あり気だ。これは冒険者協会会長としての私からの願いだ。今後、当人達が好きで鍛えるのなら私から言う事はないがな。頼むぞ。使徒殿にこのようなことを言うのも変な話だがな」


「まぁクロムちゃんはそんなことしないでしょうけどね?」


『もちろんそんなことしないよ。了解。もしハイエルフさんが魔物と訓練したいって言われてもちゃんと調整するつもりだ』


「これで以上だ。私とキャシーからの贈り物はクロム殿、クラム殿の冒険者カードとそれに伴う手続き。強いて言えば皆が100階層に入る許可、ということだ。本来転送門も使わず無条件で入れるのは1階層だけなのでな」


 そうだな。

 転送門があっても冒険者カードが無いと転送門は使えない仕様になっている。


 そしてその冒険者カードは冒険者協会が発行している。

 だから結果的に冒険者協会の許可が必要になってしまうってことだ。

 2人が居なければこのプレゼントは出来なかったって事だね。


『そっか。でもそれがアリなら、逆にちょっと考えてたことがあるんだけど、聞いてもらっていい?』


「なんだ?」


『僕がダンジョンの魔物のコントロールをしてるでしょ?例えば危ない人が居たとしてその時に僕に頼まれても……』


「あぁ、クロム殿に頼んで魔物の調整をしてくれと言う話か?そんなこと言う訳ないだろう。それはその者の怠惰だ」


 そうそう。

 これずっと考えてたんだよね。


 例えば誰かが無茶をして死にそうになったとするでしょ?

 僕に頼んでその魔物を消してくれって言う事をありにしちゃうと皆尚更無茶するようになるじゃん。


 これって究極のチートみたいな感じでしょ?

 僕はダンジョンの管理人だ。

 魔物を消すことも可能だし、なんなら遠隔魔法で危ない人を助けることも多分出来る。


 でもさ……。

 そんなことしてたら多分結果的に人は弱くなると思うんだよね。


 だからそれに応じることは出来ないって言わないとダメだなって思ってたんだ。

 ちょうどよかったよ。


 無理なら進行しないで欲しい。

 無茶して僕が魔物を倒してくれる前提で進まれることに応じることは出来ないって話だ。


 でも申し訳ないけどエデンの住民にはえこひいきはするよ?

 僕は好きな人は絶対に守りたいからね。


『今後もダンジョンの浅い階層……50階層より上の階層かな?その辺りの魔物側の調整はしないつもり。よく見てみるとソフィア様が凄く考えて作った仕様っぽいんだよね。しっかり人が強くなるように考えて作ってあるんだよ。だから僕は細かい調整や人が訓練しやすくなるような部分にしか手は貸さないよ』


 これは僕がダンジョンの管理人をしだしてから気付いたんだ。

 人が徐々に強くなれるようしっかり考えて調整してあるんだ。


 だからその試練を突破できないなら自分自身の能力が足りないってことだ。

 ここに僕が過度にサポートを入れるべきじゃない。


「それでいい。人が弱くなっては元も子もないのでな」


『わかった。それなら心おきなくプレゼントを受け取るよ。ありがとう』


 ハイエルフさん達がダンジョンに入れるようになったのなら一旦1階層から順に攻略してもらおうと思う。

 1階層はさすがに無いか。

 30階層より下からくらいでいいかな。

 で、50階層より奥まで来れるなら僕がサポートするよ。


 そもそも多分50階層までは人の強さの為に色々試行錯誤して作ってある感じがするんだ。

 ただそれより下からは人が先に踏み入らないようにを念頭に作ってある感じがする。


 水中階層からだね。

 ソフィア様が人が死なないようにそこから先に進まないように策を講じたって言ってたんだもん。


「まぁ私としては新種族の件で行うであろう作業の前倒しをしただけだ。寧ろ神に転送門をエデンに作って貰い楽になったくらいだぞ。出来ていく様は圧巻だったな。自動的に転送門に文字が描かれていくのだ。神、というものを実感した。クロム殿にも見せてやりたかったな?」


『へぇ~。見てみたかったなぁ~。あ、ちなみに転送門はどこに出来たの?』


「ギルドの横です!まだ王都のように転送門が建物内に入ったりはしていないですね?」


「エデンのギルド内に入れてもいいかと思ったんだがな。まだ、今後どのように利用されるかわからん。外に広めの場所を貰ったぞ?良かったか?もちろん皆に聞いて回ったぞ」


『うん、全然いいよ。エデンの事はエデンに住んでる皆の意見で決めてね。本当にありがとう……』


『パパ~!クラムのカードつかってみていい~?パーティーしてるからすぐかえってくる~!』


『そうだね!早速使ってみな?……ってかどんな仕組みになってるんだろ?転送門にタッチしたら行先が出てくるよね?エデンにも出られるし王都にも出られるようになったの?』


 ……そうだとしたら王都を介して他の人エデンに入ってこない?

 ちょっと危ないよな……。


「どうやらエデンから入った履歴が無いとエデンからは出られないみたいです。逆も然りですね。ハイエルフの皆やクロムさんとクラムちゃんのカードは今のところエデンからしか出られないはずです」


 あ、なるほど。

 エデンに来た事がないとそんなことにはならないってことだね。

 よかった。


『すご~い!クラムのカードひかった~!ちょっといってくるね~!』ボワンッ。


 あ~あ。

 行ってらっしゃいって言う前に言っちゃった。

 本当にすごく喜んでるんだな。

 僕も楽しそうなクラムが見れて嬉しいよ。


『あ、わかった!それで冒険者登録を前倒しでやってたのか……。ベルが暇だってうちに来た時の話!あの時は徐々に進めていくべきだとかなんとか言ってたじゃん?』


「私がお願いしたんです。ベルさんには無理を言ってしまいました……」


「いや、そんなことは無いぞ?それも事実だ。少し機会が早まっただけの事だ。エステル殿が気にする必要はないな。そんなことより私も1つ下手を打ったのだ。このような類の嘘をついたことはなかったのでな」


『……ん?下手を打ったって何が?なんか変な事言ってたっけ?』


「クロム殿は以前私が暇だ、と言った時に冒険者を鍛えて来いと言っただろう?」


『あぁ、言ったね?出張してる体裁だから行けないって言ってたよな?』


「出張している体裁で、ダンジョンへの転送門を通れるわけがないだろう。検問があるのだぞ?私が行けば誰でも気付くぞ」


『あ……。そうじゃん……。じゃ、その時にはもうエデンからの転送門は出来てたってことかよ……』


「ちょうどあの時だ。私が実験に通ったのだ。クロム殿に80階層へ転移で連れて行ってもらった私しか実験できなかったのでな」


『実験の為に来てたのか……』


「いや?暇だったからだな」


『そこは嘘でも実験って言っとけよッ!!!』


「嘘はダメなのではないのか?」


『……はぁ。いや、もうベルはそのままでいいよ……』


 それにしてもそんな矛盾、全然気づかなかったなぁ……。

 ベルって一切顔色変えないからなぁ。


 確かパパっと話逸らされたんだよ……。

 冒険者ギルドを立ててもいいかとかなんとかって……。

 興味が完全にそっちに行っちゃったよ……。


『ってかあれってベルが来た翌日とかじゃなかったっけ?アテナ様一瞬でつくったんだなぁ……』


「転送門に関してはもうてんぷれ?があったらしいですよ?そんな事でいいならと直ぐに作ってくれました。労力もかからないので結局暇だと仰られてましたね。神力も殆ど使わなかったみたいです」


『……なるほどね。他の国にあるもんね……』


 アテナ様からしたら他国と同じ転送門をコピペしたレベルだって話だね……。

 新システム開発って程ですらなかったってことだ。


 ちょっと心の荷が降りたな。はぁ……。

 神力使って貰ったってかなり一大事だもん……。

 何に使うかわかんない力だけどね。


「ふむ。それにしても、まだまだだなクロム殿は。クロム殿を誤魔化すよりクラム殿を誤魔化す方が手を焼いたのではないか?」


「それは私達が協力していましたね、うふふ♪」


『エルノアさんや他の人達が?何を?』


『あ~!クラムはずっとエルノアにおりょ~りおしえてもらってたの~!あとね~?エデンにかえったらみんなつくってほしいものいってくるんだ~!あとはおかしいっぱいもらった~!』


 はやっ!

 クラムもう帰ってきたのか!?

 ま、まぁ出入りしただけなんだもんね。


「そうです!お母様や他のハイエルフ達に協力してもらったんです!クラムちゃんはエデンに帰ってくるので、ギルドの方へは近づかないようにしてもらっていました!」


『ぜんぜんきづかなかった~!すご~い!』


 すごいなぁ……。

 本当に皆で協力してこの計画が成り立ってたんだ。

 僕等の誕生日の為にすごく苦労してくれたんだなぁ……。


『僕等の為に本当にありがとう……。大変だったろうに……。でも、これで何かあれば皆をダンジョン内に避難させられるよ。わざわざ王都まで来なくてもいいじゃん。本当に最高のプレゼントだよ』


「そこじゃないんですけどねぇ……」


『わかってるよ。そこも僕にとってはプレゼントだってこと。いつでも皆と会えるようにしてくれたんだよね?』


「……うん。……パパに会いたくなったら皆がエデンから会いに行けばいい」


「そうじゃの。皆と過ごす時間、がエステルからのクロムへのプレゼントじゃ」


『そっか……』


「喜んでくれましたか?ふふ♪」


 今、久々に皆の事を目にしたらすごく皆に会いたかったんだなって思った。


 ダンジョンで訓練してた時は訓練に必死になって帰る事も忘れてたんだ。

 でも軟禁生活を送ってる今になって、毎晩エデンに帰りたいなって思うようになってきてたんだよ。

 いつの間にかエデンが僕の居場所になってたみたいだ。


 いや、ここに居るみんなが僕にとっての帰る場所なんだな。

 ここの皆と過ごせるなら僕は別にダンジョン内で生活してもいいって思うもん。


 家なんかどこでもいいよ。

 一緒に過ごす皆が大切なんだ。


 ちょっと泣きそうだ。

 感極まっちゃったよ。

 ふぅ……。


『もちろん。エステル、本当にありがとう……。この上無い、プレゼント……だった………………ん?』


 今、エステルからって言った?

 これ皆からのプレゼントじゃないの……?


『ゲートもエステルからなの~?』


「いえ、どちらもエデン皆からのプレゼントですよ?そもそも神力はおばあ様とクラマくんと同じ量を引いてもらったようですし……。それにベルさんキャシーさん含め、皆に相談や協力をしてもらいました!私だけではこのプレゼントは出来ませんでした。本当にありがとうございます……グス」


 そっか。

 エステルが仕掛け人だったけどみんな協力してくれたんだな。

 それなのに皆遠慮してくれてるんだ。


 僕のお嫁さん候補はみんなにとっても愛されてるなぁ。

 僕もうれしいよ。


 僕とクラムの誕生日プレゼントも本当に嬉しかったけど、僕等の為にみんなが一丸になって協力してくれたってことが本当に1番の……


「あ、いや……。えっと……。この場で突然言い辛いのじゃが……。我は元々プレゼントを用意しておっての……?」


「おばあ様!?」


 ……ん?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ