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116話 - 息子がお世話になりました。

 教会から追い出されエステルとため息をついた。

 まぁ、色々思うところはあるが僕らにはどうしようもないだろう。


 組織の実態もよくわからないし今のところ向こうから手出しをされるようなこともなさそうだからね。


 とりあえずもうあまり関わらないでおこうという話になった。


 で…だ。


「クラマくんは……?あら……?」


『どこいったんだクラマ……』


 孤児院を眺めていたはずのクラマを探しているがいない……


「どうしましょうクロムさん!攫われたりしてしまったのでしょうか!?」


『まてまてまて落ち着けエステル。まだ日中で王都の端とはいったが全然人通りの多い広い道のど真ん中で攫われたはないだろ……。しかもクラマ強いし、1人でふらふらどこかに行くタイプでもないからな。ちょっと待ってな。んん……』


 空間感知を輪のように広げて……

 10m……20……30……40……いた。

 あっちの……え?なんでだ……


『いたけど……』


「いましたか!?」


『うん、多分孤児院の中……。まぁ……じゃあ行くか……』


 教会から50m程離れた孤児院の建物の前にきた。


(コンコン)

「すみませーん」


「はいはーい。ちょっとお待ちくださーい」


(ガチャ)

「お待たせしました。どうされましたか?」


「たぶん……うちの子がこちらにきているかと……」


 孤児院の中は古い木造でお世辞にも綺麗な建物とは言えないがその分掃除などはきっちりされていて清潔感があった。


 たくさんの木のテーブルと椅子が並べられていて少しの遊具とボロボロの数冊の本が散らばっていた。

 室内で遊んでいたのかもしれないな。


 で、何故かその部屋の真ん中でクラマが子供たちに群がられている。

 20人くらいはいるかな?3歳くらいから……7歳くらいかな。

 クラマと同じ年の子がいるようには見えないかも。


 でも僕が捕えられていた時に見たことあるなって子もいるね。

 みんないるかはわからないけどちゃんと送り届けられているようだ。

 少し安心した。


 で、クラマがきょろきょろしてる……


「クラマ君のお姉さんですか?」


「あ、そうです!」


 一瞬エステルが戸惑ってたけど、まぁママには見えんよ。

 10代にしかみえないもん。


「あらあら、そうですか!綺麗なお姉さんですねぇ。外で遊んでた子たちがクラマ君に遊んでもらったらしく連れて入ってきてしまったんですよ。ご心配をおかけしました……」


「あ、いえ、そんな!こちらこそ遊んでいただいて……」


『クラマー!どういう状況?念話念話』


『……パパ……ごめんね』


『え?いや全然いいよ。外で遊んでたんでしょ?』


『……うん。……ボールが飛んできて……返してあげたら……』


 あぁそのまま遊ぶ流れになったのね。いいことだ。


『だいじょぶだいじょぶ!ところで気になってた子はいたの?一応囚われていた子も何人かいることは確認したけど……』


『……いない』


『ふーむ……そうか……ちょっと待ってな』


 上手く日常会話から聞き出してみるか。


『エステルー。ちょっと話合わせてくれない?』


『あ、大丈夫ですー!』


「とてもたくさんの子供たちがいますね?この子たちはみんなこちらの子供達ですか?」


「あ、いえいえ。数人は近所から遊びに来ている子もいますよ。ただ最近隣の領で物騒な事がありまして……。その時にこちらで保護された子が20人程いるんです……すこし今は大変かもしれないですね」


「そうなんですね……噂はお聞きしました……。大変でしたよね……。こちらにいる子でこの孤児院の子供たちは皆そろっているのですか?」


「上に体調を崩している子も数人いますよ。まだ輪の中に入れていない子もいますし……。大きい子たちは日中冒険者ギルドで草むしり等の雑用を受けて支援してくれてますので皆ではないですが……どういったご用件でしょうか……」


 あ、ちょっと怪しかったか。すまん。

 僕も話すの得意じゃないからなぁ……


「知り合いの子がちょうどその時隣町にいまして……。トラブルに巻き込まれていないか少し気になってしまったんです」


 うん、まぁ本当のことだからな。

 こっちのことはたぶん知らないんだけどね……


「そうだったんですか。すみませんねぇ。たまに怪しい引き取り希望の方もいらっしゃるんですよ。知り合いがいる子はその方のところに、親御さんや親族等の引き取り手が見つかる子は王の手配ですぐにそちらに送り届けられているようですよ?ご安心なさって下さいな。こちらに来ている子は身元を引き受けてくれる子が見当たらない子が主ですね」


 そっか。よかった。

 ちゃんといろいろ手配してくれてるんだな。

 あの王様なら安心だろ。


 んーじゃあ、せっかく来たし少し子供を治していくか。


「そうですか。安心しました。あの王様なら心配いらないですね。もしよろしければ体調を崩している子たちを少し癒しましょうか?私は回復魔法が使えますので」


「ありがとうございます。ただ……お支払いできるお金などを持ち合わせていませんので……」


「何もいらないですよ!?治療費目当てにやろうと思っているわけじゃありませんから」


「そうですか……ですが……」


 めちゃくちゃ怪しまれる。なんでそんなに……

 この人は多分すごい良い人なんだと思うんだけど……。

 逆に治療費を請求するって言うのがこの世界の常識なのか?


「私は田舎から出てきたのでこの辺りの常識に疎くて……。私の村では普通の事なのですがこの辺りでは無料で治療するというのはそんなにおかしい事なんでしょうか……?」


「度々怪しんでしまってすみませんねぇ。悪気はないんですよ。もし本当ならおねえさんもあまり回復魔法が使えることは言わない方が……。そもそも治療や回復魔法を使える方は魔法を使える方の中でもかなり少なく、さらにその適正がわかると基本的に教会に所属させられてしまうんです。あとは教会が関与できない冒険者の方くらいしかいないですね。なので一般的にいるものではないのですよ」


「そうだったのですか……知りませんでした……」


 あぁ。それで光属性とかを囲ってるのか……。


「もし一般的に教会から逃れて回復魔法を使える方がいても……そういう方はだいたい法外な治療費を要求してきます。中には勝手に治療してあとで治療費を吹っ掛けるといった話も……」


 ひどいな……。そりゃ慎重にもなる……。

 治癒できるのがそんなに稀有なことだと思わなかった。

 気軽に治すって言ってしまって申し訳ないことしたな。


「冒険者ギルド協会の治療院などは簡単な怪我等なら銀貨数枚ほどから治療したりしています。ですが骨折等の重症になると金貨が必要だと……。さらに病気は回復魔法では治療が難しいとも聞きますので高額になるかと……。あとどちらにしろ治療院を利用するには冒険者である必要があるので……」


 あぁ、治療院あったな。ダンジョンの近くに。

 まぁ病院でも有料だしお金要るのはわかる。

 ただ……冒険者限定なのか……


 じゃあ回復魔法で治療するのは一般的ではない、ということか……

 病気なら尚のこと……。


 あと、この世界の人にとってタダで治すって変な感覚なんだな。

 ってか僕も地球で知らない人からタダで薬あげるって言われたら怖すぎるか……


 魔法が使えちゃうのが気軽になってた……ダメだな。

 冒険者以外にはさらに慎重にならないと……。


 でもどうしよっかなぁ……

 攫われてきた子供みてたからさすがにほっておけないなぁ。

 もしそれで体調崩してるなら治してあげたいんだけど……。


 でもこういうのって無理強いすると不信感溜まるんだよね。

 親切の押し付けは親切じゃないんだよね。

 うーん……


『じゃああの机で編まれてる籠買い取ろう。5個程あるでしょ?』


「では、あの机の上の植物で出来た籠を対価にいただけませんか?」


「あれですか?あれは今子供たちが市場に出す商品の練習をしていて……。歪んでますし穴だらけですし……とても対価になるようなものでは」


『いいよいいよ。農作業とか野菜洗うのに使う。ちょうど引っ越したところだしね』


「ちょうど引っ越しをしたところでして、家庭菜園の農作業等に使わせていただきます。あちらで充分です。全ていただけますか?」


 そういうと子供が2人ほどこっちに走ってきた。


「おねーちゃんかってくれるの?それぼくがつくったんだ~」


「こっちわたし~」


「うん、いただきますね♪これ貰ったお金で上の子たちを治してあげていいですか?」


「なおしてくれるの!?みんななかなかなおらないの……」


「おねーちゃんおねがいします」


「ということですので……すみません押しつけがましくて……。私も心配ですので……」


「こちらこそ何度も疑ってしまって申し訳ございません。王のおかげで食料などには困らないようにしていただけているのですがなかなか治療費までは手が回らなく……。攫われていた子供たちを預かるまではよかったんですが、翌日にみんな体調を崩してしまって途方にくれていたところでした……。頼るところもないですし……すみません。本当に助かります。ありがとうございます……」


 その後は怪しんでいた孤児院のお母さん替わりの人も心を許してくれた。

 2階に上がらせてもらい、見渡すと10人程の子がベットで寝ていた。

 

 さらによく見ると過半数はあの馬車で運ばれていた子だった。

 やっぱりか……


 そこにクラマの事を抱いてた子もいたみたい。


 原因が知りたかったので色々イメージを変えながらちょっとずつ色んな部位を治癒して試行錯誤してみた。

 僕は医者じゃないから病気の症状を見てもわからないけどね。

 そのイメージでその部分が治ればその病気だっていう逆算で。


 元々この孤児院に居た子は擦り傷等が化膿していたり風邪をこじらせていたりという感じだったが……


 馬車の子たちは完全に食中毒だとおもう。

 下痢や嘔吐が止まらなかったらしい。


 そら、あんな袋に入った腐った生芋食わせて運ばれてきたらそうなるだろ……

 芋って結構毒性強いものもあるよな。


 ちょっとごり押しだったけど治療出来てよかった。

 結構危なかったとおもうよ……。

 ご飯も食べれないからかなり衰弱してしまっていた。


 あとはこの場で治すのではなく徐々に回復するようにウォーターエイドをかけておしまい。

 これで一旦体力が戻れば大丈夫だとおもう。


 しっかりご飯を食べさせてあげないとだな……

 胃に優しくて吸収しやすいものもってるかな……


 子供が回復する間、孤児院のお母さんと色々話した。

 支援は受けているという話だったがどうやら外観の修理が行き届いていないのはわざとらしい。


 王にはちゃんと費用をもらっているんだって。

 冒険者ギルドに行っている大きな子もちゃんと仕送りしてくれているらしい。

 贅沢は出来ないけど普通に生活するのには問題がないそうだ。

 今回の件も子供が増えたことについても余分なくらい支給は受けているそう。


 ただあまりきれいにしすぎたり、薬を買ったり治療を受けたり……

 お金の動きを見せると稼げているなら教会がお布施を出せと言ってくるらしい……

 ありえないでしょ。孤児院だぞここ。


 神が~とか色々言ってるらしいけど要約すると子供の面倒を見ていた対価をだせってことらしい。

 面倒を見ていたといっても教会の庇護下にあった時は本当にわずかばかりの金銭を支給しているくらいでまともなものも食べられなかったそうだ。

 

 教会が孤児院を庇護下に置いていたのは孤児から光属性等の適正があるものを見つける為。

 それを迅速に囲う為らしい……。


 それを見かねた今の王様が王位継承されたときに教会から孤児院を切り離して自費で支援を始めた、という流れだそうだ。


 腐ってるやつが多すぎる……本当に。

 こいつらの本部人間の国にあるっていってたよな。

 この王都の教会だけが腐ってるのかトップが腐ってるのか……


 またちょっと詳しいことは王に聞いておかないとな……


『この子たちは歩くのは大丈夫なのかな?お母さん引率でもいいんだけど王都の外に少し出て来れる?』


『どうしました?』


『うちの敷地広すぎるでしょ?元気になったらたまに草むしりしてもらったら?クラムが育てた野菜収穫してもらうとかさ。生活は問題ないらしいから余分に賃金とか食料欲しかったらたまにくればいいんじゃない?体調悪い子を治してほしいとかね。僕がそっと治しにきてもわからないでしょ』


『なるほど……』


『この世界の常識的にあまり無料でなにかをするとか魔法を使って治療とかするといい人ほど逆に不信感溜まっちゃいそう。だから働いてくれたら対価払うよ、だったらいいんじゃないかなと思って。その時に手伝って欲しいことしてもらうよ。これからダンジョン行くし魔石の仕分けとかね』


 まぁ多分魔石の仕分けはいらんのだが……

 アイテムボックスで自動的に行けそうな気がする。

 イメージでとりだせるし……


『そうですね♪伝えてみます』


 そんなことを話してたら1人の女の子の目が覚めた。

 この子も狐の獣人っぽい。

 綺麗な黄色の大きな耳をしてる。


「ん……コン?」


 そばで座って寝ていたクラマも目を覚ましたらしい。


「……ん?」


「わかるよ!おなじにおいだもん!」


 コンってなんだ……?


「……」




『コンって……クラマのこと?』


『……そう……この子は……そう呼んでた』


『大丈夫だよ。獣人って言っても古代種ってわかるわけじゃない。なんかあったら守ってやる』


「……わかった。ありがと、パパ」




「……うん……ぼく……獣人」


「そうなの~?しらなかった!」


「……クラマ……名前」


「わたしココ!」


「……そう……ココ。ごはん……ありがと」


「うん!まもってくれてありがと!」


「…………ん……また……くる」


 無表情なクラマが少し微笑んでいる気がした。

 

 隠れてた時いつもこの子にご飯もらってたんだろうね。

 ご飯のお礼も言えてよかった。

 覚えてくれてる子がいてよかったね。


 うちの息子がお世話になりました。

この小説を読んでいただきありがとうございます!



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