第百三十三夜 あれ? 旧家の嫌がらせは?
渡瀬の棘のある言葉の後、45秒の沈黙を過ごしてから騙る香織
「人様の持ち物を羨んでもケチは付けてはいけない
ましてや趣味趣向・宗派信条には嘴は挟まない
実例で行くと デカイスーパーの総務課長さんは爆乳派
ウチの明は良乳派 亜美さんの瀬山さんは貧乳京都
さっきも言ったけど 巨乳・爆乳は七難隠すで殿方には人気」
「明日の谷上家の訪問で時間的な不思議があって
1030に谷上家到着 夕方までとの話
お互いに現物確認で谷上家にお伺いする 長過ぎるのですが」
話を変えて 引っ掛かってる事柄の質問をしてくる渡瀬
「ちょっと婆様も呼んでくる 亀の甲より年の功」
と婆様も加わり四人で 楽しい会話スタート
「本体部分は実質2時間もあれば充分なはずで 午前午後も」渡瀬
「お昼を挟んでいる お姑さんはお稽古に燃えている この二人は獲物よね」
「そう思ったほうが良いじゃろ 旧家の嫌がらせを熟せますじゃからな
しかも 習い始めた20《ハタチ》や直貴達に見せるのにちょうどよい時期」
「お茶会か何か」渡瀬
「午前の部 お昼 午後の部 三部構成の茶事よ 頑張って」香織
「」渡瀬
「月釜とかのお茶会ではなく 茶事?」桑畑
「浦上の谷上家に訪問してくる 熟せますな淑の幹事
一人では出来んが、さよのも居るから水屋も任せれる
今頃、大喜びで茶室の雑巾がけとか準備をしておるわ」
「え? 何とか忌 とか 炉何とか で行われるという茶事ですか」桑畑
「それはお稽古の事業所のイベント 来訪者のお饗しよ 同じだけどね」香織
「熟せますとか、大きな事を言ってしまった
神社の月釜は1回1000円とかなのと小紋でも通るので通っていますが
茶事は一桁高くて伺う方も二重太鼓 私 持っていない」渡瀬
「それで不安になって 私を巻き込んだの?」
「3割は」
「ここで喧嘩しても無駄ですね 善後策を その為に婆を呼んだのよ」香織
「なに 心配するでない 旧家の嫌がらせではあるが お饗しじゃ
千恵子さんもそこまでは求めない
求められたら当代の嫁の茶を頂きたい との返し技もあるがの」婆
「当代の嫁の茶 喧嘩売る事に成るから言ってはダメ
二人共 洋服のロングタイトスカートスーツでしれっと行く」香織
「膝丈しか」二人
「お局様が膝丈はキツイ そも正座で膝が丸見えになる どうしよう」香織
「自装なら小紋にお太鼓でも半幅カルタでも良い 他装の訪問着よりよいわ
金で雇った着付け師と自分で一生懸命着付けたカルタ 比べるのが間違いじゃ
その神社さんの月釜の名前を言って「これで通っております」で、ええ
皆が皆、上を向き杉で要求値を上げ過ぎじゃ 世間一般はそんなものと
千恵子さんも思い出すじゃろ それでも月釜に通っておる娘 上澄みじゃ 」婆
「そう言って貰わないと私の二重太鼓が」香織
「あのマジックテープの作り帯もな、婿殿の装備に金を掛けて云々の理
婿殿の判断基準で○が出ておる 婿殿が認めておるで突っぱねればよい」婆
「え? 二重太鼓の作り帯?」渡瀬
「同期で一緒に創ったけど使わないから という 今は出来るマウントで
沢山あるし仲間も欲しいから 2本づつ無償譲渡でどうぞ」香織
一瞬どうしようかと思うが 二重太鼓は難関 出所が方丈家なら押し切れる
「谷上家訪問の顛末の報告の時に頂きます」と二人
「安心して訪問が出来ます 婆様の名は使っても良いのですか」桑畑
「捻って 私を谷上に売り飛ばしたのは何方かご存知ですよね よ」渡瀬
「習っても居ない婆様 御名前を出すのは ですね
香織さんも一緒に行かれませんか それなら訊かれもしない」桑畑
「香織は行くでない この二人が一皮剥けて 香織が焦ってからで良い
千恵子さんも、まだ手の内を魅せたくないであろうしな」婆
香織さんはヘボいとの情報もある 現に二重太鼓はベロクロ
旧家 孫にも厳しいのか甘いのか と思う淑と椙
翌水曜日 時間通りにJR浦上駅からタクシーに乗って谷上産業の本社へ
「はぁ 地方豪族 観光協会の理事らしいからポスターも貼ってあるのね」
待っているとボンキュボンな女性 でもポスターには負ける
「渡瀬さん達?」と確認してくる
「はい」と返事をすると 「こちらへ 乗って下さい」と乗せられ
発進するクラウン 自己紹介の後 順子の愚痴が5分間垂れ流がされた後
「今日は本当に有難う 姑の我儘で 付いたわよ」と門にツッコミ玄関前
降りると お姑さん候の方とポスターのグラビアが居る
「まぁまぁ よくお出でに ささ あがって」姑らしき人
「電車ではスニーカーにカルタがいいわね」
あれ? なにか旧家の嫌がらせでは この後からか? と目で会話する二人
あがると自己紹介を皆でして
手洗いから床の間から 姑の説明を二人と20と小中学生と並んで聞く
「このチビ椅子を使ってね 正座は膝に悪いとの事」姑
あれ? 疑問が膨れ上がっていく二人
午前の部 薄茶 グラビアが手前座に座り 姑が解説
フォローも万全で 滞りなく進んでいく
あれ? 旧家の嫌がらせは?
お昼を出されると姑が引っ込む 頂いていると 順子と大智の愚痴が始まる
「お袋 お茶のお稽古を俺も順子もやってないから 此処ぞとばかりに」大智
「ね 私は諦めたって言いながら この饗し 嫌がらせよ」順子
「順子先輩も 習われますか」グラビア
「お断り もう後輩まで嫌がらせに来てる」順子
「お姑さんから そういう指示が出てますから」グラビア
「須磨子さんに直貴くん達に孫 さらに淑と椙のOG会幹事が参席
お袋は有頂天に登って 仕掛けてくるわな」大智
「順子さん 今の状況って 旧家の嫌がらせの茶の一つ って順子さん宛?」渡瀬
「俺ら夫婦宛だよ」大智
「豪族は豪族で 大変なんですね」桑畑
「いいよ 酷い目は俺ら夫婦だけだし 従業員の生活とかとは関係がない
変なトコで暴走されて従業員に影響よりは3倍はいい 会社に戻るわ」
と抜けていく大智
「あの達観と責任感 さすが豪族の跡取り」渡瀬
まったね