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167話 - クラマのこだわり

 ……バタッ。


『クラマッ!!』


「クラマくんっ!!」


『クラマー!!』


 溶岩竜との戦闘を終えた後、

 納刀してすぐにクラマは意識を失い倒れてしまった。


 出現していた4本の尾はすぐ元に戻り、

 防衛本能が働いたのか倒れてすぐクラマは狐の姿になってしまった。


『クラマ~!パパー!クラマたすけて~!!』


『当たり前だっ!こんな場所じゃ休ませられない!回復は移動しながらする!急いで家に運ぼう!!』


「はいっ!私が運びますっ!!」


 ダンジョンの環境は悪いためその場で寝かせる訳にもいかない。


 戦闘時間は30分に満たない程。

 殆ど一方的に攻撃をしていたように見える。

 結果だけを見ればクラマが圧倒していたように見えるが……


 回復する時にステータスを確認するとHPは既に15%程。

 スリップダメージは大きく、さらに覚醒?でかなり体に無理をかけた様子だった。


 階層主部屋を出てすぐ移動ポータルがあった。

 移動しながら回復だけ急いで行った。

 エステルの大き目のバッグにクラマの姿を隠して家まで帰ってきた。


 すぐ2階にかけ上がりベッドに狐の姿になったクラマを寝かせた。


『クラムおみずもってくる~!』


『頼む!くっそ……回復したのに……呼吸が落ち着かない……』


「かなり無理をしたんでしょう……」


『クリーンッ……ダメだ。もう回復はしきっている……。これは疲労だ……』


「そうですね。今日は交代でクラマくんを見てましょう」


 家に運んでからも呼吸はかなり浅く疲弊しきっていた。

 ベッドの上で苦しそうな顔をしていた。


 なんども回復をしたが意味をなさなかった。

 全力疾走したあとや病気の後の疲弊……

 そんな感じだろうと思う。


 クラマが尾などを出現させているときの状況が僕にはわからないが……

 通常状態ではないのは確かだからな……。


 また……空気中の毒素……苦しくなる物質のこと。

 クラマは”通常時”3時間で呼吸が苦しくなり始めるといった。

 高熱の空間内での高速戦闘、覚醒、スリップダメージを受け続けている状況が通常時なはずがない。


 ダンジョンから帰ってきたのに誰も休むことはなくずっとクラマの周りに寄り添っていた……。


 止まらない汗をエステルが拭いたり、

 僕が回復魔法を定期的に欠けたり……

 そのうちクラムが水やスープを持ってきて口に当ててあげると目は覚まさないが少しずつ飲んでいた。


 家に帰ってきたのは夕刻程の時間。

 結局その日は目を覚まさなかった……


 ・

 ・

 ・


「………」(キョロキョロ)


 ボンッ……


「あれ……ぼく……」


『クラマー!心配したぁ~!!』


「クラマくん、よかった……」


『起きたかクラマ!体は大丈夫か!?』


 目を覚ましたのは次の日の夕方頃。

 丸1日程クラマは寝ていた。


 朝になると少しずつ汗も引き呼吸も整ってきた。

 各自クラマの周りで交代でご飯を食べたりしながら見守っていた。


「……ごめん」


 クラマが状況を理解したようで謝罪の言葉を発した。


『しんぱいしたの~!』


「……うん……ごめん……ねぇね」


「もう体は大丈夫そうですか?」


「……たぶん……でも……体が重い」


『クラマの体のことは分からんからな。またどんな感じだったのか落ち着いたら教えてくれるか?』


「……うん、……パパ……ママ……ごめん」


「クラマくんが無事なら、いいですよ。でも、あまり無理はしないでくださいね?」


「……うん……ママ」


『僕は……特にいうことはないよ。そこまでしてやりたかったことなんでしょ?』


「……うん」


『そう、ドラゴンの討伐おめでとう。じゃあとりあえずみんな寝ろ!クラマが心配で誰も寝てないんだぞ?あんまり家族に心配かけるなよ?それだけだ』


「……うん……ありがと……パパ」


 そこからもクラマの体調は中々回復しなかった。

 最初は普通の食事を受け付けない程のレベルだった。


 食事ができなければ中々体力は回復しない。

 少しずつ何回にも分けてご飯を頑張って食べ、

 ある程度動ける体調に戻るのには1週間程の時間を要した。


 その間は誰も家から出ることはなく、

 特にクラマに質問などもせずに、

 僕らもダンジョンで疲弊した体の休息に当てた。


 ・

 ・

 ・


 1週間後……


『どう?そろそろ普通に動けるようになった?』


 トンットンッ


 クラマがその場で飛んで体の調子を確かめている。


「うん……でも……戦闘は……無理そう」


「そんなすぐ戦いのことを考えなくていいですよ?徐々に戻しましょう」


『そ~そ~!ゆっくりしよ~?』


『ほんとだよ。溶岩階層かなりキツかったぞ……。僕が!もうしばらく戦いはごめんだ!だから気にすんな?』


「……うん……ありがと」


『じゃあ、なんかつまみながらでも下のリビングで皆と話出来そう?』


「……うん……全然平気……寝てるのも疲れる」


「じゃあお茶でも用意しましょうか?」


『クラムおかしつくってくるね~!!!』


 ・

 ・

 ・


 今後のクラマの体の為にどんな体調だったのかだけでも知りたい。

 聞いておかないと対策が練れないからね。


 疲弊のレベルが尋常ではなかった。

 あの変身?は諸刃の剣なのか?


 皆で1階のリビングに座り、

 クラムやエステルがお茶とお菓子を用意してくれ話す準備が整った。


 あ、ちなみにエステルお茶くらいは淹れれるよ?


『じゃあ、まずはドラゴン討伐おめでとうだ!』


『おめでと~!!』

「お疲れさまでした!おめでとうクラマくん」


「うん……みんな……ありがと」


『まぁこんな改めて話す感じになってるけどみんなクラマのこと怒ったりするつもりは全くないから心配しないで?』


「そうですね。クラマくんの体のことが知りたいだけですよ?」


『そ~そ~!』


「……うん……大丈夫」


『まず……何から聞こう?ドラゴン退治どうだったの?キツかった?』


 クラマはあまり話すの得意じゃないからね。

 ゆっくり話してもらおう。


「……ん……環境」


 まぁそうだろうな。

 あの場所じゃなかったら苦労してそうには見えなかったかも。


「そうでしょうね?ドラゴンに苦戦しているようにはあまり見えませんでしたね」


「……そんなことも……ない」


『そうなの~?かんたんにみえたよ~?』


「熱かった……すぐ苦しくなって……長く戦えないと思った」


 あーやっぱりか……

 ちょっと強引だなと思ったんだ。


 クラマって同等の相手には本来慎重になるタイプだ。

 時間かけて隙狙いでヒット&アウェイで戦うタイプだもんな。


『でも、ピアス取っただろ?あれはなんで?』


 理由は分かってるけどね。

 一応クラマの口から聞きたいからね。


「……温度変化無効は……パパの力。回復魔法も……自分で勝ちたかった」


『まぁ、そうだろうね。でもドラゴンとかクラマの過去関係のことだけな?心配はしたからね』


 そう、もう約束だからってカッコつけてたけどさ。

 心配が尋常じゃなかったよ……。


「そうですよね、ふふ♪クロムさん口では約束だからっていってましたけど」


『パパのおててすっごいちからたまってたもん~』


『言わなくていいの!!』


「ですので……私達もギリギリまで見ていられたんですよ?」


『うん~かたなおれたときね~?もうクラムもいこうかとおもった~』


「……そうなの……集中してて……気付かなかった」


 当たり前でしょ!?

 息子に危険が迫ってるのにただ見てられるわけないよ!

 何かあったら瞬殺するつもりだったよ!?


 ずっと魔力チャージしてたからね!?

 一撃で電磁砲で脳天消し飛ばす準備して今か今かと見てたよ!!

 クラマがヤバくなったら0.01秒で刈り取るつもりだった!!


『まぁいいよそれは!言いたいことは分かるよ。あのドラゴンから火炎取ったらドラゴンじゃないもんな。何のために倒したのかわからないよな。恨みもあるだろうけど、自分だけでドラゴンを倒せるか確認したかったんでしょきっと?』


「……うん……そう……確認にならない」


「そうだったのですか……。それでクロムさんは手出ししないって決めたのです?」


『うん、僕が同じ立場だったらそうするからね。クラマが全力を出せるまでは見て居ようと思ってたよ』


『どうだったの~?』


「……ダメだった」


『ダメだったの!?あれで!?』


「一方的に見えましたけど……」


「……ブレスを吐かないように……ずっと攻撃して……飛ばさないように……落として……」


『そういえば……1回しか火炎放射しなかったな。それも狙ってやってたのか……』


「ドラゴン……ずっとブレス吐く……そうなったら戦えない」


「ずっとドラゴンを倒す為に調べていたのですね……」


「うん……だから……動き回ってた……狙いを付けられないように……」


 それほど恨みが強いってことだな。

 僕等が手出ししていたら絶対遺恨残ったな。


「でも……僕の力で……勝てなかった」


『なんでだ?クラマ1人で倒しきってたじゃん……』


『うん~たおしてたよ~?』


 そういえば……

 戦いの渦中でもそれ言ってたよな……

 それ言ってから一瞬だったんだよ……


「……ぼくじゃダメージを与えられなかった……刀……折れた。ごめん」


 僕じゃダメージを与えられなかった……

 ってどういうことだ……?

 刀で倒したかったってことか?


『それは僕の武器のせいでしょ?どっちかというと僕が悪いと思うんだけど……』


「クロムさんのせいとは言わないですが、刀によるところは大きいと思いますよ?」


『うん~もっときれてたらかってたよ~?』


「……パパは……わかってない」


 そう言ってクラマは目を俯けた……


 なんですと!?

『え、なんか……僕、変な事言ったの!?』


「違う……。あの刀は……とても切れる。……あれで勝てないならどれでも同じ」


『そ、そうなの……?』


「……あんな刀……ない。あれで勝てないなら……ぼくの力不足」


え……最終的に勝ってたんだけど……

なにか……クラマにこだわりがあったのか……


「……ぼくは……ドラゴンは……ぼくだけの力で勝ちたかった」

この小説を読んでいただきありがとうございます!



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