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225話 - 神の愚痴①

 ソフィア様の家に招かれた。

 招かれたというか部屋にいきなりワープしてきた。


 いつも何もない白い空間で話してるのに不思議な感じだなぁ。

 すげぇモダンな何もない部屋だ。

 とてもシンプルな白のテーブルと黒いソファーがある。


≪まぁお茶でも飲みなさいな≫(パチンッ)


『あ、はぁ……ありがとうございます』


 うまあああああ!

 そうだこんな味だった!

 ってかなんかあの時より感動するなぁ。


 なんかこう体に浸透してくるうまさがあるんだよね。

 日本の緑茶ベースなのかな?


≪懐かしいでしょ。もう君とは本格的に上司と部下みたいなものだし。立って話してるのもね≫


『なるほど。なんか日本茶って懐かしい気分ですね。あまり覚えてないんですけど』


≪まぁ君が地球にいた時間から500年以上経ってるもの≫


 そんなに経ってるんだ……

 あの時100年以上って言ったのも方便なんだな。


≪えぇ、君の魂を調べるのにかなり時間を要したわ。その代わりしっかり調べた。とりあえず君のエネルギー消費が上手く行ってないことに外的原因はなかったようなの。それを調べるのに時間がかかったのよね。ごめんなさい≫


 それは仕方ないな。

 それで今僕の人生を見て居るって感じか。

 内的要因を調べるって感じね。


 ってかそりゃ記憶もなくなるよなぁ。

 多分生命体化して記憶の消失が一気に進んだんだろうな。


≪そういう事よ。君と出会った最初の辺りは出来る限り真実を直接的に伝えないようにしていたの。嘘は何もついていないですけれど。それにまさか人以外になるだなんて思ってなかったもの。人間としての記憶の有無でこんなに君が悩むことは想像してなかったわねぇ≫


『僕自身も生きていくだけなら困らなくなった今になってやっとわかった事ですからね』


 最初はもう命を繋ぐことを最優先に考えるしかなかったんだもん。

 人としてとか二の次だったよ。

 そしてこの件に関しては完全に僕がやっちゃった感じだもんな。


 例えば僕が最初から人以外を希望してたら人の消失に繋がる事とかなら教えてくれたのかなぁ。


≪いいえ、教えていないわね。というより、そんなこと気にして生きている生命いないわよ。記憶の消失なんて自然の摂理じゃない。体を何度も変えるようなことがなければそんなこと気にならなかったわ≫


 それはそうかも。

 僕が手に入れた不死とか寄生とかってマジで碌な事ないな。

 ……はぁ。


 ソフィア様がくれた創造魔法はすごく助かってるし。

 僕って要らん事しかしてないよなぁ。


≪まぁその能力がなければ私とこうやって話すこともなかったし、君の大好きな家族には出会えていないわよ。良かったじゃない≫


 それはそうだな。

 総合的には間違っていなかったと思おう。


『ちなみにどういう事がエネルギー消費につながるかは今は具体的に聞けます?』


≪ええ、もう君自身こちらのシステムがある程度認識できていますから。というか伝えたことと何も変わらないわよ?何度も話しているけれど、こちらのシステムを直接改変するような事や、君の人生に関わり深い情報を伝えることにはエネルギーを消費してもらうことになるわ≫


 カルマ値って表現してくれたくらいだもんな。

 やっぱり単純なエネルギー消費とは考えない方がいいな。

 運命を左右するような事はこれからもあまり聞かない方がいいんだろうな。


≪それには私も反対よ。君の人生は君に決めて欲しいもの。これからは少しお願い事はさせてもらいますけれど。それをするにしても君の人生に大きく差し当たるようなことは言わないつもりよ≫


 そうだね。

 僕もあまり聞くつもりもないしね。

 先の分かる人生とか面白くないもんな。


≪とはいえ、もうこの先は私がわかる情報くらいなら伝えられるわよ。私にも未来が見えている訳じゃないもの。具体的にそれをすればこうなるとは言えない訳ですし。こうなると思うわよ?くらいなら私の想像で伝えられるかしら?≫


 神様も神様じゃないってことは重々分かった。

 神様が知り得ている情報以外は人に相談することと変わらないってことだね。


≪えぇ。神だとか思わずに、普通の人と話してると思ってくれればいいわよ。それに今はそれだけのエネルギーを君が稼いでいるのですから今後私と話すことに差し当たりはないわ。何か困ったら聞いてみればいいわよ。私も一緒に冒険するパーティーの情報役とでも思えばいいんじゃない?ふふ≫


 いや、それはさすがに……。

 ただ、今はソフィア様の加護が膨らんで、僕のエネルギー回収率が高くなって、使徒になった。


 だから普通に話せるってことは理解したよ。


≪でも、あまり私に聞く意味ないと思うわよ?≫


『そうなの?』


≪私だって全人類の動向を把握してるわけじゃないですもの。1つの世界に関してなら君よりわからないことの方が多いわ。それに、君の鑑定と同じように個人にアクセスして調べればステータス情報くらいならわかるけれど、それは君も鑑定持ってるんだから同じことでしょ?わざわざ私と通信してまで聞くことではないわよ≫


 それはそうだな。

 僕が鑑定しても同じことを神様に頼んでもね。


≪そういう事。それに私はいくつもの星を見て居るの。何かトラブルがあったとしても結局君の方が気付くの早いわよ。本来、大きくエネルギー効率が下がった場所を見て居るんだもの≫


 個人の情報を教えてくれとかソフィア様に聞いてもって話だな。

 自分で調べた方が早いよな。

 ちゃんと自分の目で見て判断も出来るしね。


≪そうよ。極論、人1人が今魔物に襲われていて危ない!なんてことに絶対に気付けないわ。同じ時間に同じタイミングで数万と起きているわよ。だから私は傍観者なの。世界の土台は作っているけれどもその後皆が人生を歩んでいくことは各々に任せているってわけ≫


 基本デカいトラブルがあった部分に対してソフィア様は対処している、と。

 それもいくつもの文明単位で。


 だから1つの人間単位でのトラブルに気付きようがない。

 星の仕組みとかを聞くって感じの相談になら乗ってくれるって話だね。


≪そういうこと。だから何か大きなことを知りたいなら聞いてみるといいわね≫


『了解っす、ありがとうございます!これからもズルしない範囲内くらいで聞くことにします』 


 ・

 ・

 ・


『ってかなんもないっすね、ソフィア様の部屋。生活感ゼロですね』


 もっと見たことない機械とか色々あるのかと思ったなぁ。


≪邪魔じゃない。生活に必要なものくらい機械なしで作れるわよ≫


 そういえば確かにそうかも。

 僕ですら魔法で色々作れるのに神様が同じこと出来ないわけないか。


≪それにこんな仕事してたら帰ってくる暇なんてないわ。いくつも星を管理しているのよ?≫


 いや、まぁそりゃそうだよなぁ。

 僕は絶対やりたくない仕事だなぁ……。


≪ただ地球や他の星はそれなりに安定しているの。魔法の無い文明は事故が少ないのよ。その代わり大きくエネルギー回収もできないんですけれどね。手間があまりかからないわ≫


 安定している分、回収率は劣るって話か。

 魔法文明はちょっとしたギャンブルになる、みたいな話か。


≪ええ、その通りよ。他の私と同じ文明人は回収率を上げる為に少数作っているのだけれど……。実は私はあまり率先して作っていないのよね。アテナは暇でしょうけど。君のいる世界でちょっと嫌になっちゃってね……≫


 そうだ。

 ソフィア様の愚痴聞きに来たんだった。


≪あ、そうそう、今後はちゃんと話してくれるかしら?君の存在をこちらに近づけたから心を読むのちょっと疲れるのよ。読めないことはないけれどそれなりに力を使うわね≫


 え、それ大丈夫なの?

 僕神様に近づいたってこと?


≪君にとんでもない能力が備わってたり君の生活感が変わったりはしてないわ。そんなこと勝手にやらないわよ。ただ私がちょっと疲れるってだけ≫


『了解っす。今後心読まなくていいっす』


≪助かるわ。今までは出来るだけ円滑に少ない時間で話せるように心を読んでいたのよ。もうその必要もないしね。まぁ魔法みたいなものね≫


 おばあちゃんが使う読心術の類って話だね。

 神様パワーとかじゃないってことか。


 ・

 ・

 ・


『本題に入りますけど、愚痴ってなんです?僕等の星で魔法文明が嫌になっちゃったと。その話ですよねきっと。……ハイエルフの話から顔しかめましたよね?』


≪えぇ。あの種族エルフと全然関係ないのにハイエルフって笑っちゃうわよね≫


 全然笑ってないけどね。

 悲壮感たっぷりの表情で笑っちゃうとか言われてもな。

 相当疲れてるんだな。


『鑑定にもそう書いてありましたね。関連の無いことはハイエルフ自身も理解してますよ』


 おかしい話なんだよなぁ……。

 エルフと関わりはないって鑑定に書いてるのにハイエルフ。

 どういうことだよ。


≪管理システムから情報は失われていないのね。なるほど。君の使っている鑑定は君の世界の生命体が培ってきた情報をもとに作られている管理システムが作ったデータベースよ。だから私達の認識とは違うの。私達の情報が全て鑑定で閲覧できるデータベースに下界からアクセスなんて出来ないし、その世界の魔力で補えないしそんな魔法使えないわよ≫


『そりゃそうっすね。それこそ神力使いまくらないとって話ですね』


 だからオリジンスライムって表記になったりしてるんだよね。

 神様はアンノウンだって言ってるのに。


 まぁこれはこのままでいいでしょ。

 僕が必要なのは下界の情報だ。


≪ハイエルフって種族名はエルフが勝手に自分達の都合のいいように過去のハイエルフに名付けたの≫


 やっぱそうだったのか……。

 何でハイエルフなんだってめっちゃ思ってたわ。


『劣化劣化言ってるくせに自らつけてんの変な話だなぁ』


≪劣化種族なら保護する理由には弱いでしょ?ユグドラシルがどうしても欲しかったからそのそばで暮らしていた伝承者達にそう名付けたの。私もそれに気付いて驚いたわ≫


 伝承者……?


≪ハイエルフって寿命がとても長いでしょう?過去の記憶を長い間覚えておけるように、必要な歴史が失われないように存在しているの。あの子たちは本来、文明が円滑に育ってくれるように作った生命体よ≫


 へー!

 そうだったんだ!


 確かに、ハイエルフさん達ってそう言うの向いてそう!

 凄く穏やかな人ばっかりだしね。


≪私達は名前を付けて生命を作り出すことはしないけれど、私が名付けるなら”伝承者”や”調停人”って名前が一番しっくりくるわね。エルフとの関連性なんか微塵もないわよ≫


『それがなんでこんなことに……』


≪まぁとりあえずハイエルフって言うわね。ハイエルフはね、長寿や記憶が劣化しないように転生時にはそこにかなりの神力を割いているの。だから成長が遅いのよ。ただそれでも長い間生きていれば他の人種と同じくらいになるはずですけれどね。全ての生命においてバランスは整えているはずよ≫


 そうだよね。

 ちゃんと鍛えれば強くなるんだよ。


 他の生命より魔力はかなり必要なんだけれど。

 その代わり寿命長いんでしょ?

 ちゃんといいバランスじゃん……


≪でしょ?それなのにどれだけサポートしても、成長する前に他種族に滅ぼされそうになるの≫


 ハイエルフの事サポートしてあげてたの?

 傍観者だっていってたのに?


≪基本は傍観者ね。ただ神力があるならキチンとサポートしてるわよ。電気が無いのにシステムも動かないわ。魔法だって作ったじゃない。ダンジョンだって作ったでしょ?転移ゲートなんて元々無かったわよ。ちゃんと世話やいてるわ。さすがに種族単位で滅びようとしてれば手は出していたわ。ハイエルフに全く非がないんですもの≫


 完全に傍観者だったらそんなことはできないか。

 どちらかと言えばサポートに徹しているって感じか。


≪そうね、ただ何度も繰り返しているうちにもうその星にかけられる神力がなくなってしまったわ。あの子たちは重要な存在なのにね……≫


『今聞いた話だと、長い歴史を遡れば問題はエルフだけじゃないってことですか?』


≪ハイエルフは元々少数なりに世界中に居たのよ?今の子たちは世界中の種族から追われてユグドラシルのある魔の森に逃げて来たの。というより私が逃がしたのよ。直接的には作用できないからハイエルフの逃げ道から強い魔物を遠ざけたりしてゆっくりと。私は世界樹のそばで他種族から疎外されることなく成長して欲しいと思って誘導したのよ……。でも集落に一族を全て閉じ込めるなんてエルフは本当に何を考えているのかしら。もう、呆れて何も言えなくなるわ……≫


 なるほど。世界樹の付近に誘導してあげたんだ。

 長い時間を使って成長していけるようにって話か。

 魔の森って魔物強いから成長率高いはずだもんな。 


 イライラするなぁ……。

 そんなに他種族陥れてなにがしたいんだ……。


 ただ、もうわかりきってることだな。

 一旦イライラは置いておこう。

 話進まないな。


『……そのせいで色々悪影響が出てるってことですか?』


 歴史を語り継ぐ一族ってことだろ?

 その一族がいなくなるってことは……


≪えぇ、魔法が失われてしまったのも大いに関係しているわ≫


 魔法が失われたこととハイエルフの関連性か。


『そもそも魔法は何で失われたんですか?』


≪エルフが重要な資材を溜めこみだしたのが原因ね≫


『発端がエルフなの?』


≪発端がエルフとも言い切れないわ。元々領土の取り合いで戦争をしていた。それはどの文明でもやることね。ただ、そのうちエルフが優勢になるようにユグドラシルやその他重要な資材の輸送を遮断して溜め込んだの。魔の森付近は魔素が濃い。資源もいちばん潤沢なの。簡単に言えば戦争に使う資源はエルフ国に1番多いのよ。兵糧攻めのようなものね≫


 食料や資材の供給を絶って敵国の戦力を落とすってことだな。

 ここは王様の認識通りだ。

 やっぱり商業組合を牛耳って資源を自分達有利に操作してるってことだな。


≪すると負けずとその横に隣接している人間国は攻撃魔法の秘匿を始めたの。人間が一番魔法を使いこなしていたからね。魔本なども長い歴史で人間国に多く集まっているの≫


 片や兵糧攻め。

 それを受けて魔法を秘匿し始めた、と。


 ちゃんと経緯があったんだ……。

 戦争が原因……。


≪回復魔法だってもっとあったわよ?クロムくんは水属性で回復魔法使ってるじゃない?元々あったのよ。人々が安全に暮らしていけるように、回復魔法の方に力を注いでいたくらいよ≫


 だよね!?

 光魔法でしか回復魔法使えないことなんかないよ!?

 ってか僕にとって水の方が使いやすいくらいだよ!


≪数百年、人間国とエルフ国の戦争が続いた後、教会が回復魔法を占有し始めた≫


『教会組織が誕生したのも戦争が原因なのか』


≪いいえ、元々光信仰の教会は世界中にあったの。回復などでの支援もしていたわ。だから回復魔法を管理するのに教会は都合がよかったのよ≫


『元から世界中にあった光信仰を利用したと……。詳しいですね?回復魔法を占有した理由は?』


≪えぇ。さすがに事が大きいからその辺りは私も調べていたの。簡単な話よ。エルフ国に新たな回復術者を作らせないようによ≫


 なるほど……。

 それも戦争を有利に運ぶためか。


≪ただ、最初は全体的に見ればそこまで悪い組織でもなかったの。争いを納める為に戦争に利用される回復魔法だけを制限をしようとしていた。ずっと回復されるとずっと攻撃が鳴りやまないでしょ?回復魔法は戦争に利用すべきではないという声から組織が発端したの≫


『それは全然悪いことじゃないですね?僕もそう思いますね』


≪ただ、代が移り変わるごとに過激派と呼ばれる集団に本来の目的は押しつぶされて行った。まぁ有り体に言えば地位と名声と金銭の為ね。他属性まで回復魔法が使えると管理できないじゃない?自分達への信仰が優位に進むように、自分達が囲っている光、聖魔法を持つ信者以外の回復魔法を片っ端から潰した。魔本を燃やし、使えるものを惨殺して≫


 過激派……。

 手っ取り早く、他の回復魔法を潰してしまえって事か……。


≪教会組織は徹底的だったわ。そのうちにそれがもっと進行して人間国とも争いを始めた。そうして光属性以外の回復魔法は世界からほとんど滅びてしまったのよ。その後、聖国として独立したの。今の信者にはもう過激派しか残っていないのよ≫


『今はもう組織自体が腐りきっている、と。もう聖国に神罰落とそうよ……』


≪落としたいわよ!私の好きに出来るなら滅ぼしてるわよあんな組織。直接的に関与できないって言ってるじゃないの……≫


 ソフィア様って自分が作った生命の事大切にしてるもんな。

 たぶん今冷静に話してるけど僕より絶対怒りは強いはずだもん。

 やりたくても出来ないってことだな。


 最初はあんな組織じゃなかったのか。

 理にはかなっているとは思う。


 回復されるから戦争が終わらない。

 そこまでなら全然理解は出来るな。


『ってかあのエセ創造神っておっさん誰?そんなやつ神界にいるんすか?』


≪いるわけないでしょ。あれは確か……創始者を美化しまくった存在じゃないかしら。あ、創始者と言っても過激派のね?ただ、そんな細かい所まで見てないわ。嫌いだし、腹立つだけじゃない≫


『そりゃそうっすね……』


 おばあちゃんの予想が当たってたか。

 あんな存在居ないってことだな。

 じゃあ神託ってなんだっつー話だ。


 今まで教会に完全に興味ない感じだったけどそんなことは無かったんだな。

 その時に僕に話せるような問題じゃなかっただけだ。


≪魔法が使えないことにはこういった歴史があるのよ。わかった?≫


『えぇ。ちなみにハイエルフのエルンさんって人が200年くらい前からって言ってたんですけど、もっと昔からなんですか?』


≪それは今のハイエルフを直接的に幽閉しだしたのがって話でしょ?文明全体でいえば国が出来た時からこんな争いは続いているわよ。もう数千年単位ね。ずっと昔から魔法は衰退を始めていたわよ≫


 ……なるほどね。

 神目線で聞くと色々スケールが違うな。

 今の情勢をどうのこうのって話ですらないんだね。






≪それに魔法だけでなく文明も滞っているでしょ?今の君の世界って人々が文明を築きだして1万年以上経ってるのよ?地球よりもっと昔から存在している星なの。それなのに地球でいう中世くらいのレベルの文明なのおかしくない?≫


 ……そういえば。

 おばあちゃん数万歳って言ってたけど確か幼い時に人の友達が居たって言ってたんだ。

 1万年以上前に村を築く文明はあったってことだよね。


≪水魔法があっても水洗トイレすらないじゃない?君も疑問に思ってたでしょ?魔法があれば地球より作るのが簡単そうな道具すらないって≫


『いや、ほんとそれ。風呂やトイレなんか水魔法あれば一瞬だろ』


 それに火と風属性つかえるんだぞ?

 だれかエアコンやドライヤーくらい考えるだろ。

 科学に頼らなくても熱風だせるんだぞ……。


≪ドライヤーやエアコン?過去にあったわよ。無くなっちゃったの≫


 あ、心読まれた。

 ってかずっと読まれてたな……

 癖になってんだな。


≪えぇ、癖になってるわね……。仕事柄ねぇ……≫


 僕も無意識に考える癖直さないとなぁ。

 ソフィア様相手だと声に出さずに考える事多くなるんだよね。


 えっと……。

 お、神界でも魔力使える!!


『ほいっと』(トンッ)


≪これは?≫


『下界のワイン。気分転換に飲めば?お酒飲めます?』


≪えぇ、アルコールなんて久しぶりだわ。コクッ。あら、おいしいわね≫


『でしょ?息抜きに飲むといいですよ。樽で置いていきますね』(ゴトンッ)


≪いいの?≫


『いいですよ、お金の使い道ないんです。ソフィア様に下界のもの渡せるのに使えるなら本望ですね』


≪ふふふ、じゃあいただくわね。ありがと。コクコク……≫


 おお、飲むねぇ。

 ちょっとくらい脱力できればいいけど。


『まぁ話し戻しますか。……エアコンなんか作りますよね!?なんで!?寒い時あったかい方がいいとか考えるでしょ!』


≪それも人間が失くしたのよ?詠唱しなければ魔法は使えない、さらに魔法は1つずつしか使えない。余分に魔力を使うのは愚かなものがする事だ、という教育で≫


 ……絶句するよ本当に。

 よくわからんけどそれも人間に利があるようにってことだろうな。


 そういえば複合魔法なんか見たことないな。

 そもそも2属性以上持ってる人はレアって話だけど。


≪というより、詠唱が絶対的なら複合魔法は使えないわ≫


『あ、それはそうっすね。2つ口があるわけでもあるまいし……』


≪それに魔石は今とても高価だしね。昔は今より出回っては居ましたけれど。複合魔法の魔石もあったはずよ≫


『気軽に使える金額じゃなかったなぁ。一般人が使えるのなんて屑魔石くらいだよ。属性も複数入るよねぇ』


 そもそもグリフォンの魔石が雷と風を複合した属性入ってるよ。

 全然魔石自体に属性が複数入れられないことはないんだ。

 まぁそんなことしたらより高価になって買い手はつかなそうだ。


≪正しい知恵を誰も広めようとしない。そして、その歴史を正しく伝えるはずのハイエルフはいない。そうやって徐々に歴史も文明も失われて行ったのよ。というより、長い歴史で見れば、何度も同じことを繰り返しているの。文明が進むたびに誰かが破壊する。地球、まぁ日本で言えば高度経済成長期に入る度に誰かが文明を壊すの。だからずっと中世のままなのよ……≫


 あぁ……なるほどね。

 せっかく魔法を作ったり道具を作ってもどこかしらが秘匿したり壊したりする。

 そんなことしてたらいつまで経っても文明は成長しないよな。


≪スローライフでしょこの世界。本当に笑えるわよね……≫


『いや、だから全然笑ってないって……』


 もうこの世界には失望しきってるんだな。

 何万年も見てきたんだもんな……。


『とりあえず色々知りたかった事を知ることができました。ちなみにこれは僕が聞いてよかったんですか?自分で調べた方がよかったんじゃないです?』


≪いいのよ。これは私の愚痴なの。それにクロム君はこの辺りよく疑問に思っていたでしょう?≫


『そうですね。魔法にしても魔道具にしても、なんでこんなことになってるんだとは思ってました』


≪ちなみに君の謎が下界に居ても解き明かされることは絶対にないわ。既に全ての歴史は失われているもの。自分達に都合の悪い歴史は消すわよ。もう誰も過去の歴史の事なんて知らないわ≫


 自分の愚痴にのせて僕が知りたかったこと教えてくれたんだな。

 もう世界でこの情報を知ること不可能。

 歴史はすでに失われている……か……。


『……話を聞いてるだけで疲れましたよ』


≪でしょ?私も、もう魔法文明はウンザリなのよ……。他の皆は文明が壊れてもそれはそれとして受け止めているわ。ただ私はどうしても自分が作った文明や生命に愛着が湧いてしまう。向いてないのよ。私に創造神なんて……≫


 この人も王様と同じこといいだしてるよ……。

 スケールがデカくなっても思う事って同じなんだなぁ。

この小説を読んでいただきありがとうございます!



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