第八十四夜 兄貴 ちょっと
挨拶で悩んでいると
お見合いで見知った樫村本家の母の雅代さんが出てきて
「硬い挨拶はなし とりあえす上がって貰って ですよね」と始める
「すぐに 長谷というか 婿さんも着きますので ここで雑談に
煙草も吸いたいし 灰皿もそこに有りますし」と光宏さんの顔を見る
「あ、一応自己紹介だけ 来週から此のお屋敷の板場で料理教室を開く
パンチのアキラです 超初心者向けで頑張ります」
「嫁の香織です 歩美さんと一緒に お抹茶のお稽古に行きます」
「分家の運輸の長男の光宏です ここから近い作足でカート走らせてます
雑談突入でいい」と廻りを見回す
「どうそ」と佳代さん
「あのオープン どこまでやってありますか」光宏
「全部」
「全部って?」
「660ccと外形は変えずにやれる所は全部 元の部品がFrとRrガラスと内装位
シャシーはラダーもバスタブも外装も ワンオフのカーボン
駆動系も出来る所はカーボン 後はチタンとジュラルミンで車重400kg
エンジンは660のママを指定して100psに抑えて4500でトルク15kmf
メシマズでNoとってバックヤードスペシャルの輸入車扱いで公認ですよ」
「こんど 作足に行きませんか 融通がきいて借り切りれますので」
「婿殿も誘ってあげて きっと喜ぶ おまけ付きになるけどね」
「それなら まる一日 借り切りで 俺の125のミッションカートも走らせます」
「それはそれは お楽しみで」と行った所で ホイッスルが鳴り響く
ホイッスルの方向 門に皆の視線が向かう 赤色棒に誘導されて ゆっくりと
ファントムⅡが門を潜り入ってくる 続いて倉田さんのクラウン
玄関の中に引っ込む樫村の皆々 姑の佳代さん と 母の雅代 は踏ん張る
逃げ遅れて明と香織に両側から腕を絡められている光宏さん
玄関前で停まる ファントムⅡ ナビから降りてRrドアを開ける若衆
Rrのドアから誰も降りてこない
運転の加藤さんも降りてくるが 明達3人のところへ
「奥社でのUnimogの明様並みに寝てます」加藤
「光宏さん 担架か車椅子で 布団に放り込んで」香織
車椅子の用意をしに行く光宏さん
酒田さんも加わり 分家の若衆で ファントムⅡから降ろして
車椅子で お屋敷の中に運んでいく
荷物も倉田さんのクラウンから降ろされて 玄関におかれる
誘導員と話をする加藤さん
誘導員も配置を変えて 奥の業者用通用門に案内していく
出てる皆で ファントムⅡとクラウンを見送る
「袂が椀に入り緑に だから凹むのはいい 絡み酒で 女神様にも絡んで
絡み酒はいけないと思う」香織
「でも その辺をエグッたのは香織らしいぞ そんな写真撮影用の とか
景子さんと玲美ちゃん情報では 料理はいいけどお茶がって と惚気けて
歩美さんに お茶のお稽古頑張ってと上から目線でエグられて
香織は 料理教室頑張って と天より高い目線で言ったらしい
エグリ合いになった所で 三柱の女神様達が仲裁の ままイッパイ
これで渡った香織が 写真撮影用のとエグッて寝落ち
歩美さん一升瓶抱えて一人酒手酌酒 一升瓶が二本転がったそうだ
いつもグダるまで呑むお雪さんが、距離を取ってサクッと帰っていったぞ」
「あー 歩美 エグラれると 一升瓶抱えて一人酒手酌酒 になるから
呑みに行くのはいいから 洋風の店に 一升瓶の無い店に と叱ったんだけど
岩山本家 酒蔵も傘下にあるし 販売の関係で一升瓶はあるわな」光宏
「それってエグラれさえしなければ」明
「それは不明 お局様同士の呑み会 抱える一升瓶がなければ」光宏
「一升瓶さえ無けれな あの大きさがジャストラインみたいで
4合瓶やワインの瓶だと寝てしまうの」和恵さん
「分家の運輸の長兄 光宏の嫁の和恵です お見知りおきを
それと料理教室はお手柔らかにお願いします」
「ど素人 自分の高校時代を思い出しての教室になります
あの人らみたいな事は、致しません」アキラ
「それでは コーヒーでも 良い喫茶店からウエイトレス付きで出前です」
と和恵さん 裏の門からポットを持ったお姉様が勝手口へ向かっている
樫村の応接に通される明と香織 相対するのは分家筆頭の運輸の次期夫妻
「なんでかなぁ 樫村の方々に恐れられている気がしますが」明
「家の格から行くと方丈より上の樫村家」香織
「難しい質問ですね」光宏さん
谷上の順子さんが入ってきて
「それはね 岩山の当主しか乗れない車を引き連れて門を潜った若夫婦
自分の車だから そうでなければ景子様用で送られたとなるわね」
「順子さん 男ボンズの夢が詰まった順子さん」明
「なに 男ボンズの夢って」香織
「いや 長谷が名付けた 順子さんの二つ名 詳細はお義姉さんに訊いて」明
二つ名の意味はきっと碌でもない事 これはこれで止めようと思う香織
「長谷が 樫村の婿殿がね 一般公道は運転したくない とのね我儘
十六代三九郎の儂の車で樫村まで送れ との指示だそうだからね」
市井の時計屋の息子との思いが出る 和恵さん
「和恵さんから宏光さんへ 運輸を伸ばすのが道よ との内助をせよとのね
ツクヨミからの伝言は伝えておくね
後は 初歩の料理教室を 歩美さん 順子さん と三人で頑張ろう」
「兄貴 ちょっと」と光宏夫妻と出ていく順子さん 香織と二人コーヒーを頂く
「なに? ツクヨミの伝言って」
「ツクヨミの伝言だよ 他に言いようがない」
「それは ツクヨミ様が長谷くんの後ろに憑いた ってこと?」
「ツクヨミもだけど、お雪さんのお気に入りが長谷 気が楽になる」
「裏を読むと 和恵さんが旦那を押し上げて 樫村の総帥へとの画策をしていて
それはバレてて ツクヨミ様とお雪様を敵に廻すぞ との警告なの」
「マイクがあるからノーコメントで」
まったね