162話 - 弾幕ゲーム
71階層、溶岩エリアへ僕達は出発した。
まさかダンジョンでに命がけのシューティングゲームをする羽目になるとは……
まずはこの階層でこの溶岩エリアが1階層どれくらいの時間がかかるのかを確認したい。
練習では71階層の真ん中までしか行っていない。
1発がヤバいフロアだから……。
マズいときは引き返してくるのすら危ない。
練習には練習を重ねたが本番1発勝負だ……
ダンジョンは下の階層に降りるごとに少しずつ広がっていく傾向にあるのだが僕ら的には誤差だ。
だいたい毎回10分もかわらない。
『エステル、クラマ。何度も言ったけど可能な限り2人で避けてくれ。僕がシールドを出すとトカゲメテオがシールドにぶつかって音が出てその後の連鎖がかなり僕らに寄ってくる』
『……了解』
『大丈夫です!』
『あと5分くらいだよ~』
『おっけー!』
話も全て念話だ。
もう可能な限り音は出さないようにする。
可能な限り2人で。
どうしようもなくなれば僕が手を出す。
風精霊は飛行に使っている。
オーブ外にいるのは火と雷と闇と光の精霊だ。
物質攻撃が必要な精霊は今回は出てきてない。
何かの精霊術の拍子に音を立ててしまう可能性が高いからだ。
2か月トレーニングを行いステータス的にもかなり速度が上がった。
エステルの速度は2万を超えている。
クラマも同じくらい。
クラマは元々エステルよりステータスが低かったからそのおかげもありレベルが上がりやすかった。
ステータスはエステルにはほぼほぼ追いついた。
誰か1人だけが危ない状況からは脱することができた。
エステルの飛行は精霊依存になるが、
ある程度精霊を扱える力も比例して大きくなっていくようだ。
かなり速い。
その代わり、前にも話したかもしれないが、
エステルは速度が乗ると急に止まれない。
最近は足場を作って反転したりしている。
だけどこのフロアだとそれができない……
基本エステルに道を探りながら進んでもらう。
進路はエステル任せだ。
あと5分というのは……
それでどうしても避けられないポイントがあるんだ。
基本溶岩の上を飛んでいれば音はならない。
でもたまに大きな島が存在していて急には躱せない場所があるんだ。
それが今言ってるポイントのこと。
敢えて僕等はそこを往復して練習した。
だから最初のポイントはわかっているんだ。
見えてきた。
3、2、1……
『左……大丈夫』
『了解です!このまま行きます!』
『うん、あの角度なら当たらない』
『お~!』
GOAAAAA…
うん、置き去りにできた。
クラマの耳と反応速度はすごい。
頭を出す前にどこかわかるみたい。
エステルが急に進路変更できない分進行はエステルに任せクラマには進路をずらしてもらう感じだ。
さすがにバックしたり急停止は出来ないけど左右へ急ハンドルを切る事なら可能だ。
エステルが滑らかに動作する分、クラマには急角度の方向転換をしてもらう。
僕は感知を広く張って感知からの目視を最初にするよう努めている。
溶岩の中はもうあきらめている。
そこに集中すると感知範囲が狭まってしまうからだ。
トカゲがかなり進行方向から横にずれてでてくるとこっちにメテオが飛んでこないんだ。
そのメテオがどこかに衝突した第2陣が始まる時にはもうはるか後方。
問題は僕らと角度があまりつかないとき。
近いか前後にトカゲが出た時だね。
そうすると飛び去った後、
僕らの真後ろに近くになるんだよ。
もしこっちを見て打ってきたら外れても射撃角度的に僕等より前方にメテオがヒットする。
第2陣のことまで考えないとダメになるんだ。
第1陣の1発目はこの布陣なら恐らくほぼ躱せる。
第2陣からが危ないんだ。
想像がつかない。
さて、ここからはわからない。
とりあえずこの階層がどれくらいの距離があるか、だな。
71階層に入ってから45分くらい経った。
『すみません!前の島上空、かわせません!』
『わかった!見る!……3、2、1』
『右……左』
『左!曲がります!』
GOAAAAA…
『うん、ちょっと近い。でも第2陣は離れれば来ないな』
『りょ~か~い』
AAAAAA!(ドンッ)
おお、正確だ……すごい。
後方で連鎖が起き出してる。
でもすでにそこからは離れた。
クラマが最初に発言する方向が敵の位置。
次にいうのはエステルへの旋回指示だ。
クラマは沢山喋っている時間はない。
僕がその後詳細を伝える係だ。
さっきのままのエステルの位置だとメテオが当たりはしなかった。
でも第2陣に巻き込まれてる可能性のある近さに着弾していた。
あらかじめもう離れておくんだ。
だいたいの角度が把握できるようにこの1か月かなり飛行訓練をした。
クラムの防御が問題ないってわかってクリーンや色々準備が整ってからの期間ね。
エステルの飛行とクラマの天駆の組み合わせは割と早く思いついたんだ。
だからずっと合体の練習をしていた。
1階層の最初のポイントでは事故はゼロだった。
なかなかいい布陣だ。
その後は特に問題なく1時間少しくらいで次の階層への階段に辿りついた……
・
・
・
『”ウォーターエイド”ッ!”クリーン”ッ!』
『ありがと~!』「助かります!」「…ありがと」
『この距離だとみんな手こずらない限り魔石使わなくていい。ウォーターエイドも僕が受け持つよ。途中いいところで1,2回使うくらいでよさそうだ』
今は一旦階段で休憩。
クラムと僕のMPがフルに回復するまでの時間だ。
装飾品のおかげで熱さの問題はないからね。
僕はクリーン。
クラムは常オーブシールドでかなりMPを消費するからね。
ただずっと使いまくってるから自動回復がかなり早い。
これくらいなら1時間で回復できる。
休憩にちょうどいいくらいだ。
そういえば……
この世界にはMPポーションとかはないのだろうか……
「次の階層が近くてよかったですね!」
『と、いうよりエステルとクラマの速度が上がってるんだと思うぞ』
「……実感ない」
『はやくなったよ~?グリフォンぜんぜんおいつけないもん~』
この階層ではずっと高速で飛び回る練習をしてた。
それもあって2人は努力値もプラスアルファで速度がかなり上昇している。
クラムはずっと全力オーブしてたから防御力また上がったし。
僕は……基本感知や空間魔法系統に一番気を張ってるからまた知能特化に伸びてるけど……
「この先どうしますか?」
『そうだな。問題ある階層まではこのまま頑張ろうか。ただボス階層までは2分割しよう。僕が起きてる。飛びっぱなしは疲れるよ』
「……うん……ずっと集中……疲れる」
「そうですね。敵とは完全に戦わず一直線に進んでいるので早いとはいえ疲労は結構たまりますね……」
何も問題がない場合エステルに1番精神的な疲労がたまるはずだ。
みんなの行動をゆだねているのだ。
プレッシャーもすごいだろう……
『だよね。僕に気を遣わず休憩中は休んで、いいとこまで来たら寝るといいよ。しっかり回復して欲しい。この階層は階段の中まで敵来ないから階段は熱さだけ何とかなればゆっくり出来る。直線状に居ないとトカゲメテオ当たんないしね。換気とか浄化とかしながら僕も休むから心配しないで』
『なんかあったらおこしてね~?』
『うん、もちろん!クラムが必要になったら起こすよ!ありがと。ってかまだ寝ないよ?できれば……75階層までは進みたいな……』
疲労もたまるし無理してトラブルに合うと対処できなくなる。
1日で進んでボスが強かったら大変だ。
だけど長く滞在できる環境でもない……
2日……が目安かな………
休憩終わって72階層を飛んでいる。
風景は特に変わらない。前階層と同じだ。
『右……右……天駆』(シュッ)
おわッ!
天駆は結構揺さぶられるな!?
エステルと絶対離れないように服の底をずっと掴んでるんだけどね。
やっぱビックリするな……
GOAAAAA
GOAAAAAAA
GOAAAA
『エステル!まだ右!ちょっと近い!』
『ハイッ!』
AAAAA!(ドンッ)
AAA!(ドンッ)
AAAAAA!(ドンッ)
………ドカアァドカアァドカアァァァアン!!
GOAAAAA……
GO………
『ナイス判断クラマ!』
『ないす~ッ!』
『……ん、大丈夫』
『ありがとうございます!』
少し近くに出たから2陣の影響がある場所だった……
クラマの天駆はもう個人の判断に任せている。
僕等じゃ反応が間に合わない。
出てくる前に天駆使ったな今……
凄い……
ギリギリに躱すときに使うときもあれば距離を稼ぐために使ってもらうときもある。
今のはナイスだった。
エステルの飛行だと2陣が結構危なかった……
まだ大丈夫。
2人のおかげでシールドを使うような場面はない……
72階層を終え73階層も特に変わらなかった。
何度か打たれはしたが危ない場面はなかった……ふぅ……
74階層……
岩がかなり乱雑にあるな……
浅瀬みたいな感じか?
おおきい島は少ない……
その代わり陸地の量がおおい……。
結構マズいなこのフロア……
『このフロア結構意識強めていこう!気付かない所で音鳴っちゃうかもしれない!』
『……うん』『わかりました!』
『お~ぶにちからいれる~!』
『たのんだ!』
これじゃかなりの範囲の石を巻き上げるかもしれないぞ……
エステルにそれでも可能な限り岩が少ないところを選んでもらい飛行してもらっている。
何回かトカゲが姿を現したが何とか躱せている。
1度クラマが天駆を使う事態になったがそれでもその一発で躱せた。
それからもしばらく飛行し……50分程経過した……
もうすぐ見えてくると思うんだが……
『前、一面に岩礁があります!躱せません!』
『あれやばい!もう止まれないか……シールド使うこと覚悟で行く!!』
そろそろ上空通るぞ!?どうなる!?
『たくさん……真っすぐ……天駆』(シュッ)
『はいっ!!』
GOAAAAAAAAAA!(ドンッ)
GOAAAAAAAAAA!(ドンッ)
GOAAAAAAAAAA!(ドンッ)
GOAAAAAAAAAA!(ドンッ)
GOAAAAAA……
GOAAAAAAAAA……
めっちゃ出てきたッ!!
エステルじゃ躱せないッ!!
『お~ぶッ!ぜんりょく~!!』
どっちとは言えない……
かなり広範囲で音が鳴ったためトカゲが左右から現れた。
これではどちらかに寄る事が出来ない。
クラマが弾丸の間を縫って天駆で躱した。
エステルはクラマを信じて飛行を続けている……
クラムは万が一に備えオーブシールドに力を入れたようだ。
数発の弾丸は左右に安全圏に消えて行った……
『まだ2匹打ってないッ!』
『後ろ……パパ』
1匹は躱すの無理か……
『”リバース”ッ!!』
……AAAAAA!(ドンッ)
……シュッ……ドンッ!!
はぁ……はぁ……あぶねぇ………
シールドじゃなくて咄嗟にゲートでメテオを反転して後方遠くへ飛ばした……
クラマがパパと言ったら躱せないか……
または躱せても被害がデカい判定だ。
危なかった……咄嗟だった……
あと1匹の分の弾丸は大幅に外れて行った。
そしてなんとか74階層階段に到着。
「すごいです!あんなことできたんですね」
「……助かった……ありがと」
『パパすご~い!はねかえした~!』
『いや、あれダメなんだ……。ゲート系は同時に複数出せないの。だから誤差で同時に来たりすると対処できない。だからあれ宛てにできないんだ。はぁ……心臓とまるかと思った……。スライム……心臓どこなんだろ……』
あくまでゲートだからさ……MP消費も激しいしね。
あまり多用すると咄嗟の時に困るし。
あれを前提に動くのは無理だ……
そこまでの信頼感はまだない。
まだ思うように扱えない……
でもまぁ今回は……これでよかったか……ふぅ……
「なるほど……。あれがあると思って行動してはいけないということですね」
『そう、あれ前提に動いちゃうと対処できなくなるの』
「わかった……全部……躱す」
『クラムのお~ぶにもまかせて~!』
『クラムのオーブには当てないようにしないとダメなのよ……。でもずっと力張ってるだろクラムも……。力はぬけないからな。ごめんな。早くセーフティー見つけて休も』
『うん~!だいじょうぶ~!あめちょーだい~?』
『好きに食べな?』
クラムは何もしていないように見えるがずっと力を張り続けている状態だ。
クラムにも実はかなり疲労が溜まる。
この階層疲労が溜まらない人はいない……。
みんなずっと力んでいる感じだ……
「次の階層も岩礁地帯なのでしょうか……」
「……速度……落とす?」
『落とすと落とすで当たりやすくなるんだよな……うーん……』
『あぶないところはみんなでみよ~?』
『ゆっくりならそれもできるか……。じゃあ次の階層は岩礁地帯きたら遮音はって感知と目視で進んでみようか』
「……わかった」
「そうですね。試してみましょうか」
『うん、今日はこれで終わりだからセーフティーまでに僕のMP使い果たしてもいいし。クラム、最悪僕囮するから僕置いてエステルとクラマとセーフティー行って。そうなったら囮引き受けてめちゃくちゃするからみんなはぶっ飛ばして逃げてね』
『パパは~?だいじょうぶなの~?』
『パパ1人なら……まぁそうだね。なんとかなるよきっと』
……というしかない。
正直なところ一番生存率が高いのはクラムだ。
それもダントツで。ただそんなことは絶対にさせない。
最悪1人なら大きな音立てまくってゲート連発でそこから避難すれば何とか射程圏内からは外れられるかな。たぶん。
少し地形が変わってきたな。
今から引き返せる……うーん……
微妙なところだ……。
それならセーフティー狙いの方が確率は高い。
かなりステータスを上げて来たけれども戦闘とはちょっと話が違う……。
判断に困るところだ……。
「……クロムさん1人の方が生存率高いのはわかってます……。まさか溶岩地帯が引いてくるとは……。嫌ですが……わかりました。でも最悪ですよ!?」
「……うん」
『わかってるよ!みんなでセーフティーに行こう!それにしてもセーフティーにはごり押しでいくとして……。この先どうしようか……。これひょっとして溶岩地帯浅くなっていくのか?そうするとまた作戦練りなおしになるぞ……』
岩礁地帯が見えてきてるってことは浅くなってきてるわけでしょ?
トカゲって陸地行動も出来るもんな……
どうなるんだこれ……
急に倒す方面で話考えた方がいいのか?
そうなると……飛ぶ作戦は使えないぞ……
うーん……
トカゲの特性は変わらない。
だから近場にいるやつは戦闘音できっと一斉に襲ってくる。
マグマドボンもきついけど
トカゲ自体は陸地にいるほうがややこしいな……
75階層も同じような地形だった。
敵をほとんど出さないようにスローペース……
ただ……3倍くらいは遅く進んでいる……
エステルが止まれるようにね。
岩礁近くに来た時にだけさらにスローペースに落として遮音エリアを張った。
その岩礁の中に広めの岩の孤島があり、そこがセーフティーエリアになっていた。
特に囮をすることはなかった。
とりあえず作戦は成功した。
ここも別に空気がいいわけではない。
敵の心配がないだけ。
要するに階段と変わらん。
このエリアあまりセーフティーの恩恵はないな。
起きて空気清浄機やらないとな……
ちなみにクリーン道具は作れないんだ。
創造魔法レベルの道具は作れない。
チートは付与出来ないって感じ。
付与しようとしても反応しないんだ……。
そもそもクリーンどころか翠風の時点で無理。
次の階層からちょっとスピード制限したほうがいいのかなぁ。
でもスピード制限すると敵は出にくくなるけど万が一の時に避けづらくなるんだよ。
というより……
陸地になるなら空飛んでスピード出す戦法は使えなくなる……
この階層あまり長くいるとみんなも僕も体力もたないと思う。
みんなは精神力の問題。
僕は起きっぱなし魔法使いっぱなしが確定しているから集中力がどんどんおちていくだろうなぁ。
次の階層からどうなるんだろうか……
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