169話 - ぽいぽいぺい
クラマの気持ちや力のことを話してまた家族みんなが仲良くなれた気がする。
色々話すことは大切だ。
僕普段はあまり根掘り葉掘り聞く性格でもないんだよね。
今回のことは命の危険があったから色々聞いたけど。
みんな楽しく過ごしていてくれればそれでいい。
だから意外とクラムとクラマが普段2人で何して遊んでるのかとか知らなかったりするんだ。
だいたいクラムの試食とか服合わせしてることが多いけど。
そして今日はみんなで久しぶりにお出かけDay。
ずっと休んでいたから少し外に出たいって。
クラマが孤児院に行きたいらしい。
せっかくだから送っていくついでにみんなで出てきた。
その理由がね?
とうとう……ギルドにお金が振り込まれたらしいんだ。
1回目くらいみんなでそれを見に行こうという話になったの。
前回の氷魔石はちゃんと納品したんだ。
いや、当たり前なんだけど……。
溶岩エリアのことですっかり頭から抜けてたよ。
ポイポイって作成して、ペイって投げたくらいの印象しかなかった。
頭の中はみんなのアクセサリーでいっぱいだったからね。
その、ぽいぽいぺいを当日荷運びの人が護衛付きの大人数で取りに来た。
僕らは話さない方がいいかなと身構えてたんだけど……
そもそも喋る機会もなかった。
前日に出来た魔石を納屋に入れていた。
エステルが荷運びの人をそこに案内した。
じゃあササっと荷馬車に詰め込んで厳格な礼をされて直ぐ帰って行っちゃった。
まぁそうか……
地球でも宅配の人と長話なんかしないわな。
身構えてて損した。
その後、
いらないドロップアイテムをラクトさんのお店に直接持って行った。
たぬきの商人さんね?
意外と小さかったんだよ……お店。
と言うより商会って僕が思ってたお店ではなかった。
商品を売ってさえいなかったんだ。
王の直属って聞いたから国一番の豪商だと勝手に思ってた……。
「ガッカリしましたか?あっはっは。ここは私が普段書類仕事をする為や荷物を置く為に使っているだけです。私は店頭での商いは行っていないのですよ。王に理由を伝えろといわれていましたな。その理由は……」
簡単に言うと、ラクトさんは王直属。
エルフの息がかかりたくないということ。
前、王様とバーで話したときに言っていたが、
王はずっとエルフ国を怪しんでいる様子。
商業ギルドはエルフ国に本拠地がある。
エルフ国に色々情報を握られない為、
ラクトさんのお店は商業ギルドに属していないそうだ。
ギルドに絶対所属する必要があるわけではない。
冒険者もそう。冒険者登録しなければ魔物を討伐してはいけないという決まりはないんだよね。
ただ、ギルドに所属していなければ色々面倒。
まずギルドからの依頼は受けられない。
あと、関税が多く取られる、その他手続きや申請等のギルドの代行も受けられない等……
地球風にいうと……
仕事あげないし、税金高いし、確定申告は自分でやってね?
みたいなことになるって訳。
ラクトさんは国に関わる商いや王からの依頼等を専門に行っているらしい。
だからそもそも店頭で直接商品の売買などはしていないんだそうだ。
地球で言うところの、会員専門のネットショップみたいな感じかな?
会員が王様だけどね。
儲け話は好きで商いをしない訳ではないそうだがそれは趣味程度という話だ。
それの方がうれしいかも。
ラクトさんの趣味にジャム売ってください。
ラクトさんへのお礼だしね?
王様は僕達がエルフにいい感情を持っていないことを踏まえ、ラクトさんに話をしてくれたそうだ。
何も言わなくても色々気遣ってくれる……
いいやつだ王様……グス。
で、だ。
あれから2か月以上経ったんだけど、
初回は売買経路などの確保の為に振り込みが遅くなると言われていたんだ。
その1回目の利益が振り込めたって通知が数日前に家に入ってたの。
まだ魔石は10分の1も売れてはいないそう。
氷魔石の取引金額と、さっと買い取り手がつく属性装備系のドロップアイテムの売買が出来たそうだ。
まとまった金額になったので一度ここで振り込んで、
今後は月1回月末に振り込んでくれるらしい。
給料日みたいだね。
内訳等の詳細はギルドに行けばギルド銀行でもらえるらしい。
もちろん各ギルドでお金は降ろせるんだ。
だから僕たちは今から冒険者ギルドへ向かうって訳。
キャシーいるかもしれないしダンジョンギルドの方ね。
クラマがまだ本調子ではないことも踏まえてしばらくはダンジョンお休みだけどな!
ってかもう嫌だ!
あんなキツイと思ってなかったぞ!!
ギルド銀行は1階の専用窓口。
こっちに来たのにキャシーはいなかった。
でも、正直ダンジョンギルドの方が利用しやすいんだ。
みんなやることが決まってるのかテキパキしている。
普通のギルドのように誰かが溜まっていたりしないんだよ。
普通のギルドはそこでパーティー組んだり依頼を受けたり……
色んな冒険者がギルド内で談話しているからね。
そこに並んで数十分……
「次の方はこちらへどうぞ~」
『……ぼくたち? ……眠かった』
『……ん~よばれた~?ねてた~えへへ~』
『王都のギルド待ち時間が長いのがなぁ……まぁ最初だけだから。あんまり興味もないでしょ?』
『……うん』
『かえりにおさとうかお~?』
『そうだな~買い物して帰ろっか?』
お!個室……?というか簡易ブースみたいな感じ?
『個室が用意されているのですね』
『よかったね。安心して確認できるよ』
しっかり仕切りがしてある感じだ。
皆が見えるところでお金の受け渡しは行わないようだ。
ありがたい。
「本日のご用件をお伺いいたします」
「あ、はい……入金されたお金の確認をしたくて……」
「残高照会ですね?では冒険者カードの提出をお願いします」
こっちの世界でも残高照会は残高照会なんだね。
まぁ他に言いようがないか。
エステルが冒険者カードを渡すと、
職員さんが首にかけていたカードにかざし、そのカードが青く光った。
この世界の魔力認証システム便利だよな。
魔力のおかげでこの辺りだけ地球よりハイテクなんだよな。
「はい、Bランク冒険者のエステル様ですね。お取引履歴等の控えは必要でしょうか?こちらで確認なさいますか?お控えのお渡しには銅貨2枚必要です」
あ、紙代だなきっと。
確かエステルが依頼の紙ちぎろうとしたときにそんなこと聞いたな。
『どっちでも……僕多分見ないけど……』
「何かあった時の為にいただいておきます。銅貨2枚ですね。これで」
『お、エステルはちゃんと控え取っとくタイプなんだな。』
『いえ、恐らく今後はあまり見ないです。物の価値を知っておこうと思いまして』
あ、なるほど。
確かに僕等人の世界のこと無知だからな。
参考書替わりってわけだね。
たしかに。それなら僕も暇なときに見てみようかな。
3分程待つとすぐに担当の人が戻ってきた。
「お待たせいたしました。ではこちらがお控えになります」
エステルが長方形の紙を2枚受け取った。
A4サイズくらいかな。
こっちが内訳。
あと付箋くらいの小さい紙も1枚渡された。
そこに今の残高が書いてある。
この世界は紙を使う文化はあまり進んでいない。
レシートのようになが~い紙を渡されたりはしない。
多分この紙も手書きだ。
振込などが行われる度に専門の人が個人用の紙に取引の内訳を書き留めてるんだろう。
あと、小さい残高用の紙は多分今確認して書いてきたんだろうと思う。
魔力認証システムとの差が凄いよね。
エステルが……小さな紙をとって皆にも見えるようにしてくれた。
どれどれ?僕ももう読めるからね!
4812496……
『よん……はち……いち……』
『よんひゃくはちじゅういちまんだよ~?』
『……ねぇね……はやいね』
『えへへ~おべんきょうとくい~!』
皆もちゃんと少しずつ文字を読めるようになっているようだ。
いい事だね。
最近エステルがお子2人組に本読んでくれたりしてるからね?
変な技は、教えないでね……
『お金の単位ってなんだっけ?』
『コルトです………』
『じゃあ481万コルト?』
『そうです……これで10分の1なのですか……』(カタカタカタ……)
481万円?
『じゃあ……えっと……金貨4枚と81銀貨と24銅貨ってことだね!ボロ装備売っただけなのにいい金額になったね!ってかあんなボロ481万でよく買い取ってくれたな……。あ、氷魔石分も含まれてるんだっけ。内訳はまた今度でいいや』
『違いますよ……なんでそうなるんですか……最後の96どこにいったんですか……』
『あれ、ほんとだな。銅貨って100円くらいでしょ?100コルト?僕そういえばコルトって単位がどう使われてるのかしらないや。じゃあこの世界って鉄貨とか石貨もあるの?』
『えん……というのはクロムさんの前世の貨幣単位ですか?……銅貨1枚が1コルトです。鉄貨や石貨という貨幣は……少なくとも一般流通はしていません……』
あ、そうそう、地球の言葉とかは僕よく使うからもうみんな覚えちゃってるんだ。
チートだー!とか言うしね。
ただ、円とかこっちの世界で使う意味のないことはみんなの前では使ってない。
ややこしくさせるだけだからね。
鉄貨と石貨ないんだ……
ん?
『……じゃあこれ銅貨が481万枚ってこと?』
『そうですよ……。ですので……白金貨4枚と81金貨と24銀貨と96銅貨ですよ……。10分の1で……しかも……白金貨1枚程は氷魔石の金額です……』
………約5億だと。
10分の1で………。
……しかも1億はほぼ定期で入るってこと?
ぽいぽいぺいだよ……?
は??
『マジか……ちょっと意味わかんないかも』
『私も意味わかんないですが……マジです』
『……それ……どれくらい?』
『クラムのかいかえる~?』
『クラムの貝は……買えないかもしれない……』
『えぇ、クラムちゃんの貝は……多分買えません』
君は伝説なので……
『じゃあたいしたことないね~!へへ~ん』
『あははは、そうだな!大したことないな!!』
『そうですね!ぜんっぜん大したことないですね!!』
クラムの貝くらいしか世界に買えないものはないけどな……たぶん……
『……そう……食べられればいい……お金いらない』
食べるのには多分一生困らないと思う!
もういらないと思います!!
「あの~エステル様……お引き出しはなさいますか……?」
「あ!すみません!じゃ、じゃあ……金貨50枚ほど……」
どうしよう……大金持ちになってしまった………
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