29話 - 魔法の美学
≪スキル【魔力自動回復】を取得しました≫
魔力自動回復を覚えてからほどほどの硬化や怪力での魔力消費は相殺できるようになった。
ほどほどならね?
魔力自動回復のレベルが上がっても同じように硬化と怪力も上がるからね。
追いかけっこになるから全力で使うと相殺できるときは来ないと思う。
ただ日常生活に困らなくなったことは本当にありがたい……
これでやっと常に地上で暮らせるな。
それからは色んな事に取り組んだ。
まず、どうやら【調合】をいつの間にか覚えていたらしい。
これ多分タコの時の塩酸つくったあれだな?
全然気がつかなかった。
調合には兼ねてから興味があったので巣の周りに生えているポルガスだとかパラガスだとかいう毒草と薬草効果のある海藻をちぎってきた。
風と火の複合魔法
”ドライ”ッ!
乾燥!
石でゴリゴリ。
炒る!そして煮だす!
煎じる!とかやってりゃなんとかならんかね?
って気分で思いのままやってみる。
調合を使えば魔法パワーで薬に早変わり!とかにはならないみたい。
ただ何となくその原料の効果の抽出方法が頭に浮かぶんだよね。
鑑定つかってもたまに書いてるんだけどそれが効率よくうまくできるみたいな感じ?
とりあえず回復効果のあった海藻をあーだこーだしたあとウォーターエイドで作った水と混ぜて寝かせたらポーションができた。
品名:ワカメのポーション
品質:中
薬草を煎じて作られた回復薬。水自体に魔力が込められたものが利用されているため効果が高い。
軽症なら即時回復できるほどの薬効がある。
いや、品名にもワカメつくんか~い。
でもまぁいいものがつくれた。
これは沢山作って置いておこう。
土魔法で作った下手な壺に毎日少しずつ貯めている。
ただ調合はもちろん成功ばかりじゃない。
問題作がもう1つ……
品名:クラムの劇毒薬
個体名クラムの毒を使って作られた劇物。毒に耐性がないものを数滴で死に至らしめる。
毒に耐性があっても完全に防ぐことは不可。
……劇物。こっわ。
せっかくだから毒草を煎じて毒薬つくってみてたんだけどさ?
ウォーターエイド使って薬効あがったんだったら毒魔法使えばいいじゃんって思ったのね?
で、毒魔法と毒草を煎じて作ったのがこちら。
品名:ワカメの毒薬
毒草を煎じて作られた毒薬。毒に耐性がないものに中ダメージ。
じゃあある朝、毒薬詰めた壺の中身空っぽになっててね?
『クラムー?ここに入れてた毒薬しらない?』
≪おいしかったよ~!またジュース作ってね~≫
飲み干しやがった!!
クラムにとって僕がつくる毒薬ってジュースレベルらしい。
いくら作っても飲み干しちゃうの。
もはや好物と言っても過言ではないらしい。
それならもういっそクラムの毒使えばよくね?って思ったのね?
で、これができた。危なすぎる。
自分の毒はおいしいと思わないみたいでクラムも飲まないんだよね。
ただ毒出す代わりに僕がつくる毒ジュースを注文された。
対価は大切。ギブアンドテイク。
そんな調合生活をしてる時ふと……
毒耐性が弱い僕がいるとクラムの攻撃の邪魔じゃない?って思ったの。
クラムは毒耐性がない敵には毒攻撃もメインにしてるからね…
毒の広範囲魔法とか僕が居たら使えないもん……
しゃーない……
アンチポイズンあるしな……
(ゴクッ)
おええええええええええええええええ
クラムが漁に出かけてるときに自分で作った毒薬を毎日少しずつ飲んだ…
≪あー!パパだけずるいー!クラムも~≫
数日でバレたが。
そんなこんなで毎日の早朝に毒を飲むという謎の不健康生活が始まった。
まずい!もう一杯!じゃねーんだわ。
おかげで数か月後には無事【毒無効】を手に入れた。
クラムは【毒吸収】になっていたけどね。
ちなみに僕は毒攻撃は覚えられないみたい。
さて一方クラムさんは?
僕が地上で生活できる資本がつくられるまでの間、
もちろんクラムもぼーっとしてたわけじゃないんだ。
魔法大好きっ子だからね。
本人遊びの感覚だけど。
ある時僕が相変わらず筋トレちっくな何かをしている前で
ストーンバレットやアイスニードルその他使える魔法を打ち続けていた。
(ヒュー……ドーン)
順調に石や氷は大きく固くなっていて魔法のレベルも上がっているようだった。
『だいぶ魔法の威力あがってきたね~』
≪うん~…でもパパみたいに早くうちたいの~≫
ふむ。早く……か。
『そうだなぁ。魔法を大きくすることはレベルがあがったらできると思う。今のクラムの魔法もだいぶ大きくなってきたでしょ?』
≪うん!大きな石もぶつけたら壊せるよ?≫
『ちゃんと練習しててえらい!でも、それをクラムが食べたいお魚さんにぶつけるとバラバラになっちゃうぞ?』
≪えーおさかな食べたい~!≫
『でしょ?ちょっと難しいこというけど破壊力って運動量と質量っていうのが関係してるんだよね』
≪ん~わかんない≫
『うんうん。簡単にいうと早く打ち出すか大きくするか重くするかみたいな話だよ。例えば大きくて重くしなくてもすごいスピードで打てれば同じくらい強い魔法になる。でも魔力は大きくするのにもいっぱい使うでしょ?だから大きくするのに使う魔力を石は小さいままスピードを出すイメージで打ってみれば少し早くなるんじゃないかな?たぶん…』
地球と法則同じなのかは知らんけどね…
でも魔力レベルって一度に使えるエネルギーで算出されてる感じでしょ?
だったらそれでいけないかな?
『見ててね?』
石はなるべく小さいまま…
スピードは……銃弾ってマッハ2くらいだっけ……
結構動画とか好きで見てたからイメージはできるけどなぁ…
うーーーん。
ちょっとキツそう……半分だったらいけるか?
”ストーンバレット”ッ!
(バァーーーーーーンッ!)
『うっわ!』
≪ぎゃあ!うるさあああい!≫
ソニックブームわすれてた……ビックリしたあ。
でもこれって音速は超えたってことだよね?
トレーニングずっとしてたうちにだいぶ魔力使えるようになったんだな……
『すごいスピードがでるとこんな音がなるんだよ。できると思わなかったしすっかり忘れてた。ごめんよクラム…』
≪パパすっごーい!見えなかった!あんな早いの初めてー!じゃああの音が鳴ればパパくらい早いの?≫
クラムは興奮していた。
こんなスピード自然界でみることないからイメージがつくれたなら良かったかな?
『そうそう、あ、あとスピード出す以外にも威力高める方法もあるよ』
≪なに~?≫
『早く打ち出さなくても早く回せばいいんだよ』
超高速切断機をイメージだ…もっと…もっと……
(ギュイーーーン)
行けッ”アイスエッジ”ッ!
(ズバンッ)
『≪おお……≫』
直径1メートルくらいありそうな鍾乳石が真っ二つになった……
自分でつかったけど、こっわ…
≪すっごおおおおい!≫
よくできたな…自分でもびっくりだ…。
『こんな感じでできるだけ小さい魔法で攻撃する練習するといいよ!早くするのもいいしぐるぐる回す練習するのもいいと思う!いっぱいぐるぐるできるとすごい強いからね!クラムの殻もぐるぐるでしょ?小さいのはかっこいい!ぐるぐるは最強!』
≪わかった!練習する~ぐるぐる~≫
見た目派手でデカいのに大したダメージない見掛け倒し魔法とかかっこ悪いじゃん…
それだったら花火最初から作るわ。
ダメージデカい派手魔法はかっこいい!
でも小さいのに同じダメージ出せたらもっとかっこいい!!
上級魔法?ふっ。これはただのファイアだ。
とか言ってみたいやん。
『でも危ないから気をつけるんだよー』
≪は~い!≫
それからクラムはずっと小さい魔法の練習をしている。
呪文のようにぐるぐる~ぐるぐる~って念じてる。
折角海にいるから水圧トレーニングとかもやった。
バレット系の魔法を水中でできるだけ遠くまで飛ばす練習とかね?
なんかガチムチで脳筋生活してんなぁ……
まぁとりあえずこの半年間はこんな感じ!
勝手な僕の魔法の美学をクラムに伝染させたり
調合したり筋トレしたりしながらのんびり暮らしてた。
ちゃんと閉鎖空間つくってドア(土魔法)で塞いでたから危なげも特になく!
ちなみに今日まではステータスをあまり見ないようにしてた。
焦っちゃうしね。天の声聞こえたらそこだけ鑑定で見たりもできるし。
で、今……
≪コーラルクラブ(甲殻類?)のレベルが上限に達しました≫
レベル上限か……
そろそろステータス見ようかな…?
次回久々のステータス解禁です!無理な戦闘はしてないのですが、ご飯の為の漁したりしてじわじわ経験値たまってました!




