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171話 - 帰省

 ギルドにお金を引き出しに行った日の夜……


 明日って言ったけどもう魔の森に来ちゃった。

 待ちきれなかったとかじゃなくてね?

 海の上飛行する方が速いから夜じゃないとダメだったんだよね。


 魔の森のキャンプって僕らは慣れたもの。

 全然くつろげるから森で寝ようってことになったんだ。


 さすがに日中にポートルの港付近から堂々と海凍らせて渡るのはね。

 化物認定待ったなしだよ。


 あと、よくよく考えるとさ?

 王都~魔の森間の距離ってダンジョンの1階層下るより距離近くね?

 ちゃんと距離計った事ないけどさ。

 外だと敵も完全に無視できるし体感速度も違うけども。


 確実に魔の森付近から王都まではすっぽり入ると思うよ。

 ダンジョン広すぎるよなぁ。

 異次元はよくわからん!


「……ここが……魔の森」


『ひさしぶり~!』


『うちに帰ってきた気がしますね~!』


 まぁこの大陸に家あるしねエステルは。

 ハイエルフのことも少し考えてるんだよね実は。

 確定してないこと話すのもなんだからまたおいおい。


『クラマどう?住みやすそう?』


「……空気がきれい……ダンジョンと少し……似てる?」


 クラマは感覚が凄いからなぁ。

 何か感じるものがあるのかな?


『あ、そうそう、魔の森の世界樹ってさ?地脈の魔素を世界に届ける働きをしてるんだって。広い意味で言えばダンジョンと役割が近いってソフィア様が言ってたよ。世界樹ってユグドラシルって名前らしいよ?』


「……魔素……うん……魔力の素……多い気がする。力がでる」


 おお、クラマにとっても環境はいい感じなんだね。

 よかった。


「そうだったのですか!ユグドラシル……世界樹に名前があったのですねぇ」


 ハイエルフにも世界樹の名前って伝わってないんだ。

 特におおっぴらにしてるものでもないのかも。

 神様的には識別番号みたいなものなのかもな。


『パパ~まものくる~!』


『あ、ほんとだね。なんかもう誤差だから誰が誰かわかんないな。近いときはある程度こいつだなーってわかったんだけど。クラマ倒してみたら?最近体動かしてないでしょ?体操にもならないくらいだよきっと』


「……ん、わかった。……体動かしたい。行ってくる」


 実は……最近とても困ったことがあった。

 エステルが街中で絡まれそうな時に人のステータスをみたんだ……

 僕と2人で日用品の買い出しに言ったんだけど……


「おぅ。嬢ちゃん可愛いじゃね~の?ちっと今から付き合ってくんね?」


 なんだよ……こいつ……

 いまショッピング中だろ。


 エステル1人だとやっぱ絡まれるのなぁ。

 クラマいなくて良かった……。


 まぁ一応”鑑定”


 ★種族 : 獣人 名前:ベルン

 獣の特性を持ち生まれた人種。

 尚、この個体は犬、兎の遺伝子を……


 ちょっとまって!?

 なんで!?ステータスは!?


≪下位の生命体のステータスの詳細表示をONにしますか Y/N≫


 下位の生命体!!

 え、ひょっとして……

 こいつカニの時で言う雑草扱いになってる!?


 YE……あ、いや……

 魔物と人種に限りONにしてください!!


≪依頼を受託しました≫


 という事件があったのさ。

 そいつ確認したらステータス100位の一般人だったんだけどね……

 どうやらステータス1000以下だと普通には表示されなくなったらしい。


 たぶん5万超えたときくらいからだろうけど……

 だからその付近もう誤差にしか感じないんだよな……。

 この辺り僕が鑑定さんに依頼してるんだよね。


 細かい情報でいっぱいになるとクラッシュするからさ。

 必要ない情報は削ってくださいって。

 必要そうだったらまたいうからってねぇ……


 要するにベルンは僕にとって必要ない情報扱いということだ。

 ただそれも特殊なスキルとかが多い場合は表示されるようにしてるんだけどね。


 鑑定さん万能!


「……おわった……運動には……ならなかった」


 あ、とか考えてるうちに狩り完了か。

 まぁそらそうか……


 クラマもステータス25000くらいあるし。

 ドラゴン倒してレベルドカっと上がったんだ。


『あ、オークキングじゃん!肉美味しいしラッキー!今から食べよ?』


『やった~!クラムつくる~!』


「やりましたね!好物です!最近オーク類は減ってきたのでありがたいですね♪」


 そうそう、豊穣村に配ったりスチュワードさんに差し入れとかもしてるし。

 あと子供達にも基本オーク肉あげてる。


 これが1番好きなんだって。

 ボアは少し癖あるから苦手な子もいるみたいなんだ。

 オークが1番消費率が高いの。


 あと、獣人大陸は魔物の量がやっぱ少ないんだよなぁ。

 オークあんまり出てこないんだよ……。

 美味しいのに……


 少なく感じるのは魔の森に僕が慣れてるからかもしれないけれど。

 あっちが普通なのかもしれないし。


『こっちの魔物はどうだった?めずらしいね。顔潰れてるけど……殴ったの?あ、そうだ!刀まだ作ってなかった!ごめん!ミスリル……いやエステルとクラマの武器だから僕が出すか……。クラムも手伝ってよ!クラムとの合作になるし!』


『い~よ~!じゃあきょうからねるまえミスリルつくる~!』


「……違う……無属性で作れる。触りたかっただけ」


 あ、そうか。オーク倒すのにあれ使うのはいいのか。

 復讐に使いたくないだけか。そうだった。


『触りたかったって?』


「……肉質。……弾力がある。美味しそう」


 発想がお肉屋さん!!

 触って肉の良さ判定してたのね!?


『そ、そっか……。でも肉質とかあんまり意識してみたことなかったな?ここの魔物美味しそうなの?』


「……うん。よく肥えてる。……あっちではこんな魔物いない」


 クラマの目が輝いている!

 クラマは新鮮な肉が好物だからな!

 そうか、強いってことは魔素を吸収して魔物が栄養豊富になっているってことか……


 僕のステータスでは獣人大陸の魔物と比較すると倍くらいはステータス違うんだよね?

 じゃあ倍くらい美味しいってことにもなりえるのかも?


「私達はここの魔物ばかり食べていたから気付いていませんでしたね?」


『お肉屋さん目線で見たことなかったなぁ?ひょっとしたら街の料理美味しくないって思う理由にその辺も関係あったのかもね?』


「ここで……肉狩る……」


 クラマがやる気を見せている……

 でもそうだな?

 せっかく来たし食材調達しよっか!


『おばあちゃんところいったら数日泊まって食材調達しよっか?』


『さんせー!クラムきのみあつめていい?』


『あ!そうだ!ブラックペパロンとってきて!』


『え~クラムあれいらない~!』


『そんなこと言うなよ~ついでにー!なんか甘いもの見つけたら取っとくからさ?』


『やくそくね~?』


「私も美味しい野草を摘みましょうか。お肉はクラマくんが一番とれそうですし、私は野菜類を担当しますか?」


『あ!キノコってある!?僕キノコめっちゃ好きなの!』


「うふふ♪見つけたら取っておきます♪」


 やば!楽しい!

 めっちゃテンション上がってきた!!

 僕この森やっぱ好きだー!!


『じゃ、その時はクラマが肉担当、クラムが甘いものとスパイスね?エステルは美味しい野菜とキノコ!僕あれだ。世界樹拾ってくる。そろそろ減ってきたの。そもそもあまりとってはなかったからさ?』


「私達の武器や装飾品をいつも作っていただき、ありがとうございます」


「……助かる……ありがと」


『使ってもらえる方も嬉しいよ?な~クラム?』


『うん~!つかってくれるのうれしい~!』


 何となく帰省が決まったけど……

 したいことってめっちゃあったな。


 そしてとてもたのしい!

 自然の中で生き抜きタイムだ!!


 それにしても……


『僕等にとってここってさ?』


「……いい狩場」


『もりが1ばんおちつく~!』


「美味しい食材が豊富な過ごしやすい場所でしかないかもしれないですねぇ……」


 だよなぁ。うん。

 やっぱりここにメイン拠点を構えることは決定だな!


『故郷から離れて良さってわかるもんだなぁ。灯台下暗しだ』


 人の方が魔物よりよっぽど疲れる。

 魔物は強くさえなればなんとかなる。

 考えること少なくてこれが1番生きやすいよ。


「それは……クロムさんの前世のことわざ……というものですか?」


『海に灯りを届ける灯台って高い建物があるんだよ。こっちで言えば燭台の真下って暗いよね?みたいなこと。身近な事程気付きにくいって例えだね』


「確かにそうですねぇ。街とは比べるまでもなく圧倒的にこの森の野草の方が美味しいです。森を出ないとわかりませんでしたねぇ。あ、ではクロムさんもそれですねぇ……」


『え、なにが?』 


「いえいえ、なんでも♪」




 僕が何に気付いてないの……?

 気になるんだけど……

この小説を読んでいただきありがとうございます!



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