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125話 - 喧嘩

「どういうつもりですか!?今クロムさんに技うちましたよね!!」


「あぁん?」


「とぼけるつもりですか!?見ればわかります!!」


 あー。言っちゃった……

 止めるの間に合わなかった……

 ど、どうしよう……


 こういうとき僕はどうすれば……


『ま、まぁエステル……僕は大丈夫だから……』


「クロムさんは黙っててくださいッ!!!」


『はいっ!!』


 エステル声~!!

 ダメだ……もう念話使うことも頭にない………


「あ?クロムって誰だよ?そこのちびっこいスライムに名前つけてかわいがってんのか?」


「そうですが!!何か問題でもありますか!?」


「いいからどけや。せっかく傷つけたのに逃げちまうだろーがよ?」


「私はクロムさんを狙ったことに対して質問をしているんです!!狼なんて狙っていなかったではないですか!!答えなさい!!」


「知らねぇよ!お前テイマーかよ?女がスライムと人形ごっこかぁ?魔物なんかわかるかよ!」


「ちゃんと印はつけているはずです!!」


「んなもん見えねぇよ!邪魔だからどけや!!お前らごと殺るぞ?」

「ガキは邪魔だから帰って寝てなぁ!」

「「あっはっは」」


 いや、これ絶対わざとだな。


 言い逃れできるとかダンジョン内では殺してもいいルールとか魔物に倒されたと見せかけてとか……その辺ちゃんと聞いてなかったけど……


 反省とか間違えたとかそういう感じの雰囲気はみじんも感じないな。

 こいつからも後ろの奴からも悪意しか感じない。


「この階層にスライムはいないはずです!見えていなくても少し考えればわかるでしょう!!」


 ダメだエステル。

 こういう奴に正論言っても意味ない。


「俺のスラッシュの斜線上にいるのがわりぃんだろぉがよ?!たかがスライムみてぇな雑魚が巻き込まれたからなんだっつーんだ!んなもん上でたくさん倒してるだろぉがよっ!!もういい加減うぜぇわ……どけよ!魔石が逃げちまうだろーが!これ以上絡んでくるようならテメェら全員……」


『ませきなんかいらないっ!!』

(ズドオオオォオオォオォオオン)


『クラム!?』


 クラムがここにいる全ての者に轟く念話で叫ぶと同時に狼方面数十メートルが扇形に吹き飛んだ。

 先頭に居た狼含めその付近にいた魔物も巻き込まれその魔石が地面にばらまかれた。


 なに!?何の技使ったの!?!?


『クラム念話!!それ多分向こうにも届いてるって!!!』


『いいの!!!』


『ハイッ!!』


「な。なんだこの声……どっから聞こえてくんだ……」

「お、おい。今お前らも聞こえたか?」

((コクコク))


『それひろえばいいでしょ~?そんなのいらない!パパとエステルにあやまって!!』


 ダメだ……クラムも話聞いてない……

 しかもエステルがバカにされたことで怒りが増幅してる……

 もう、僕には……無理だ……止められん……


「あ、あぁ!?なんだよ!誰に謝れっつーんだ!つーかこの声なんだよ!そこのゴミスライムか!?お前らが邪魔だっただけだろーが!じゃあ魔石はもらってくからよ!?良いっつったのお前らだからな!?クソガキがよ……チッ」


 すげぇな逆に……。

 ここまで喧嘩売ってるから後に引けなくなってんのか?

 まだバカにした態度崩さないのか……やばいだろ……


 斬撃を飛ばしてきた冒険者とそのパーティーはこちらを睨みつけながら魔石を拾いに行った。

 でも全然反省はしていない。

 今のクラムの起こした爆発は多分僕らからのものじゃないとでも思っているんだろう。

 若者パーティーが魔石がばらまかれている場所にいって魔石に手を伸ばしたその瞬間


「”飛刃”ッ!!」


 先程飛んできたスラッシュの10倍はあろうかというサイズの斬撃をエステルがパーティーの隙間を狙って打った。


 な、何の技ですか……エステルさん……

 それ僕しらないやつです………


「なにしやがんだ!テメェが取っていいっつったんだろうが!!」


「私の飛刃の射線上にいるあなたがわるいんですよね。……だれがゴミですか……うちのクロムさんにいったんですか…………もう限界です……次は当てます」


「お前らこれがどういうことかわかってんだろうな!?ギルドに報告してやる!!クソどもが!!顔は覚えたからな!!資格剥奪だ!二度とダンジョンにも潜れなく……」


「……もう……いい」


(バシュシュシュシュシュ)


 エステルが切れかけた瞬間クラマが消えた……。

 そして……切った。寸止めではない。

 持っていた武器はバラバラに……

 そしてしっかり手足耳などを10センチほど切り裂いた。


 ひ、ひいいいいいい……


 クラマ……瞳孔ひらいてるって……

 何その金色の瞳!?

 いっつも灰色じゃんか………


「ねぇ……もう……喋らないで……」(カチン)


(ブシュッ)


 クラマが刀を納刀した瞬間に血しぶきが舞った。


「……え?」


「……皆殺しでいい?……報告できない」


「……」


 空気が凍っている……

 ……えっと……なんて言おう……

 ダメだ……もう後戻りできる気がしない……


 ……てか、僕ら悪く無くね!?

 うちの子絶対悪くないだろ!!!


 なんで悪くないのに後戻りしないとならんのだ!!

 突っ切る!このまま突き進む!!


 僕ももうキレそうだった!

 うちの家族に何喧嘩売ってくれてんねん!

 いいやもう。どうにでもなれ。


(ピョンピョン)


 黙って腰を抜かしている冒険者の前まできた。


『ウィング。ダンテ。プロキノ。ティム。自己紹介がまだだったな。俺がゴミこと、クロムだ』


「………」


『聞こえてるよなぁ?ウィング。素敵なあだ名をどうもありがとう』”威圧”


「………」(カタカタカタカタ)


『おかしいなぁ。聞こえないか。それともゴミの言葉は受け付けないのかな?それは仕方ないなぁ。 ”サンダーボルト”』


(ドカァァアアアアアアアン)


 10m程離れたところの木に向けてかなり太い落雷を落とした。


『聞こえた?近くにもう一発いくか?”サーンーダーーーボールートーーー”』


(ドッカァァアアアアァアアアアアアン)


「…………」(コクコクコク)


 ……バタッ


『殺されたくなかったらこのまま黙って去れ。お前らの声はもう聞きたくない。今回だけ見逃す。次は殺す。この街から消えろ。拒否してもいいぞ?この街から出ていきたいか?こいつらに順番に殺されたいか?誰に殺してほしいか選ばせてやるぞ?俺の落雷を今から1人1人順番に頭にぶち込まれたいか?それでもいい。もちろん誰にも話すなよ?顔は覚えた。まぁ俺はカードではなく命を剥奪するが。どうしたい?たくさん選択肢があって楽しいなぁ?選び放題だろ?俺優しいからなぁ?』


「………」


『な!!』”威圧”


 バタバタ……


 あ、気絶しちゃった……


 ・

 ・

 ・


『むかつく~!クラムがやっちゃえばよかったあ~』


『ムカつくとかよりパパこわかったああああ!!』


「……パパが……いちばんこわい」


「そうですよ!クロムさん怒ると怖いんですからね!」


 あのあと冒険者は失神した3人を引きずって黙って階層から出て行った。

 ウィングは気絶すんなよ。

 お前がそもそも喧嘩売ってきたんだろうに……


『みんながあんな怒ったの初めて見たもん……漏らすかとおもった……』


 はぁ……うちの家族怒らせるとこわいんだなぁ……

 みんなあんな怒ると思わなかった……


 エステルが一番に行くとも思わなかったし

 クラムまさか声出すとおもわなかったし……

 クラマはもう切ったし……クラマって寸止めしてる時怒ってないんだな……


「怒ってますか……?」


「……ごめん」


『ごめんなさ~い』


『え、なんで?僕みんながあんなこと言われたら秒で殺すよ?僕だから逃がしただけだし。怒ってくれてありがとう』


 みんな一斉にため息をはいた。

 そんな怖いか!?


『喧嘩は向こうが売ってきたんでしょ?この世界は盗賊とかは生死問わないんだよね?あんなん盗賊と一緒じゃん』


「まぁ……そうですが……」


『それに僕怒ってくれてうれしいし。あとみんなにそんな我慢させてまで冒険者やりたくもないしダンジョン潜りたくもないよ。だからまぁいい機会だったんじゃない?イライラした時は怒る!これが1番!でもまぁほどほどにね?僕が言えたことじゃないけど……』


「はい!」


「……わかった」


『うん~!』


『んじゃま、キャシーに謝りに行こうぜ!僕誤魔化すの嫌いだからさ!正直に殺しかけました!って言ってやろう!んで冒険者剥奪になったらそれはそれでいいんじゃね?魔の森の真ん中敵強いらしいしさ?別に魔石もいらないよ!買ってつくればいいじゃん!僕はみんなが居ればそれでい~の!家引っこ抜いてどっかいこ~ぜ!な?元気出して~』


「……うん」


「ありがとうございます♪」


『パパありがと~!!』


『こちらこそだよ?まぁちゃんとルールも聞いてこよっか。どっちみちこれで僕らがアウトになる組織に所属したくない!一応名前も覚えたしね。ギルド側はどう動くのか……』


 いや、まさかいきなり喧嘩になると思わなかったな……

 あ、みんなが怒った件じゃなくてね。

 治安悪いなぁ……。


 ちなみに……あいつら全員人間パーティーだった。

 関係あったりするんだろうか……。

この小説を読んでいただきありがとうございます!


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