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115話 - 教会

『いやぁ……まさかこんな大きい家買うことになるとは……』


「そうですねぇ……私もこんな立派な家に住むことになると思いませんでした……」


『ひろい~』(ポヨンポヨン)


『……ZZZ』


 僕としてはせいぜい2LDKくらいの間取りになるんだろうと想像しながら物件選びに挑んだんだけど……


『治安はしかたないよなぁ。できるだけ近い方がよかったんだけど毎回帰路で酔っ払いに絡まれたり帰ってきてもうるさかったりしてたら家に帰るのいやになっちゃうよ』


「それは本当にそうです……」


『都会って便利かもしれないけど居住空間は分けたいかもしれないなぁ』


「私も……初めてこんな都会に来ましたけれど街中は落ち着きません……。ニブルヘイム程とまでは言わないですけれど静かなところでお休みしたいって初めて思いましたね……あれだけ集落から出たかったはずなのに……」


『ないものねだりってあるよなぁ』


「全くですね……」


『まぁでもそう考えると、王都なのに城壁の外に土地が手に入ったのは良かったかもしれないな。広い居住空間はいらないけど、このスペース使って僕らの好きな事していいって考えればすごくいい買い物だったかもしれない。エステルも花でも育てたりすればいいさ』


『クラムね~魔の森でおいしい実のタネ集めてたんだよ~?うえていい~?』


『おー!もちろんもちろん!家の中整えたら庭の方もどうするか考えようぜ!すぐ植えたいなら後で移動してもいいから裏手に適当に植えていいよ』


『わ~い』


 うんうん、戦闘以外にこういう楽しみができるっていいことじゃんね。

 どっちみち外のトイレとかお風呂とかこの世界に無くて地球にあったものを家の中に作り出すと1階なんかほぼそれで埋まっちゃいそうだな。案外これくらいのスペース必要だったのかも。


『さってと、じゃあちょっと休憩したしどうする?孤児院でも行く?まだ15時くらいだと思うけど』


「……ん……行く」


『よし、じゃあまたちょっと遠いけど行きますか……』


 ・

 ・

 ・


 ふぅ……着いた……

 また結構歩いたな……今日はずっと人混みだ……

 目の前には教会と少し離れたところに広めの敷地とくたびれた木造の家が建っている。


 たくさんの子供達がすごしているからか家自体は大きいんだけど補修後が目立つな。

 あと屋根とか穴が開いているところもあって間に合ってないのかもしれない。

 経済的にはゆとりがあるようには見えないな……。


「この辺りはあまり騒がしくはないですね」


『そうだね、ここも街の北の端の方みたいだからね。今はみんな中で過ごしているのかな。外には子供たちは出てきていないね』


「そうですねぇ。どうしましょうか」


『いきなり孤児院の中訪ねてもどうしていいのかわからないし、捕えられていた人達は僕らのこと知らないしな。ちょっと先に横の教会に入ってみようか。少し気になってたんだ』


「………立派な教会ですね」


『うん……』


 すごい綺麗な白い大きな建物だ。屋根には大きな十字架。

 教会の周りにはきれいな草花が植えられ、この世界ではあまりみないガラスも大量に使われている。

 所謂ステンドグラスというやつだ。すごく大きなステンドグラスがたくさん。


 綺麗な色のガラスで男性の姿が形どられているように見える。

 あと教会の大きな入口の前にも白い石でつくられた2m程の像が建っておりそれもその男性の像になっている。

 長髪の老人に見えるな……これは何の神様なんだろう。


「これが……神様なのでしょうか……」


「……ちがうね」


『そうだね。ただ皆神様のこと知らないからこれは仕方ないかもね。僕らが知らない方なのかもしれないし……。何の神様なんだろう』


 ただなぁ……


『こんなこと言うのって罰当たりなのかもしれないけどさ……なんか……横の孤児院との差が凄くない?』


「いえ、それは私も思いました……。すごくお金がかかってそうな建物にみえます……汚れも一切ありませんし……」


 そうなんだよね……。

 建築物もすごいんだけどこの建物をこの状態で維持しているだけでもかなりの金額がかかってそうなのに、横の孤児院はボロボロ。


 今は王の管轄っていう事を聞いたけどそれにしても……

 なんかあまりいい気持ちはしないなぁ。


『教会って入った事ないしさ、何ができるのかわからないけどとりあえず入ってみようか。神に祈りを捧げに来たとか言えばいいだろうし……』


「……僕……ここで見てていい?」


『あ、うんうん、孤児院気になるよな。ここで待ってていいよ。さっと出てくる。何かあったら中に入って来なね』


「……わかった」


 大きな両開きの白いドアを開いて中に入る。

 中央にも先程のかなり大きな男性の像があって、たくさんの椅子があった。

 ここで礼拝をしたりしているんだろうか……

 地球でも行ったことないからよくわかんないな。


 すると奥からいわゆるシスターの様な衣装をまとった女性の方が歩いてきた。


「本日はどのようなご用件でしょうか。お祈りですか?」


「あ、いえ。教会とは何をする場所なのかなと思いまして……田舎の方から出てきたので……」


「一般の方はこちらではお祈りや懺悔。あとは聖水や治療、解呪をお求めに来られることが多くございますね。社会奉仕や結婚式の様な事もさせていただいております」


 治療院のようなこともしているのか……なるほど。

 魔物が蔓延る世界だもんな。確か光魔法を持っている人は教会に勧誘されるってサラさんがいってたなぁ……。


 そういえば聖属性持ってる人全く聞かないけどなんかやばそうだ。

 勧誘どころの騒ぎじゃなくなりそう。


「あの像のお方は……神様でしょうか?」


「はい。あちらは創造神様です。生きとし生けるものすべてを幸福を。創造神様の御心のままに。神の教えに従うことで全ての生けるものは幸福になれるのです」


 ……ソフィア様が?ないない。

 自分の意思で歩みなさい貫いてるから。

 わたしに従っちゃ意味ないって方だよ。逆。


 神の教え……教えること嫌うよ、どちらかというと。

 自分で考えなさいタイプの人だよ。


 まぁソフィア様崇めてるわけじゃないって言ってたもんな。

 あの長髪のおじさまの像が創造神様なのか。

 この辺はもうスルーだな。ツッコんでもしゃーない。


『じゃあ、とりあえずお祈りでもしようか……』


「では神に祈らせていただいても……」


「はい。では銀貨1枚のお布施をお願いいたします」


 え!?料金制!?しかも銅貨とかじゃなく銀貨!?1万!?


「あの……それは必須なのでしょうか……」


「ええ、神へのお気持ちですから」


 ソフィア様にその銀貨絶対いかないじゃん……マジか……


「あと申し訳ございませんがそちらの悪しきものは教会の外に出されてからお願いいたします」


 え、僕!?悪しきもの!?

 いや、別に正義の味方してるわけじゃないけども!

 初対面で悪しきもの呼ばわりされた経験はなかったなぁ……


「このスライムの事でしょうか……」


「えぇ、近頃では魔物を飼われたりされているかたも多くございますが、神の教えに背く行為です。なぜそのような文化が広がっているのか……。魔物は邪神の生まれ変わりだと聖書には記されています。これ以上先への立ち入りはお控えいただきますよう……」


 教えに背くのか。僕。

 ソフィア様爆笑してそう。絶対聞いてるぞ今。

 ってかソフィア様に呼ばれたからこの世界に来たのだが……。


 邪神の生まれ変わりだったんだ僕って。

 すげぇ。そりゃバグるよなぁシステムも。

 前前前前前前前前前世くらいだろうかなぁ……


「そうですか……それではお祈りはご遠慮させていただきます。この子は家族ですので……」


(ちっ)


 え、今この人舌打ちした?!そんな露骨なことある!?

 別に僕がどう思われても教会の教えが何でも興味ないがなんか態度わるくないかこのシスター。


『クロムさん~。ここ嫌いです~』


『わかる。すごい僕とクラムじろじろ見られてる。クラム寝てるけど。まぁ気にしなくていいよ。治療にもお金かかるんだろうか。なんかうまい事いって聞ける?あと聖水1本位買っとくか。多分要らないけど……。せっかく来たし。』


「では……私の叔父が腰を痛めてしまっていて……こちらにくれば治療していただけるのでしょうか……」


「ゴホン。第1階梯の神の奇跡が銀貨25枚、第2階梯が銀貨50枚、第3階梯は司祭様にお越しいただく必要がございますので金貨3枚のお布施をいただいております。解呪も同様に……」


 嘘だろ……

 神の奇跡って何?奇跡なのに階梯??

 ソフィア様は奇跡とか起こさないから神の奇跡なんかない。

 じゃあ多分何かの魔法だ。回復魔法……とか?


 確かファストエイドって回復魔法があるってリンゲンの街の魔法ショップのお姉さん言ってたけどHP300回復するくらいだったよな……そんなもんかな?


 第1階梯……25万!?

 司祭呼ぶのに300万!?


 僕のウォーターエイドでももう1000位回復できるけど……

 しかも第3階梯って言える魔法を使えるのは司祭以上にしかいないってことだろ?


 リンゲンの街で試しに魔法見せてもらったときもぼったくりだって思ったけどあれはまだ飲み込めた。

 商売してるなーって思える範囲だったから嫌な気持ちもしなかった。


 これは無い。見せてもらおうとも思えない。


「神の奇跡とは……治療の魔法のようなものでしょうか……?」


「……神の奇跡は神の奇跡です!なんですか先程からあなた達は!!神の存在を否定しているのですか!?」


 なんだなんだ!?なんで急にキレだした!?


「お布施も断るし、ふざけているのにもほどがあります!神罰が下ればいいのです!!ここから立ち去ってください!!」


「……は、はい」


 エステルの背中を思いっきり押されて外へ追い出された……。


「すみませんクロムさん……聖水のこと聞けませんでした……」


『あ、いや……。それはいいんだ。嫌な役割を任せてごめん……。なんであの人いきなりキレだしたんだ……?』


「お布施を断った辺りから態度が一変しましたね……神の奇跡を魔法といったからでしょうか……」


『いや……金も払わない冷やかしが来たと思われてたんだろう。追い出すタイミングを見計らってた感じじゃないか?想像以上に酷かった。あんなの誰も治療できんだろ……』


「はい……回復魔法にあの金額……」


『あくまで治療じゃなくて奇跡なんだろうな。奇跡金額なんじゃない?お金で奇跡起こしてもらえるのもおかしい話だが』


「もう来たくないです……」


『うん、二度と来ることはない。まぁ勉強になったと思おっか』


「はい……」


 少し孤児院との差が気になったから調べてみたかったんだけど調べる気もなくなった。

 完全にかかわらない方がいいな教会には。

 やばい匂いしかしない。

この小説を読んでいただきありがとうございます!


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