144話 - 禁忌
ここは……どこだ………(ムクッ)
洞窟……?
「目が覚めましたか?体調はどうです?」
『ダンジョンで空に解き放たれる夢を見てたんだ……僕……高所恐怖症なのに……』
『ゆめじゃないよ~?』
「ひっ!!」
「パパ……寝てた」
『そうなの!?』
「えぇ……かなりストレスだったようで途中で気を失ってしまいまして……今は夜ですね。ここは73階層と74階層の間ですね」
『まだ半分も来てないの!?やっぱりかなり距離が伸びてたのか……くぅ……』
「いえ、距離が長いというよりこのエリア……かなり乱雑に足場があり直進が出来ないのです。クロムさんが気を失ってからは少し足場を飛ばしてみたりもしたのですが、ワイバーンの量がとても多く大きく空を飛んでショートカットすることができないんです……」
『なるほど……。ちなみにここは……空じゃないんだね』
「ここ……階段」
『あぁ、階層と階層の繋ぎ目か!ここは敵来ないの?そういえば階段で休んだことはなかったな……』
『くるよ~?し~るどはってるの~』
『なるほどな……階層の間でも敵はくるのか。そうだよね。そうなったらここがセーフティーになっちゃうもんね……ちょっと怖いけど……感知ON……うぅ……』
「大丈夫ですか!?感知入れなくていいですよ!?」
『いや、すぐ切るよ。”蒼氷牢獄”』(バッキーーーンッ)
空間感知で階段の空間サイズを把握して絶対零度の氷の壁を分厚く張った。
『で、これ』(コロコロ……)
「……これは?」
『ん、ただのミスリルの玉。要らないミスリル剣溶かしたの。これに温度変化無効効果と空間魔法を付与した。僕炎と氷無効だからそれに伴う温度変化無効にできないとおかしいじゃん?だから絶対必要になると思ってスキル作って道具作っておいたんだよ。置いておけば半径20m程は温度変化しないよ。空間魔法はエリア指定用だね。ゲートは無理』
「これは便利ですねぇ」
『うん。クラムの蒼氷を白炎で溶かしたように温めると氷溶けるから。あの時に温める以外で冷気遮断する方法作らないとダメだなと思ったんだよね。朝までここを炎で温めてたら氷薄くなっちゃうよ。起きとくからたまに張り直すけど』
「なるほど、互いに潰し合ってしまうんですねぇ」
『そうそう、困るよね。とりあえずみんな疲れたでしょ。クラムはシールド落としな?』
このエリア、めちゃくちゃしんどいな……
僕のことじゃなくてね。みんな疲労すごいでしょ。
変わってあげないと……
『ありがと~パパ~』
『んーん。みんなごめんね。僕何もできなくて。何とかしようと思ったんだけどずっとのことだから。数日間で治すのは多分きつそう……。せめて休憩中とか夜寝るときは僕が担当するから感知とか切ってみんな休みな?』
「……ありがと……パパ」
「ありがとうございます♪一休みできますね~ふぅ~」
『ちなみにこの効果を魔石に込めようとしたら割れたの。魔石ほんとに僕ら要らないね。やりようはあるんだろうけどね。熱を発する魔石や冷やす魔石作る事はできるけど、多分無効ってのと空間魔法を使ったエリア指定がきついんだろうね』
『ませきはたべものだね~』(ガジガジガジ)
『僕らがスライムのうちはそうかもね。ははッ』(パクッ)
「たしかに……冷やす物を作る魔法と、熱を遮断する空間を作る魔法は全然違いますね」
『そうそう。結構魔力使うよ。これに関しては温冷どっちも無効だし。冷やすエリアつくればこのボールだけで冷蔵庫簡潔しちゃうね』
似た魔法でも効果の入れ方によって全然魔力消費ちがうなぁ。
発想力鍛えないとね。
『それはそうと……このエリアの体感どう?僕全然みれてなかったからさ』
「……きつい……1体1体は倒せる」
「そうですね。階層主がたくさんいる感じですね」
『クラムはたおせるけど~たぶんみんなちょっとかたいとおもうよ~』
「そうです、そんな感じですね。たくさん来ると辛いです」
「体力が……あと、空……縮地と天駆は……かなりむずかしい……」
「私も……闘気術や精霊魔法で倒せはしますが……格闘術系は地面ありきになるのですこし不安が残りますね」
んー……。
そうだろうなぁ。
地面で暮らしてる生物の技は地面ありきなんだよ基本。
僕が海中で何もできなかったように。
いきなり環境変わって戦えるようにはならないよ……。
『みんなはどうしたい?合わせるよ。ここ一気に飛ばす方法は思いついた。僕に遠慮しないで』
「本音を言えば……練習しておきたいです……」
そうだなぁ。
エステル万能だから何でもできるけど主体は格闘だもんな。
……あれ格闘だっけ!?この子双剣士じゃなかったけ??
双剣つかってなくね??飛刃アッパーでうってたけど。
『エステルっていつ格闘家にジョブチェンジしたの?』
「精霊さんを完全に解き放つと剣で戦うの不自由になるんですよ……」
あ、なるほど……なかなか塩梅がむずかしいのか……
剣にも精霊術使ってるしわ寄せがくるのか……
「……僕も……体力と……重心が……ん」
『わかるよ。天駆とか縮地使い続けてると踏み込みの時とかに合わなくなるよな』
「………合わない……それ」
『ずっと狐化してたのは?影響あるの?』
「………普通には……大丈夫。……全力だと………まだ」
『そりゃそうだよな。何年間も獣型主体だったのにここ数か月で調子もどらんよな』
「……うん……変」
クラマはもう絶対練習したいよね。宿敵が空の敵なんだもんな。
あと、ずっと狐で過ごしてたもんな。
骨折のギブスつけてる数か月でも元戻るのに時間かかるのに……
年単位はやばいよ。これだけ動けてるのでもすごいよ……
『クラムはあわせるよ~?ここならすこしけいけんちはいる~!おてつだいするよ~?』
『クラムで経験値スロットル動いてるって相当だよな……』
『なんでこんなにきゅうにつよくなったんだろうねぇ~?』
『それはここがダンジョン目的で作られてないからだよ多分。神様の後付けなんだもん。強さを調整するにも限度があるっていってた。この下多分魔素相当たまってるんだよきっと』
『じゃあここからかなりつよくなるのかな~』
『ソフィア様は戦闘のことわからないっていってたもん。アテナ様が強いの押し込んだのかもしれないね?』
「なるほど……それはそうですね。バランス調整しつつ作られた場所ではないんですもんね」
『うん、あくまでエネルギーの為だって』
「……じゃ……特訓しないと」
『進むならそうだね。進むとしてもゆっくり少しずつでいいかもしれない。ここからは多分一気に行くの無理だと思う。僕も……高所恐怖症治るかなぁ。がんばってみる……』
「クロムさんは無理しないでください!!弱点があってもいいんですよッ!!」
『……う、うん……ありがと……なんでそんな必死なの』
「いえ、クロムさんの為を思ってですっ!」
『まぁ苦手なものが得意にはならないと思うよ。ただ、感知しても問題ないくらいに。気を失わないレベルにはしないとね。ずっと役立たずになっちゃうよ。久しぶりに精神耐性弄るか……。今……あぁ咄嗟に9まで上げてる。スライム慣れしてきて2まで落とせてたのになぁ最近……』
『これからどうするの~?』
『どうだろ?1か月程かけて特訓する?本来1か月かけて下まで降りようとおもってたんだけど……ちょっとキツそうでしょ。とりあえずセーフティー探してそこが暮らせそうなら久々にそこで野宿暮らしする?住める感じじゃなかったら階段暮らしかなぁ……』
「クロムさん大丈夫なんですか……?」
『あぁ、ここ地形へのダメージカットされてるじゃん?絶対壊れないならやりようあるよ』
「……パパがいいなら」
『じゃあ明日の朝から、セーフティーまで駆け抜けよっか。今日はおやすみ』
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”蒼氷牢獄””蒼氷牢獄””蒼氷牢獄””蒼氷牢獄””蒼氷牢獄””蒼氷牢獄””蒼氷牢獄””蒼氷牢獄””蒼氷牢獄””蒼氷牢獄””蒼氷牢獄””蒼氷牢獄””蒼氷牢獄””蒼氷牢獄””蒼氷牢獄””蒼氷牢獄””蒼氷牢獄”
『クラムー!!全力全開シールドー!!!!』
『おっけ~。んんんんんん、しーるどぉぉぉ!!』
『みんな僕のスキル共有で遮音とった!?クラマ特に!耳良いし上の耳も絶対!鼓膜ぶっこわれる!音だけで死ぬかもしれん!!』
「……ん?……パパ……喋ってる?」
「エステルほんとしっかり僕抱いててね!?多分衝撃えぐいから!地面に居ると僕吹っ飛んじゃうかも!」
「はい!!任せてください♪」
(このエリアは本当に役得ですね……出たくない……)
一応……大丈夫だと思うけど……
「”ゲートッ”!!」
これで階段の出口と入り口をゲートでつないだ。
僕の想像がただしければこれで向こうから来たダメージ反対に流されるはずッ!!
『いくよー!みんな遮音ー!!!』
『は~い!』「大丈夫です!」「……?」
いくぞ……
こわいよおおお……
絶対全力で使ってはいけないと封印した禁忌!
ダメージ別次元に飛ばしてくれるダンジョン限定!
それも地形に覆われ前後以外のダメージなし、
最悪ゲートでダメージ飛ばせるこの場所限定品だ……
じゃないと僕もきっと……
魔法とか関係なく衝撃で死ぬ……
残り魔力全部もってけ!!
絶対禁忌魔法……
『”エクスプロォォォーーーーーーーーーォォオオジョンッ!”』
74階層から生命の息吹が消えた……
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