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291話 - 終わりよければすべて良し?

 まぁなんとか無事?にクラムの絨毯を取り戻すことは出来た。

 今は帰宅中。


 帰り道はウルフェンさんを背中に乗せて走っているんだ。

 これだけでギルドの管理下にあると思ってもらえるのか騒ぎが全く起きないんだ。


 帰りも大パニックだと疲れるからね。

 助かるよ。

 20階層の転移門から帰るからそこまで付き合ってくれるそうだ。


「なんでわざわざ偉そうな話し方してたんだ?」


『いや、だって……。僕が居たら騒動が起きるのは分かってたし、向かってこられても困るし……。関係ない人に手出しするつもりないんだもん……。だから出来る限り人と関わらないように生きてんの』


「まぁクロの旦那はフェンリルだからなぁ……。怯えられるか討伐されるかになっちまうわなぁ……。まぁ討伐なんてしようがねぇからクロの旦那に向かって行った馬鹿は無駄死にだな」


『やっぱそうなるでしょ!?さすがに僕も攻撃されまくったら殺さず精神貫くつもりもないしさ。敵なら倒すよ。じゃ、偉そうにしてるのが早くない?1番被害が少なそうでしょ?』


「まぁそうなるか……。俺は話せて嬉しかったけどな!あの冒険者たちもそう思ってるさ!」


『僕もウルフェンさんと話せて嬉しかったよ。いい人も居るって思えたしね。まともに頑張ってる子が住みやすい世界になればいいと思うよ』


 人の世界には悪いやつもいい人も居る。

 当たり前のことだけどね。


 今回の件に関しては、正直僕が最初からクラムの絨毯を力づくでぶんどってくるのが手っ取り早かったのは確かだ。


 でもウルフェンさんや頑張ってる冒険者と交流できた。

 だからすごく良かった結果だと思うな。


「とりあえず俺はダンジョンの設備を利用して悪だくみするやつが出て来ねぇように新しい決まりを作って貰えるよう提案してみるさ」


 そうそう。

 僕らだけだとこんなこと出来なかったしね。


 あ、まぁキャシーに伝えることは出来るけどキャシーはどちらかと言えば管理側の人だもん。

 現場の声は大切だ。


『助かる。みんなが適切に施設を利用してくれるなら協力するよ。僕としても人に強くなってもらわんと困るし……』


「困るのか?なんでだ?」


 あ、いや……。

 一般の人にこういう話聞かれた時どうしよっかなぁ。


 特に話すことに問題はないんだけど……。

 僕って星の重大な事知りすぎてるからどこからどこまで話すべきなのか困るな……。


『まぁ難しい話多いから割愛するけど、今魔物と人のバランスがおかしいんだよ。もうちょっと人に強くなってもらわんと神様的には色々困るの。だから僕が神様の使徒活してるってわけ。仕事みたいなもんだね』


「クロの旦那が神の使いってのは嘘じゃねぇんだな?」


『話し方とかキャラとか作ったけど嘘はないよ。ダンジョンの管理人も本当だし、まぁ100階層のボスっちゃボスだし?神様の件も僕が使徒ってのも本当。まぁ信じるかどうかは任せるよ』


「なるほどなぁ。まぁ、俺はクロの旦那の事は信じるけどな」


『なんでそんな簡単に信じるの?』


「そもそも俺の一族の中だとクロの旦那は神なんだって。旦那は神って感じはしねぇけどな?で、実際教会がなんかしてんのかって言われたらよくわかんねぇしな。ディオ様って創造神様の話だって逸話だろ?聖女様は神託とか受けてるらしいって聞いたことはあるが俺がそれを聞いたことがあるわけじゃねぇしな。ってか聖女様すら見たことねぇしよ」


 なるほどね。

 ウルフェンさんには種族的に僕の話が伝わりやすかったって話か。

 それに教会の件に関しては一般の人が内部事情がはっきり分かってるわけじゃないんだもんな。

 

「ってか目の前であんなデカい雷見せられたら信憑性あるだろ?まぁ使徒様なら天罰も落とせるよなぁ。こっちは目の前で見たんだからよ。恐ろしくて悪い事なんて出来ねぇって……」


『あの……黒歴史掘り返されてる気分になるのでやめていただいて……』


 なんか感心されてる……。

 あれはただの魔法です……。

 天罰じゃないです……。


 まぁ、あの魔法使い所無かったから使ってみただけなんだけどね。

 僕の話信用してもらうのに一役買ったらしいな。

 ラッキー。


 絶対に詠唱なんて必要なかったけどね……。

 あれは僕が魔法使ったアピールしたかっただけなんだもん……。


「それに、魔物が強すぎるってのには同意だな。人なんて強い魔物が出てきたらすぐに滅びちまう」


 魔物が強すぎるんじゃなくて人が弱すぎるんだよなぁ……。

 まぁそれは言っても仕方ないことだけどね。


『でしょ?それじゃ色々マズいの。だから人が強くなることには協力するよ。あ。でも僕は個人個人の事見てるわけじゃないから、敵になるなら倒すよ?敵でもないし味方でもないって思って欲しいかな』


「とか言ってる割にはミスリルの剣を冒険者にやってたけどな?」


『いや、まぁそれは……。僕だって個人の感情でも動くよ……』


 だって……。

 家族の為に頑張ってるとか言われたらさ……。

 僕と行動理念同じなんだもん……。


 でもあの子達にも会えてよかったな。

 頑張ってる子達の為にダンジョン活動はして行きたいなと思ったよ。


「要するに旦那は悪意を持ったやつには容赦しねぇ、そうじゃなければ敵視しねぇって言ってるわけだろ?そりゃ普通だろーよ」


『なんだよ……。ちゃんと伝わってるじゃん……』


「あっはっは!まぁ、旦那の事情はなんとなく分かったぜ!俺からもフェンリルを見たら攻撃すんなってギルド員と冒険者に伝達しておくぜ。攻撃したら死ぬと思えよっていう事もちゃんと伝えておくさ」


『マジ!?自由に動きやすくなるの本当に助かる!じゃ、お願いね!』


 ほらっ!

 やっぱり話してよかったじゃん!

 ダンジョンの好きな階層に行けるのほんと助かるよ……。


 使徒活がしやすくなるしいちいち怯えられなくて済むもん……。

 ウルフェンさん様様だよ……。


「お、おう……。すげぇキャラ作ってたんだな……」


『あんな偉そうな話し方が普通なわけないでしょ……。すごく疲れたよ……』


「そりゃそうだな!ちょいちょい浅い階層にもきてくれよ?また話してぇからな!」


『わかった。また落ち着いたら覗きに来るよ。さて、20階層の転送門着いたよ?』


「あー。もう着いちまったか。早かったなぁ。フェンリルの背に乗ってるなんて夢心地だったのによ……。よっこらせっと」スタッ。


『だいぶゆっくり走ったけどね?僕も楽しかったし。まぁ、またその時僕がフェンリルなら乗せてあげるよ』


「フェンリルならってどういうこった?クロの旦那はフェンリルだろ?」


 あらら……。

 口が軽くなってるな。

 ってか別に秘密でもないんだけどね。


『んー。まぁフェンリルって仮の姿だとでも思ってよ。他にも体が変わる可能性もあるって事!じゃ、僕のこと手伝ってくれたお礼に家の娘が焼いたクッキーあげる。帰って奥さんと娘ちゃんと食べてよ』ヒョイッ。


「お、おぉ。そういう事もあるんだろうな?まぁ使徒だもんなぁ。ってこんなもん貰っていいのか?どこから出したんだよ……」


『これが使徒パワーってことで!じゃ、僕行くからね?』


「おう!楽しかったぜ!旦那の家族も見てみてぇなぁ!また会おうぜッ」


 もうみんな見てるけどね。

 エステルとクラマなんてお世話になってるし。

 いつもありがとうございます。


 まぁそれは知る時があればまたね。


『仕事無理しちゃダメだよ~!お疲れ様~!またね~!』


 嫌なこともあったけど楽しかったな。

 一般の人とこれだけ話したのってエデンの人を除いたらどれくらいぶりだろうか。


 ってか知り合いで一般の人ってマリアさんと孤児院の子供達くらいしか居ないからね。

 気楽に話せる人が増えればいいなぁ。


 ・

 ・

 ・


『ただいま~!……ん?何してんのエステル……』


 なんでエステルが跪いて玄関前で待機してるんだ……?

 これどんなプレイなんだ?

 おかえりなさいませご主人様ごっこ??


「おかえりなさいませ使徒様。夕食の準備ができております。先にお風呂に入られますか?それとも私ですか?」


 使徒プレイだったあああぁぁ!


『…………えっと、あの……。酒で、お願いします』


「のぉ……。あれは我の真似か?我、あんなに偉そうかのぉ……」


『あ、いや、あれはノリっていうかなんというか』


「……パパ、あの魔法詠唱いるの?」


『いや、あれはあの時の事情って言うかですね……ああした方が魔法使った感じが出るかと思ってですね……。ってかみんな詳しすぎない?なんで……あぁ……やっぱりか……』


 リビングのスマホテレビサイズのままだ……。

 画面もロックしてないしポケダンつけっぱなしだった……。


『じゅうたんとりもどしてくれてありがと~!たのしかった~!またやってね~!』


『もうやらんッ!やっぱ見てたんだよね!?最悪だ……』


『ずっとみてたよ~?パパかっこよかった~!』


 家族に公開羞恥プレイしてきただけじゃん……。

 どんな罰ゲームだよ……。

 あれ?


『ってかポケダンの画面3階層じゃなくなってるじゃん。ってかこれうちの前じゃんね?ポケダン操作出来たの?』


『クラムがいろいろやったよ~?かめらはうごかせたの~!ほかはだめだった~!』


 なるほど。

 ちゃんとロックがかかってるんだな。

 僕以外は購入画面とかには進めないってことか。


 画面を見るだけならみんなだけでも出来るんだね。

 それなら今後放置してて様子を見たいときに勝手に見てもらったりも出来るかも。


 ってかなんか子供にスマホ勝手に触られた気分だな。

 気分ってか事実そうなんだけど。

 まぁ見られて困る事ないしいいんだけどね。


「ふふっ♪偉そうなクロムさんが新鮮で楽しかったです♪」


『それで僕が帰ってくるタイミングがわかったから跪いてたんだね……。やめてよ。恥ずかしかったんだから……』


「まぁいいじゃないですか♪クロムさんもウルフェンさんと話せて楽しそうでしたよ?見てて私も嬉しい気持ちになってしまいまして、ふふ♪」


『まぁそれはそうかもね。優しい人にも出会えてよかったよ』


「うむ……。我、……あ、いや、私も……みて、おりました……」


『おばあちゃんが話し方を変える必要はないからっ!あれは盛ったの!おばあちゃん偉そうじゃないからっ!』


「それならよいのじゃが……でものぉ……」


「……パパが怒ってくれてスッキリした。お腹空いた。ご飯食べたい」


『そうだね~!きょうはクラムがつくったんだ~!』


『みんなご飯まだなんだね?じゃ、食べようか』


 なんだかんだ夜になっちゃったな。

 濃い1日だったなぁ……。


 その夜はみんなが寝るまでずっと弄られ続けた……。

 特に詠唱の部分がしんどかったなぁ……。


 クラマが魔法の使い方を僕に聞き出して……。

 それに悪乗りしたエステルが詠唱が必要とか言いだしてさ……。

 クラムも楽しそうに話に乗ってた。


 なんでだろ?

 なんかみんな機嫌よかったなぁ。

 僕が怒ったから機嫌が良かったのかなぁ。

 不思議だ……。


 あ、おばあちゃんはなんかちょっとぎこちなかった。

 すみません勝手に真似して……。

 ってか我の部分しか真似してないからね!


 今回人々の変なトラブルに巻き込まれた。

 でも、最終的にみんな機嫌よく終われたみたい。


 上手く行けば僕もダンジョン内の行動がしやすくなりそう。

 話せる人も増えた。

 最初はイライラしたけれど今回の事があって良かったと思えるな。


 今まで何のためにダンジョンの進行を手伝うのかあまりわからなかった。

 僕の生活には直接的に関わりがないからね。

 僕はヒーロ―になりたいわけでもないし。


 家族の皆の未来の為にって考えてはいるんだ。

 それには納得もしている。


 ただ、先と言っても遠すぎるんだよ……。

 2000年後って言われてもなかなか現実味がないんだよね。

 その時には状況も変わってるかもしれないし……。


 でも、家族を守る為に頑張ってる人達の助けになれると思えば少しはやる気が出そうだな。

 ウルフェンさんみたいに頑張ってる職員さんの手助けにもなるしな。

 仲のいい人の活動を応援できるのならそれはしたいと思えるな。


 今後ものんびり頑張っていこう。

 まぁ、終わりよければすべて良しだね。


 さて、僕以外はみんな寝た。

 今日はみんなエデンには帰らずダンジョン内のお家で寝ている。

 僕も久しぶりにみんなと一緒に寝たい……


 でもなぁ……。

 今日は楽しかったけれどエネルギー貯金さぼっちゃったな。

 一緒に寝たいって思う時に限って寝られないなにかってあるよなぁ……。


 毎日アンの復活の為にエネルギー貯金は欠かさずにしてるんだけど、今日は完全に別のことしてたからなぁ。


 やっぱちょっと訓練して寝よっと。

 アンにも早くこの家族の一員に戻ってきて欲しいんだ。


 ってか、アンって転生前の記憶は引き継いでくれるのかな?

 きっとソフィア様のことだし、大丈夫だよね。

 よし、頑張るか!




 prrrrrr……。

 ん?こんな夜遅くに電話?


 あ、キャシーだ……。

 やばい、絶対今日の件だ……。

 僕、怒られるかも……。


『もしもしキャシー?えっと……。どうしたの……?』


「どうしたのじゃないわよ……。クロムちゃん、冒険者が迷惑かけてごめんね……」


 やっぱりウルフェンさんとかから聞いたんだね。

 ちゃんと色々報告してくれたんだな。


『僕が怒られるんじゃないんだ……よかった……。ちょっとやりすぎたか不安だったんだよね』


「なんで私がクロムちゃんを怒るのよ……。クロムちゃんは人々の為に活動してるんでしょ?話は聞いていたし、被害が出ないよう抑えてくれたんでしょうに……。迷惑をかけて申し訳ないわ……。本当にごめんなさい」


『全然いいよ。楽しかったこともあったしね?それだけの為に電話してくれたの?』


「謝罪ともう1つ。折り入って話があるのよ」


『ん?話?どうしたの』


「クロムちゃん、冒険者協会の会長と会わないかしら?」


 …………。


『やだっ!じゃ!』


「やだってクロムちゃん!?もしも……


 プツッ……。

 ツーツーツー。


 終わりよければすべて良しって言ったでしょ!!

 なんでそんな面倒な話引き受けないとダメなんだッ!!


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