第九十七夜 「座ってて」と歩美と和恵がハモる
順子さんが ないなに と訊いているので
「順子さんの目標が此の名札
家元邸に行くと 此の名札を掛ける専用の板がある
岩山流で許されてるのが2〜3人との噂 婆様も持っていない」と和恵
「ご老公も 修造さんも 景子さんも 持ってるそうですから 5人は居るはず」
観てた母の雅代 しれっと
「婿殿は市井の時計屋の次男 それで名札餅 そこまでは言わない
樫村の分家筆頭の嫁が茶名餅の講師 もう一歩の准教授はね
順子さんは嫁に行ったとは言え樫村の娘 紙の許状の茶名までは頑張れ」
さっきまでの婆様のお稽古 高みの見物をしてた和恵
そこまでは言わない という事は目指せって事で 最低が准教授
ハードルが瀑上がりしたことを認識する やらかしたぁ が心の叫び
「歩美も茶名は頂けるように 頑張れ」佳代
「あ〜あ 計二くんが、こうならない様に黙っててくれたのに
和恵姉さんの 余分なツッコミで 巻き添え」歩美
「それで 歩美さんが二人を締め出して 婆様は旦那を追い出した
ヒントは山ほどあった 茶名餅との看板が・・・」和恵
かなりの沈黙になる三人
姑と母と男ボンズ二人で抜け出してお茶を頂きにリビングへ行く
計二 風呂敷包みに漆の小箱と桐の箱 を持っていく
「これ 方丈の婆様からお借りした一式 明さんのでも助手席乗る
返してくれますか」計二
「ん、了解 ちょっと見せて お!煎茶用が五客 丁度いい
こないだの川根の玉露も まだ香りがあるし行けるな」
ササッとキッチンで湯呑みと急須を洗い 茶葉をひとつまみ食べる
リビングのテーブルに電気ポットを置き 98℃のお湯を湯呑みにくんでいく
竹の匙で茶葉を測り 急須に入れて 湯呑みに触り温度確認して急須へ
淀み無く入れて 急須の温度を指で確認して 五客分を淹れていく
木の碗皿でササッと配膳していく
「門前の小僧の淹れたお茶ですが どうぞ」明
「明さんには勝てないかぁ この見切りが才能の違い」計二
「無作法でもな ひと摘み食べてみて 茶葉の声を訊かないとな」明
「ホントだと 事前に一回淹れてみて 茶葉の味を見るのですが
ひと掴み食べてで その代わりができるのはねぇ 人外」計二
誰もいないはずの五客目 持ち上がり飲まれていく
「最近さぁ こんな事もあろうかと と準備しておかないと叱られる どう思う」
「俺は 玉の首飾りを頂いてるので ご来臨お疲れ様です としか」計二
「その先輩への挨拶候 さすが計二だ ヨシ!」
「これが門前の小僧とか 歩美が倒れる まだ免状のある計二くんがマシよ」佳代
「ほら お稽古のマイルストーンで これを超えて貰わないとな 計二」
「マイルストーンって この先に行けと オオナムチ様 嫌がらせですよね」
振られたオオナムチ 出雲での会合を脱走して岩山の奥社へ行ったけど誰もいなく
近くのここに二人居るからと来たら 茶があったので飲んだだけ 何も準備がない
「儂の加護の玉が首に掛かっておる がんばれ!」と言ってそそくさと消えていく
「計二 よくやった 今日は『むう』もなくご帰還頂けた」明
煎茶道具をキッチンで洗い 借りた布巾で拭いて 乾燥30分待ち
沈黙の三人もお茶を飲みに来る
「歩美さん コーヒーをお願いします」計二
「コーヒーね」 コーヒーメーカーで10杯分用意しだす歩美
「計二 そこにネルの布があったけど どうする」明
「ヤメときましょう 今日はここまでで」と煎茶道具を見る計二
「そうそう コーヒーメーカーがいいわよ」佳代
洗って乾燥中の煎茶道具は見える 姑の反応 ここはコーヒー
しかもコーヒーメーカーが良いと思いながらセットする歩美
パンチのアキラはネルの布とか言っている トラップ確定 歩美に従う和恵
お抹茶より コーヒーが飲みたい順子
「明日 朝イチで駅まで送ってもらえませんか」計二
「最低年内の予定を伝えたほうが良くないか」明
カレンダーを剥がして10月11月の木曜日に丸 12月の第一週 木金土日に2重丸
「婿入り早々の我儘で申し訳ないのですが、大勢の仲間との練習と本番
仲間の協力があって初めて立てる世界なのです
特にこの12月の4日間は 俺一人の都合では 極端な話
親父の葬儀程度ではキャンセルできないイベントなので
ご協力をお願いします」
「いいわよ 私と酒田さんで 駅ではなく現地まで送っていくから」歩美
突っ込み所満載の発言 でも婿殿トラップの可能性と学んだ和恵 黙る
「和恵さん ご主人の作足でのカートのお誘い 俺も計二もなので
この丸の日以外で お願いしますね」明
コーヒーがドリップされ 配膳に動く歩美 立とうとする男ボンズ二人
「計二くんたちは座ってて 和恵姉さんと順子姉さんは手伝って」
歩美の声色 きっとトラップ 黙って歩美に従う 和恵と順子
三人して盛大にティースプーンをカチャカチャ言わせてどころか
カップからソーサーにコーヒーを零しながらサーブしていく
コーヒーを頂き
「俺 明日の準備を 朝5時出発でお願いします」と部屋に行く計二
「俺も道具が乾いたから片付けて戻ります」と片して出ていく明
見送りは母と姑 三人は密談開始
出ていったと見せかけて姑と母と明は三人して顔を半分出しての覗き見
「歩美さん コーヒーの裏を」和恵
「あの二人 無音でサーブするの カチャカチャのカの字もさせないの
プリンセスホテルのテラスで実演されたわ
そんなのここでやられたら、それが基準になる 後が困る」
「それが聴こえたら分家も 嫌がらせ」和恵
「普通に運べば カチャカチャとなるわよ」全然気にしていない順子
「プリンセスホテルの”テラスのサービスは”無音よ」和恵
「良かったわよ 今回は和恵姉さんが調子こかなくて
巻き添えで被弾はお抹茶だけでいい」歩美
「それは素直に 歩美さんごめん としか言いようがない」和恵
「大変ね」と他人事の順子 置かれた立場を理解していない
和恵 歩美の手を引いて 廊下へ 三人と鉢合わせだが気にせず
「順子さんが これから一番の困難な道 だったはずが
私のせいでハードル瀑上げで歩美さんも でもキツイのは順子さん
ここは黙っておきましょう」和恵
頷く 五人 今度こそ 帰っていく明 見送りは四人
キッチン横のリビングに戻って
「有り難い婿殿」とご機嫌な姑と母
「部屋の片付けも そこそこ出来るのでお任せでいい
タスケテがあれば手伝うレベルかな」佳代
「準備完了 部屋も頂いたので 夕食なにか作りましょうか
買い出しで 酒田さんと行ってきますが」計二
「座ってて」と歩美と和恵がハモる
昼のサニーサイドアップだけでも堪えてるのに との思いが出る
「ビールでもいかが」雅代
「明日は練習日 なので今日はアルコールは抜きます
それもあって胃に負担が少ない消化に良いモノをと」計二
「では 婿殿のために 消化に良いものを 姑と母で作りますね」
和恵さんと順子さんは お迎えがきて帰っていく
方丈邸に戻った明 婆に道具を返却して
「計二の持ってる免状が檜の名札で 和恵さんが観た瞬間 嫌がらせ と叫んだ
なんか お茶のハードルが瀑上がりらしい 香織も一緒に頑張ろうな」
「それ もう歩美さんから電話があった 婆様はやっぱりやらかしで大惨事
それ以上に 明たちは出さない方向なのに 和恵さんの追求で出された免状
そっちに波及したら ゴメンと 謝罪されたわ」
「でも そこには婆様は居なかったから 普通に一歩づづで」
まったね