第八十二夜 予定が破綻していて300mで止まるオープン
見て訊いていた当代の8人+倉田さん他
アキラのオープンを見送って その場で立ち話
「儂はコースのフラッグしか解らん
長谷くんがオレンジボールを喰らったと 聞いた時は笑ったが
クラス初年度であったし色々あるからな」ご老公
「あれは、チーム皆が興奮のクラス セットも俺も攻め過ぎで」長谷
「そう言うのも見たかったが、当時は婆に内緒であったし、まあよい
婆にバレて、婆も来てくれる 最終戦からは見に行けるからの」
長谷とご老公 今後の観戦について話してるが
長谷は 此の件は歩美さんから樫村の本家に伝えて貰おう と決める
どの道 婆様も料理教室に参戦してくるから その辺でバレるしな
岩山の企業側の総帥との縁 なかなか樫村家に伝えるのには根性が要る
フォグフォーンの人の廻りでは
「お館様はモールスの意味をご存知でしたが なぜ?」倉田
「儂は船乗りに憧れておったが、家の事情で無理と解り 当主の権力乱用で
岩山海運の船乗りに ちょくちょく来て貰って 話を聴きながら酒を呑む
このピーターさんは国際航路の航海士でな
流石に本職の本船乗り 詳しいく 楽しく訊かせてもらっておる
水曜日の十七代の正門を開けろのファンファーレでは笑っておったが
モールスに反応して真顔になり 意味を教えて下されたので対応が出来た
先程の アキラ様の出発のホーンもお任せできた」
「ファンファーレのゴッドファーザーではどこの小僧かと 笑っていましたが
合間に V ヴィクター 救援を求む ですから 真顔になりますよ」
日本語と英語とイタリア語の三ヶ国語が行けるピーターさん
「それで 修造様との会話がスムーズに」倉田
「倉田はどこで理解った?」
「私は、景子様のお迎えで苦労して 修造に引き継ぎ 修造も苦労
3年前のあの夜 岩山家の正門の前でファンファーレで開門の要求
”開けよ”と奥社方面からの声が聴こえ 開門を致しました
アキラ様の縁と運で聞けた 奥社の座敷童子様の声であったと
今では思っております」
話が長くなると見た雅人さん
「我々は 茶室に移動して呑んで渡って寝てしまったお局様を
担架で車まで運んで 載せに行きます」
「担ぎますか 最初にこれだけの支援があると、次回から辛い」長谷
「頑張れ 俺は最初が支援なし 行くか」修造
「加藤 儂の車で樫村家まで 長谷殿を送るがよい」十六代三九郎
「解りました しっかり始業点検と暖機して 送っていきます」加藤
「私も クラウンに荷物を積んで 樫村まで」倉田
茶室から担架で歩美さんを運び出す 長谷と雅人
ファントムⅡも茶室の待合の脇まで寄せてくれる
担架を降ろした後 長谷一人で担いでRrシートに放り込む
「荷物は倉田さんがクラウンに乗せて 追走してくれるそうです」加藤
「人一人を担いで車に載せる 大変な作業ですね」とボソっとな景子さん
ボソッとが聴こえてしまった皆はどうしよう と思うが
長谷 香織から借りたコンパクトを持っていて景子さんの顔を鏡に映す
「比丘さんからの伝言です
大変なのは俺だけでいい 雅人さんには楽をさせてね
だそうです」
「それでは出発しますよ」これ以上関わるのは嫌な加藤さん 出発の合図
ゆるりゆるりと 正門に向かうファントムⅡ
静か極まりなく 正門を出て左折 樫村に向かって加速していく
見送りながら誰が口火を切るか 譲り合っていると
「あきら殿 読み切っての伝言 流石 お局様特化型
そうは言っても 私が言わなくてはならない事を伝言とはいえ
長谷殿に言って頂いた しかしこれで下を向く訳には行かない 顔を上げ
前を向いて スタディーを繰り返し 前に進まないと行けない」雅人
「はい お願いします」景子
「明日の一般向け披露宴 段取りに入りますよ」
これ以上 揉められたら堪らない修造 総てを押し流していく
岩山本家から300m進んだ所の広場に居るオープン
ファントムⅡが見えた所で ファンファーレのゴットファーザーが鳴り響く
クラウンの前にリアステアで曲げながら加速して割り込むオープン
クラウンは理解して減速して車間を開けて 三台の車列になる
電話がかかってきて香織が出る
「明様? 倉田です 割り込みは見えた時点で解りまして
減速で躱せましたけど どうされました?」
「明がね 私が知ってるとばかりに颯爽と出港したわいいけど
樫村の本家の場所を知らずで ごめんなさい」
「ファントムⅡに付いていって下さい」倉田
こんな事もあろうかと まさしく 直接は聞けなかったが
オオナムチ様の仰るとおりだ
門を出て左折した瞬間で明と香織 お互いが樫村の本家を知っていると
「香織 道案内は任した」明
「明 道は大丈夫?」香織
加速していくエキゾーストノートからの急減速
予定が破綻していて300mで止まるオープン
どこかに電話して訊くのもみっともない
ファントムⅡの後ろにつければ 行けると広場で待機していた
ファントムⅡ オープン クラウンの車列となり 南松平の樫村に向かう
「明 良かったわね 門を出て右折で行かれたら 二度と付けなかったわよ」
「岩山本家から南松平 左折だ これは知っているから」
「倉田さんも 此の車が見えた時点で 減速して車間を開けてくれたって」
「ファントムⅡは加速してくれた 加藤さんだな
それはそれで有り難いことなのだけど 失敗したかな」
「なに?」
「倉田さんのクラウンの後ろに もう一台のクラウン 酒田さんだろう
しれっとファントムⅡを見送って 坂田さんのクラウンを追走」
「でも 車を斜めにしてからの綺麗に加速しての割り込み カッコよかったわよ」
「ありがと 流石 グラマラスな黄色い車のオーナーだ」
「修理から孵ってこないけどね」
まったね