264話 - 報連相
二酸化炭素……えっと……
うん、なんか集まってる気がする。
いや、ぱっと見わからん。
空気とか見えんし……。
でも魔力が集まってるんだよね。
神眼で確認しても今僕の目の前に魔力のモヤモヤが集中してる。
だからこれで多分行けるはずだ。
で、この金属のコップに入ってるミルクにこれを集中させて凝縮すれば……
あ、コップごと潰さないように気を付けないとね。
『これでどうだッ!”圧縮”』 ギュッ
………シュワ~
「……ゴク。……ソフィにもらった炭酸水よりシュワシュワ。……おいしい」
『あ、ほんと?すっげぇ手加減したのにこのレベルでも強炭酸なんだなぁ。この圧縮、風属性レベル3とかだよ多分……。これ以上下げると圧力かかんないし調整むずいなぁ……』
まぁ僕は微炭酸より強炭酸の方が好きだからいいんだけどね。
炭酸魔法のヒントは実は大爆発。
あれ、水と火の混合魔法なの。
水素を集めて着火するイメージで作ったんだよね。
水魔法を意識すれば水素が取り出せてるっぽい。
水を意識しないと大爆発にはならないんだよ。
じゃあ炭素ってどうやって取り出すんだろうって何度かやってみたんだ。
二酸化炭素と言えば石灰岩と塩酸。
もしくは水と重曹とクエン酸で炭酸水だっけ?
それくらいならおばあちゃんの知恵袋に頼らなくてもわかる。
で、属性色々イメージした結果土魔法で石灰岩は出来たんだ。
二酸化炭素は化学反応とか使わなくても土魔法と風魔法で作れたっぽいね。
燃焼イメージ持てば火魔法でもできるっぽい。
魔法は使いようだな。
でも土の方がコスパがいいかな?
そこからそれを風魔法で圧縮っていうプロセスだ。
その圧縮に関しても超低レベル。
翠風魔法なんて必要ない。
実際分子とかが動かせてるのかどうかはわかんないよ?
でも、このイメージで魔法が作れてるんだからこの世界の魔法はこれでいいんだろう。
ってことで”ただの”土と風の混合魔法が二酸化炭素魔法だ。
それに水属性もプラスすればいきなり炭酸水が作れるけど今回はクラマのミルクに炭酸ガス入れたからね。
また名前の困る魔法だなぁ……。
適当にクリエイト炭酸でいいや。
飲物作る時しか使わないし、普段呪文名とか言わないよ。
『ちぇ。なんだよ……。魔法で炭酸作るのめちゃくちゃ簡単じゃんか……』
「……3分だった。……ゴク。おかわり」
『クリエイトたんさん~。ぎゅっとな。ほいクラマ』
ふっ。楽な仕事だ。
そして一度複合イメージを持っちゃえば炭素製造と圧縮を別々に唱える必要もない。
一度イメージが完成されればもう1発だ。
創造万歳!
ってか創造魔法どころか上位属性を使うイメージですらなかったけどね。
創造魔法持ってなくても多分ずっと前から作れたなぁ……。
「……ゴクゴク。パパ。おかわり」
『う、うん。いいけどさ……。それ、そんなおいしいの?』
「……うん。世界一。ずっと置いておいて欲しい」
『そこまで!?』
炭酸水保存するなら完全密閉できる容器つくんないとな。
ガラス瓶作ろっかなぁ。
今までガラス瓶を必要としてなかったんだよね。
僕アイテムボックスにアイテム入れちゃうからさ?
アイテムボックス内に気体入れると拡散しちゃうのかな?どうだろ。
まぁ我が子の要望なら作ろっと。
でも、クラマのそれって結局ただのミルク炭酸だよ?
クラマは色々混ぜるよりそのままのミルクが好きらしいんだ。
おいしいのかなぁ……。
まぁ人の好みに口は出すまい。
お肉のお礼になってればいいね。
『あんまりミルク飲みすぎでお腹壊さないようにしなよ?クリエイトたんさん~。ほい』
「……ゴクゴクゴクゴク。……おかわり」
すげぇなクラマ。
僕炭酸一気飲みできないなぁ。
・
・
・
今は夜23時くらいかな。
クラマは沢山炭酸ミルク飲んで寝ちゃった。
僕もスパークリングワインでも作って飲もっと。
それ飲みながら今日も魔法の夜練するか。
僕の体はすぐ眠くなる。
どちらかと言うと朝の方がきついんだよね。
1度寝ちゃうと寝続けちゃうんだよ。
だから深夜帯に起きれるだけ起きて活動するようにしよう。
そして明日の朝はきっと起きれない。
留守番が僕とクラマだもん。
たぶんずっと寝てるよ。
でもエステルが来たら起こしてくれるでしょ。
エステルは本買いに行くって言ってたし午前中に起きる必要はないな。
あ、そういえば爪切らないとなぁ。
クラムとの約束だもん。
訓練前にミスリルのやすりとハサミ作って爪切ろっと。
『クリエイトミスリr……
ぷるるるるる。
ぷるるるるる。
ん?電話?
『”スマホ”ッ』シュンッ。
あ、この着信音、スマホを魔力化してても脳内に音響くんだよ。
便利でしょ?
ふむ、おばあちゃんから着信か。
どうしたんだろ?
『もしもし~。どしたのおばあ……』
「クロムーーーッ!!お前生きてたのかっ!!俺はお前が死んじまったのかとよおおおおお」
うわ。
王様がガチ泣きしながら電話かけてきた……。
『い、生きてるよ……。みんなは元気……?』
「こっちの台詞よッ!本当に心配したんだからね!!」
「えぇ、クロムちゃんの家族の顔を見て不安で不安で……」
王様、リトさん、キャシーか。
本当にみんなに心配かけちゃったなぁ。
「ご無事で何よりです。お体はお変わりないですか?」
スチュワードさんも居た。
ってことはスチュワードさんの店かな?
……それ、スチュワードさん的なジョーク?
『いや、寄生したから体は変わったかな……』
「この反応はクロムさんですね。間違いありません」
何かの確認をされたのか僕は……。
まぁスマホで話すの初めてだろうしそうなるっちゃそうなるか。
「私は昼間クラムさんが買い物に来られたので先に知っておったのですがな。ただ、声を聞けて安心しました」
あら?ラクトさんもいるんだ。
ってか、これスピーカーモードで話してるんだな。
獣人国重鎮メンバー勢ぞろいじゃん。
「夜更け近くにすまんのぉクロム。スチュワードの店へスマホを持って来たんじゃが……。まだスマホの機能の説明が終わっておらんのに電話を掛けてくれといわれてのぉ……」
「ティア様すまねぇ……。どうしても気になっちまって……ずずーッ」
それでおばあちゃんの電話からみんな揃って掛けてきたんだね。
王様鼻水だらだらじゃん……。
こんなに心配してくれて嬉しい事だね。
まぁ急にダンジョン内と通信できるって言われたらこうなるよな。
『大丈夫だよおばあちゃん。まだ起きてるつもりだったし。……みんな、心配かけてごめんね。せっかくだしちょっと話そうか?』
・
・
・
少し落ち着いてきたところでとりあえずみんなに今までの経緯を話した。
即死魔法対抗にダンジョンでずっと訓練してた事。
ダンジョンの訓練中は一度しか帰らなかったんだ。
でももちろん籠って特訓してるって伝えてたんだよね。
それはみんな知ってるんだ。
だから主にその後の事。
ダンジョンのボス、アンに寄生した事。
1か月間意識を喪失していたこと等……。
主にその辺だね。
まぁあんまり話すことないんだけど。
僕意識なかったんだもん。
「寄生は成功していたのですね。報告を受けてはいたので先月までは心配しておりませんでしたが……。小さなクロムさんが消えてしまってからはやはり不安になりました。それから一向に連絡がないものですから」
あー。やっぱそこからが心配のタネか。
みんなに渡してた呼び鈴代わりのぷちクロ消えちゃったんだもんな。
「えぇ、それにそれから2週間ほど経ってからティア様からクロムちゃんが話せなくなったかもしれないって聞いたの……」
「あれは我の早とちりじゃったのぉ。すまぬなキャシー」
『いや、あれは僕もビックリしたよ。僕もそうなる。ライムの事だって僕自身知らなかったんだしね』
僕だって3日くらいの体感だったんだもん。
完全に予測できる範疇超えてるよ……。
「それにしてもすげぇ大変だったんだなクロム……」
「ライムちゃんと会った時にクロムくんかと思ってびっくりしたわよ!」
「俺は真眼もってるからすぐわかったんだがよ?逆にクロムに見えんのに全然クロムじゃねぇんだよ。そもそもクロムは真眼で見えねぇんだ。だからクロムが居なくなっちまったのかと思ったんだよ……。真眼持ってる方が不安になったぞ……」
ほう、真眼でライムは見れるのか。
あれは確か僕の鑑定能力の下位互換みたいな感じになるって言ってたもんな。
ライムの中から僕がいなくなっちゃったから王様にはそれがすぐ分かったんだな。
それにしても王夫妻はライムともう出会ったんだ。
ライムは今どこにいるんだろ?
確認してみるか。
ん……と。スマホ逆探知してっと……。
あ、住宅地にいるな?孤児院の近くだ。
周りに他のスライムもいるのかな?
またライムにも電話かけてみよっと。
孤児院からおばあちゃんの泉が一番近かったもんなぁ。
その辺にクラムがスライムのおうち建ててくれるのかな?
とりあえず定住地見つけられたみたいでよかった。
『あの子も僕はうちの子だと思ってるからよろしくね?それと解き放ったスライム達のこともよろしくね?……捕まえちゃダメだよ?』
「お前の仲間を捕まえねぇっての……。そもそも俺はスライム好きだぞ」
『知ってるよ。冗談』
「まぁそれはそれとして、ライムちゃんは元クロムの体の主って話だよな?多分強ええんだろ?真眼にはそう映ってる。全然そう見えねぇんだけどよ」
まぁそうだよね。
見えないよね。
ライムの見た目は超おっとり系の緑スライムだもん。
『強いね。エデン最強じゃない?だから何かあったら頼るといいと思うよ?まぁ何もないと思うけどね』
「ハチちゃんより強いって事よね?」
『今のところ多分そうだねぇ。ライムは自主的に鍛えたりしないからこの先どうなるかわかんないけどね。そもそも全属性無効だからそれ貫けないと話になんないよ?』
「そうですか。その捕獲、という話が実際あったとして、人間あたりがエデンのスライムを捕獲し連れ去ろうものなら戦争になりそうですね……」
そっか。
スライムも結構乱獲されてるんだよな。
エデンにもそのうち人とかやってくることがあるのかなぁ。
ライムはスライムに手出しされると絶対に動く。
まぁでも……
『戦争にはならないかな?国ごと吹き飛ばして終わり。ってか大陸ごと消えるんじゃない?
創造魔法使えなくても同じ出力は出せるんだよね。
だからライムは多分嵐と炎複合して白炎繚嵐とか使えちゃうんだ。
僕の魔法の使い方じっくり見てる子だから覚えてると思うよ?
それを僕は創造魔法で簡略化してるだけなの。
もし得意分野が僕と同じなら多分蒼氷と極光当たりも同じ出力の魔法使えると思う。
蒼氷地獄とか余裕で使うと思うよ?
でもライムは深淵と翠風は適性足りなくてきついかなぁとは思うね。
……というか、実は僕、そもそも炎に関してはそれ以上の魔法使えるんだよね。
実はもっと温度上げて蒼炎も出せるんだよなぁ……
あれ、出力かなり落として白炎で止めてるだけなんだ。
白炎かっこよくね?
しかも蒼氷と被るじゃん?
んで、そんな温度だけを高くすることが必要な時なんて来ないもん。
白炎で大体みんな蒸発するよ?
ライムは怒ったら蒼炎やっちゃうんじゃないかなぁ……
温度側にフルで出力だすと蒼炎になっちゃうもん。
じゃあみんな消えて無くなるんじゃないかなぁ。
それくらいのポテンシャルありそうだけど、どうだろ……。
あの子1人で技の開発したりするのかなぁ。
念の為教えてあげた方がいいだろうか、うーん……』
「「「「「…………」」」」」
あ、独り言をブツブツ念話で考えちゃった。
多分音声通話モードになってるから僕の念話スマホ越しにみんなには聞こえちゃったよね……。
空気切り替えんと!
『そうだ!一応ライムの分の冒険者ギルドの魔物のプレートくれない?何かあった時安心でしょ?僕が責任取るからエステル印でお願いできないかな?』
「……え、えぇ。わかったわ!スライムなら簡単に出せるわね!私が持ってくるわ!他のスライムの子達の分も大量にッ!」
(何も聞かなかったことにしましょ……。万が一にもエデンの子達には絶対に手出しさせちゃダメね)
『あ、ほんと?それなら安全だ。ありがとキャシー!ライムに関してはこんなとこかな?あと、僕しばらく帰れないからさ。申し訳ないんだけどエデンの様子見ててあげてくれないかな?』
「それは全然いいが、ちょくちょく連絡いれろよ?これでもお前の事唯一の親友だと思ってんだからよ」
『わかったわかった。ほんとごめん。これからはスマホもあるし連絡取れるからさ。みんなも便利だから使い方覚えてね?』
報連相は大切だね。
でも……。
体に馴染む時間が必要だからまた外のフェンリルに寄生する時1か月程かかったりするのかなぁ。
心配かけないように考えないとな。
僕なるべく寄生したくないから外のフェンリルがラストになればいいんだけどなぁ。
「クロムさん。ティア様から軽く話は伺いましたが、このスマホとやらを無料で頂いてもいいのですかな……。氷魔石以上に世界の仕組みが変わりそうな品ですが……。利用価値が高すぎてこの品にいくらほどの支払いをすればよいかの計算も不可能なのですが……」
『お金要らないッ!それ僕の魔法だから!費用ゼロだから!あ、安全面もばっちりだよ!僕それ自由に消したり逆探知したりできちゃうから盗まれても平気!この星どこでも大丈夫!安心して使って!』
「尚の事価値が上がりましたが……。やはり頂いてもいいのでしょうかなぁ……」
『いいの!僕が安心なの!』
「なぁ。その話なら、これを古代文明の遺産とか言って敢えて裏組織に盗ませたりしたらそいつらの組織滅びるんじゃねーのか……」
「一網打尽にできそうですね」
あ、逆に?
そういう使い方もあるか……
それすれば違法奴隷の売人とか一網打尽にできるか……。
『やってみる?いいよ?そのままでもいいしそれ用のスマホっぽい何か作ろうか?なんなら逆探知してロックオンして神雷とか落とそうか?たぶんダンジョン内からでもシステム経由なら外に魔法使えそうな気もするけどね?そもそもスマホ消えてないし』
もちろん作ったさ。神罰魔法。
マリアさんの一件で神罰ってフレーズで連想してね。
神聖をプラスしてデッカイ雷落とすだけだもん。
電磁砲より簡単だ。
まぁこれは創造魔法にするほどの事でもないや。
現在使い所が無い魔法だ。
そもそも雷落とすだけで敵は倒せる!
「あ、いや、いい!またやべぇことがあったらクロムに相談する!」
(神かよ……)
(使徒ですよ)
(あぁ、そうだったな……)
スチュワードさんと王は何をごにょごにょしとるんだ。
とぎれとぎれにしか音声はいってないなぁ。
音声入力感度上げよっかなぁ。
『そう?まぁいいや。必要なら言ってね。協力は惜しまないよ?』
まぁ僕から報告については以上かな?
ライムのことくらいしか言う事ないもん。
『じゃ、僕からの報告は終わったかな?みんな側からなにか変わったことある?』
「そうじゃ。クロムはこの街を”びでお通話”とやらで見てみるかの?」
『やめとく。考えたんだけどね。問題があった時だけでいいかな?外出てからの楽しみにしてるよ。自分の目で直接見てみる時のお楽しみがいいな』
クラムとおばあちゃんが頑張ってエデン作ってるんでしょ?
街の発展はこの2人が主にやってるんだ。
エステルは皆とのコミュニケーション。
クラマは戦闘関連で協力してるみたい。
エルンさんを初め、街のみんなもそれぞれきっと発展に協力してくれてるんだ。
それを通話で済ますのはもったいないよ。
やっぱりみんなの頑張りは直接見たいな。
感動が薄れるし中途半端に見ちゃうのはやめておこっと。
「それも一興じゃの。わかったのじゃ!」
では、報告会といきますか。
あと、例の”アレ”、聞かないとね。
クラマ起こしてこよっかなぁ。
この小説を読んでいただきありがとうございます!
モチベUPの為に評価、ブクマ、感想、レビュー等にぜひご協力をお願いいたします♪




