第八十八夜 『超上流階級じゃない』だけ声にでてる香織
アパートに向かうオープン
「香織ってハイエースは乗れるよな」
「ワンボックスだよね AT?」
「ATだよ トランポだしね 誰でも乗れるように」
アパートに憑いて 服の入ったダンボールとか レギとかのギアのバッグ
包丁の類の入ったスーツケースなどをハイエースの放り込む
「意外と綺麗なお部屋で 空缶もエロビデオをもない」
「ビールは瓶ビールで酒屋の配達だから 缶は散らからない」
「エロビデオが産卵してませんが」繰り返される追求
「」
「エロビデオが産卵してませんが」再度、繰り返される追求
「寮に居た頃のは 先輩から俺 俺から後輩へ 男子寮の伝統だ
その後がメシマズとかの欧州に1年以上居たし
此の部屋に済んで1年も経っていない 泡銭で名駅から15分の駅の南へ」
「男子寮の伝統って それを言われてしまうと 触れてはいけない領域」
「これ以上は黙秘権を行使します」
「エロビデオはなかった との事実のみを認定するから お茶のサポート」
「取引成立で 果樹園を見ていかないと」
「果樹園?」
「此のアパートの駐車場の向かいにある 先々代の大屋さんが植えた果樹園
そろそろ花梨の実が実る季節 様子を見ておかないとね」
「なに? かりんって」
「だいたい載せ終わったから 果樹園に見に行けばいい」
果樹園に移動して これ と指差す
「花梨の木の実だよ スピリッツに氷砂糖と漬け込むと花梨酒 美味しいよ
イヨカンも いい感じで育ってる」
食べ物関係はバンザイだけど 果樹も食べ物 ここもバンザイしようと香織
「無花果に柘榴 柑橘類はカボスにキンカンにイヨカンにスダチ 桃もある
鬼頭さんが契約してくれるるから 季節で完熟の果実をモギに来よう」
訊けば詳しくだけど 理解が追いつかない だまって はい が正解と香織
オープンとハイエースの2台で方丈邸に移動していく
流石お屋敷 居候用の八畳が三部屋もある
この八畳の一室に片瀬の彼女が金曜日の夜から熱出して寝込んでいて
甲斐甲斐しくおでこタオルを交換する片瀬
「あなた達三人は、防衛力抜群だし おでこタオルをするほうよね」
「香織は看護婦資格もあるから、俺はやる機会がないな
奥山もしてたりして」
「奥山さんが おでこタオルを交換するほうね」
訊いてみるかと 遠山邸に電話してみると
香澄さんがおでこタオルを土曜の朝からして貰っているとのこと
感染対策は 奥山の指示で行われていて 部屋も隔離とか万全
「インフルの潜伏期間は三日ほどだから 金曜日の夜からと土曜日の朝から
美貴ちゃん達は木曜日だから関係ないわね」
「そもそも遠山さん あの子らに会っても居ないし」
「インフルの家庭に 防衛力抜群の二人が配備されて結果オーライですねと
ダンボールの服をちょっと片付けるわね」と始める香織
「あ」と思うが ここで止めると エロビデオ疑惑が再燃する
「ホントに羽織袴が二揃えも 普通の黒はいいけど 上様仕様」爆笑してる
「タキシードも うっわぁ此のスーツも 肌触りめちゃいい 絹だよね
畳むだけでも大変よね なに?此のダークストライプのスーツ
これでパンチだと 弁護士さん」 想像して笑ってる香織
「やっぱりか 二度と着ない それ篠田で板の投票で決まったらしい応接服
代打でもホテルの中とか歩くのに これを着ろと言われて着てたら
GS裏のBarでヤクザ疑惑 片瀬と奥山に指摘された」
「この箱はチノパンポロシャツだけど はい?
エディバウアーにオービスはアメリカンブランドで 聞いたことはある
此の箱はブレザーとかブーツも入ってる ハーディ?って」
「バウアーとオービスは通販で 米本国から直送 ハーディはメシマズ
向こうに居た時に買って顧客登録してあるから サイズを送れば買える
釣具とか馬具の店だからブーツもある あ、住所変更の連絡しないと」
「なんでブーツがあるの?」
「向こうだと 郊外にピクニックなんだけど 馬で行くんだ
乗れないっていったら おじいさんを紹介されて休みの日に練習
いきなり乗ってハイで歩いて ダイブ仲間とかに笑われながら練習
クロスカントリーまで練習 四回目でなんとか乗れてピクニックへ」
そういえば聡子の家 樫村並みにデカイ 休日には乗馬クラブに行っていた
お見合いというか知り合ったのも乗馬クラブらしい 仲人が裏を取っての
お見合いだけど 実質恋愛結婚なのよね ってアキラ 馬まで乗れる!
『超上流階級じゃない』だけ声にでてる香織
「そんないいもんじゃないよ ベル潜で潜って 体を戻すのにピクニック
馬は賢いから 体調崩しても最悪乗って捕まってれば 戻ってくれる
馬を借りるんはお貴族様だけど 仕事先の大株主様だったしな
当時のボスが馬仲間でさ 話をとおしてくれて 馬場での練習のお礼に
持っていった小箱で お抹茶を振る舞ったら まぁ待遇が急上昇
お貴族様自らのご指導の後は 小箱で振る舞うがお約束になった」
「やっぱり お抹茶が有利になるの?」
「そりゃ 日本の茶道は 向こうでは神秘になるから 野点の小箱もって
馬で郊外に行って 野点をやったら 次回からお貴族様も来た」
ダンボールの蓋を〆る香織 お貴族様と知り合いとか聞かなかったことに
次のダンボール 海自 と書いてある
開けると 軍服の真っ白い礼装 から 普通の礼装まで これも蓋を〆る
「エロビデオは 申告どおりありませんでした」
「嘘は言わない 言わないことがあるだけの正直者だよ」
「言わないのは何故?」
「言う前に 色々言われて 言う暇が亡くなるから
香織は きちんと聞いてくれるから 嬉しい
あとは呑んで渡ったお局様は訊く耳がないしね」
「じゃ訊くけど 此の海自の箱は?」
「マリタイム・エマージェンシー・レスキュー・クルー・リスト
略称M-ERCL 海難救助隊だ メンバーは俺ら民間 海自
海難事故のデカイのだと USNAVY ROYALNAVYも集まってくる
民間でも軍関係で招集が掛かると 海自の特殊即応自衛官の肩書になる
船の上はチノパンポロシャツでいいけど 基地に招待される時用の礼服」
「招待されたことはあるの」
「向こうに居た時にだから まだM-ERCLにリストinする前だけどあるよ
服で一番マトモなのがハーディの乗馬服 これしか無いって言ったら
馬を貸してくれたお貴族様が 貸してくれてエスコートもしてれた」
続きを訊くかどうか迷う 香織
まったね