第三夜 どこの切子
この寿司屋 美味しいけど高いとの話で敷居が高く入れなかった店
タクシー代を自分で持ってもまぁペイできる 脱走一択と
「大将 ごちそうさん ツケはスイカ姐さんへ タクシー呼んで」
「はぁ? 何言ってるのよ ウチで泊まるのよ
夜中に、まだ酒が残ってる姉さんが起きてきたら
屋根の空いたオープンカーの助手席で寝てたとか 姉さんの車は何処とか
グダるのは目に見えてる
朝まで寝てても起きて屋根の空いたオープンカーで寝てるとか説明が要る
姉さん絶対覚えていないから説明責任があるわよ」
「それは 瀬山に電話して」と責任を擦り付ける
「夜中の12時杉に他所のお宅に電話とか 常識がないわよ
それに私は瀬山さんのお店の客なだけで 家の電話番号なんて知らないし」
まだアナログ変調の時代で、携帯電話がロハで配られ始める前
IDOだって携帯の契約の基礎料金を電電公社の電話債権の値段に合わせて
高額に設定していて普及率は10%もいっていない ポケベル全盛だった
「意外と通るよ 俺は寮名主が最初にでる 寮の代表電話だったけど
12時過ぎに呼び出されて飲食店まで迎えに行って家まで送るのが日常だった
瀬山の家の」とまで話したら 大将が割って入ってくる
「ほい刺し身 ポン酒は酒屋のお勧め 飛騨の蔵の名前を伏せた酒だ
俺もそっちに廻るから一緒に呑もう 潜る話も訊きたいしな」と大将
助け舟なのか蟻地獄なのか
蟻地獄だよなぁと思いつつも刺身盛りとポン酒に負けて切子を持つ
「どこの切子?」と完全に現実逃避で大将との会話を開始する
「これ江戸 お客さんに頂いた コハダの注文で使う」
「江戸前のコハダで 江戸切子 旨いけど高いと噂される店だね」
「仕事にお金をだしてくれるお客さんに恵まれてな
トロとかは余り仕入れない マグロは赤身の漬けがメインな店だ」
と香織さんを放置して大将と二人での会話を継続してると
「ちょっと ブサイク7割さん 23の娘が居るのですが」との苦情を喰らい
「香織23さんしか見てないけどご家族は?」
「爺婆父母揃って農協の旅行で下呂・平湯の温泉に行ってる
姉さんはお持ち帰りコースで楽勝の予定が送り返されたから
しかも渡ってグダってる候」
「ということは 香織23さんと 俺26の二人っきり 襲うよ」
「どうぞ 閨でまってるから」
「それって スイカ姐さんを お義姉さんと呼ぶ羽目になるのか?」
と声に出してるが 香織23さんからの返答はない
刺身盛りもツマまで食べ終え25時 閉店時間を1時間延長している
「さぁ 帰って寝るわよ」と香織23さん 店を出てお屋敷に向かう
店先でラストチャンスと「おやすみなさい それでは」と言ってみる
戻ってきて腕を絡め取られ お屋敷に向かう俺
もうワントライとあがいてみる
「枕が変わると 膝枕でしか寝れないので」これで蹴り出して欲しい
お屋敷の門を潜り 玄関の敷居を跨ぎ進んでいく香織23
「ここでちょっと待ってて」と応接室のソファーに座らされる
前のお局様の時以来の本皮のソファー
5分で戻ってきて案内された和室の八畳間に布団が引いてある
どうみてもダブルサイズの布団
「普通の娘がこれだけアピールしてくれたら気が付いて速攻行く
1回だけあった向こうからは難しくて気が付けずで「鈍感」と叱られた
こっちからのアピールは流されるか、お断りで連敗中
俺には、呑んで渡ってグダを巻くお局様関係しかないのか」
思ったつもりが、全部声に出てて香織23さんに聞かれる
「1回は気が付かずで「鈍感」と叱られたと 実績ありの愛嬌3割よ
眠たいから寝るわよ はい 膝枕で寝て」
どうこういっても23の娘の膝枕 有り難く横になる
スイカとの遭遇から、ドキドキや無理難題を押し付けられて疲れてる
その上で美味しい寿司と肴でお腹いっぱい 57秒で爆睡開始
朝起きると普通の枕で寝ていて、おでこに御札が張ってある
キョンシー扱いだな と思いながら 何の御札かと見てみる
『起きたら洗面所で顔洗って、コーヒー入れるからリビングへ来てね』
と書いてある
俺、此の家に法事で集まる親戚でもないから、洗面所もリビングも
どこにあるか知らない 居るのは23の娘だけ
勝手に動くと既成事実として積み上がると純金のお局様で学んだ
玄関➔応接➔此の部屋は通ったルートだから理解る 逆走で行ける
というか玄関入って一つ目のドアが応接 その向かいの引き戸が此の和室
来客用の応接を玄関の近くに集めて 向い合せで洋室と和室なんだよね
このまま脱走しても瀬山からのルートやスイカ姐さんの店に行く約束
そもそもオープンにはスイカ姐さんが寝てるから、その対応も必要
どうしようと30秒間 フローチャートによる選択を繰り返す
俺のオープンで寝てるスイカ姐さんを起こして、案内をして貰う
これが最適解とチャートは進んでいった
即実行
車庫に行くと まだ寝ているスイカ姐さん
ほっぺをツンツンして起こしてみるが、起きない
スイカをプニプニしたい衝動に駆られるがそれで起きたら大惨事だ
ほっぺを摘んでプニプニ 次に鼻を摘んでプニプニしてたら
「う〜ん誰よ」と起きてきた
「スイカ姐さん 洗面所で顔洗って リビングへ コーヒーが待ってるよ」
会話は開始されない 廻りを見廻し 記憶の断片を繋ぎ合わしている様子
シュラフを逸り 畳みながら待つ
無理だって GS裏だけでもダーダーに呑んでたよね その前もありそうだ
挙句に 29の女が カエルの被り物を奪って被ってニコニコしてたんだ
「スイカ姐さん 話はリビングで 顔洗いに行こう 洗面所に案内して」
まだ、カエルの被り物を被っているスイカ姐さんの案内で洗面所へ
鏡を見て いい年して此の被り物は と反省をして貰う予定が
「比丘くん 見て見て」と叫ばれ
「すっごくカエルが似合う かわいい女の娘が 鏡に映ってる」
まったね