126話 - 人間
ダンジョン内でひと悶着あったので冒険者ギルド王都のダンジョン支部に来た。
ダンジョンから外へ出て階段から見渡せば正面通路すぐにあった。
『おっきいなぁ……人の量がすごい……』
種族もバラバラ、相当数のパーティーが滞在している。
また、ここは本当にダンジョン関係に特化しているようでいつもの掲示板などは全くない。
その代わりダンジョンの5階層までの地図が壁に貼ってあった。
「すごいですね……ダンジョンの地図あったんですね?」
『そうだな?まぁ我先にって感じの階層でもなさそうだしな。秘密にする必要もないんだろーね。それでみんな同じ方向に歩いて行ってたんだなぁ。ちゃんと説明書は読まんとダメだなぁ』
「そうですね……ウルフェンさんの話……もっとしっかり聞いておけばよかったです」
『関係ないない!ルールわかったうえで喧嘩売ってきてんだろうからさ?そんなに落ち込まないで。な?』
「はい……」
喧嘩してからみんなちょっと暗い……
罪悪感があるんだろう……この子たち喧嘩嫌いなタイプだもん。
一番喧嘩っ早そうなクラマも家族関係のことじゃないと絶対怒らないよ。
ちなみに前は服屋さんでクラムがつくってくれた着流しを乱暴に持たれて刀抜きかけてた。
あれはまぁ……店員さん服が気になっただけだろうから……。
『パパ~!キャシーいたよ~』
『どこ!?』
「あ、居ました!受付から奥の方の大きい机に座ってますね!」
『あ、いた。……目立つなキャシー。ありがたいけど……ただ……これ多分結構並ばないとダメだな……』
皆魔石を売りに来てるのかダンジョンの情報を聞きに来ているのか……
受付に並んだことがないからわからないのだが数十人は並んでいる。
10以上の窓口はあるのに……うーん……
みんな意気消沈気味だしちょっとズルだけど念話で話しかけてみるか……
『キャシー!お~い!!』
あ、さん付けわすれた。
いや、なんかあだ名っぽいんだもん……
お、キャシーきょろきょろしてる。
見えんよなぁここ。
ってかみんなちっちゃいし……
キャシーがデカいから見つけられただけみたいなとこあるし……
『クロムくんかしら?』
うぉっ!?
『え!?キャシー念話つかえんの!?』
『あら、やっぱりそうね♪使えるわよ?知り合いにも喋れる魔物はいるもの♪』
あ、そうなの!?
へー。一回会ってみたいなぁ。
そんな珍しくもないのかな?
いや、ちがうちがう。
『ごめんちょっと急用なんだよ。少しだけ時間貰えない?またなんか差し入れするから』
『んー……いいわよ?クロムくんからそんな話、よっぽどでしょ?10分程外で待っててくれないかしら?これ片付けたら外出るから。待てる?』
『待てる待てる!助かる!ありがとう!』
『最近休めてないから今日もう午後休取っちゃうわ。一緒にお菓子でも食べに行きましょ?おすすめの店があるのよ♪』
5分ほどで相当急いで外に出てきてくれたようでほとんど待つことはなかった。
午後休も取れたようだ。ちょっと無理したらしいが……
ごめん……またスイーツ差し入れするよ……
で、キャシーが馬車呼んでくれて言われるがままついていくこと30分……
(カランカラン)
「いらっしゃ……クロムさんですか。こんにちは。今日はお食事ですか?腸詰めでしたらもう数個程なら差し上げられますよ?」
セバスちゃ……もといスチュワードさんのところじゃん……
「あら?あなた達知り合い?」
「とてもお世話になってますね」
『常連』『ここすき~!』
「……ミルク……飲んでいい?」
「あらあら、びっくりさせてあげようとおもったのに♪」
「これは……珍しい組み合わせですね。お話ですか?席を外しましょうか?」
『……あ、いや、むしろスチュワードさん詳しそう。よかったら同席してくれませんか?どうせキャシーは知ってんだろ?王様の師匠だもんな』
「あら?ガウルちゃんとも知り合い?クロムくんお顔広いのねぇ」
ちゃん付けの基準どうなってんだ……
『偶然だよ。じゃあちょっと落ち着いて話をきいてくれ』
「かしこまりました。では注文をお聞きしたらご一緒させていただきましょう」
これは結構ラッキーかも。人間国の情報とか持ってそうだし。
まぁそんなことよりみんな元気でてよかった。
嫌な事あったら食が一番だな。
僕もワインのもっと。
「うふふ♪元気が出たようで何よりだわ♪」
おお、さすがキャシーだな……
・
・
・
『っというわけですまん!冒険者殺しかけた!!問題あったらギルド抜ける!』
「すみません……」「……ごめん」『ごめんねぇ~』
「あらあら……それで落ち込んでたのね。でも……なんであなた達が謝るの?怒って当然でしょ?それに殺してないんでしょ?よく耐えてくれたわ。私でも半殺しにはするわよ♪ん~半分で済むかしら~?」
いや、このタイミングでウィンクされても……
でもよかった。怒ってよかったんだ。はぁ……ちょっと緊張がとけたな。
「人間の冒険者ですか……すこし面倒ですね……」
「えぇ……獣人なら良かったんですけどねぇ」
『どういうこと?』
やっぱこの世界人間って問題あるの?
「そうねぇ……あなた達ちゃんとルール聞かずダンジョンに入ったのよね?まぁ関係ありそうなところを順を追って話しましょうか」
「おねがいします」『頼む』
「……うん」『あいつらむかつくの~!』
「うふふ♪ムカつくわね~。まず……冒険者同士の殺しはもちろん禁止よ。それはダンジョンかどうかは関係なく。ただ、まぁ場合によりけりね。向こうから先に手を出してきての防衛とかならちゃんと話を聞くわ?あと、人殺しは冒険者カードに自動的に相手の魔力が登録されるの。あなた達も登録する時にカードに魔力を一緒に登録したでしょ?だから隠すことも不可能ね。ただ場合によってはちゃんと猶予がつく、と思えばいいわ?正当な理由なら資格剥奪にはならない。物騒ですからね?説明されなかった?」
『え、されたっけ??覚えてない。ちらっと言われたんだろうか……いろいろ考えること多かったから抜けてたかもしれない。ごめん』
「いいわよ~♪あなた達そんなこと無意味にするタイプに見えないし♪」
「ありがとうございます」
ただ、すごいな冒険者カード。
たぶんソフィア様か。考えられてるな。
個人の魔力吸い取るのか……。
そのシステムなら確かに隠しようがないな。
「ただ……今回のケースは相手がクロム君ってことと人間ってことが問題で起きたのよ。きっとね」
「私から話しましょうか。こういった話は専門ですから」
「おねがいするわ~」
「まず、先程の冒険者の話については対象が人の話です。”殺人”なのですよ。魔物はその限りではありません」
『……なるほどな。そのカードに登録されないってことだな』
「そうです。クロムさん、クラムさんは魔力の登録はされていないでしょう?ただ、もちろんそれが知られれば罰則はあります。その罰則が国によって違うのです」
『……統一されていない……と』
「ええ。冒険者は国に準じていない、となっております。それは税金や権力が効きにくいといった話なのです。刑罰に関しては種族毎に国に準じています。魔物は……獣人国なら犯罪奴隷行き。最長3年です。エルフ国は罰則はありません。個人間での解決になります。そもそも魔物を調教する、という習慣がないものですから。」
『人間国は……?』
「罰金です。簡単に言えば弁償。お2方を前に失礼なことを申し上げますが、”物”という認識なんですよ。ある意味エルフ国よりひどいかと。エルフ国の魔物の認識は”敵”ですので」
はぁ……なるほどな。
見世物小屋があるってエステルも言っていたもんな。
そういうことか。
『理解した』
「どういうことです?」
「あなた達……グレイウルフを相手にしてたんでしょう?」
「……そうですね?」
「グレイウルフはたまに小魔石を落とすわ。大きさによってはスライムの金額は上回る、といえばわかるかしら?」
「……あ」
『クラム大丈夫か?聞くの嫌じゃない?』
『ん~?ずっとにんげんきらいだもん~しってるよ~?』
あ、そうか。
クラムに関しては貝の時からアクセサリー扱いで乱獲されてるって種族だったな。
今更、って感じなのか。
『そっか。もし嫌な話になったらおうちかえっていいからな?』
『うん~!パパありがと~!』
「ごめんなさいねクラムちゃん。……あなた達を倒してもバレない可能性もある。もし話が漏れても利益がでる。だからクロムくんを狙ったのよ。人間パーティーならその可能性が高いでしょう。もしエルフならテイマーに嫌悪感は出す。ただ近寄ってこないはずだわ。関わることを嫌いますからね」
「そうですね……。エルフはそのような感じかと。」
「わかりやすく私の偏見を申し上げれば……獣人は力至上主義。エルフは種族至上主義。人間は金銭至上主義、とでもいえばよろしいでしょうか。もちろん皆が皆というわけではありませんよ?」
「その通りだと思うわよ?冒険者ギルド関係はまだマシよ。組織に守られているから」
『あぁ、わかりやすい。助かる。獣人はなんとなくわかった。エルフも……嫌なやつ見てきたことがあるんだ。人間は……利用できる奴は利用して金を取ろうとするやつがおおいってことだな?クルードがおおいってこったろ?』
「然様ですね」
絶対人間国行きたくない!僕多分1番嫌いだ!!
エルフの方がまだマシかもしれない……
いや、嫌いなのは嫌いだが……
エルフは要するに関わってこないってことだろ?
エステルに関わってきたのはエステルがハイエルフだからという側面が強い。
人間……教会……なるほどな……
『はぁ……最近教会の話もあったんだよ。そこのトップもそんな感じってこったろ?なんか回復魔法使えるやつ集めてるって?金稼ぎか?はぁ……』
「ええ。上層部が不透明なのでどういった意図で、とまではわからないのですが……おそらく。それを含め少々……」
『キャシーオールさんには……』
念話!?さすが……情報局トップ……
『キャシーよ?』(ギロッ)
殺気!?ってか割り込んできた!?
こいつらこわっ!
「ゴホンッ、キャシーさんには」
『あぁ、話していいかってことか?』
もう今更だろ。弟子2人知ってんのに。
『いいだろ、エステルとクラマ、クラムも。たぶんこの人は全く問題ない』
「……うん」「大丈夫です」『い~よ~』
「クラムさんも、ですか?」
『ああ、そうか。この前エステルとクラマの話しかしなかったもんな。エステルはハイエルフ、クラマは古代種だ。僕も原種とかいうよくわからんやつ。クラムは半精霊だ。スライムじゃない』
「あらぁ……ごめんねぇ?まぁわかってたわよ?うふふ♪スライムのオーラはしていませんから」
『オーラってなんぞ!?キャシーの特殊能力か!?』
色とか見えんのか!?スピリチュアルなのか!?
「うふふ♪そうよ!と言いたいところだけれども、ある程度力がつくと相手の力くらい何となくわかるわよ?エステルちゃんとクラマくんは天井がみえない。それだけで私より強いだろうなとは思ったわ。クロムくんとクラマちゃんは何も感じ取れないの。だからもっとおかしいのよ。潜在能力……とでもいいましょうかね?格が違う、というか……今の力だけじゃなく感じるものがあるのよ。これくらいわからないとギルマスやっていけないわ~。やりたくはないんですけど♪」
うわ。でた。さすが師弟!
まぁこういう人の方が安心できるわ。
『あー、それおっさんも言ってたわ。じゃあ多分王様も普通じゃないのは何となくわかってんだな。スチュワードさんも?』
「ええ。むしろそちらの方が自然です。種族がわかるわけではないですが。あぁ、私は潜在能力等もわかりませんよ?」
「そうなんですか……」「……へぇ」『すごいね~?』
『じゃああまり強いやつに無駄に力隠すのもあぶないか』
「まぁ……どうかしら?隠しとく方がいいんじゃない?隠せたら儲けものでしょ?」
そういう考え方もあるか……なるほど?
「話がそれちゃったわね、うふふ。まぁ何がいいたいかというと……」
「あなた方にとっては人間を相手どるのが1番危ない、ということですよ」
だろうな。はぁ……
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