314話 - 見えないんだもの
なかなかうまく行かないクラマの雷纏訓練。
少し気分転換したらって意味で言ったひょんな一言からクラマがガチ戦闘を始めることになってしまった……。
今は92階層の訓練場に居る。
クラマは軽く体を振ったり、その場で飛んで準備運動を始めた。
ずっと座りっぱなしで魔素とにらめっこしてたから体温めないとね。
待望していた風竜との模擬戦があんなしょーもない結果に終わっちゃってすごく残念だったんだろうな。
今回は前回よりかなりやる気になってるみたいだね。
戦闘相手はとりあえず風竜1体でいいようだ。
戦闘力クラマの5倍希望だけどね……。
『クラムも結界の準備してて?僕が合図したらクラマに使ってあげてね?』
『いいの~?クラマはシールドいらないって言ってたよ~?』
『止めに入る時の話だよ。戦闘にはもちろん手出しはしない。クラマもそれでいいでしょ?』
「ん……。……大丈夫」
『わかった~!』
やっぱ怖いなぁ……。
でもしっかりクラマの成長を見届けないと……。
見守るっていうのもパパの役割だからね。
『全力で魔法打つ待機をして観戦してるよ。危なくなったら全力で守るから気にせずやってきな!』
「……ありがと。……わかった」
せっかく技開発したのに……って悲しんでたしね。
僕が全力でサポートする準備を整えておけばいい事だ。
それにクラマの新技はぜひ見てみたい。
ただ、さっき、見せる前に終わっちゃうって言ってたのがすこし気がかりだな。
『あ、1つだけ。新技楽しみにしてるんだけどさ?見せる前に終わるって言ってたのはクラマが強すぎるからって事?始まった瞬間倒しに行く系統の技じゃないってこと?もしくは何か準備が必要ってことかな?』
「……楽しみにしてるのにネタバレ?」
あ……。
これ僕がご飯とか楽しみにしてて欲しいときによく言うやつだ……。
ネタバレは絶対厳禁だよねぇ。
僕の口癖ってうつっていくんだなぁ。
『あぁ……えっと……。いや、まぁそうなんだけどさ……。安全に守る為って言うか……。心配になっちゃってさ……』
「……冗談。……危ないふりはするかもしれない。……止めないで見てて欲しい」
『フリ……?』
「……妖術は敵を騙す為に使う。……だからフリ」
ふむ、なるほど……。
でも危ないフリって言われてもなぁ……。
『なるべく耐えるけど、僕が怖いって思ったら止めちゃうよ……。僕がフリに気付かないかもしれないじゃん。う~ん。じゃあ目安くれない?これくらいダメージくらったら止めていいとか、回復していいとか……』
「……わかった。……じゃあ3分は危なくても待ってて。……1らうんど?……それで終わらせる。”スマホ”」フワンッ。
『なんでスマホ……?動画?』
あ、でも動画撮影良いな。
ビデオ通話できるようになったんだもん。
もちろん写真機能も動画機能も付いたよ。
スマホはちょこちょこ進化してるんだ。
エステルとおばあちゃんにも見せてあげたいし撮影してみよっかな。
問題はクラマが速すぎて映るかどうかわかんないってとこだ。
やってみるだけやってみよう。
『僕が撮ってあげよっか?』
「……違う。……タイマー。……これ、助かる」
『あ、ちゃんと時間計ってくれるんだね』
「……うん。訓練にもなる」
タイマー機能ね。
クラマが訓練で時間計りたいって言ったから作って付けてあげたんだ。
確かボクシングかなんかの地球の話をしてた時だ。
僕の前世の格闘技では1R3分とかの区切りが合って、みたいな話。
訓練によさそうって言われたからスマホにタイマーアプリ作ってあげたんだよ。
自分の全力で戦える時間や魔法発動までのラグ。
そう言った時間を細かく把握するのは大切だ。
この世界って時間すっごくアバウトなんだけどこんなことやってんのかなぁ。
凄く重要な訓練だと思うんだよね。
クラマはスマホを訓練のメモにつかったりタイマーとして利用してる事が多いみたい。
必要な連絡以外マメにするタイプでもないからね。
メールの返事はちゃんと帰ってくるよ?
一言だけどね。
それにしても3分で終わらせる、か。
すごい自信だなぁ。
『わかった。3分ね。3分は頑張って我慢する!……それはそれとして動画撮ってみていい?』
「…………いや」
ですよねぇ。
クラマ写真嫌いだもんね。
家族写真とかちょこちょこ撮ろうとするんだけど逃げるんだよなぁ。
恥ずかしがり屋さんなんだよね。
『ちぇ~。わかった~。じゃ、行くよ?』
「……ん、体温まった。……いいよ」
『……3,2,1……GO!』ポチッ。
GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!
「……”妖狐転身”」ブワッ
・
・
・
久しぶりにクラマの覚醒をみた。
尻尾が5本出ていた。
クラマの尻尾が増える覚醒モード?と妖気に直接関係はないんだ。
ソフィア様曰く逆にあっちが本来の姿らしいもん。
ただ、魔力を高めて覚醒すると妖気を使うのが楽って言ってたよね。
で、僕が地球には妖狐って存在がいるんだよってクラマに話しをしたから、そこからきっちり技名を付けたみたいだね。
今までは感情や魔力が高ぶった時に勝手に変化してた。
意図的にコントロールできるようになったんだなぁ。
いつの間にコントロールできるようになったんだろうか。
僕に見えない所で妖術の訓練もしてたんだろうな。
子供の成長は素晴らしいね。
それに、前に溶岩竜と戦った時には確か尻尾は4本だった。
きっと覚醒の力も上がっていたはずだ。
クラマの瞳孔は金色に輝き、頭髪も淡く金色に光っていた。
今回はクラマが全く怒っていないことも合わせて殺気も出ていなく、純粋にとても綺麗に見えた。
一方、僕とクラムはクラマが戦っている間、1階に作られたベンチで観戦していた。
もちろんクラムの結界を僕等の周りに張っている。
そして僕等の事を狙ってこないように戦闘が始まった瞬間、僕が風竜をガチめに威圧した。
あいつすぐ仲間狙うし、ずる賢い事考えるからね。
じゃあそれにビビったのかこっちには目もくれずに戦っていた。
そして今、戦いが終わったクラマが妖弧への覚醒を解いて観客席に帰ってきた。
え、戦闘描写はって?
僕が聞きたいよ……。
とりあえずちょっと今からクラマに質問したいと思う。
「……ふぅ。……おわったよ?」
『知ってるよ……。敵を倒すとこは見てたもん……。……敵消えたじゃん』
「……そっか。……強かった」
強かったんだ……。
まぁ確かにかなり息も上がってるし汗もかいているな。
回復してあげよっと。
『おつかれさま。”クリーン”』
「……ありがと。パパの魔法気持ちいい。……疲れが取れた」
怪我だけじゃなくてちょっとだけスタミナの回復効果もあるからね。
そりゃよかったよ。
風竜が弱いと言ってもさすがに戦闘力5倍差。
特にスピード面が辛そうに見えたね。
クラマの縮地は本来のスピードを魔力を爆発させて増幅するスキルだ。
とはいえ本来の速度は向こうの方が圧倒的に速い。
縮地や天駆を使って何とか喰らいついていた感じだ。
むしろ5倍差がある相手に喰らいつけるクラマのスキルは凄いと思う。
ただ……
「……どうだった?」
『その前に、クラマくん。パパから1つ質問があります』
「……なに?」
『まず……手抜きだったでしょ?』
「……手は抜いてない。……本気で攻撃を避けた。……ステータス5倍は速かった」
『でもさっき使ってた凶悪な黒炎とか黒雷とか使ったらすぐ勝てたでしょ?』
「……妖術見せてっていわれた」
『それはそうですね。うん……。ありがと、僕等の為に……』
「……妖術はどう?……感想が欲しい。……初めてしっかり使った」
『うん。それ。僕もそこが聞きたい』
「……なにを?」
妖術の感想か。
それが今回のメインだもんな。
風竜には既に勝ってるんだもん。
妖術ねぇ……。
クラマの戦闘が開始して、僕が待ってって言われた3分間。
クラマは風竜の動きに頑張ってついて行きながら、薄く切ったり敵の攻撃を避けたりを繰り返してたんだ。
ただ、その時はどちらかと言えば劣勢に見えていた。
ダメージを喰らうことは無かったけど攻めあぐねてるように見えたんだ。
ただ、他にも色々魔法使えただろうから手抜きだった、って思ったんだよね。
巧に幻影魔法を使ったりして攻撃を躱したりもしていた。
確かに躱す方は本気だったように見えるね。
でも攻撃は手を抜いているように見えたって感じだ。
僕等に妖術を見せてくれる為に派手な技を使わなかったんだね。
以前とは逆で攻撃はほぼ妖術での縛りプレイをしてくれたってことだな。
……で、だ。
3分が経ってアラームが鳴り響いた時に状況は一変した。
風竜が凄く苦しみだしたの。
そこからはもうクラマの攻撃が当たる当たる。
しかも風竜はクラマの姿が見えてないのか全然違う方を見て攻撃したり、逆にクラマに飛び込んできたりしていた。
あれが多分妖術なんだろうと思う。
明らかに不自然な行動をしていたんだ。
で、向こうからクラマの間合いに飛び込んできた瞬間、いつもの首チョンパで終わりって感じだった。
『クラマの妖術、すごかったんだと思う。……多分……きっと……おそらく……』
「……多分?……見てたでしょ?」
『先に謝っとく。強い敵と戦ってくれたのに……。申し訳ない!』
「……なんで?」
『だって僕、妖気見えないんだもの!』
危ないフリってなんだったの!?
僕ソワソワしながら光線準備して待機してたんですけど!
僕目線では、クラマは戦闘始めてから敵の近くチラチラしたり敢えて少しだけ切って離脱したりを続けてたんだもん!
こっちからしたら風竜の周りをクラマが全速力で散歩して帰ってきた感じにしか見えないんだもん!!
『だから何もわかりませんッ!』
『クラムもわかんなかった~!たのしみにしてたのに~!』
「…………」
『クラマだけじゃないよ!?ずっと言ってるけど、エステルの闘気も見えないんだって!』
「……ママの闘気……。……ぼくにも見えない……。そっか……」
『そうなの!だから何やってたか全くわかんないの!神眼もつかって目かっぴらいてすっごく頑張ったよ!?でも僕には見えないのよ……』
『なんかつよそうだったよね~。みたかったなぁ~』
「……。そっか……。……妖術は見えない物を見せる力……」
『クラムの言う通りなの!なんか強そうだった!それしか感想はない!ごめんよぉ……。見たかったなぁ……』
息子の晴れ舞台ちゃんと見てあげたかったよ……。
必死に魔力研ぎ澄ませながら頑張った。
神眼も使ったしシスさんにゴッドパワー使っていいってお願いもしたもん。
でも、シスさんには≪該当データが存在しません≫って言われたんだ……。
だって妖術ってこの星で使える技じゃないんだもん……。
シスさんもお手上げだよ……。
「……忘れてた。……頑張ったのに」
クラマがまた凹んでしまった……。
僕はせっかくの活躍の場も見てあげられなかったんだ。
僕の力が足りないばっかりに……。
でもコレは努力でどうにかできる問題じゃないもん!!
『でも前のようがんりゅーとたたかったときはみえたよ~?』
「……あれは、間違えただけ。……みんなにも妖術がかかった。……あの時はぼくの技術が足りなかった」
『あぁ。あれから妖術をバッチリ練習してしっかりコントロールできるようになったんだね……。それは素晴らしい事だよ……。コントロール出来過ぎて僕等にも見えなかったけどね……』
「……うん。……ヒュプとやった。……戦いに関係のない相手に妖術をかける必要はない。ちゃんと自分で制御できる技しか使っちゃダメ。……パパが言ってたこと」
『言いましたね……』
『そ~そ~!またデメテルかなしくなるからねぇ~!』
魔法練習してる時の話だよね……。
危ないって言いました……。
ダンジョン内とダメージカット仕様の魔道具内で練習している魔法を外で使う時は特に、だ。
この中で遠慮なくぶっ放してる魔法は外で使っちゃダメ。
関係ない人に被害が出るからって。
なんならダンジョンの中でも練習の時以外は自分がちゃんと抑えられる確証がある技しか使っちゃダメだよって言ったんだ……。
だって、癖付けとかないと魔の森もエデンも王都も消失しちゃうんだもの……。
『ありがとね。しっかり約束守ってくれて……。でも、僕とのお約束をしっかり守ってくれた結果がこれだな……』
「……うん。……でも、妖術は見せるのに向いてない。……見えない」
『何もみえなかったね~!』
『僕が悪かったよ……。すっかり忘れてたもん……』
「……ぼくも忘れてた」
どうしよっかなぁ……。
妖術に限りは見せてもらうように出来るかなぁ……。
『僕もクラマが何やってるか見たいんだけどなぁ。僕等にも妖術ってかけられるの……?で、出来ればダメージを負わないようにしてくれるとありがたいんだけどなぁ……』
『クラムも~!』
「……むずかしい……。それに、さっきの技、かなり大変。あと1回……」
あ、そうか。
クラマの幻術もエステルの闘気術も僕には見えない力を使ってるんだもんね。
回復魔法で体力が回復してもそっちの方は回復しないんだなぁ。
「……しかもパパとねぇねにはかからないと思う。……ぼくより強い」
『詰んだ……』
『クラマのわざ見られないの~?』
いや、これ見えるか見えないかって問題を通り越してるな……。
見えない上にクラマの戦いの妨げになるって事でしょ?
僕等に見せる為に余分に妖力?が必要になっちゃうって事だもん。
クラマだけじゃなくて、エステルの闘気もぼんやりしてるんだよなぁ。
何やってんのかわかんないんだもん。
エステルは最近魔力を混ぜて使ってるから視覚化は出来るんだけどさ……。
でもやっぱ闘気だけを練り上げられると僕には見えないんだよなぁ。
クラムの豊穣だっておばあちゃんの知恵袋だって多分謎パワーつかってるんでしょ?
う~ん……。
≪どうやらお困りのようですね?≫
『困ってま~す……。ヒュプノス様、ですね。久しぶりです。いつもクラマを目にかけてくれてありがとうございます』
≪おやおや、ふふ。私も皆と同じようフランクに話して頂いて結構ですよ?≫
とか言われてもなぁ。
僕って本当はデフォ敬語人間なんだよ。
ヒュプノス様もそうなんでしょきっと?
釣られちゃうんだよなぁ……。
『ごほん。努力します、えっと、努力するよ……。……で、今困ってるのは……』
≪いえいえ、せっかくクラマくんが私と練習した技を披露するのでしょう?もちろん休息がてら見ていましたよ。問題は把握しています。クラマ君の妖術が見えない、ということでしょうか?≫
『そうなんですよねぇ。……いや、クラマだけじゃないっす。そもそも、僕みんなの謎パワー見えないんですよねぇ……』
≪その星のエネルギーだけで賄える能力ではないですからね。見えないことが妥当でしょうか。例えばクラマ君ならクラマ君が稼いでいる神力から妖力へ私が変換しているのですよ。クラムさん、エステルさん、ティアマトさんも同様です≫
『あ、そうなの!?』
≪……うん。……説明された≫
≪クロムさんが己の力でエネルギーの件に気付いてソフィアさんと話したでしょう?では家族の皆様へは伝わります。こちらとしても黙っている必要は無いですからね≫
あぁ~。
そういうことか。
この星にその技術がないってことは魔力で使える技じゃないってことだもんね。
ただ、神様の世界、他の星にはある力を利用させてもらってる感じなんだもんな。
みんなそれぞれダンジョンで稼いでるもんな。
その力を変換してるから使えてたんだな。
『クラムもだよ~?でも使うよりかせいでるんだって~?だからきにしなくていいってデメテルがいってた~!』
まぁ確かに。
クラムなんか特に豊穣使っても周りの為にしかならなそうだもん。
減ることはない、って感じだよねきっと。
『なるほど……。じゃあ、妖術の利用はできなくてもいいんでせめて見えるように出来ないですか?あ、あと家族にも……。というか僕の加護が付いている人に、とかエデンの人に、でいいです。僕の神力使って貰っていいのでお願いできないですか?』
≪えぇ、かしこまりました。ではクロムさんが得たエネルギーから必要な時に必要な分のエネルギーはいただくことにしましょうか。色々問題がありそうですから、ふふ≫
本当に色々と……。
戦闘の妨げになるとかなんとか言う問題通り越してリアクションが一切取れないです……。
実況してあげることも不可能なので……。
『ありがとうございます。ちなみに、お値段って高いです?神力めちゃくちゃ使ったりしないですか?……アンの復活の妨げになったりしないですかね……?』
≪いえいえ。力が見えるように、だけでいいのでしょう?クロムさんが稼いでいるエネルギーを鑑みれば雀の涙ほどですよ。ふふ。ご安心してください≫
『あ、よかった。……じゃあ、ついでにエステル、クラム、おばあちゃんの力も可視化できるようにしてもらっていいですか?それぞれの神様に許可取った方が良いですかね?』
≪必要な時は来ると思っていました。もう取っておきましたよ。無償でこちらの力を使うということが禁じられているだけです。対価が用意出来るなら問題はないですよ≫
『そっか。僕はもうこの星の文明を超えたエネルギーを蓄えることが出来るから、今ならみんなの力を手にしても問題ないって話か……』
≪えぇ。そういうことです、ふふ≫
『ありがとうございます……。ほんとめっちゃ助かりました……』
よし、これでクラマの妖術を使っての戦闘が見てあげられる!
あ、あとエステルのほうが正直助かるかも……。
あの子めちゃくちゃ頑張ってるんだけど何やってんのかわかんないんだよ……。
なんかスッゲー気合いで敵ぶっとばしてるって雰囲気しか分からん……。
闘気はめちゃくちゃ高まったらぼんやり見えたりもするんだけどね。
エステルの謎パワーを見られる時も近いようだ。
≪それを踏まえてお聞きしますが、クロムさんが稼いでいるエネルギーでしたら他の能力も付けることは可能ですよ?それ相応に消費はしますが、如何致しますか?≫
『なるほど……。でも大丈夫です。元始記録庫は……ちょっと見てみたい気もするけどおばあちゃんと作業してるのが好きなんでやっぱいいです』
≪そうですか、ふふ。ですが、クロムさんにその他の能力の適性はないですね。聞いてみただけですよ≫
聞いてみただけかよ……。
≪私だけフランクに話していただけないようなのでちょっとした意地悪です。身に余る力は体を壊しますよ?ふふ。ただ、見るだけ、なら特に問題はないのでクラマ君の戦闘をもう1度見てあげてくださいね?≫
んなこと言われても……。
僕、敬語の方が本来楽なんだって……。
あ、そうだ!
『あ、待って!ちょうどいいんでクラマの技の仕組みを聞きたいんですけど……』
≪ですけど、ですか?≫
『聞きたいんだけどッ!』
・
・
・
ヒュプノス様との話が終わりクラマが風竜と再挑戦してくれるみたいだ。
「……”妖狐転身”。……妖術”狐魂”。……これ、見える?」
『あ、見える見える!すごいね!クラマの分身かな?幻影?』
「……違う。……妖気の塊。……実体はない……けどある」
『うん、さっきヒュプノス様に説明してもらって理解したよ』
「……ヒュプたすかる。……ぼくの技むずかしい……」
クラマの妖術にはしっかりした理屈がある。
でもクラマ自信は感覚で使えてしまうからあんまり難しいことわかってないんだよね。
だから僕から変わって説明しよう。
さっきヒュプノス様からクラマの妖術の本質を聞いた。
クラマの妖術の本質は催眠だ。
妖気で脳に直接催眠をかけ、幻覚を見せたり幻痛を引き起こしたりしている。
だからこの実体はない、けど、あるって言うこれがそのまま正解。
実際このクラマの分身は偽物。幻だ。
だけど相手には実体があるように見えてしまうんだ。
この分身に切られると痛みも感じてしまうし、幻術だとわかっていても攻撃を避けないと仕方ない。
と、言うより対戦相手にはそもそも実体にしか見えないはずだ。
色々考えるのが面倒ならクラマの妖術を使った分身は実体だと思えばいい。
ただの幻影じゃないんだ。
ただ、1つ。
実体と違う部分を上げるとすれば、妖術を使った分身体を攻撃されてもクラマにダメージは入らないってこと。
クラマの分身は一方的に相手に攻撃だけが出来る術って事だ。
強すぎるだろクラマの妖術……。
「……後、ちゃんと動く」
ヒョイヒョイ。
『おお、実体のクラマと分体のクラマが別々の動きしてる!すごいじゃん!……これはどんな仕組みだ?』
「……パパの中の……ぼくの記憶を使ってるらしい」
『へぇ……。ぼくの頭の中に居るクラマを操作してるって事か……』
「……うん。……たぶん。……詳しくはヒュプに聞いて欲しい。……ぼくはヒュプに幻影を動かしたいって頼んだだけ」
魔法の幻影は同じ動きしかできないんだ。
多分光を屈折させて作ってる感じだと思うからね。
妖術ってすげぇなぁ。
クラマの忍者感が今までよりマシマシになったぞ……。
……そういえばクラマって陰に沈める闇纏も使えるしさ?
もうイメージそのまま忍者って言ってもいいんではなかろうか?
刀だけ馬鹿でかいけどね……。
『クラムもみえた~!さっきはこれつかってたたかってたの~?』
「……そう。……少しずつ。……最初はただの幻影。それを狐魂に切り替える」
『なるほど。すごい頭脳戦してたんだ……。全然知らなかったなぁ……』
「……パパ。……妖気が無くなる。……この技大変。……次の風竜出して」
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