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211話 - 種も仕掛けもないんです

 僕の恐怖を皆に打ち明けた翌日。

 これから少し駆け足で予定を進めていくつもりだ。


 最初の目標はスライム脱出。

 その前にスライムのうちにやっておきたいことを消化する。


 まずは孤児院のみんなへの相談。

 皆には時間をかけて安心してからきて欲しいね。


 駆け足といってももちろん雑にするわけじゃないよ?

 それはそれ。これはこれ。

 子供たちの生活が1番大切だ。


 今日は朝から僕とクラマとエステルで孤児院にお邪魔している。


 クラムとおばあちゃんはエデンに孤児院を作って置いてくれるみたい。

 孤児院には何度も来ているのでこの孤児院をベースにして魔法で作るそうだ。


 今はまだ朝8時くらい。

 孤児院に到着するとマリアさんが出迎えてくれた。

 今日はまだ誰も出かけていないそうだ。


「……ぼく……下にいるね」


『了解!みんなと遊んでてよ』


 クラマは起きている子供達と1階で遊んでいるみたい。

 ココちゃんもまだ寝てるっぽいね。


 口数は少ないがクラマは実はとても面倒見がいいんだ。

 それに口数の少なさは人だから、と言うのが大いに関係している感じだね。


 小さい子供が困ってたりすると無言でサッと手を差し伸べる。

 特に小さい子に大人気なんだ。


 小さい子の面倒はクラマにお任せし、

 2階のマリアさんの部屋に僕とエステルでお邪魔させてもらった。

 マリアさんの部屋はベッドと小さい本棚しかない生活感のあまりない部屋だった。


「何もない部屋ですみません。普段ここで過ごす時間は殆どないので……」


「いえ、こちらこそ急にお邪魔してすみません。今日は少し大事なお話がありまして……」


「何か、粗相致しましたでしょうか……」


 粗相て……。

 最近ドタバタしながらも週1度は王都の家に帰っている。

 孤児院の子たちが来るからね?


 最近王都に滞在できる暇が殆どなかったので家や庭が放置気味だった。

 でもマリアさんがずっと綺麗に保ってくれていたんだ。

 庭の清掃も孤児院の子と一緒にこなしてくれている。


 マリアさんは完全に家政婦長さんスタイルになってしまった。

 タダのお小遣い稼ぎでいいのに……

 本当にめちゃくちゃ助かってるんだ。


「違います!いつも本当に助かっています!ありがとうございます!」


「いえ、私共はそのおかげで毎日の生活にゆとりを持てておりますので。本当に感謝しかございません……。仕事とは関係ないお話ですか?粗茶で宜しければお出しします。少々お待ちください」


『あ、大丈夫ですよ?僕が出しますね。はい』(トントントンッ)


「ひっ!?」


 前回のエルンさんとの話で学んだ……

 初対面の人にどう話かけていいかわからないのだ!


 僕が中心になって話すことが多いから皆忘れがちになるのだが……

 僕は基本コミュ障なのだ!!


 いや、マリアさんは何度もお会いしてるんだけどね。

 初めて話すからさ……

 もう、ナチュラルに介入することにした。


「今の声は……く、クロムさんですか……?」


「そうですね、ふふ♪クロムさんは実は話せるんですよ」


『そうだよ~。クロムです。初めまして!宜しくお願いします』


「は、初めまして……。宜しくお願い致します。……そうでしょうね。少し取り乱しました」


 あら?

 あまり驚かなかった……

 ってか馴染むの早いな!!


「話せることを知っていたのですか?」


「いえ、話せることは知りませんでしたが……。普段から行く先々で私達が助かるように行動してくださっているのを見て居れば知能が高い方なのは分かりますよ。少なからず言葉の認識が出来ているんだろうとは思っておりました。ちなみにクラムちゃんもですか?」


「クラムちゃんもです!クラムちゃんはここの子供達と同じくらいの歳ですね♪」


「そうでしたか……。ずっと私の料理を見て居るので料理に興味があるスライムさんは珍しいなと思っていました。たまに的確に家事の補助をしてくれますしねぇ。エステルさんの使い魔はとても頭がいいんだなと思っていましたが……」


 あらぁ……。

 いや、エステルと初めて出会った時もそうだけどさ?

 言葉分からないフリとか無視ってムズイんだよね……


 マリアさんが荷物もって歩いてる時はドア開けてあげたくなるしさ?

 子供達が転びそうになったら勝手に体動くじゃん……


 助けられるのにこけてケガするの眺めてるのとか無理だよ。

 サッと僕が下敷きになったりしてたんだよね。

 ほら、僕プニプニだしさ?


 クラムも調理台の横でじっとマリアさん見てるんだけどさ?

 パッと無意識に調理器具渡しちゃったりするじゃん。


 見てたけどさ、それダメだよって言うのも違うじゃん。

 クラムの優しさだし。


 もうそれでいいんじゃない?って思ってた。

 むしろクラムは話したいだろうに我慢してたんだよね。


『そっかぁ。そんなに驚かないならもっと早く話したらよかったかなぁ。クラムも僕と一緒。あ、敬語で話した方がいいですか?』


「いえ、雇い主なのでそのままでお願いします。お手伝いを始めてから時間が経ったからですよ。最初にお聞きしていたらそれはもう驚きました。私は警戒心が強いタイプなのでお手伝いのお話を断っていたかもしれません。皆さんの優しさが認識できた今でよかったですよ」


 あ、そうだな。

 確かに、初対面の時マリアさんはかなり警戒してたな。

 今まで話さないで逆によかったのか……


「実は、そもそも孤児院の皆を助けようという話をしたのもクロムさんなんですよ?私はそれに便乗しただけです。なのでお礼はクロムさんに」


『いや、それは別に言わなくても……。便乗したんじゃなくて僕が話すのはマズいからエステルに色々お願いしてるんだよ』


「本当に私共のことを考えてくださりありがとうございます。この御恩は必ず……」(ガバッ)


『ストオォォォォーーーップ!!いいって!僕が見てるの辛かったからやっただけなの!!ほら、本題行くよ!!顔上げて!!!』


 ・

 ・

 ・


「ハイエルフの集落ですか……。私と子供達をそこに?」


「えぇ、今クロムさんや他の皆が魔の森で拠点を作ってくれているのです。私もちなみにハイエルフですよ?」


「魔の森……。それにハイエルフは実在したのですか……」


 ハイエルフの認識そのレベルなの!?

 あ、いや、僕らが話してきたのって王族とか重鎮ばっかりだもんな……


「一般的にはそう思われているのです?」


「はい……。私は人間国からきたのでこちらの方の常識とはずれがあるかもしれませんが……。ええと……」


「何か言いにくいことありましたか?」


「あ、いえ……。人間国ではエルフの見栄の為に作られた架空の話だろうという認識ですね。世界樹の切り盛りをしている方々……でしたよね?話には聞いたことありますが、誰も見たことはない種族ですので本当に存在して居たのかと……」


 ほぉ~。一般認識はそうなるか。

 実際エルフ以外の集落への立ち入りは禁止にしちゃってるんだもんな。

 他国の一般人からの認識なんてまぁそらそうなるわな。


 でもエルフの見栄はおもろい。

 笑える。もうそのままにしといてほしい。


 一般常識と僕らの知識にも結構ズレがあるんだなぁ。

 周りが重鎮だらけだとそうなるか……


「エルフと私達は関係ないですけどね!私達はあの方々とは別の種族です!!」


「失礼なことを申し上げましたでしょうか……」


「あ、すみません!マリアさんはなにも!エルフ関連で嫌な事があったので……はぁ。もうハイエルフという種族名を変えてくれませんかねぇ……」


『その拠点作ったきっかけってエルフにハイエルフが迫害されてたからなんだよ。世界樹の切り盛りをしてた……と言うより世界樹の集落に軟禁されてたの。別にハイエルフに世界樹の切り盛りをする義務とかないよな?』


「全くないです。ハイエルフの祖先が住み心地がいい世界樹のふもとに拠点を作っただけの話らしいですよ?」


 へぇ~そうだったんだ。

 確かにあの付近は魔の森の割に敵弱いんだよね。

 あそこに逃げて来ただけなのかもな。


「そんなことが……。エステルさんの家族は無事なのでしょうか……?」


 マリアさん優しいんだよなぁ。

 エステルの家族の心配してくれてるよ……。


『うん、大丈夫。とりあえず詳しくはまた話すとして、今は拠点をそこに移したから大丈夫なんだ』


「クロムさんがエルフの魔の手からハイエルフを救ってくださったんです!」


「クロムさんはハイエルフの救世主様なのですか……」


『ちがいます!エステルの家族をうちに誘っただけです!』


「もぉ~!クロムさんはいつもそう言うんです!救世主なんですから……ブツブツ」


 話勝手に大きくなるんだよなぁ。

 エステルの親族を家に招待しただけのつもりなんだけど……

 魔の手って……。いや、まぁそうだけど。


『まぁその辺りの詳細はまたハイエルフと話す機会があると思うので本人達から聞いてください……』


「え、えぇ、わかりました。無事ならよかったです。それにしてもハイエルフの皆様の件は、クロムさんとクラムちゃんが話せることより驚きましたね。見た目もあまり人と変わらないのですね?その美しさがハイエルフの特性なのですか?」


『え、そうなん!?』


「それを私達が自覚してるわけではないので……ただ、少し嬉しいですね、ふふ♪」


『まぁ自覚してないよな。ってかなんでハイエルフなんだろうなぁ。見た目の問題かなぁ』


「えぇ、不思議です。そんなに似てますかねぇ?私も見た目はどちらかというと人間寄りだと。耳も長くないですし……」


『ってかどっちかと言うと精霊寄りでしょ?エルフ括りじゃなくて妖精族とかの方が正しいよな』


 ハイエルフってそもそも精霊さんって感じでしょ?

 エルフと遠い昔になんかありそうだよな。


 鑑定さんの記載は精霊と共に暮らす世界樹の守り人、だからね。

 エルフと関係ないって書いてるのに……。

 もう精霊とか妖精でよくないか?


「精霊寄りかどうかの認識はないですが、そちらの方が嬉しいです!」


『種族名って変えれるんだろうか?王様に聞いてみれば?……あぁ。ダメだな。エルフの国、口出してくるか……やめといた方がいいな』


「ですねぇ……。王様には簡単に聞けるんですけど……」


 種族名変えられたらハイエルフがエルフの縛りから抜け出せるかなってパッと思ったんだけどな……。

 逆か。今そんなことしちゃダメだな。

 生存を知らせるだけになっちゃうな。


「王に……簡単に……?」


 あ、話逸れちゃった。

 でもちょうどいい感じにつながったかも!


『ごめん話が逸れたね。まぁ話し戻すと、もし孤児院のみんなが希望してくれるなら僕が作った拠点に来る?って話。ハイエルフと同じ感じで。僕のうちに誘ってるだけだよ。それにこの話は王様も許可してるんだ。ってか秘密にしてる意味ないから言うけど王様と王妃様がそもそもうちにいるもん。バカンスしてるし。一昨日から住みだしたよ?」


「王が住んでいるのですか!?そのような場所に……私達が……」


 いやそうだよな。

 一般的にこの反応になるわ。


『まぁ、王様と王妃様は王族辞める為に来てると言っても過言ではないからさ。いいよ、適当で。エデンの人は王様呼びやめろとか最近言いだしたし……』


 王様だけ王様って呼ぶからさ。

 王様呼びやめろって言いだしたんだよ……。

 嫌なんだって。でも無理だって。王様は王様でしょ……


「それはさすがに……。少し質問させていただいてもよろしいでしょうか?」


『あ、そうだね。不安があったら気楽に暮らせないよね?一片の不安も無くそう!』


 マリアさんは慎重だからね。

 むしろありがたい!

 スローライフに不安なところがあるのは良くない!


 僕等よく必要な情報伝え漏れるからさ?

 完全に安心できるまで聞き倒してほしい!

 張り切って説明するぞ!


「子供たちの安全面は大丈夫なのでしょうか?」


『安全面?僕等が魔物寄せ付けないようにしてる。分かりやすく言えば王都より強固な城壁と結界張ってて、国の一般兵が100人いても歯が立たないようなハチってデカくてかわいい魔物が番犬してて、ってかそれより強そうなギルマスのキャシーがいて、国の暗部のスチュワードさんがいて。王様も王妃様も強いしなぁ。……なんかいつの間にかあそこ世界最強の砦になってない?他の国知らんけど……』


「そういえばそうですね?意識してませんでした」


『うん、友達連れてきた成り行きで世界最強の砦になってたみたい』


「世界最強の砦……」


 これに関しては僕完全に意図してないんだけど……

 ハチは何故か主人呼びだし、何故か重鎮が住みだしたし……


『まぁそれに魔物は石投げてりゃ倒せるよ』


「……石、ですか?そんな訳が……」


『ほんとだよ?』


「近頃はハイエルフの皆は石を投げて率先して訓練してますからね」


『マリアさんもやる?子供も一緒でいいよ?すぐ魔物倒せるようになるから』


 ハイエルフさん鍛えて頑張ってもらうつもりだったのになぁ。

 もはや今、ハイエルフさんの戦闘訓練はただの娯楽に近い。


 自分達が強くなっていくのが楽しくて仕方ないみたい。

 作業の中での一番人気が戦闘訓練になってしまった。 


 本当にのびのびしだしたハイエルフさんの笑顔って今までと全然違うもん。

 楽しいことを気ままにする人達って感じなんだよね。 


 それに次の休みからキャシーが鍛えてくれるって。

 僕……やる事無くなった……


「私が魔物を……?それに子供たちも……。ま、まぁ安全なのですね。王が滞在してるんですもの。それはそうでしたね」


『……王様が滞在してるってこんな所で信用感が生まれるのか』


「そうですね?そういえば……」


『うん、そういえばって感じだな……。なんか意図してないとこで王様パワーが……。だって重鎮共みんなが勝手に相談して僕の拠点に住みだしたんだもん!そんなの狙ってないもん!まぁ僕も助かるんだけどさぁ……』


「王が勝手に……。クロムさんは高貴なお方だったのですか……」


『NO!!!僕は小市民なの!貴族なんかだいっきらいだ!あ、ごめんごめん。次は?』




「ええと……。では生活面はどうでしょうか。生活拠点などは……」


『もう多分孤児院は建ってるんじゃないかな?クラムが、今朝”おうちたててくる~!”って言ってたよ?それに家は異空間に10個程余ってるし。個人宅も居るならあるよ?』


「そうですね?作らなくても家余ってましたね」


「今朝!?い、家が余る?で、ではそのお代は……」


『要らないよ?家建てるのクラムの趣味だし』


「ええ、むしろ住んでくれる方の方が足りていないので……」


 近頃のクラムは他に家を建てたい人が居ないか聞いて回っている。

 服と同じくらい家建てるのが楽しいらしい。

 そのうちクラムの洋服屋さんも誕生するかもしれない。


『趣味……ですが、そう言う訳にも……』


「いやいや、ここの皆に関しては僕が誘いたいから来たんだからね!孤児院のみんなからお金とらないって!」


「……そ、それでは、住まいはお世話になるとしても、こちらから出るという事なら各々で生活費を賄わなければ……。私達はクロムさんにまた雇っていただけるのでしょうか……」


 雇う……?

 そういう考えになるか。


『雇わなくてもその辺に野菜生えてるし勝手に摘んで食べていいよ?肉とかハイエルフさん達の石投げのおかげでもう山積みだからオークキング食べ放題だ。消費に困っている!あ、それにクラムがブラックペパロン作りまくってるからそれも山積みだよ?』


 僕が雇うとしたら給料いくら出せばいいんだ……?

 1日ブラックペパロン収穫したりオーク倒してたらお金山ほど稼げるのに……

 全力で働かれちゃうと月収金貨100枚とかになると思うけど……


「それを1か月で……そんな……」


『稼ごうと思ったら金貨何枚でも稼げると思うけど……。でもうちの人みんなスローライフしたいだけだからあんまりお金に興味ないんだよね。まぁそう言う訳で僕が雇う必要全くないんだよ』


「そんな夢のような話が………」


 なかなか信用を得るって難しいなぁ。

 他には…… 


『王のお抱えの商人さんが趣味で店づくりしてるから勝手に収穫して勝手に売って勝手に稼いで勝手に色々買い揃えて?欲しいもの伝えれば仕入れてくれるからその辺も勝手にできるように組み立てたの。見放している訳じゃなくて本当に摘んでるの売ってるだけで生活成り立つよ?』


「王族御用達の商人の方が……。なるほど、わかりました……」


 ……これはまさか。

 僕が話す度に不信感が募っているのでは……


『僕あんま要らないこと言わない方が安心かな……?でも本当の話なんだ……。説明下手だからなぁ……安全なのわかってもらいたかっただけなんだ……ごめんよぉ……』


「あ、お2人が嘘を言っているとは全く思っていませんよ!クロムさんとエステルさんにはとてもお世話になっておりますので!ただ……少し信じられない話ばかりですので……。こちらこそ毎度すみません……」


 現実味が持てる話ではないのは僕も理解してるんだけど……

 本当にこのままの話なんだよねぇ。


『ん~ん。それだけ子供のこと大切に育ててくれてるってことでしょ?素敵なことじゃん』


「そうですね!それにクロムさんの話はちょっと信じられないかもしれないです。ただクロムさんの言っていることは本当なんです。1か月前に移動してきたハイエルフの皆は既にゆとりを持って生活していますよ?」


『エステルのお兄ちゃんのエルンさんって人が村長さんしてくれてるから暮らしについてはその人に聞けばいいかもね?もう僕より皆の暮らしについては詳しいとおもうからさ?』


 よし!もう人脈に頼ろう!

 コミュ障の僕に説得力を求めるのが無謀なんだ!

 エルンさんにはこういう時の為に村長を頼んだのだ!


「そうですね?私達は拠点から出たり入ったりしていますので。皆とても仲良しですよ?」


「村長がいらっしゃるのですね?わかりました……信じられない話ばかりなのですがとても素晴らしい環境なのはわかりました」


『とりあえず生活に不自由することは絶対にないかな?それは断言できるね』




「あと……教会の手のものは……」


『エルフ国が隣国なんだけど、そこから1大陸分距離があるかな?少なく見積もって5000ギルくらい。絶対教会の手出しは出来ないよ。というか国の衛兵何千人抱えても辿りつけないって。王様にはふざけた話だって言われたね』


「魔大陸にあるとの話ですよね。もしそれが本当なら私達はそちらへどう行けば……」


『僕の能力で距離無視して飛ばせるからさ?魔石作ったんだ。あ、ってかここから行けるよ?今から行く?』


 そっか!

 説明しなくても見てもらう方が早いじゃん!


 これは僕にしか出来ない部分だ!

 最初からそこで話せばよかったなぁ。


「……この部屋から?それに今から……ですが子供たちが……」


『よいしょっと。これが転移用の魔石。ちらっと見てすぐ戻ってくればいいんじゃない?』


「そのようなことができるのですか……?それにこの魔石は……」


『空間転移……。ちょっと説明難しいんだけどね。この世界で多分僕ぐらいしか使えない魔法。簡単に言えば距離を無視して場所を繋ぐことが出来るの。魔の森の拠点につながるよ?クラムに魔石渡しておいたんだ』


「そうですか……。ただ……少し……言っていることがわからなくて……」


 まぁそうだよなぁ。

 この世界の人に空間とか転移とか伝えるのって難しいんだよなぁ。


『見てて?”ゲート”ッ!これが僕の魔法。部屋の端まで飛ぶね?』


「く、空中に穴が……」


 シュッ……ストンッ


『ほら?僕が穴から穴まで飛んだでしょ?これで魔の森まで飛べるからさ?』


「消えた!?それは手品か何かでしょうか……」


『あ、消えてないし手品じゃないんだよ。穴同士が繋がってるんだ。あ、いい所にほうきあるじゃん。ほら』(ニュッ)


「ほうきが切れた!?」


『いや、切れてないんだ。ほら。穴と穴が別の場所で繋がってるだけから』


 スイ―スイ―


『ね?種も仕掛けもないでしょ?ほうき切れてないよ?』


「それに……私と子供達皆で飛び込むのでしょうか……」


 うーん……


 尚のこと安全を伝えるのって難しいんだよね。

 本当に絶対安全なんだけど……。

 最終的にもう飛び込んでもらうしかないんだよなぁ。


 そうだ、これなら!


『ほら見て!分裂ッ!ほら安心安全のクロム産のゲート!今ならタダ!絶対安全!』(ニュッ)


 バタッ……


『「 あ 」』


「倒れてしまいました……」


『これなら大丈夫だと思ったんだけどなぁ……』


 僕、説明に向いてないのかなぁ……

この小説を読んでいただきありがとうございます!



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