317話 - メリットとデメリット
「……いくよ。……”雷纏”」
バチバチバチバチバチバチ……。
『いいよ~!けっこうシールドつよくしたよ~!』
「……わかった。……全力で行く。……抜刀術……”雷”」
バキィッ!
バチバチバチッ。
シュン……。
「……くっ。はぁ…はぁ……。………で、できた」
『クラマすごおおおお~い!!シールドわれたぁ~!』
『すっげぇじゃん!クラムの結界にヒビ入ったぞッ!?初めてじゃない!?』
「……ねぇねの結界ちょっと……割れた。初めて……。……はぁ……はぁ……」
『あ、ごめんごめん。あまりにカッコいいからテンション上がっちゃったよ。回復してあげないとね』
「……ん。……ありがと」
お、ちょっと照れてるじゃん。
ほんとにめっちゃかっこよかったんだもんなぁ。
『たまにはクラムがりざれくしょんつかおっか~?クリーンがいい~?』
「……回復は大丈夫。……炭酸飲みたい」ゴソゴソ……。
あ、おばあちゃんの回復水飲むんだね。
ゴクッゴクッ。
「……ぷはっ。……ふぅ。……生き返った」
『パパのまねだ~!』
「……うん。……炭酸飲みたかった。……疲れも取れた」
『まぁ、汗かいただろうしどっちみちクリーンもしとくよ。”クリーン”』
「……パパ、ありがと」
『あー!クラムがやりたかった~!』
『あ、すまんすまん。癖になっちゃってんだって』
『ぜったいね~?クラムもおなじのつかえるもん~!』
『わかったわかった。次はクラムに任せるよ』
おばあちゃんのソーマは僕のクリーン効果だけを除いた超回復水。
文字通り生き返……りはしないけど寿命が延びるんではなかろうかと曰くが付いているくらいだ。
美肌効果もあるらしい。
それを1万本くらいはアイテムボックス内にストックしている。
いつ何時危険が迫ってくるかわからないからね。
もちろん、エデンで垂れ流してる方じゃなくて全力の回復効果付きのソーマだ。
ソーマって神酒って意味らしいね?
僕それ知らなかったんだよなぁ。
僕が読んでた小説やアニメには出てこなかったなぁ。
『ねぇねぇ。おばあちゃんのソーマって何?誰の名前?昔の僧侶さんとか、おばあちゃんの友達?』
「知らんかったのか!?神酒、と言う意味じゃ」
『そうなの!?何でも知ってるわけじゃないって……。そうまくんって誰だろ、って思ってたよ……』
「クロムから教わった魔法に何故他人の名前を付けるんじゃ……。それならクロムと名付けるのじゃ……」
『絶対なしでッ!!』
と言う会話があったのは過去の話だ。
……ってかファントム倒すときに神酒作りまくってて余ったんだよ。
飲んでも良し、アンデットが出たら投げても良し、でとっても万能だ。
だからみんな好きな時に飲むし、10本以上は好みの味付きで各々がストックしてるんだ。
今のクラマがのんだ水は僕が炭酸を入れてあげたやつだね。
ミルクはさすがにダメだった……。
ミルクに回復魔法を注いでみたら、浄化された成分があるのかすごく薄くて何とも言えないマズさになったんだ……。
生活方面の充実化も図ってるけどたまに失敗もちゃんとしてるんだ~。
クラムのには蜂蜜や甘味が混じってるし、エステルやおばあちゃんはお茶にしてるかな?
僕はアイスコーヒーにしてるんだ。
だって無味無臭なんだもん。
むしろ雑味ゼロですごく美味しい水なんだよ?
神酒って言ってもアルコールとか入ってないよ?
料理にも使ってるんだもん。
まぁそれはさておき……。
今日は6月30日。
6月も今日で終わりだな。
スマホが出来てから日時管理しなくてもちゃんと日時の把握が出来るようになった。
そして僕がアンの体に寄生してから約1か月だ。
今月忙しかったなぁ……。
来月からはのんびり訓練できるかなぁ。
そしてクラマが雷纏を使えるようになって3日だ。
クラマはあれから毎日僕等と組手をしていた。
主に妖気の体内蓄積量を伸ばす為、だね。
やっと1発だけ抜刀術に繋ぐことが出来そうって事で、今日お試ししてみたの。
ちゃんと成功だったね。
クラマの”雷”って抜刀術は本当にすごい。
まず妖狐化、それから雷纏で雷を纏う。
そして、雷を纏った刀の抜刀術に繋げるって順序だ。
これが雷纏を使ってクラマがやりたかった技らしい。
実際目にしてみて、これマジで反則だって思ったよ……。
『初めて成功してみてどんな感じ?』
「……いい所も悪い所もある。……でも好み」
『詳しく教えてくれない?弱点は知っておきたいしね』
「……わかった。……えっと」
クラマに雷を纏うってどういうものか体感を教えてもらった。
雷纏を使うメリット1。
簡単に言えば、もちろん移動速度が雷速だってこと。
実際には違うんだろうけど、闇纏の時と同じように半魔素化してるように見えるんだ。
同調は魔法と少し一体化するってことだ。
だから魔法の特性を引き継げるみたいなんだよね。
おばあちゃんなら水纏とかできんじゃね?
……ってかそもそも水化できるし意味ないか。
雷を纏ったクラマはもはや音を置き去りにしていた。
音速を圧倒的に超えてるってことだ。
その勢いを乗せての抜刀術がヤバくない訳がない。
クラマは今回は初めてだからかなり動きをセーブしたらしいんだ。
速すぎてコントロールできないんだって。
だからまだ全く全力じゃないみたいだよ。
さっき”全力で行く”って言ってたのはあくまで今の全力ってことだ。
まだまだ伸びるって事らしい。
それでもクラムの結界にヒビが入る攻撃力だってことだ。
今までクラマの攻撃ではクラムの結界にヒビが入る事なんてなかったもん。
間違いなくクラマの攻撃の中で今最強の攻撃力を誇る技になった。
継続ダメージなら黒雷を使った魔法。
一撃なら雷纏からの抜刀って感じかな?
そしてメリット2。
どうやら体的に無茶な駆動をしても体にダメージが入らないらしい。
おばあちゃんの水化みたいに物理無効になってる訳じゃないよ?
ただ、急に移動の角度を変えたりしても間接が痛んだりは全くしないようだ。
雷って真っすぐ進んだりしないもんね。
あれは雷が空気中の電気を通しやすい場所を見つけては進むことを繰り返してるかららしいけど。
あ、でもクラマが真っすぐ進もうと思えば真っすぐ進めるみたいだよ?
さっきの抜刀術すごかったんだよ。
稲光が轟いたんだけど途中で何度もガクって曲がったんだ。
あれ、わざとだったらしい。
クラムが板状の普通の結界を張ってくれたんだけどさ?
最初にクラマが居た場所と反対方向の面から切り込んでたんだ。
抜刀術が曲がって飛んでくるなんて思わないよねぇ。
雷速でいきなり後ろから回ってきたりするんだよ?
雷纏の抜刀術やばすぎだよ……。
『すっげぇ……。あれ、わざとだったんだ……。マジで反則級じゃん……』
「……うん。……これがやりたかった。……で、悪い部分は……」
デメリット1。
まず、雷纏を使っている時は別の魔法は使えないって。
違う属性の魔法を使っちゃうと同調が解けちゃうんだって。
『え!?無属性もダメなの!?』
『どうちょ~のじゃまなんだ~』
「……うん。……解除される程じゃないけど不安定になる。……雷纏の出力が落ちるから意味ない。……使わない方がいい」
『そういうことか……。僕には全く感覚がわからないから説明助かるよ。それなら雷纏の時は物理か雷に特化した方が良いね』
「……そういうこと」
……と言う事らしい。
同調に必要ない魔素は無属性ですら純粋に邪魔なんだって。
すごくコストかけて雷纏を使ってるのに出力落ちたら意味ないよなぁ。
あ、でも、体内の強化や刀の強化に魔力を注ぐくらいなら大丈夫らしいよ。
外に出せないってことだね。
だから今のところ無属性の刃は併用できないんだって。
デメリット2。
長時間は持たないってこと。
この3日、クラマはずっと妖術の訓練をしてた。
僕とクラム相手に分身を作ってずっと切り込んでくる練習だ。
僕はそれを転移で避ける練習。
クラムはずっと結界で防御してた感じだね。
丸3日かけて雷纏はやっと1秒持つようになったってくらいなんだよ。
雷纏を使うと1発で全部の妖気持って行かれちゃうんだ。
そして疲れのせいか妖狐化も解けちゃうんだよ。
だから他の妖術と同時に練習が出来ないの。
それなら最初は妖術をたくさん使う訓練からした方が良いって。
その方が妖気の許容量が上がるのが早いらしい。
これはヒュプノス様アドバイスだね。
ちなみにさ?
攻撃に妖気を使ってるんじゃなくて雷纏の”維持”に妖気を使ってるんだ。
クラマは妖術で自己催眠をかけて本来出来ないことをやってるわけだからね。
今の段階ではそれで妖気をほぼ使い果たしちゃうってことだ。
僕の転移と同じくらいコスパ悪いの。
だから今後クラマの特訓は妖術中心になりそうだな。
そして、妖狐化するには体の魔力をかなり高めないとダメ。
今回も尻尾は6本出ていたんだ。
今の所これが限界らしい。
だからMPもガクッと消費しちゃうの。
妖気は完全になくなるしMPも超消費しちゃう1撃必殺技って感じだ。
もう少し安定させるにはMPも妖気の許容量もあげないとダメだそうだ。
「……そんな感じ。……わかった?」
『うん、説明ありがとう。今の所は止めの一撃って感じだね。さすがに1秒は辛いな……』
「……うん。……もっと訓練しないとダメ。……使うなら3分はもたせたい」
1ラウンド分って事だね。
1発だけ抜刀術つかって必要なければ雷纏を解けばいいもんね。
ちなみに妖気が完全回復するには1日程かかっちゃうらしいね。
だから今日はもう妖術の練習は出来ないな。
『でもかっこよかったよ~!クラムにもすぐかてるよ~!』
「……ねぇねには勝たなくてもいい。……でも同じくらいにはなりたい」
『そだね。僕もその方が安心だ。これからはしばらく訓練期間だし、特にクラマとエステルの強化をしたいかな?おばあちゃんはどうするんだろ?無理強いはしないんだけど……。……ところでエステルとおばあちゃんはいつ帰ってくるの?』
「……今日帰ってくると思う。……朝、メールが来た。……いつ帰ってくるのかは知らない」
『じゃ~おうちかえろ~?クラムおなかすいた~!』
『そだね。じゃ、家で2人の帰宅を待ってよっか。しばらく朝から夜まで訓練してたから今日は早めに切り上げよう』
『そうしよ~!クラムはおしろのぶひんつくりたい~!あ、でも先ごはんつくる~!』
「……うん。ぼくも、肉焼いて気分転換する」
ちなみに僕等はずっと92階層の訓練場エリアで特訓してた。
敵はもう出してなかったんだ。
正直なところ、僕等同士で戦ってるほうがずっと戦闘訓練になるんだよねぇ……。
ここが対人戦と対魔物戦の違いだ。
ステータスはどっちでも伸びるんだけどさ?
魔物って基本的に単調な攻撃をしてくることが多いんだもん。
で、さ?
僕等が恐れてるのってどちらかというと魔物じゃなくて人の悪意じゃんか?
だから実はあんまり魔物と訓練する意味無かったりするんだよなぁ……。
レベル補正が効かなくなってからは尚の事だ。
でも、レベルは魔物を倒さないとほぼ上がらないんだよ?
いや、どうなんだろ?
昔はたまに経験値は入ってた気もするんだけど……。
ずっと前から僕やクラムはエステルやクラマと戦っても経験値伸びてないしなぁ……。
体内の魔力の活性化、が必要なんだっけ?
まぁ、その辺りの神様システムの詳しいことはよく分かんないからいいんだけどさ?
結局、敵を”倒す”って過程が1番レベル上げには必要みたい。
だから結局僕はレベル補正も効かないのにアンの為にレベルを上げないとダメだから魔物倒さないとダメなんだよ……。
それはもちろんいいんだよ?
アンに転生してもらいたいもん。
ただ、非効率だよなぁ……。
訓練もレベル上げもどっちも同時にいい感じにやりたいよ。
今完全に作業が分裂してるんだ。
世の中難しいなぁ~。
『じゃ、とりあえず帰ろっか。僕の背中に乗って?』
最近移動中はクラムとクラマを背負って僕が歩いている。
子供をおんぶしてあげてるようでとっても誇らしい気分になるんだよね。
雷纏の区切りも付いたしゆっくり帰ろ。
今日はご飯を豪勢に作ってあげたい日なんだよね。
エステルもおばあちゃんも帰ってくるらしいし良かった。
忘れてるのかと思ったよ……。




